2018/07/09 のログ
ご案内:「常世公園」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 夜の公園に雷鳴が鳴り響く。
つい5分前までは平穏そのものだった公園は、今はにわかに広がってきた厚い雲から降り注ぐ雷雨に晒されている。

そんな豪雨の中を少女が一人、雨を遮るものも持たずに足早に進んでいた。
身につけた服はまるでプールにでも飛び込んだ後のように水を吸い
一歩踏みしめる毎に雨が地面を叩く音に混じって水の入り込んだ靴が奇妙な音を立てる。

そのような状態でどうにかたどり着いたのは、公園内に設置された小さな東屋。
屋根と木製のテーブルとベンチがあるだけの簡素なそこを避難所としてどうにか雨から逃れる事ができた。

鈴ヶ森 綾 > 「ふぅ…。」

小さなため息を漏らした直後、耳をつんざくような轟音が辺りに響き渡る。
空気がビリビリと振動し、耳内にも暫くその残響が残った。

「随分近かったわね。まったく、早く通り過ぎてほしいものね。」

髪といい服といい、タオルの一枚程度ではどうにもならない程に濡れてしまった。
もっとも、そもそも持ち合わせてはいないのだが。
手始めに髪から水気を軽く払い落とし、スカートを軽く搾って水分を抜く。
それからベンチに腰掛け、水で漬け込まれた靴と靴下を脱ぎ落としたおかげで不快感が多少は軽減された。

ご案内:「常世公園」に筑波 察さんが現れました。
筑波 察 > 雨。
目が見える頃なら一番好きな天気だったが、今の身になってからは厄介な天気だ。
そんなことを考えながら公園に足を運ぶ。
自販機でいつも飲んでいる缶コーヒーを購入すれば、ベンチへ。

「……?
 そこに誰かいるのかい?」

ちょうど雨よけになるベンチに歩みを向けると、ぼんやりと人影のようなものを感じた。
能力を知らない物からすれば一見不思議に思うだろう。
傘をさしていないのに濡れていない、
真っ暗というわけじゃないのに見えていない。
能力を知っている者から見れば、能力があるにもかかわらず認識できていない。

とかく、不思議を詰め込んだようなみなりだ>

鈴ヶ森 綾 > さして長続きはしないだろうという思ってはいるが、はてさてここにどれだけ釘付けにされるのか。
すっかり濡れてしまった事だし、このまま雨の中を帰るのもやむなしか。
そんな事を考えながら時を過ごしていると、雷雨に混じって別の音が耳に届いた。

そちらへ目を向けると雨と夜の闇に煙って薄っすらとだが人影が見える。
その人影が徐々に近づいてくるのに合わせて、投げ出していた足をベンチの上へ持ち上げた。

「あら、いたら悪いかしら?」

雨の幕の中から姿を現した相手は、見ると傘等は持っていないが濡れた様子もない。
その理由はこの際どうでもいいが、こちらだけ濡鼠という状況は些か面白くないものだ。
ベンチの半分以上を占有したままにやってきた彼に向かってそう聞き返した。

筑波 察 > 「いやいや。別に悪いなんてことはないさ。
 ベンチは座るために、この場所は雨を避けるためにあるんだからねぇ?」

投げかけられた言葉に感情の読めない声色で応答する。
そうして近づいていくと、次第に声の主の様子がわかってきた。

「ん。君は以前どこかで会ったね?
 確か道案内をしてもらった気がするよ」

聞き取った声を過去の記憶に照らし合わせて、
彼女が初対面では無いことを思い出した。

「見たところ、雨に降られて足止めされているようだねぇ。
 まぁ、あと10分もすれば雨もやむし星が見えるくらいには晴れるさ」

ベンチに座るつもりで来たが、それはできなさそうだった。
もっとも、こちらは雨宿りしなくとも濡れないので問題はないのだが>

鈴ヶ森 綾 > 「そうね。まったくその通りだわ。でもそれなら貴方には別に必要ないのではなくて?」

間近で見ると、やはり濡れていない。それも屋根のあるところからここまで駆けてきたとか
そういうレベルではなく、そこだけ雨が避けて通ったような様相を見てそう口にした。

「さぁ…どうだったかしら。道案内しただけの相手なんていちいち記憶しないもの。」

実際のところ、この人物とは確かに面識はあったが、それも一年近く前の事だ。
接点はそれだけで、まして襲撃して失敗した相手など、いちいち記憶に留めても不快なだけ。
だからその言葉は別にとぼけているというわけではなく。

「普段よっぽど人と話をする機会ないとかなら、まあ分からないではないけれど?」

ベンチの傍らに立ち尽くす彼の足に、こちらの足指をちょいちょいとからかうように触れさせる。