2015/07/23 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 蘭の肌は、あまり日差しに強くない。
少しは黒くなるが、それよりも赤くなり、そして炎症になってしまうのだ。
だから、夏の日差しの中、室内に篭る事は、蘭にとってはそれなりの合理性がある。
…しかし、それと気分は別の話だ。
何となく外出したくなり…それで、通常授業期間中は
「たまに贅沢に勉強する場所」
だったこのカフェテラスに、本を携えてやってきたのである。
昼下がり。ティータイムには丁度良い時間だろうか。
店内に入る前に、日傘を閉じて腕に提げる。
そして、日の光が直接当たるわけではないものの、明るさの点では影響を受けるような席に陣取った。
「えぇっと………アイスティーをお願いします」
本当はデザートも頼もうか少し悩んだが、この季節に焼き菓子という気分にもならないし、冷たいデザートはちまちま消化するのに向かない。
読書に区切りがついたら、改めて頼む事にして、飲み物だけを注文した。
■美澄 蘭 > 注文を終えると、先日、図書館で借りた異世界について書かれた本のうちの1つを取り出し、そのまま読み始める。
1冊目に手に取った本は、魔術師の女性の自伝だった。
どうも、彼女は魔術師の多い地域の出身で、機械文明との共存に際しては、随分もめたらしい。特に、「アールヴ」という異種族の反発が酷かったようだった。
(…おばあちゃんの元いた世界に、異種族っていたのかしら…?
今度、おじいちゃんに聞いてみないと)
そんなことを頭の片隅に思いながら読み進めるが…その自伝の主題は、そこで起こった紛争、武力闘争だった。
か弱い命が散る様の描写と、その嘆きに満ちている。
夏の日差しの中で読むには、少々重過ぎる代物だった。
それでも、読書が好きな蘭は、その重さに同調するように、本の中に沈み込んでいく。
『…あの、お客様、ご注文のアイスティーなんですが…』
店員に何度も呼びかけられても、気付かなかった程度には。
「…あっ、すみません、ありがとうございます…!」
慌てて反応して頭を下げると、店員はやっと、という情感をわずかに滲ませてアイスティーを置いて去っていった。
「………やっちゃった………」
恥ずかしそうに縮こまり、アイスティーを少しだけストローですする。
■美澄 蘭 > そうしてアイスティーをちびちびすすっているうちに、少し落ち着いてきたらしい。
また、読書に本腰を入れ始めた。
武力闘争に疲れた人々は、当然和平の道を模索する。
しかし、和平の内容で人々は対立し…そして、また別の軸により、別の派閥分けが生まれて、紛争が繰り返された。
いつまでも終わらない悲劇…それどころか、著者である女性の家族までもが、命を奪われた。
ひたすら悲惨で、重い。しかし、そのまま読み続ける。
章の区切りでアイスティーをすすりながら、怒濤の勢いで読み進めていく。
■美澄 蘭 > (………あれ?)
と、蘭のページを繰る手が止まる。
紛争の解決が見えないまま、自伝は次の章…この世界に転移してきてからの話になってしまうのだ。
(…おばあちゃんのところは、なんだかんだあったけど共存出来るようになったんじゃなかった、っけ…?)
念のため最後の方の奥付を確認する。
日本語版はもちろん、原語版(英語らしい)ですら、発行されたのは蘭が生まれた後だ。
(………まあ、決めつけるのは良くないわよね)
アイスティーを少しすすって気分を切り替えて、新たな章に入る事にした。
■美澄 蘭 > 新たな章に入る。
その女性の転移は紛争のまさに真っ最中、人の住む区画が攻撃を受けて、家族の身を案じる最中に起こった、これ以上無いほどの「事故」だった。
紛争から距離が離れ、自身は(アクシデントさえ無ければ)血なまぐさい事に巻き込まれることが減ったとはいえ、それは寧ろ家族の安否が不安なまま切り離されたことを意味する。
この女性は、しばらくの間泣き暮らしたらしい。
(…ちょっと、お母さんの事思い出しちゃったかも)
ページを繰る手を止めて、その文面と…自分が携えた日傘を、ちらりと見る。
■美澄 蘭 > (…いけない、今はお母さんの事じゃなくて)
軽く頭を振って気分を切り替えると、再びページを繰り始める。
女性は常世財団を介さず、国連の関連機関と連携して落ち着ける場所…自然豊かなイギリスの湖水地方にたどり着き、しばらく自給自足の生活をして…この自伝は、心の折り合いがついた頃に書き始めたもののようだった。
(…書けるようになるまで、どれだけかかったのかしらね…)
当然、自伝は女性の結末を語らずに終える。
解説では、家族の無事を祈りながら、穏やかに質素な生活を続ける女性の現在の姿が触れられていた。
(魔術についての説明が無かったのはちょっと残念だけど…すごく、引き込まれたわね)
万感の思いを込めて、本を閉じる。
重い記述内容に一息つきたいと思ったが…アイスティーは、ほとんどなくなっていた。
「すみません…アイスティーのお代わりと、オレンジタルトをお願いします」
本格的に息抜き、と言わんばかりにアイスティーとデザートを注文する。
■美澄 蘭 > 重い本をつい一気に読んでしまったので、残りの本を今開く気にはなれなかった。
結構な時間も経ち、日差しの強さは和らいでいるが…それでも、十分に明るい。
そんな外の景色をぼんやり眺めているうちに、アイスティーのお代わりとデザートが届いた。
「ありがとうございます」
そう言って受け取り…まずはオレンジのタルトを1口。
「…美味し」
オレンジの爽やかさと甘さのバランスが、この季節に心地いい。
(…そういえば、少し前に「夏タルトを食べる会」みたいな企画を掲示板で見かけたわね…あれ、どうなったのかしら?)
そんな事を頭の端で考えつつ、タルトとアイスティーのハーモニーを堪能する。
■美澄 蘭 > 「…美味しかった」
重厚な読書に、脳が甘味を欲していたのだろう。オレンジタルトはあっという間になくなってしまった。
「今日は久々に早めに帰って、真面目に自炊しようかな…時間の余裕が無いと新しいレシピを試すのも面倒だし…何より、同じのばっかりって飽きるし」
一人暮らしの自炊で、凝った事をやろうとするとコスパがとんでもなく悪い。
だから蘭はあまり冒険をしないようにしているのだが…いかんせん、夏の暑さにダメージを受けた身体に、似たような食材ばかりの食卓は少々こたえる。
あまり辛ければ学食に頼るのも手なのだが…通常授業が終わった今、少なくない食堂が短縮営業だった。
蘭は席を立ってレジのところで会計を済ませると、スマホを軽く弄りながら(レシピ検索である)店を後にした。
その日の蘭の夕食がどのようになったかは…蘭しか知らない。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にやなぎさんが現れました。
■やなぎ > 「あーーっつい暑い」
(青年がくしゃくしゃの地図で全力で扇ぎながら店に入ってくる。
涼しい店内に入ればほっとため息をついた。
席につくやいなやメニューも見ずにアイスティーを頼み、テーブルに突っ伏した。
この店に入ったことは初めてだが、それぐらいあるだろうと思っているためだ。
「こんな暑い日にはアイスだよねえ」
■やなぎ > (暫くして店員が持ってきたアイスティーに、"アイスクリーム"がついてない事を不思議に思いながらも、いきおいつけてのみだした。
「冷たいしべつにいいか」
(グラスの中身はすぐに無くなった。
■やなぎ > (あまりにも物足りなかったのでアイスティーとアイスクリームを追加で頼んだ。
握りしめてさらに薄っぺらくなっている地図を広げ、手のひらでシワをのばす。
最近は学園地区から出ていないため、地図の出番といったらうちわがわりとなっていた。
「今日はせんせーいないし、なにしてればいいのかな・・・」
(今まで軍隊にいたせいもあってこんなにのんびりとすごすのは初めてだ。それ故不安もあった。
折角仕事で少佐の補佐にきたのに・・・
これでは給料泥棒ではないか?
「・・・!」
(やなぎはここまで考えて、あることに気づいた。
■やなぎ > 「これのだらだらは許されるはずだ・・・仕事だもん仕方ないよ。」
合法ニートだ・・・!
としょうもないことを思い付いていた。
軍人らしからぬ思考だが、自身の奥底ではそれを望んでいたのだ!
上官には気づかれないようにしながら楽しむ事にしよう。この夏休みを。
■やなぎ > (そんなことを考えながら、いつの間にか来ていた溶けかけのアイスクリームを頬張った...
ご案内:「カフェテラス「橘」」からやなぎさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > カウンター席。
鼻の頭には絆創膏。
いまだにとれていないそれは、どこか幼さを表現している。
いつものようにフードを頭に被り。
だが、どこかいつもと違い、楽しげな雰囲気はない。
両手を枕にして、その上に頭を乗せた。
寝ているわけではない。ないが――。
コーヒーカップの中には、いつものブレンドのホットが、まだほとんど口を付けていない状態で残っている。
■渡辺慧 > 昨日の時計塔の一件で。
見ないようにしていたことが、なんとなく。
また意識し始めてしまっている。
「ぁ゛ー……………」
繋がりが、どうにも。
程々でよかったはずなのに。
そうすることに自己満足以外のものはない。
自己満足、というより……ただ、なんとか。
そうしないと、いけなかったはずなのに。
周囲に、顔を知っている人はいない。
声をかけてくる存在もいない。
だから、思う存分、今は、思考にふける。
■渡辺慧 > ちぐはぐだ、というのは理解している。
だけれども、多少のつながりはないと、自分は耐えれない。
だけれども、それが重すぎても、自分は。
頭を起こし、目を指でこする。
欠伸を漏らしながら、コーヒーへ手を付けた。
■渡辺慧 > 「……ッ、ッチチ」
まだ思いのほか冷めていなかったそれは、舌を焼き。
「どわっ」
思わずその手を離し、コーヒーカップはそのまま落下した。
その場に広がるコーヒー。
服についたそれ。
「…………………………うー」
憮然とした顔で、めんどくさそうに。力なく、椅子に背を預けた。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にオーロラさんが現れました。
■オーロラ > 「あーあ、やっちゃった」
隣に座っていた女子が、そう声をかける。
黒髪黒瞳を持つ、小柄な女子。
両手でコーヒーのカップを持ちながらそう呟いた女子は、お絞りを手に取ってちょいちょいと手招きする。
「ほら、コーヒー染みは時間勝負だよ? こっちむいて」
可笑しそうに、笑いながら。
■渡辺慧 > 「……ー?」
かけられる声に。――先程、瞼を腕に押し付けていたせいか、視界が、気のせいかぼんやりとしている。
ふと、不思議そうに横を向く。
あぁ、今の醜態を見られて……。
少し苦笑をしながら。
「……やっちゃいました」
その手招きの意味を、数瞬。
いや、数秒。――もしかしたら、それは彼女が言う時間勝負に負けているのかもしれないが。
「……あー。……えっと」
その意味を理解し。――いやどちらかというと、条件反射的なものもあるのかもしれない。
パーカーについた、その茶色い染み。
お腹辺りについたそれを、みせる様に。
身体を振り向かせた。
■オーロラ > 「よろしい」
にっこりと笑みを向けて、トントンと叩くようにお絞りを当ててコーヒー染みをを移していく。
うちまき気味の黒髪から、シャンプーの香りがした。
花を思わせる、柔らかい香り。
「しかし、君、奢るねぇー。パーカーにコーヒー飲ませちゃうくらい懐事情に余裕があるのかな?」
そう冗談をいいながら、ころころと笑う。
小柄な少女の体が、そのたびに揺れた。
■渡辺慧 > 「むい」
遅れながら、見知らぬ女の子に、自ら汚した服の染みを吹いてもらっているという事実に、少し頬をかく。
……いい匂いもしたおかげか。気まずい、というより……。
しかしながら、その少女の、明るげな雰囲気もあってか。
いつもの調子を――それはいつも通りとまではいかないが――取戻し。
幾ばくかの逡巡の後、猫のように笑い、その冗談にかえす。
「コーヒーの方が選んだんだよ、俺の口に入るより、パーカーに飲んでもらいたいって」
そう言って笑いながら。
「…んー、っと。さんきゅー」
どことなく、その雰囲気は。
その少年の背丈からは出ないような、小さい動物、いや。
そう、猫だ。そんな雰囲気が。
■オーロラ > 「あはははは! じゃあ、しょうがないね。今日はコーヒーとは相性が悪いってことで」
楽しそうに笑いながら、顔をあげる。
少女の黒髪が揺れて、黒瞳が細まる。
歓喜を隠す事なく満面の笑みを少年に向けてから、身を離す。
夏花を思わせる香りが、少年の鼻先を掠めた。
「ん。よし、終わり。我ながら良い出来」
処置が早かったお陰で、染みは殆ど抜けていた。
少なくとも目立つことはない。
落下したコーヒーカップの後片付けてくれる店員さんにも笑顔でお礼を言いながら、最後にウィンクをしてまた一言。
「ミルクティーを追加で一つ。こっちの子にね」
■渡辺慧 > 「あ、すいませ……」
「……って、む」
店員に謝罪をしながら。
いつの間にか、注文されていたそれ。
普段はまるで飲まないから、馴染みがない。
けれども……コーヒーと、今日は相性が悪いならば、致し方ない。
「……ありがと」
少女の香りが鼻に残り。何でもない筈のそれが、妙にむず痒い。楽しげなその笑みを見ながら、何かのお返しとばかりに。
こちらも楽しそうに笑った。
「出張クリーニング屋さんだったりするのかな」
体の向きを、元々の位置に戻しながらも。
目線はそのまま。彼女の方へ、横目で。横顔で向きながら。
そんな冗談を飛ばす。
■オーロラ > その言葉に少女はくすりと微笑んで、テーブルの上で指を組み、そこに凭れ掛かりながら、小首を傾げる。
「じゃあ、そういう君は出張お茶のみ友達? それとも、素敵な詩人さん?」
上目遣いの黒瞳が、少年の瞳を見つめ返す。
目が合うたびに、嬉しそうにニヤァと笑う。
それこそ、猫が目を細めるように。
「私は出張美少女のオーロラ。出張お茶目さんの君はどなた?」
下から覗き込むように、顔をみて、そう尋ねる。
髪が揺れるたび、花の香が漂う。
■渡辺慧 > 「いえいえあっしは詩人なんて上等なものでもなければ」
「お茶飲み友達のようには落ち着きがない」
「ましてや自分で美少女と言ってしまう、美少女の隣にいるにはもったいない奴でして」
おかしげな口調。適当なセリフ。
決して大げさではない動作で、のんびりと。
その香りや、目が合うその笑いに。
シシシ。
いつもの、そんな笑い声。
いつも通り。それはきっといつも通り。
「しいていうならば」
「出張自由人の慧、で、どうかな。出張美少女のオーロラさんや」
下からのぞき込むその顔を、真っ直ぐと視線を返しながら。
その花の香りに、やはり。少しだけ、こそばゆくなりながら。
■オーロラ > 身振り手振り、その一挙手一投足に注視して、少女は彼の口上を聞く。
吟遊詩人の吟ずる夢物語を聞くように、にっこり笑いながらその語りを聞いて。
「あははははははは!」
最後に少年がそう締めくくったところで、少女は声をあげて笑った。
「どちらかというと、役者さんね。素敵な自由人の慧君」
ちょうど、そういったところでミルクティーのセットがカウンターに置かれる。
それを見届けて、また店員に一言お礼をいってから、少女は少年に向き直った。
「コーヒーがパーカーと駆け落ちしたってことは、好きでそうしたわけじゃないんだよね。駆け落ちを見過ごすほどの悩みでも持ってるのかな?」
■渡辺慧 > 「大根役者もいいとこだけれどもね」
そんな少女の様子に、ふと苦笑しながら。
なんせ、初対面の彼女に演技でもすべきところを見られてしまっていたのだから。
同じようにお礼を言って……また、彼女へ視線を移す。
自らのパーカーに今やほとんど確認できない染みの存在を思いながら。
「成就させてやりたかったものだけれども」
「生憎身分違いだったみたいで」
と。
そして、その身分違いの出会いにも気づけなかった程の、それは。
答えない、というのも簡単だ。
突き放す、それもまた、一期一会らしさもあるだろう。
だけれども。自らは、それを出来るほどの役者ではないのだ。
「んー…………。自由って、なんだろうな……とかね」
壮大な悩み。それに聞こえるかもしれない。
だけれども、それは、ひどく視野の狭い、自らの見える範囲しか見えていないゆえの、ぼんやりとした、そんなつぶやき。
これじゃ、相手も反応に困るだろうな、とでも思っているように。なんとなく、また。笑う。
――みずから自由人なんて、こたえときながら。
■オーロラ > 「それはまた哲学的な問いだね」
興味深そうにそう答えて、自分のコーヒーを少女は啜る。
砂糖もミルクもドバドバ追加されたもので、甘い香りが少年にも届くほど。
それでも、少女は美味しそうに目を細めて啜りながら、少年の話を聞く。
「自由人の慧君は、今自由じゃないのかな? 何かに、自由を奪われている?」
そう、考え込んで答えてから、ハッと気づいたように目を丸くして、口に手を当てながら、少年に向き直る。
そして、ちょっと困ったように眉を下げながら、また少年の顔を覗き込んだ。
「あ!? もしかして、私? だとしたらごめんなさい! ……でも、もうちょっとその自由は奪わせてくれると嬉しいな?」
そう、また小首を傾げながら。
■渡辺慧 > 急に、謝られたことに目を丸くする。
覗き込んでくる視線に、困った様子。
先程まで楽しげで……少しばかり不思議な雰囲気のある少女の見せたその等身大な様子に……笑った。
「違うよ」
「……いや。 んー……それがわかんないのか」
それは独り言のようで、誰かに応えるような声音ではなかった。
でも、やっぱり。
……これが自由を奪われる行為だったとしても。
あまり、嫌ではない自分がある。
「えっとね。………………むーずかしいからやーめた!」
それは気紛れで。気ままな。
先程までひどく悩んでいた様子を見せていた、それを。
あっさりと、放った。
「是非奪ってくれ。考え事してるより、そっちの方がよっぽど楽しそうだ」
そう言った後。
彼女の真似をするように、彼女の顔を覗き込むようにして。
笑った。
■オーロラ > 突然、悩みを放り投げてそういう少年の様を見れば。
少女は、また目を丸くして、暫く呆けたあと。
今度は、頬を少し赤く染めて、嬉しそうに、にっこりと微笑む。
猫のように、目を細めて。
ふいに、身を乗り出して、少年の顔を目前で見ながら。
嬉しそうに、少女は尋ねる。
「それは、デートのお誘いと受け取っていいのかしら? 素敵な自由人の慧くん?」
少し、悪戯っぽく笑いながら。
■渡辺慧 > もうすでに、覗き込むような体勢ではない。
あいもかわらず横目でその姿を見ながら、楽しげに笑い。
しかしながら、あまり考えていなかったデートという言葉に不思議そう、というか。
「デートっていうのか………」
微妙にしまらないのは、毎度の事であり、いつもの事。
「好きに受け取ってくれやい、素敵な美少女のオーロラ」
その言葉から。まぁしかし。
深い意味のある言葉でも。中身のある言葉でも。
ただ、その場の。適当な――。
だけれども、そういうのもおもしろいのかもしれない、等と。
そうやって、紅茶に口を付けた。
――滑らかな味が、ひどく。
この空気をも滑らかにした、そんな気分。
■オーロラ > その少年の曖昧な物言いもまた、面白そうに笑ってから、椅子に座りなおしてコーヒーを飲む。
にまにまと、含み笑いのような笑みを浮かべながら。
「ふふふ、じゃあ、デートってことにしておくね。好きに受け取っていいんでしょ? だーりん」
冗談めかしながらそういって、横目で見ながらそう言った。
平均的な身長である少年からみると大分小柄なその少女は、隣に並んでそう横目だけで見つめ合うと、かなり小さく見える。
また、ふわりと花の香が漂った。
「なるほど、自分が自由人を謳うからこそ、『そういう物言い』になるのかな?」
■渡辺慧 > 「なにがだーりんか」
まぁしかし。恐らく彼女とは、この空気感が、常であるのかもしれない。
ゆるく、軽く。余り、自分の物言いに、乗ってくれる、というのも珍しい。だからこそ、居心地もいいのだろう。
「なら、ゆっくりとお楽しみくださいな、お嬢様」
楽しませられるかは、毎度の事。碌な言葉を吐けない自分にはわからない所だけれども。
小柄な綺麗で不思議な少女と、自ら。
どこか、アンバランスさを感じながらも。その香りに身を任せて。
「どーかな。ずっとこんな調子だから、よくわからなくなってきたかもしれない」
付かず、離れず。言葉は浮き、どこに届くかもわからない。
無責任さは曖昧になり、曖昧になった言葉は……一応、彼女には届いているみたいだ。
意識的にやっていた時期もあった気がするが、今では、どうだろう。
「小さいね、君」
かと思うと、不躾、というか。
デリカシーのないような、そんな言葉も飛び出す始末。
■オーロラ > 「抱きしめやすそうでいいでしょ? だーりん」
むしろ自慢気に腰に手をあてて、身長にしては少し大きめの胸を張る。
気にした様子もなく、椅子を動かしてちょっと体を寄せる。
また、花の香が黒髪から香った。
「その気になったらいつでも抱き上げて浚っていってもいいんだよ? 私はきっと、その為に体が小さいんだと思うから」
楽しそうに。面白そうに。気安そうに。
少女は語る。少女は嘯く。少女は……笑う。
コロコロと表情を変えながら。
それでも全部、質の異なる笑みを浮かべながら。
「ま、少しベッド暮らしが長かったから、そのせいかもしれないけどね」
■渡辺慧 > 「人肌寂しくなったら頼らせてもらおうかな」
その……質の異なる笑みに気付きながら。
そして自らが、変なところに踏み入ってしまったことを、少々の悔やみを覚えながら。
かといって……それを。なんでもないかのように。
表情も、雰囲気も変えず。
線引。……それを、自由の為と言いながら。
「外。気持ちいいでしょ」
「暇だったら、それこそ一緒に外でも歩こうかね」
そう言って、また。
いつも通りに笑った。
だって――花の香りがするから。
■オーロラ > 「うん、気が向いたら。是非ともご利用ください。なんだったら、今だっていいんだよ?」
そういって、身体を向ければ、両手を広げて少年に突きだす。
上目遣いに、楽しそうに笑う。
少年の笑みに、応えるように、にっこりと。
「外は楽しいよ。気持ちがいいし、慧君みたいな素敵な自由人とデートも楽しめるからね」
冗談めかして、またそう嘯く。
「どこか、それこそ……浚ってくれるのかしら?」