2015/10/01 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に茨森 譲莉さんが現れました。
茨森 譲莉 > アタシはカチャカチャ。とスプーンを鳴らす。

今日は特に何も無かった。

変な人と遭遇する事もなく、それに付随して変な声を出すような事も無く。
当然、空から女の子が降ってくるなんて事も無い。くあ、と小さく欠伸が漏れた。

この非日常に満ち溢れた常世学園でも、そんな日はある。
何事も無く学校に行き、何事も無く授業を受け、
何事も無くカフェテラスでコーヒーをティースプーンでかき回す。

そう、そんな日があってもいいのだ。
ミルクとコーヒーが十分に混ざってどちらでもない色になると、一口飲んだ。

アタシの口から、反射的に「ふぅ」と小さく息が漏れる。苦い。

茨森 譲莉 > 苦いコーヒーに怒りを込めて角砂糖を放り込み、再びティースプーンを回す。
はいはい、おいしくなぁれ、おいしくなぁれ……なんてキャラじゃないか。

久々にぼんやりと流れている静かな時間に、
アタシと砂糖はゆっくり、ゆっくりと溶けて、そして沈んで行く。

再びコーヒーを持ち上げると、口に含む。
適度な苦みと甘さと暖かさに思わず口が緩む。
天井を見上げると、天井の模様が目に入る。1、2、3、4―――。

………ああ、なんか寝そうだ。折角コーヒー飲んだのに。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に真乃 真さんが現れました。
真乃 真 > 「お客様、スーパーDXジャンボグレートロイヤルチョコレートパフェお持ちいたしました!!」

ラーメン屋のような声の大きさで五十センチほどもある巨大なパフェを持ってきたのは頭にバンダナのようにタオルを巻いた店員
もし店の常連ならこの店でみた事のない人物であることがわかるでろう。
それもそのはず彼は今日急病で入れなくなった知り合いの代わりに急遽入った助っ人だからである。

「凄いですねお客様!!、俺これ頼んでる人初めて見ました!」

感嘆を込めた声でそういう。
どこか別の席の人と勘違いしているのかもしれない。

茨森 譲莉 > 「……ん、ああ、どうも。」

思考が遥か彼方青垣山より高い所に飛んでいたアタシは、
あれ、なんか頼んだっけ、と思いながらもその店員に向けて手を挙げる。

半ボケの目は頭にタオルを巻いたラーメン屋の店員か何かにしか見えない男に行き、
そして彼の言葉と共に目の前のパフェに移った。

ああ、うん?……なんだろうなこれ。
アタシの目の前に映った、いや、あたしの視界を埋め尽くしたのは、
辛うじてその一部からパフェであると認識できる謎の物体だ。
―――当然、こんなものを頼んだ覚えは一切合財神に誓ってもない。

「あっ、ちょっ………。」

アタシははためくタオルを呼び止めるべく小さく抗議の声をあげた。

真乃 真 > 「どうされましたか?まさか!」

抗議の声は聞き入れられたようで男は厨房に走り急いで戻ってくる。
手にはなぜかホイップクリームのはいった絞り袋が握られていた。

「申し訳ありませんトッピングのクリームを忘れていました!!」

そう言うと机の上に置かれた山が白く染まる
その男の声の大きさとは裏腹に繊細な手つきでパフェは白いクリームで覆われた
男はやり切った顔で少女の方を見る。

茨森 譲莉 > 注文を確認に戻ったのかと安心したのもつかの間、
手にホイップクリームの袋を持って戻ってくるラーメン男。英語で言うとラーメンマン。
唯でさえ胸焼けのしそうなパフェの上に、さらに見事なクリームが乗せられていく。
見事冠雪したその女の子の夢の山は、アタシの目の前にさらなる威圧感で持って立ちふさがる。

「あ、いえ、その……。」

というか、そこで立っててどうするつもりだ、腕組んで立って、
一口食べておいしいって呟くのを待ってるラーメン屋の店員じゃあるまいし。
アタシは断固として食べないぞ。というか、食べれない。

「………これ、頼んでないんですけど。」

アタシはそう彼に死刑の宣告をする。
……いや、これ、背も高いけどどうみても値段も高そうだし。
どうぞ、後でスタッフで美味しくいただいてください。

真乃 真 > その宣言を受けた男は
顔に片手を当ててカッコいいポーズで言った。

「空耳だった!!」

ポーズを維持したままわなわなと震える。

「ど、どうしましょう。このままだと厨房の人に殺される…」

この注文が入ったと告げた時の厨房の人たちの驚きとそして喜びに満ちた顔が思い出される。
この隠しメニューができて以来注文した客はほとんどいなかった。
食べきれた者に至っては指の数で数えられるほどだ。

「もし良かったら一緒に食べていただけませんか!」 

このままでは食べきれなかった時のお金が請求されるだけでなく大変なことになる!

茨森 譲莉 > なんだそのポーズは。

常世学園の人は総じて変わった人間が多いとは思っていたけれど、
なんだかこう、このラーメン男はまたそれとは違った……。

一言でまとめるとすれば、なんというか、若干変な人らしい。
………よくこのカフェテラスはこのラーメン男を採用する気になったな。
いや、このカフェテラスではラーメンも出していたような気がする。
なんだか食べたくなって来た。これがステルスマーケティングの力か。

「それはご愁傷様で―――。」

アタシの口からは思わずため息が漏れる。
無駄に疲れたしコーヒー飲んで帰ろう、と思った所に、暑苦しい言葉が飛んでくる。
……実際には丁寧な言葉ではあるのだが、見た目とその大声だけで大分と印象が違う。

その心配してるらしい厨房まで聞こえてるんじゃ。
という心配はアタシがする事じゃないな、とスプーンを一応手に取る。

「……料金は?」

庶民のアタシにとって先ず気になるのはそこである。
というより、これをつき返そうとしたのもそもそも財布の心配からだ。
……タダなら食べても構わないかな、とも思う。

あと、一緒に食べるってこのラーメン男、仕事中にサボっててもいいのだろうか。

真乃 真 > ご愁傷さま その表情は一気に暗くなるなんなら縦に線が三本入ってるくらいだ
スプーンを手に取った瞬間表情が希望に満ち溢れたものになる。

「もちろん僕が出す!例え食べきれなくて罰金を払うことになろうとも!!」

食べきれば賞金が出るけれどもそれは別に言わない。
男はスプーンを手に取り少女の向かい側に座った。

「さあ始めようか!戦友!!」

完全に少女が食べてくれる前提の呼び方だった。

茨森 譲莉 > 「………ああ。」

もう秋も暮れ、そろそろ寒くなって来たし、
マフラーでも出そうかなと思って巻いて来たマフラーが切なげに揺れている。
そうだな、お前の出るような気温じゃないもんな。
はらり、とマフラーが床に落ちる。アタシは何気なく拾い上げて鞄に放り込んだ。

この暑苦しいラーメン男、どうやら戦友になってしまったらしい。
アタシは眉間に寄った皺を指の背で伸ばしながら、スプーンを構える。

抵抗は無駄、少なくとも金銭の心配はない。

「―――やってやろうじゃない。」

アタシはその女の子の夢の山を登頂するべく、スプーンを刺し入れた。
……しかし、鞄の中に胃薬は入ってただろうか。

真乃 真 > ふわり音もなくスプーンがクリームに付きささる

「畜生!誰がこんなにクリームを!全然減らない!!」

ふわふわとした甘さ控えめでいくらでも食べれそうなクリームは
チョコレートを覆い隠しまるで雪山のように厳しく立ちはだかる。

「味が変わらない…。」

細かく細かく飾られたクリームをスプーンで削る!削る!
頭の中ではこのクリームを盛った自分への憎しみが強くなっていた。