2016/05/24 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > いつも通りの平和なカフェテラス「橘」。
今日も多くの客が出入りを繰り返し、店員はスマイル満天で接客する。
穏やかな賑わいと親しみやすい香りに包まれていたこの場所に。

―――今、嵐が吹き荒れようとしていた。

久藤 嵯督 > ―――
かつ、かつ、かつ……

■女性店員T >「―――ッッ!」

いくつもの足音が飛び交う中、店員は一つだけ紛れ込んむ異音を聞き逃さなかった。
”ヤツ”を最後に目撃してからより数か月。
今まで姿を現すことが無かったあの男が、今日という日に再臨しようとしている。

落ち着け 落ち着け

心の中で繰り返し反芻する。
何も出来なかったあの時の自分とは違う。そうだ、見せつけてやれ。
あの傍迷惑な怪物がドン引きするほどのテクニックで、精神領域を征服せしめるのだ。

かつ、かつ、かつ……

足音が、近づいてきた―――

久藤 嵯督 > 「―――」

―――見つけた。
以前通っていた時と比べて、随分と楽な服装をしている。
ここに来る時は大抵風紀委員の制服か、見るからに暑そうなコートを着てくるものだったが故に。
……否、姿形が何だと言うのだ。
ヤツがどのような服装に身を包んでいようが、注文してくる品は決まっている。

ヤツがカウンターに到達する前に、先んじて持ち帰り用の弾倉《カップ》に最終兵器《リーサルウェポン》を仕込んでおく。
用意すべきは1ダース……いいや、待て。いつもより手荷物が少ない。
恐らくあれは、いつもより多めに持ち帰ろうという構えからくるものである。
2ダースのカップに装填―――完了。
念の為に弾倉をもう1ダース分用意して、値段を計算し始める。

久藤 嵯督 > ―――
■女性店員T >(嘘!?加速した……だと……!)

あのいやしんぼうめ、久しぶりにブツを受け取るものだから心が躍っているのか。
白金の髪を持つ男の足取りは、急に早くなっていく。
ちくしょう、計算が間に合わない!
どうやらぶっつけ本番で貨幣を受け取るしかない、ということか―――

男は、カウンターから1メートル離れた場所で歩みを止めた。
黒い刃のような眼が、こちらに真っ直ぐ突き刺さってくる。
それに負けじと、強く目を見開いて睨み返してみせた。

―――喧騒を越えて、風の音がだけが聞こえてくる。

久藤 嵯督 > 「―――!」

先に動いたのは、白金の男。
黒い上着を激しくはためかせながら、両手の指に挟んだ紙幣をこちらに投擲する。
紙幣を目視確認し、それが2ダース相当のものであることを理解する。
右手で紙幣を素早く受け取り、予測された次の行動に備える。
ヤツは必ず小銭を用いて、おつりがなるべく少なくなるように支払ってくる。
となると次の攻撃は当然、小銭の雨。
戦場に聞こえる銃声のように連続して、白金の男は小銭を支払ってくる。
数にして12枚……やれるか?いいや、やるしかない――!

久藤 嵯督 > ―――
■女性店員T >「―――ぁあッ!」

ターゲットマルチロック。弾速計算……了。
光の軌跡が見える。赤い光は右の手を、青い光は左手を完全守護へと導くのだ。
光をなぞるように指先を滑らせ、ひとつ、ふたつ、みっつよっついつつ……
そうしてついに、全ての支払いを防ぎ切ることに成功した。

これで、相手の攻撃《シハライ》は終わった。
ならば次は、こちらの番だ―――!

久藤 嵯督 > (―――来る!)

まず最初に、持ち帰り用の紙袋を投擲する。
いとも容易く受け止められてしまうが、本命は次だ。
カウンターの下に忍ばせておいた最終兵器を、流星群の如くお渡しする。

(ほぼ)対羅刹用の裏メニュー―――その名は『デスジュース』。
摂取すれば最後、体内を焼き尽くしてしまうとまで言われている業の結晶。タチバナの赤いマグマ。
それをヤツは、2ダースも注文しようというのだ。これをバケモノと言わずして何というか。

「……フッ」

紙袋片手に、飛来するデスジュースをもう片方の手で去なす。
デスジュースは吸い込まれるように紙袋の中へ落ちてゆく。

―――12発《ハイ》の、溶岩連弾《デスジュースマシンガン》を全て、ヤツは片手で防ぎ切ったのだ。

久藤 嵯督 > ―――
■女性店員T >(まだだッ!まだ終わっていないッ!)

すかさずおつりの硬貨を投擲するも、焼け石に水。
最小限の数に減らされた硬貨は、容易く受け止められてしまった……

■女性店員T >(戦い抜けた……けど、倒し切れなかった……!)

なんてザマだ。ヤツを倒すためだけに、自分は散々苦しい思いをしてきたというのに。
……泣くな、泣いては駄目だ。ここはカフェテラス「橘」で、私はそこで働くアルバイト。
お客様の前で、涙を見せるわけにはいかないのだ。

悔しさを振り払うかのように、白金の男をキッと睨み付けた。
あたりを静寂が支配して、しばらくの間睨み合いが続く。

久藤 嵯督 > 「………」

すっ

と白金の男は人差し指を上に立てて、こちらに突き出してきた。
何だ、何が言いたい?今ならどんな辱めを受けたって、悔しさがかき消してくれる。
もう、どうにでもなってしまえ―――

「―――Cセット、ドリンクはルイボスティー。アイスで頼む」

―――信じられなかった。今、ヤツは何と言った?

『―――Cセット、ドリンクはルイボスティー。アイスで頼む』

あの羅刹が、デスジュース以外の品を頼むだなんて。
まさか、私が生きている間に、こんな日が来てしまうだなんて。

「―――アンタの勝ちだ、名前も知らない店員さんよ」

不敵に微笑むと、男はセット分の料金を投げてよこした。
それを防いでレジスターに突っ込んだ時、男は既にカウンターに背を向けて、席を探し始めていた。

久藤 嵯督 > ―――
買った……のか、私は。
あの羅刹に、勝つことができたのか―――

■女性店員T >「うっ……うううう―――!」

体中から力が抜けて、三千里の旅路を得て両親との再会を果たしたかのような安らぎを得る。
駄目だ。とても、堪えきれない。
カウンターの裏に崩れ落ちた私は、他の店員に声をかけられるまでずっと慟哭した―――

久藤 嵯督 >  









 

久藤 嵯督 > 「一体何だったんだ、あの店員は……」

相手のノリに合わせてやってみたのはいいが……
正直ちょっと意味がわからない展開に巻き込まれてしまった。

だがまぁ、あれはあれでそれなりに楽しくやれたのでよしとしよう。

開いていた席に適当に座り、デスジュース入りの紙袋を隣の席に置く。
注文したCセットを待ちながら、貯めていた課題に手を付けていくのであった。

久藤 嵯督 > 印刷機のように課題を全て片付けた嵯督は、さっさと仕事に戻っていったという。
その後、ツインテールが特徴的な女性店員のスマイルがより明るいものになったそうな。

ちゃんちゃん

ご案内:「カフェテラス「橘」」から久藤 嵯督さんが去りました。