2015/10/14 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > 「……………ぅぁ」
大きく口を開けそうになりながら、漏れかけた欠伸をかみ殺す。
妙に、眠くなる季節だ。
人込みとは言い難い、少し空いた店内のカウンター席の端へ座っている。
外は、随分陽が落ちるのが早くなった。
寒さを目視できるわけでもないのに、空気が目に見えてつめたくなったように感じる。
そっと、右手を閉じて。また開く。
少し何かを確かめながら、また閉じて、開いた。
「……ん」
痛みはもうない。
■渡辺慧 > 意外に完治に時間がかかった。こんなことなら治癒の異能に頼ってもよかったと、もしかしたら、ただの意地っ張りだったかもしれないそれに嘆息する。
気が付けば10月の半ば。
ここへ来て、2年目もすでに半数が過ぎたようだ。
目の前に置かれたコーヒーへ、ミルクと砂糖を入れ、自由になった右手でゆらりゆらりとかき混ぜる。
ふ、と。
進路のことについて学生らしく思考を巡らした。
まだ早い、と言われるだろうし、遅いとも言われるだろう。
だが、この日々の流れる速さを考えればそう遅いものでもないし、早いものでもない。
自分はどうなるのだろうか。
いや、ある意味、最初から決めていることではある。
この常世の環境とはまるで無縁の、異能と自分を切り離した場所へ生活する。異能者として生きるつもりはなかった。
ゆらりと混ざりゆくコーヒーの白と黒が、今も尚、この常世に溶け込みそうになっている自分を表しているようでよくわからなくなる。
■渡辺慧 > まぁそもそも。
異能者として生きるのだって。
自分の異能が何かの社会的な成果を上げれるとは思っていない。
それが言い訳として機能するかどうかは別だが――。
――そういう意味では、他の……そう。
ここでいうCTFRAだろうか。それに則ったうえで、自分と似たような人たちはどうするのだろうか。
ここは、そう。常世学園は、異能者が、異能者として生きれる場所だ。
異邦人が、異邦人として生きれる場所。
ある意味で楽園であり、監獄ともいうのかもしれない。
仮に、外で異能者として生きれるとしても――それは、一握りだったりするのだろうか。
常世学園は、未来のモデル都市。
それは学園都市としてのモデル都市なのか、それとも、異能者の街としてのモデル都市なのか。
……まぁ、好意的に見れば、きっと。
受け入れるべき先を増やすという意味で、学園都市なのだろうけど。
やけに難しいことを考えている、と自分自身で大筋の離れた思考をしていると笑いながら、チラ、と店内を横目で見た。
――どうも、少し。……色々考えすぎて、疲れているような気もする。
誰かと話したいような、ただ、座して。
此処での卒業を待っていたいような。
横目で見る店内には一体何が映っているか。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に茨森 譲莉さんが現れました。
■茨森 譲莉 > カフェテラスは、相変わらず非常に込み合っている。
いや、恐らく先ほどまでは空いていたのだろう。
授業を終えた学生……といっても、全員が全員同じタイミングに終わるわけではないが。
それらは誘蛾灯に導かれるようにフラフラとカフェテラスに吸い込まれ、次々と席については
ピーチクパーチクと小鳥のさえずりを響かせはじめる。
それは目の前の人間にであったり、手元にある端末で繋がった誰かに対してであったり。
「……かんっぜんに、出遅れたわね。」
授業の後少しだけ教室に残っていたのが災いした。
恐らく授業の中では群を抜いて受講者の多い必修科目の後、
微妙に空いた小腹を満たす為にカフェテラスに入ったアタシは、ハァ、とため息をつく。
ふと、横目でアタシを、いや、横目で店内を眺めているのだろう。
そんな少年と目があった。………まぁ、あそこでいいか。
アタシはゆっくりと歩み寄ると、相席のお願いをする為に口を開いた。
「あのっ、あひっ……」
………しまった、噛んだ。顔がかぁっと熱くなるのを感じる。
目の前の少年はどんな顔をしているだろう。
■渡辺慧 > 誰か、と目が合った。
知らない誰かだ。思考自体は停止して、ただ眺めるだけの視線が捉えたその姿が、少しばかり思考を硬直させる。
近づいてくる姿に――まぁ、不躾だった、と捉えられたか。
果たしてそれは見る側からすれば間違っていないのだろうが、何を言われるのかに対しては停止した思考の上では浮かびもしない。
――が。
「……あひ」
「えっと。…………」
申し訳ない。申し訳ないが……思わず、顔を背け肩を震わせた。
笑い声が届いていないなら恐らくセーフであってほしい。
……。……自制心の元、その少女へ向き直ると。
「……えっと。うん。なにかな」
願いとしては、初対面からろくなイメージを植え付けないことだけだろう。
■茨森 譲莉 > こいつ、目を背けて肩を震わせてやがる。
目の前の白いパーカーの少年は、明らかに笑っていた。
声は聞こえないが、見れば分かる。声を殺して笑っている。
ほのかに熱くなっていた顔が火を噴くほどに赤くなる。
いや、逆にいっそこんな反応を返してくれたほうが気が楽でもあるのだが。
「えっほんッ!!!」
ワザとらしく咳払いをして、精一杯に見栄を張って笑顔を向ける。クソ、泣きたい。
なんでそんなファーストコンタクトをかました相手と相席しなきゃならないのか。
とはいえ、今更「やっぱりなんでもないです。」とも言い出しずらい。
なにかな?とか聞いてくれちゃってるし。
「相席してもいいかしら。……ちょっと出遅れちゃったみたいで。」
店内は電車が来たばかりの駅前の牛丼屋のように混みあっている。
他に相席出来そうな席もいくらでもあるが、
このパーカーの少年がぼんやりと店内を見ている時にたまたま目があったのだ。
ここは目と目の交わった時に感じてしまった運命とかそういうので諦めて頂こう。
■渡辺慧 > ワザとらしい咳払い。
この少女は恐らく、ある意味ノリがいいという人種なのかもしれない。
勿論、この場合は嬉しくないのだろうが。
それを認めると、早々と自制を諦め喉の奥で声を殺した笑い声を上げた。
改めてまわりを見渡すと、いつの間にかに増えた人込みに、少しだけ目を見開き驚きを示す。
「……おーや」
「……ん、どーぞ。生憎、こんなやつの隣でよければ」
そう言って、その少女に向き直っていた視線をカウンターの前へ向き直し……再び、のんびりとコーヒーをかき混ぜる。
いつのまにか、白と黒は完全に混じりあっていた。
折角の同乗、というわけでもないが。
先程までのよくわからない気分の延長戦にある物で。
ふと、ぼんやりと声をかけながら。
「出遅れたってことは。さっきまで講義か。……お疲れ様?」
■茨森 譲莉 > 「隣じゃなくて向かいがいいんだけど。」
初対面の女子相手にいきなり隣を薦めるとはどういう事か。
「こんなやつでよければ」なんてキザったらしい台詞を吐いてるあたり、
どうやらこの男、所謂「女ったらし」という奴なんじゃないだろうか。
向かいに置かれている彼の荷物を見て、それを無断で退けるのも申し訳ないか、と
その傍らに自分の荷物も置いて、白いパーカー少年の提案通り隣に腰掛ける事にする。
くるくると回りながら中間色に染まるコーヒーを横目にメニューを取り出すと、どうしようかと考えながら開く。
甘い物を食べる気分でもないが、男子生徒と相席だって言うのに
ガッツリ食べるのもなんとなく女子力に欠ける気がする。
「ああ、うん、必修科目のこれといって特徴の無い普通の勉強よ。
同じタイミングじゃないって事は、もしかして二年とか、三年生?」
ちょっと失礼な言葉使いだったかなと一瞬反省する心が膨らむが、
先の無礼な態度を思い返してすぐにしぼむ、因果応報、というやつだ。
………因果応報、の意味がそれであっていたかは、怪しいけれど。
■渡辺慧 > 色々と最初から台無しであるが。
もはや、この少女が話しかけてきた時点で、真面目ぶった思考も形無しであろう。
目の前に座ろうとする少女をぼんやりと眺めながら、くしりと。
先程でた欠伸の物によっての涙か。もしくは笑ったことによる涙か。
どちらとも判別しがたいそれを右手で拭った。
くるくると回す手を止めず――既にそれは解けきっているが。
ただの気分だ。
少女の躊躇したような、メニューの見方に、ひどく楽に。
それこそ猫のような顔で笑いながら。
「おかまいなくー」
と声をかける。これだけでは通じるものも通じないだろうが。
特に気にすることもなく――と、いうより。
自分自身が特に年齢差を気にした言葉遣いをした覚えがあまりないからこそ。
一応二年、と言葉をこぼし。
「特徴のないね。むしろ特徴のある勉強ってのも……なんだろ。実技?」
どれだけいこうがが勉強は勉強だ。
書いて聞いて覚え、そしてここでいうならば、実践する。
実践の形式にある種、特徴というものが出るのか、とちょっとした風に考え乍ら、まとめることもせずそのまま口に出した。
■茨森 譲莉 > 「おかまいなく」って、心でも読んでるんだろうか。
いや、口調のほうの事を言ったのか。紛らわしい。
毒食らわば皿まで、最初に噛んで大爆笑されてるのだ。今更何を恥らう。
店員を呼んでオムライスとサラダとコーヒーを頼む。
こう寒いとコーンスープも飲みたい気が―――……頼んだ。
ふぅ、と息をつくとメニューを置き、
先だしされたコーヒーに砂糖とミルクを入れて少年と同じようにかき回す。
「あっそ」と短く答えて、コーヒーを一口。
「この学校だと、専門科目も選択して取れるでしょ?
異能学とか、医学関係とか、実技もそうだし、魔術とかも……まぁ、色々あるみたいだけど、そういうの。
アタシはまだどうしたい、とかそういうのは無いからとりあえず取れるのは全部取ってるけど。
二年の今頃だともう進路とか考える時期でしょうし、自分の進路に合った授業を選んでるものなんじゃない?
……アナタは何か取ってないの?」
続いて運ばれてきたサラダを一口頬張る。
さりげなく取り皿を手に取って取り分けて、なんて事はせず。直で。
■渡辺慧 > 「夕食かな」
その頼まれたメニューの数を見ながら特に何を意図するわけでもなく。
ただ一つ思うとしては、何となく自分もオムライスを食べたくなった、ぐらいだろう。
飽きたのか、それとも。
不意に、その右手を止めて、ぼんやりとその分かりづらい渦を見遣る。
――そういえば、たまにぼんやりしすぎだと言われることもある気がしたが。
まぁ、今はいい。
進路関係の思考をしていただけにその質問は、いかにも、な質問だった。
なにしろ。決めていることはひとつで。
異能と魔術とは関係ないもの、だということだけだ。
「俺も、ある意味似たようなものだけどね」
濁したわけではない。二年の癖にのんびりしすぎ、とも言われるだろうか。
「ただ、そうだな。君が言うような、特徴の無い普通の勉強がメインで――」
そう一拍開けると、手元にあるコーヒーを口に運んで唇を湿らせ。
「後はまぁ。少しだけ異能関係、ぐらいかな」
後学の為ではなく。ただ、自分の異能を知るためのものでしかないが。
あ、単位は足りてるよ、一応。等と冗談めかして付け加えた。
その冗談は、割と。その直ぐ後に見えたサラダに対する「豪快……」の言葉に消えてしまったようにも思うが。
■茨森 譲莉 > 「………夕食よ。」
帰ってからは夜食しか食べないし、きっとこれは夕食だ。
夕方に食べる食事、だから夕食。何も問題は無い。
一瞬の間。何やらぼんやりしているらしい少年にも、
慣性に従ってぐるぐるとまわるコーヒーに目もくれず、運ばれてきたオムライスをパクパクと口に運ぶ。
何やらオムライスを見ている気がして、アタシは今度こそ取り皿に取り分けて「食べる?」と差し出した。
断じて、先の「夕食かな?」という言葉に、
最近少しばかり増加傾向にある体重の折れ線グラフを思い出したわけではない
「やっぱり大変なのね、ああ、別に気にしなくていいわよ。
……すごいです先輩、とか、言いたいわけじゃないし。」
一瞬間があったのは、そんな風に悩んでいるのを見せたくはなかったのだろう。
確かに、夢があるなら満面の笑みで返せるが、
悩んでいるならどうでもいいたまたま相席になった少女Aに進んで話したいとは思わない。
配慮の足りない質問だったなと反省しながら、そんなジョークを飛ばす。
どうやら、学生の悩みというのは異能学園であっても、普通の学園であっても大差ないらしい。
もちろん、アタシも将来的にはその悩みに直面する事になるのだろう。
異能や異邦人が存在する世界で、アタシになにが出来るのか。
それは、今はまだ分からないし、決めかねている事だ。
「異能関係って事は、アナタは異能者なの?」
以前「一々気にするのか」と聞き返された事のあるその質問。
聞くのを避けようとも思ったが、やっぱり気になるもので、
結局、出会う人出会う人すべてに聞いて回っている気がする。
豪快で悪かったわねとばかりにサラダをぱくついて、コーヒーを飲み干す。
……目の前のパーカー少年につられて頼んだが、ごはんを食べるにはやっぱり水のほうがいい。
水差しに手を伸ばして力を込めるが、体勢が悪かったのと水がなみなみと入っていたせいで持ち上がらなかった。