2016/06/01 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に鮫汰さんが現れました。
■鮫汰 > 誰も座っていないテーブルに、店員がバーガーセットを持ってきました。
カリカリあつあつに仕上げられたポテトのかご、ビタミンカラーが眩しいフルーツジュースのグラス。
紙に包まれたバーガーからは、声が聞こえます。
「ありがとねー、てんいんちゃん」
バーガーが喋ってます。
■鮫汰 > いいえ、バーガーが喋ったのではありません。
正確に表現するならば。バーガーに挟まった何かがしゃべっているのです。
パンズを突き破る三角の背ヒレは、まさしく鮫そのもの。
茶色の焦げ目が食欲をそそるスパムミートと、レタスの間にはさまっている何か……。
「おべんきょうしながらカフェテラス!これぞがくせいのだいごみってもんよ!」
バーガー状態のままではお勉強が出来ないので、謎のなにかは先に食事をとることにしました。
丸い鮫のような生物――鮫汰は、スパムバーガーをおいしそうに頬張ります。
■鮫汰 > 2口でバーガーを飲み込むと、鮫汰はトレーからテーブルに降りて、ノートと鉛筆を吐き出しました。
ちゃんと授業に出てたらしく、なんだか見づらいみみずのようなものがのたくったノートを開き、ほこらしげに息をつきます。
たしかこのノートは、初歩的な魔術の教えを書いたもの。
先生の困惑もぶっちぎり、一番前の机で鉛筆をガリガリ鳴らしまくった授業ノートです。
これでもう、テストは余裕ってもんです。
「すげえ。これもうわかんねえな」
しかし残念なことに、鮫汰にみみず文字は解読できませんでした…。
■鮫汰 > たとえ自分で書いたとしても、みみず文字はみみず文字です。
数時間前の自分は過去の自分。つまり他人なのです。
「ええ、このノートだれがやったの?どないしょう……」
ポテトにひれを伸ばし、香ばしい塩味を口いっぱいに詰め込みます。
ヤケ食いみたいなものです。
■鮫汰 > 「エンピツ、ちゃんとけずらなかったのがわるかったかな……??」
道具に責任をなすりつけ、頷きます。
そうだ、筆記用具が悪いんだ。そうに違いない。
次からはB5の鉛筆と、下敷きを使ってノートをとってみよう。鮫汰はそう決心しました。
「じゅぎょーのふくしゅうはおわったわけよ」
ノートを口の中に戻して、ホッチキスで留められた紙を吐き直します。
どうやら宿題ってやつですね。とても簡単な穴埋め問題です。
■鮫汰 > 鮫汰は鉛筆をれる~んと舐め、名前を記入するかしょに取り掛かりました。
その作業、時間にしておよそ15分。
「ちぬた」とひらがなで書かれた生徒名記入欄が出来上がりました。
鮫汰はもう大満足です。用紙のすみずみまで眺め、深い頷きと真理を一つ理解したような眼でそれをしまいこみます。
宿題はいっさい完成していません。
■鮫汰 > 幸いなのは、その宿題が翌日提出ではないことでしょうか。
ポテトを食べ終わった鮫汰は、フルーツジュースでのどを潤しにかかります。
グラスを抱えのけぞり気味にストローを咥える姿は、芸術パワーの足りないオブジェクトのような曲線美を描いていました。
フルーツジュース美味しいですね。良かったね。
■鮫汰 > バーガーセットを美味しく頂いた鮫汰は、最後におしぼりで丁寧に体を拭きました。
そして、近場を通った店員さんへ素早くヒレをあげてアピールします。
「てんいんちゃん、おかんじょうどこ!」
それから、身体に昆布を巻いてもらえないかとまったく関係の無いお願いもつけたしました。
■鮫汰 > 鮫汰は自分の持ち物を全て飲み込むと、ふよふよと宙を泳ぎながら会計まで案内されます。
ちゃんとお金を持っているのが生意気すぎますが、無事に代金を支払えたようです。
さらに、暇な時間帯だったのか、店員さんは鮫汰の要望に応えてくれました。
2分後。昆布にぐるぐる巻きにされた鮫汰が、店の前にそっと転がされたのです…。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から鮫汰さんが去りました。