2018/07/10 のログ
■筑波 察 > 「あっはっは、必要はなくともほしいと思うものさ。
人間は欲深いからねぇ?」
――人間じゃない君にはわからないかな?
さいごの一言は完全に挑発だった。
挑発といっても、本人にとっては"余計な一言"程度の感覚なのだが。
「努めて記憶しないようにしているのか、どうなのかはさておき、
以前会った時とはえらい違いだ。
おっと、むやみに触らないでくれないかい?」
機嫌がわるそうな彼女とは相反して、こちらは上機嫌そのものだった。
いや、不機嫌であること自体がまれなのだが。
そして彼女が足先を触れようと伸ばしてくると、それを制止する。
雨に濡れないよう表面を細かく振動させているのだ。
もし意図せず物体が触れようものなら、共鳴で強烈な振動が彼女に伝わることになる>
■鈴ヶ森 綾 > 「言うじゃない。でも別に人間に限った事でもないようだけど。」
不要なものを欲しがる彼と、必要なものを独占する自分は、果たしてどちらの方が欲が深いのか。
「あら、つれない…そんな風に嫌われたら傷つくわ。何よりからかいがいが無いじゃない。」
殊更悲哀を強調させた言葉の直後にしれっと本音を告げ、
触れさせようとした指は静止されて結局空を切り、退屈そうに宙を彷徨った後に脱いだ靴の上へと着地する。
そのまま脱いだ靴下を回収し、裸足のまま濡れた靴へと足を通す。
■筑波 察 > 「からかいがいがないだなんてまさか。
僕はからかうのもからかわれるのも好きさ」
嫌われるのも好かれるのも。
彼女も欲が深そうだが、彼女の場合は生きる上で必要であるか、
彼女という存在そのものがそういう性質なのか、そんな気がする。
そういう欲求であるなら、こちらの欲求のほうが生き物として質が悪い。
「君が僕に触れるようにするには濡れないところに行かないといけないからねぇ。
嫌われるのは好きでも濡れるのは好きじゃないからねぇ」
にしても、以前会った時とは違って本当におとなしい。
平和すぎるやり取りに間抜けしそうだ。
そんなことを考えながら、濡れた靴を履く彼女を観察している>
■鈴ヶ森 綾 > 「あなたの好みの話だったかしらね。まあ良いけれど。」
相手の今ひとつ真意の掴めぬ話にそれ以上は付き合わず、濡れて重たい身体を持ち上げる。
「使いたければどうぞお好きに。私はもう行くわ。」
靴を履き直した足元は相変わらず不快感を訴えてくるが、どうせ時間が経ったところで解消されるわけでもなし。
立ち去るのだからわざわざ告げる義理も必要もないが、幾らか言葉を交わした上での最低限の礼儀とでも言おうか。
そうして先程よりは幾分小ぶりになった雨の中へと歩き出し、そのまま公園の奥へと消えていった。
■筑波 察 > 「僕はどんな話でも好きさ。
たとえ相手が僕のことを襲ってきた相手でも、
僕を嫌う相手でも、僕の知らない話でも」
裏を返せば、どうでもいいということなのかもしれない。
唯一のこだわりは、相手にとって没個性にならないことだけなのだから。
「おやおや。これはどうも。
雨はもうじき止むけど、また15分くらいで降り出すから、
それまでに帰れるといいねぇ?」
最後まで極力無関心を貫かれてしまった。
これは負けたなぁなんて思いながらベンチに腰を降ろせば、
雨のせいで湿った空気から生まれた結露を軽く拭いて、缶コーヒーを開けた>
ご案内:「常世公園」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から筑波 察さんが去りました。