2015/07/31 のログ
■浦松時子 > 宇宙の真理とか適当に言って困らせようとぢ多だけなのになぜか真剣な顔で考えている様子を見て思わず焦って
「あ、あの、冗談ですからね、あまり本気にされると困りますよ」
珍しく慌てて訂正しようとして
「もう、なんでこの子は変な所で真面目なんですか全く」
■霜月 零 > 「いや、ちょっと思う所があってな……」
少し真剣に考え込んでしまう。だって心当たりがあるのだ。
「真面目と言うか、微妙に心当たりがあるんだよ……」
■浦松時子 > どうやら大真面目な話のような気がしたので真顔になって。
「心当たり…ですか?」
麦茶を一口飲んで。
「どのような内容ですか?微力ですが何か分かるかもしれませんから」
若者の話を聞いてあげるのも年寄りの務めではある。
■霜月 零 > 「ん、あー……」
自身の異能『根源接続」は、かなり特殊な異能だ。
その能力の危険性は自分でも理解している。あまり軽々に話すわけにもいかないのだが……
「(まあ、恩義もあるしな……)」
信じるに足る相手、だとは思う。
「口外無用で頼むぞ?」
話してもいい相手ではあろう。だが、先に釘だけは刺しておくことにする。
■浦松時子 > 口外無用。
つまり本人にとってもかなり危険性がある内容であるという認識をする。
「わかりました、こう見えて口は堅いですよ、用心深くないと長生きできませんから」
適度な刺激と慎重さと臆病さ。
この3つが長生きの秘訣だ。
■霜月 零 > 「なら……」
少し目を閉じ、そして開く。
その瞳には、美しくも不気味な、青い輝きが宿っていた。
「最近、俺の異能が覚醒したっつーか、自覚してな……俺の異能は『根源接続』。この世の根源と言える場所に接続している先天的異能だ。
これはこれで、もしかして宇宙の真理ってやつと同じなのか、って考えちまってな……」
そんな瞳ではあるが、表情は少し困ったような、気だるげな表情。
いつも通りの霜月零である。
■浦松時子 > この世の根源…正直よくわからないがアカシックレコードとかの類だろうか。
少し考え込んで口を開く
「異能なんてものは指紋みたいな物です、全く同じ異能なんてまずあり得ません、まあぶっちゃけ言うなら…知らんがな」
にっこりとほほ笑み
「冗談は置いといて、目覚めたばかりの異能なんて訳分かんなくって当然なんですから少しずつ理解して出来ることを広げなさい、そうすれば宇宙の真理だってもしかしたらその手に収めるかも?」
■霜月 零 > 「どいつもこいつも、あっさり流してくれるよな」
苦笑して目を閉じ、また開く。いつも通りの黒い瞳に戻っている。
異能『根源接続』は、様々な方面で有用性とリスクが高い異能だ。
使いこなせばこの世全ての情報を獲得出来るどころか、干渉まで出来る様になれば世界改変すら思うがままの異能である。
そんなことする気は全くないし、現状の零ではできやしないのだが。
そこまで考えて自分で危険視しているのだが……もしかして大袈裟だったりするのだろうか。
「まあ、指紋っつーか個性みたいなもんだしな。長く付き合う事は確定してんだから、じっくりと理解していくしかねーってのはそうだろうよ」
苦笑しつつも頷く。
結局、それを制御しようとするならば詳しくならねばならぬのだ。
そうしなくては、いざ何かが発生したとき対処が出来ない。
■浦松時子 > 「そうでしょうね」
他人の異能なんてものは一発で理解できるものではない。
根源に関われるということだけを推測すると今の彼に制御は難しいだろう。
「そうそう、焦ってはいけません、あなたの異能、正直リターンもでかいけど、恐らくリスクも相当でかいはずです、ゆっくりとでいいから確実に使いこなせるようになりなさい」
本気で世界をどうこうされると困るし。
と小さくつぶやく。
■霜月 零 > 「正直、リスクはデカイな。なんせ下手に使うと根源に呑まれる」
根源の持つ情報量は莫大で、それは一個人に処理しきれるものではない。
よって、何も考えずに接続してしまうと廃人になる可能性まである……そんな異能なのである。
「だからまあ、結局のんびりと、時間をかけて使いこなす必要があるわけだな。
そのための修行もやってるところだ」
精神修養、空に近い無想の領域への到達。
……現状、非常に遠い道のりではあるのだが。
■浦松時子 > 「過ぎた力は身を亡ぼす、くれぐれもお気をつけて…」
過去にそういう人間を何人も見て来た身としては思わず心配になってしまい。
「あらあら、修行ですか、いいですね~若いですね~海ですか?山ですか?だけど妹さんに心配かけちゃだめですよ」
修行とか自分も昔やったなあ、と昔を思い出しつつ。
■霜月 零 > 「まあ、自室、か?」
とても面白味のない答えを返した。だって事実だし。
「身体修行よりは精神修行なもんでな。まだまだ結果は出てねぇけど、取り敢えず座禅組んだりして見てるところだ」
派手なもんじゃなくて悪かったな。と苦笑して肩を竦める。
■浦松時子 > 「自室とか…夏休みの宿題じゃないんですよ、滝に打たれたり、意味もなく大岩を転がして砕いてみたり、そんな面白おかしい修行をなんでしないんですか」
大きくため息をついて
「若いうちに面白い修行をしていると後々の糧になるんですよ、おれこんなバカ修業したんだぜーみたいな感じで女の子に受けるすべらない話を未来の彼女にしてやりたいと思わないんですか?」
■霜月 零 > 「思わねーよ、修行ってのは合理的にやるもんだろ」
溜息。面白修行なんて、派手さの割に効果が薄いものばかりじゃないか。意味もなくとか自分でも言ってるし。
「そんなすべらない話よりも、もっと普通の、日常的なだな……」
溜息交じりにそんなことを言う。まあ、そう言うすべらない話とやらをしても、軽く流される気がするというのもあるのだが。
■浦松時子 > 「あら、その辺ドライですね~」
最近の若い子は現実的だ、と思いつつ。
「普通の、日常的ねえ…どこかに遊びに行ったとか、そんな感じですか?」
しばし考えて。
「なら誰か誘って遊びに行けばいいじゃないですか、友達とかいないんですか?」
■霜月 零 > 「いるが。そりゃあいるが」
溜息交じりに。つい最近その友達と海の上を走ろうとした面白エピソードもある。
「遊びに行く、なぁ……何をしていいのかわからん」
それが本音だったりする。あまり誰かと遊びに行くという事をしたことがなくて勝手がわからないのだ。
武門の出であり、修行ばっかりしてきた弊害の一つであろう。
■浦松時子 > 本当にこの子は真面目すぎる。
それがいい所でもあるんだが…
「う~ん、この調子だと妹さんにも期待できそうにないですね~」
会ったことは無いが兄がこうでは妹も恐らく大差ないような箱入りだろう。
何とかアドバイスをと思いしばし考えて。
「う~ん、とりあえずは誰かを遊びに誘ってはどうですか?そうだ、こんなの貰ったんでした」
2枚映画のチケットを机に置いて。
「歓楽街の映画館のチケットです、私の好みじゃない映画だったからどうしようか困っていたんですよ、これ上げるからだれか誘いなさい」
内容はB級サメ映画「スペースジョーズ」
「あら、もうこんな時間…そろそろ帰らないといけませんね、またお会いしましょう」
そう言って伝票を持って店を出た。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から浦松時子さんが去りました。
■霜月 零 > 「あ、ああ……」
受け取って、それを見る。
スペースジョーズ。どう考えてもB級だ。
「これで誘え、ったって……」
相手はいるけど。相手はいるけど、これでどう誘えと。
「どーっすっかな、これ……」
溜息を吐きつつ、席を立つ。
取り敢えず、少し考えてみよう。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から霜月 零さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > (午後の店内。二人用のテーブルに座るヨキ。
涼やかな店内は夏休みの賑わいに溢れている。
そうして、パフェである。
若い学生ならばちょっと躊躇する値段の、大きなストロベリー・パフェである。
長身で顔色が悪くいかにも異邦人然とした男の前に、パフェが置かれているのである)
「………………、」
(普段どおりの『いかなる手段を以ってすれば効率よく人が殺せるか』などと考えていそうな真顔。
パフェを見下ろす瞳の金色だけが、いつもよりちょっと明るい――ように見える)
■ヨキ > (スプーンを手に取る。
異形の両手を、彼にしては珍しく恭しげに合わせる。
勝手知ったる者、目を丸くする者、取り立てて興味を見せない者、ヨキを目にした人びとの反応はさまざまだ。
ヨキは周囲からの視線をまったく意に介する様子もなく、ご神体のごとくパフェの前に一礼して、)
「………………、おめでとうございます」
「……ありがとうございます……」
(ほんの小声の、しかし低く通った独り言であった。
独りで何かを祝っているかのような――そんな具合で、黙々とパフェを食べ始める)
■ヨキ > (赤々としたイチゴを頬張り、山と乗った生クリームをたっぷりと口にして、それでいて静謐な一室で茶でも立てたような顔をしているのだから、どうにもそぐわない。
一口ずつゆっくりと、しみじみとした顔で、口いっぱいに広がる甘みを噛み締める)
「……やはり……作品が売れた後のデザートは格別だな……」
(ヨキの『作品』。
――つまりはそういう訳で、その真顔は決して人殺しでも茶人でもなく。
当人が今現在独り者であることは抜きにして、ある種子どもが嫁いだあとの、父親の顔なのだった。
一見しての作りだけは端正な頬が、頬張ったパフェで膨らんでいる)
ご案内:「カフェテラス「橘」」に奇神萱さんが現れました。
■奇神萱 > カラッと乾いた一日だった。
冷房のきいた建物はどこも満員だ。
図書館の片隅や授業のない空き教室を占領しようと企む学生も少なくない。
研究室を持ってる連中はそっちにこもりっきりだ。
こんな日に出歩いているのはよほどの物好きだろう。
俺は音をあげて退散してきた口だ。
すっかり汗だくになって、喉がカラカラになっていた。
さすがに混みあってるな。ウェイターを捕まえる前に席を確保しよう。
ぐるりと見回せば、どこかで見た顔があった。
近づいて、向かいの席に手をかけた。
「ここ、いいか?」
■ヨキ > (声を掛けられる。
ぐびり、と喉を鳴らしてパフェを飲み込む。
唇の端に残った生クリームを、獣めいて薄く、長い舌がぺろりと舐め取った。
見知った顔に、にいと笑う)
「――おや。奇神君、こんにちは。
どうやら君とは、デザートで縁が繋がっているようだな?
勿論だとも、どうぞ座りたまえ」
(向かいの席を勧めながら、またパフェを一口。
女子生徒がグループで姦しく食べるのが合いそうな、大きなグラスだ。
中身は既に、半分近く減っていた)
「あの日に比べれば、マシにはなったか?
……調子はいかがかね」
■奇神萱 > 「お邪魔さま。会うたびに何か食ってるな。今日のもうまそうだ」
ウェイターを捕まえてコーヒーフロートをオーダーした。
そんなに時間はかからないはずだ。
「あはは。この前は酷かったなぁ。ああ酷かった。見苦しいところを見せた」
「せっかくの酒を台無しにした。悪かったと思ってる」
「埋め合わせができればいいとも思ってた」
向かいの席に腰かける。ケースを傍らに置く。
「失くしたものは戻らないが、そんなに困ってもいない。不思議とな」
「憑き物が落ちたような気分だ。失くして見えたものもある」
「……この間も思ったんだが、デカイよな。アメ車みたいだ。どれくらいあるんだ?」
■ヨキ > 「うまいぞ。何しろ祝いの席だ。
ヨキの作ったランプが売れた。ヨキの工房を見た者から、家に置きたいと言われてな。
普段からうまいが、今日はまた格別にうまい」
(大きな口が裂けるように笑う。
奇神の言葉に、その傍らにあるヴァイオリンケースを一瞥して)
「――安心したよ。
あの日は、ヨキにとっても大きな一日だった。
あんな風に君らの――劇団の話を聴くとは思わなかったからな。
もともと台無しになるような酒じゃない。
ヨキとアルスマグナの杯は、その程度で欠けたりはせん」
(笑っていた口を閉じる。問答めいて、小首を傾げる)
「……そのヴァイオリンは、代わりの品か?
不死鳥の灰を払い落とすような風でも吹いたか」
(不意に身長について尋ねられると、自分の頭上を視線で仰ぐ)
「大体……2メートルといったところか。
上背の割に、身体が細いからな。枯れ木呼ばわりもよくあることだ。
どちらかといえば手足が長い。それこそ犬だ」
(テーブルの下から、ヒールの高いサンダルを履いた片足をひょいと上げてみせる。
夏らしく素足。肌は人間の色をして、しかし犬めいて踵のない、四本指だ)
■奇神萱 > 「一点モノを作ってるのか。工房ってことは、硝子か鉄の細工品かなんかかね」
「お前の仕事が好きだと言われて嬉しくないやつはいないさ」
「写真かなにか残ってないか?」
エミール・ガレの硝子工芸を思い浮かべる。キノコのランプとかそういうのだ。
「そんなところだ。仇みたいなやつにこいつを使えと押しつけられた」
「実際、悪くない品だ。認めるのは癪だが、道具を見る目はあったわけだ」
「俺は道具の力を信じてた。相棒を変えるだなんて考えたこともなかった」
「世界に二つとない仕事道具だった。いつも期待に応えつづけてくれる。そう思ってた」
「―――あいつに甘えて、寄りかかってることに気付いてなかった。今思い返しても恥ずかしい限りだ」
「俺にとっては……たとえば、パズルの一欠片だ」
「バラバラになったパズルを集めて、どうにか二つの島ができた」
「片方は過去で、もう片方は今ここにいる俺。これからのことだ」
「ピースはだいぶ行方不明になってて、かろうじて一欠片の細い遠浅でつながってる」
「そいつを取り上げられたら、俺はどうなる?」
「誰も見向きもしなくなると思ってた。杞憂だったよ。阿呆らしい」
コーヒーフロートが運ばれてくる。
ヴァニラアイスを細いスプーンでつついて沈めて、濁ったアイスコーヒーで喉を潤す。
「ドアの枠にぶつかりかねないレベルじゃないか。犬は犬でもハウンドだ」
「デカくてシャープで筋肉の塊で、シュッとしてるやつな」
「ところで、祝いの席だと言ってたな。音楽がないと寂しくないか?」
ケースから楽器を出して、席を立つ。
時々コンサートホール代わりに使われることもある店だ。
音響の効果を考えても、レイアウトはわりと理想形に近い。
ウェイターがこちらに気付いて環境音楽と止めてくれた。
サラサーテの『バスク奇想曲』から始めよう。
■ヨキ > 「そうだ。異能で金属が意のままになる――が、作品づくりにはそうしない。
純粋なヨキの手わざだ。それが認められた」
(写真か何か、と求められて、片手が服の中からスマートフォンを取り出す。
片手にスプーンを持ったまま、テーブルの上に置いて右手の指で操作する。
慣れた手つきで無数のサムネイルを滑らせて、ひとつの写真を奇神へ向ける)
「――これだ。錫で出来てる」
(壁に掛けられた、銀色のランプシェードの写真。
錫が滑らかに伸ばされ、曲げられ、ブーケのような花々を、鉄の細い支柱に絡む蔦を形づくっている。
全体的にロカイユ風の曲線を描いて垂れ下がり、電球を柔く包み込んでいる)
「……釈然としない話だな。
フェニーチェからヴァイオリンを奪うとは、」
(場所柄、その多くは口にしない)
「君はまったく詩人だな。それは戯曲か?
人の道具を……血肉を粗末にする者は報いを受ける。必ずな。
君のピースは、君だけのものだ。――残されたものは、手放すなよ」
(指先に摘んだスプーンで、アイスクリームと溶けて交じり合う生クリームを口にする。
さながら魔法の杖のように、くるりと一回し。
戯れに足を揺らめかし、テーブルの下に仕舞った)
「そう、猟犬というやつだ。この姿になる前は、ヨキは正しく犬だった。
――ほう?君の演奏か。高く付きそうだな」
(笑いながらも、制止はしない。
立ち上がる奇神の姿を、真っ直ぐに見遣る)
■奇神萱 > 「ああ。今でもよくわからないままだ」
「たぶんあれは…過去が追いついてきたのさ」
勉強をしに来てる客は…いないな。誰も彼も所在なげに飲み物をすすっている。
実に結構じゃないか。
弦の具合をたしかめて、音を出した途端に注目が集まった。
飾り気のない一礼をして、弓を落とす―――。
パブロ・サラサーテ作曲。『バスク奇想曲』。
10歳にして世を震撼させ、イザベル二世からストラディバリウスを下賜された天才の作品だ。
華麗なスタイルで知られた奏者の仕事らしく、雄渾で見せ場の多い曲だ。
ピチカートといえば右手を使うことが普通だが、この曲では左手のピチカートが登場する。
簡単に言えば、左手で弦を弾きながら右手の弓でも音を出す。そんなことができるのさ。
左手のピチカートはサラサーテと双璧をなす技巧派の大家、パガニーニが元祖だったと言われている。
身体が覚えこむまでどれだけ練習を重ねたかわからない。
抑揚のついた旋律に躍動感に満ちたピアノが追随する。
言語だけでなく音楽においてもバスク地方は独特の地位を占める。
優美なるアウレスク。勇壮なるエスパタ・ダンツァ。そしてソルツィーコ。
民謡から舞曲まで、この曲には故郷の音楽的土壌を愛した作曲家の愛が詰まっている。
高貴典雅の劇団を愛した男。かつての自分を知る古馴染みのような存在だ。
夜な夜な奇想の宴が開かれた劇場も今はなく、ただうだるような夏の太陽が照りつけるばかり。
ならばこの身は、陽光に満ちた白昼の世界にふさわしい音を奏でよう。
■ヨキ > (スプーンが小さく音を立てて、空になったグラスの中に残される。
それまでの朗らかさが嘘のように唇を引き結び、奇神の弓を見る)
「――――――……」
(軽やかにステップを踏む音が、大気のうちへ噴出するようだった。
背中の毛をぞるりと逆立てられたような感覚があって、左手が口元を覆うように頬杖を吐く)
「………………、」
(口元を覆った手が、唇を拭い、己が頬を掴むように力を込める。
それがヨキの知った音であることは、当人の顔からすぐに察せられるだろう。
耳から入った音が、頚椎を背骨を腰骨を骨盤を。
たちまちのうちに掴まれて、苦悶にも近い表情が奇神とそのヴァイオリンを遠く見る。
肺腑を絞って統御したような吐息が、ひどく細く、静かに吐き出される。
――音色に痴れる魔物の性質が、フェニーチェを愛した人間の思い出が、金の眼差しに昏い焔を沸き立たせる)