2017/12/27 のログ
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「どうなんでしょう。そういう言葉を掛けてもらうことは何度かありましたけど、
 どれも冗談というか、からかわれているような気がして」

苦笑いをすると、軍隊に居た頃を思い出す。
物心つくころから軍隊に居たが、周りに女性は少なかった。
必然的に味方は少なかったし、周りの男性はいつもからかうような言葉を掛けてくる。
人と話すのが得意じゃないのはそういう部分から来ているという自覚はあった。
そういう意味で、同じ女性である彼女が手を伸ばしてくることにはあまり抵抗はなかったりする。

「寒いのが苦手なんですね。でも、なんとなくわかりませんか?
 そういう環境に身を置いたせいで、気づかないうちに身についていることとか」

きっと、そういう感覚は誰にでもあると思う。
自分の場合はたまたまそれが雪の匂いに対しては垂らしていたというだけで。

「仲間、ですね。喜べるかはちょっと微妙ですけど。
 ……手、冷たそうですね」

マフラーを正して身震いする彼女。
自分は正直寒さに震えるほどではないが、彼女の様子を見ると、彼女が感じている寒さが伝わってくるようだ。
なんとなく彼女の手に自分の手を重ねようと手を伸ばして>

鈴ヶ森 綾 > 「距離が近すぎると感覚が麻痺するという事もあるでしょうけど…貴方自身の問題もあるかもしれないわ。
 綺麗な鏡も、磨かなければ曇ってしまう。昔の貴方の事は知らないけれど、もう少し意識してみると色々変わって見えるかもしれないわ。」

髪に触れた指は軽くすくように通り抜け、さり際に首筋を擽るような動きを見せて離れる。

「…そうね。言葉にするのは難しいけど、理解でき…っ」

不意に冷たいものが鼻先に触れて言葉が中断される。
彼女の先程の言葉通り、だいぶ小粒なようで闇に紛れて殆ど視認できないが、どうやら降ってきたらしい。

「……大丈夫?だいぶ冷たいはずだけど。」

港からの列車を降りて、ここまで歩いてくる内に冷えた身体は指先も例外ではなく、すっかり冷たくなっている。
そこに重ねられた彼女の手は、その体温以上に暖かく感じられてなんとも心地よい。
肌と肌が触れ合っているが、精気を奪うような無粋な真似はしない。目を細め、今はその感覚だけを楽しんでいよう。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうですね、確かに今までそういうことには興味がなかったというか。
 意識して避けてきた部分もありましたし」

今は別に軍にいるわけでもない、自由な身。
避けてきたことに目を向けるのもいいかもしれない。

「やっぱり。降ってきましたね。どこかに移動して…えっと、
 ……冷たいのは全然問題ないんですけど、その、、、
 鈴ヶ森さんの心があまり安定していないと言うか…」

単純に寒そうだからと思って触れた手。
しかし触れた瞬間にやや不安そうな表情を見せる。
彼女の精神状態があまり健康的ではなさそうなのだ。
その理由は全く見当がつかないが、今まで話していたにこやかな彼女とは裏腹に、
どこか生物の本能的に安定していないように思えてしまって>

鈴ヶ森 綾 > 「そうそう。例えば……そう、まずはファッションかしらね。形から入るのは安易だけど有効なはずよ。」

一度言葉を区切ると、彼女の全身を上から下まで改めて観察する。
色白で、スレンダーで、日本人とはだいぶ趣の異なる顔立ち。
相応の格好をすれば、周囲も相応の反応をする事だろう。
周囲の反応が変われば、それは自然と彼女自身にも影響を及ぼすことだろう。

「ええ、そうね。本降りになる前、に……あぁ、それはきっと、まだこの島の生活に慣れていないせいね。ここに来てまだほんの半年、まだまだ経験していない事も多いもの。」

彼女のその言葉は的を射ている。
自分が本調子でない事、特にそれが精神面に強く出ている事は自覚している。
触れただけでそれを見抜かれたのは意外ではあったが、特に不快感は無い。
ただ、その原因を素直に吐露することはせず、当たり障りのない言葉で誤魔化した。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「じゃあ、今度服を買いに行くときに一緒に行きましょうよ。
 一人で行くのはなんだか心もとないと言うか……」

自分の服装をみて、確かにあまりお洒落な感じはしないかなぁなんて。
少しゴツゴツした感じに寄せてしまうのは、きっと軍隊のせいだ。そういうことにしておきたい。

「……じゃあ、やっぱり仲間ですね。
 ちょっとだけいいですか?すぐ終わりますから」

当たり障りのない理由。それを聞いて、彼女がごまかしているということはすぐに察した。
しかし本当の理由を聞くことはできなかった。
わざわざごまかすほどの理由を、強く問いただせなかった。
だからせめて、そう思えば彼女をギュッと抱きしめる。
抵抗されるかもしれないが、少し強引に。
すると黒狐の尻尾と耳が姿を現すと、彼女の心を安定した状態にするべく魔術を使って>

鈴ヶ森 綾 > 「ええ、一緒に行きましょう。…あら、これはひょっとして…責任重大かしら?」

同行するとなれば、当然ただ見ているだけとはならないだろう。
目の前の少女がどう変わるか、その一端を担うとなると、どうして中々愉快そうではないか。

「…?構わないけど。でも何を…っ」

不意に抱きしめられると、さすがに面食らってしまう。
構わないと言った手前、身じろぎもせずにされるがままでいると、不意に訪れた変化に息を飲んだ。
自分の命を終わらせる季節に対する、妖かしとしての力を得てもなお抗いがたい恐怖心、それが薄れていく。
触れ合った身体以上に、心が暖められているような感覚に力が抜けそうになる。

「………あなた、不思議な力を持ってるのね。ありがとう。」

抱きしめられたまま彼女の頭部に触れると、帽子越しに軽く撫でる。
手つきは優しく、今の精神状態をそのまま表しているようだった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ですね、私に恋人ができるかどうかを左右する第一歩ですから」

そんなことを冗談めかして言う。もちろん、ただそこに居てもらうだけでも心強いのだが。

「私の特異魔術です。精神状態を安定させることが出来ます。
 といっても、長期的な効果を期待するとなるともう少しいろいろと工夫が必要なんですけどね」

単純に即効性に欠けるこの魔術は、それなりに長い時間接触している必要がある。
そんな理由で抱き着いたままでいると、彼女が優しく頭を撫でてくれた。
ニット帽の上からでもわかる優しい手つき。
その手が黒狐の耳に帽子越しに触れると、心地よさを含んだ安心感を感じた。
この魔術には自身の心を安定させる効果はないが、大抵、相互作用的に自身の心も安定する>

鈴ヶ森 綾 > 「……優しい魔術ね。」

短く、呟く。
奪うばかりの自分の物とはまるで異なるその力に、憧憬の念のようなものを覚えてしまう。
らしくない、まったくらしくないと思いながらも、今はそれを否定する気にもなれない。

「工夫…?少し気になるところだけど…それを聞くのはまたの機会にしましょうか。」

頭を撫でていた手が何かに触れる。
ここからでは見ることができないが、それが毛髪でない事は感触で分かる。
帽子の繊維越しに狐耳の形をなぞるように弄り、
それが何であるか分からぬまま付け根の辺りをコリコリと刺激する。

そうこうする内に小降りだった雪がその大きさと量を増してきたようだ。
あまりこの場に留まっては二人揃って風邪を引きかねない。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうね、私が自分の行いを悔いて罪を償うために神様が与えてくれた力にも思えるわ」

彼女が今何を思っているかは分からないが、短くつぶやかれた言葉にうなずく。

「極端な話をするとすごく恥ずかしいから、また今度……
 あ、あと、ちょっとこう、そこは感覚が鋭いから付け根は触らないでほしいというか…」

極端な話、この魔術の効果は接触している面積と、接触の方法に依存するのだ。
身体が直接的なつながりを持つほど効果は早く、強く、長く表れる。
そして彼女が帽子越しに耳の付け根を触ってくると、少し恥ずかしそうにやめてほしいと伝える。
一度離れて帽子を取れば、そこには黒狐の耳があった。

「私、1/8が獣人なんです。魔術や能力を使うとこんな風に耳や尻尾が出てくるんですよ。
 っと、振ってきましたね、どこかへ移動しましょうか」

自身の頭の上についているそれに関して説明すると、本降りになってきた雪を見てベンチを立ち上がる>

鈴ヶ森 綾 > 「罪を、償う…。」

彼女の言う罪、それがなんであるか問う資格は自分には無いだろう。
だから言葉ではなく、最後にこちらからも相手の身体を軽く抱きしめてから身体を離した。

「あぁ、ごめんなさい。でも一体どうなって…あら…まぁまぁ…。」

彼女の帽子の下から顔を出した黒い狐耳、それを目にすると先程までの感触に合点がいった様子で。
すると今度は直に触れてみたいという気持ちが鎌首をもたげてくるが、流石に今は自重しよう。

「ええ、濡れてしまう前に行きましょうか。」

相手に続いてベンチから立ち上がると並んで歩き出し、他愛ない話をしながら公園を後にした。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ふふ、私はちょっとだけ恵まれているなと、そう思うだけです。
 誰だって後悔している事ってあるじゃないですか。それを償うチャンスがあるってだけです」

ちょっと重い雰囲気になりそうだった。
せっかく優しい気持ちになれたのだから、壊すようなことはしたくない。

「あ、今触ってみたいと思いましたね?だめですよ、触られる方は大変なんですから。
 そうですね、もし時間があればこの後ご飯いきませんか?」

耳を見た時の彼女の表情を見て、少し大げさに耳を手で隠す。
ふざけた感じで言っているが、実際触られた方は本当に大変なのだ。
そして公園を後にして、他愛もない話をしている時間は、魔術の行使に関わらず楽しい時間であった>

ご案内:「常世公園」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。