2016/08/28 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にマリアさんが現れました。
マリア > 夏休みも終盤だが,まだ授業が始まらない学校のカフェはあまり人が集まっていない。
昼時を外していることもあり,ざっと店内を見渡しても,片手で数えられるほどだろう。

「……また,お仕事探さないと。」

窓際の席で小さくため息を吐く少女の前には,サンドイッチに小さなサラダという質素な昼食。
まだ蓄えはあるが,寮に入れない以上,仕事がなければ住む場所も確保できない。

ご案内:「カフェテラス「橘」」にクローデットさんが現れました。
クローデット > あまり良い傾向ではないのだが…最近は、ハウスキーパーの休日には、クローデットは目に見えて外食を増やしていた。
特にティータイム。丁寧にお茶を淹れる気にはならないのだ。
理由は簡単で、先日の「実験」の後始末が非常に頭と気力を消耗させるのである。
そうして街を歩くと、外の店のお茶の質の良し悪しもある程度分かるようになってきた。

そして…このカフェテラスのお茶は、存外悪くない。
学生街という立地上、クローデットにとっては足の運びやすさもあって有難かった。

そうして、店内に入ると………

「………あら」

目に見えて疲れた表情をしていたクローデットの瞳に、鮮やかな悪意が宿る。
…しかし、それが見えたのは一瞬。すぐに、艶のある微笑を顔に貼り付けて。

「…こんにちは。相席よろしいですか?」

そう…先日追い詰めた「バケモノ」のテーブルに近づいて、声をかけた。

マリア > ため息交じりに窓の外を見つめていたマリアだが,
聞き覚えのある声が聞こえれば,視線を,そちらへ向ける。

「………あ……。」

様々な感情が織り交ざり,声が漏れる。
今すぐにここから逃げ出したいとさえ思ったが,出口側に立っているのも相手だ。それは叶わない。

「えぇ,構いませんわ…。」

貴方を見上げる視線には,焦燥と困惑。
けれどどこかに友達としての貴女を期待しているのか,マリアは努めて笑って見せた。

クローデット > 「ありがとうございます」

そう言って柔和な笑みを浮かべると、向かい合う席に腰掛ける。
それから、店員を呼ぶと、紅茶と焼き菓子のセットを頼んだ。

「…今、お食事ですか?」

目の前の相手と「公安委員」以外の顔で会うのは、これが初めてになるだろうか。
たおやかな物腰と、それに伴う日常に溶け込んだ言葉は、先日の「死刑宣告」が嘘のようですらあった。

…あくまで、今のところは、だが。

マリア > 貴女の柔らかい笑みや,声。
それが偽りのものだったとしても,一時の安心を与えるには十分だった。

「えぇ…人が多い時間は,ちょっとまだ苦手ですから。」

同様にマリアも柔らかく笑み,貴女の問いに答える。
貴女の注文を聞けば,少し迷ってから自分も食後に紅茶を,と追加する。

「…………あの日以来,ですね。」

恐る恐る,口を開く。何かを言わなくてはいけないような気がしたから。

クローデット > 「そうですか…
しかし、ここのお茶は悪くありませんから、混雑に急かされずにゆったりと過ごせる時間を選ぶのは悪くないでしょうね」

そう言って笑みかけるが…相手が自ら「あの日」のことを引き合いに出せば、驚いたように瞬きを数回。
…そして、その後に漏れたのは、息だけのかすかな笑声。

「…ええ、あの日以来、ですわね。
あの後、どちらにいらしたのですか?」

あの部屋を引き払った事は、その件で叱責を受けているクローデットならば知っていて当然、ではあるが、世間話と取れなくもない程度の口調だ。
その表情にも、口調にも、詰問の色はない。

マリア > 貴女の言葉に小さく頷いて,
「この島では大丈夫だとわかっているのですが…
 …以前は人前に出ることさえ,できませんでしたから。」
どことなく寂しげに,窓の外を見た。過去を思ってか,それとも貴女と目を合わせられなかったか,

「…お店のみんなには合わせる顔もなくて,ふらふらとさまよっていたのですけれど,
 椿丸先生に口利きしていただいて,住み込みで働かせていただいておりました。」

椿丸という教員がかかわっていることも,運送業というマリアには不似合いな業種だったことも,公安の目から逃れられた理由だろう。
貴女の表情や口調が“公安委員”としてのそれでなかったからこそ,マリアは全てを,まるで友人に語るかのように告げた。

クローデット > 「…以前は、大変でしたのね」

気遣わしげに、目を伏せる。
もっとも、先日の「死刑宣告」の際に察していた事ではあった。
よほどの事情がなければ、目の前の人物がこの姿をしているわけはないのだ、と。

「あら、先生にお仕事を紹介されておりましたの?
それでしたら、公安委員(あたくしたち)に咎められる事のないお仕事でしょうから、続けていただいて問題はありませんわね。

………シュピリシルド様がより昏い場所に堕ちていらっしゃらなくて、何よりでした」

そう言って、柔らかく笑む。
事情が事情なだけに「公安委員」としての側面を見せない事もないが、少なくともマリアがよりダークサイドに向かっていなかった事には、純粋に安堵しているように見える。
今の振る舞いから悪意を感じ取るのは、難しいだろう。

マリア > 「こんな目をして生まれてしまったものですから…
 …なんて!こんな話はいいんです,終わったことですから。」

ひらひらと手を振って,この話題を区切ろうとする。
貴女なら理解してくれるだろうという期待もあったが,それをひけらかすのも,あまり気乗りがしない。

「そうかもしれませんわ…運送のお仕事でしたから。
 けれど,そのお仕事も終わってしまいましたし…これからどうしようか,悩んでいたところです。

 ……すみません,あの時も私の身を気遣ってくださったのに,心配ばかりかけてしまって。」

貴女の表情,貴女が見せた安堵の色,マリアはそれを信じたかったのだろう。
悪意の全くない,どこか無邪気でさえある笑みで,貴女を見た。

クローデット > 「………そうですか」

血のような赤い瞳。この世界でも、《大変容》以前はほとんど存在しなかったものだ。
今となってはそうでもないが、「彼」の故郷ではより恐れられたのだろう。
相手が話題を区切ろうとすれば、それを静かに受け入れて頷いた。
それから、運ばれていた紅茶に口をつける。

「…ああ、なるほど…それで」

マリアの境遇を聞き、彼の目の前にある質素な「食事」を改めて確認する。
フランス人たるクローデットにとっては、あんまりにあんまりな光景と映った。

「いいえ…生徒に表の道を歩ませるのも、委員会の務めですから。
………シュピリシルド様の境遇でしたら、「再教育」の過程に仕事を求める窓口の案内も含まれているはずですけれど」

ティーカップを再びソーサーの上に戻してから、品のある微笑でそう告げる。

一応今は勤務外だが、クローデットにとっての最優先職務対象が目の前にいるわけで。
この程度なら、職権の濫用というほどでもないし、寧ろ勤務外だからと逃すと後が面倒そうだった。

マリア > ほとんど食べ終わっていた昼食。
それを見るクローデットの視線から,憐憫の情を読み取ることは容易だった。

「お恥ずかしい限りです……。」

苦笑を浮かべ,サンドイッチの最後のひとかけらを頬張る。
小さく息を吐いて…それから,

「ルナン様,私はまだ…その,貴女を前にしてこう言うのも失礼なのですが,
 その“委員会”のことが,信用できていないんです。」

躊躇しつつ,けれど,その言葉ははっきりと告げられる。

「……あの店のみんなは無事ですか?」

用心棒としての責務を果たすこともなく,見捨てることになってしまったかつての“同僚”たち。
顔を合わせることはできないが,どうなったのか心配ではあった。
……そしてそれは,クローデットの語る“再教育”を信頼すべきかどうかの見定めでもあったのかもしれない。

クローデット > 「恥ずべきはそこまでの倹約を要求してしまうこの環境でしょう?
シュピリシルド様にそこまで大きな非があると、あたくしは考えませんが。

………お一つ、いかがです?」

焼き菓子のセットの皿をマリアの方に少しだけ押し出す。
それから、自分もクッキーを一枚摘んで口に運んだ。
事実、異邦人が「自己責任」だけで放り出されたら苦しくて当たり前だろうという程度のことはクローデットでも容易に想像がつくのだ。
「どうすべきか」で、考えがこの学園都市と正反対の方向を向いているだけで。

「………「再教育」自体は公安委員会(あたくしたち)ではなく風紀委員会の管轄ですので、詳しくは存じ上げません。
ですが、シュピリシルド様が順調に学業を為されて…卒業なさる頃合いには、よほどの事がなければ、また外でお会い出来るのではないでしょうか。
「再教育」の態度次第では、卒業前にお会い出来るかもしれませんわね」

実際のところ、この学園で何が起こるか…そもそも、マリアが「堕ち」ずに済むかどうかも未知数だし、そのままにしておくつもりはないが。
順当に量刑を判断するならばそんなものだろう、という推測自体には偽りは含めていない。

マリア > 「そう言っていただけるのは嬉しいのですが……私がいけないんです。
 …私はルナン様のように強くありませんし,臆病ですから。」

マリアは,表の世界で生きてきたことがない。
こうして誰もが訪れることのできるカフェを利用するのだって,ずっと躊躇っていたのだ。
裏の世界,落第街や歓楽街に身をゆだねていた方が,ずっと気が楽だった。
……そこでなら,かつての“シュピリシルド家の魔女”と同じで居られたから。

「……そうですか。そうですわね。
 いえ,無事ならば会えなくても良いのですわ…合わせる顔も,ありませんし。」

苦笑を浮かべてから,いただきます…と小さく頭を下げ,クッキーを1枚手に取った。

「……ルナン様には正直に申し上げます。
 私は,ずっと外の世界に憧れていましたけれど…いざ外に出てみると,何もできないと分かったんです。
 椿丸先生に紹介していただいた仕事でも,私は迷惑をかけてばかりで…。」

マリアは,貴女をまっすぐ見てそうとだけ話し,クッキーを頬張った。
……社会経験が,圧倒的に不足している。
社会から排斥されたマリアがこれまでに歩んできた道がどのようなものか,貴女なら想像できるだろう。

クローデット > 「マリア様の郷里の事は存じ上げませんけれど…強くもなく、臆病な存在を支えるための存在、というのがこの世界の、統治のあるべき形ですもの。

…最初から強い者などおりません。知識を、技術を、心を積み上げた先に「力」があるのですから」

そう言って笑むクローデットの笑みは、攻撃性には乏しいものの、はっきりと不敵さがあった。
幼い頃から、「魔術師」として知識と技術を積み上げて。そして、「魔女」として心を武装する術を得て。
クローデットという人間は、その末に出来上がっている。

「…まあ、その方がお互いのためでしょう。
外に出てきた暁には、彼らはまた別の生き方をしなければなりませんから」

会う気がないというマリアの言葉を、柔らかく認めて。
ただし、そこにあるのは別の意味で厳しい現実だった。
それでも、クッキーを手に取るマリアには、「どうぞ」と優しく微笑みかけて。

「………そうですか…」

マリアの心情の吐露を、そう受け止めると、一旦紅茶を一口。

「…やはり、シュピリシルド様は一度委員会街に赴かれるべきですわね。
「再教育」もそうですけれど…生活委員会の窓口に行けば、生活支援の手続きも出来ますし。その中には、職業訓練のようなものもあるはずですから」

「管轄外ですので、詳しくは存じ上げませんけれど」と留保はしつつも、委員会街への出頭を促す。
…が、ティーカップを置いて、改めてマリアの方を見る。
その瞳は、どこか楽しげだった。

「…ところで、当座のお金にお困りでしたら短期のお仕事があるのですけれど。
今度、一緒に参加いたしませんか?

最近室内でモニターを見てばかりですので、気分転換がしたいと思っておりましたの」

マリア > 「……ルナン様は,そうしてずっと,努力し続けてきたのですね。」

到底かなわない,そんな,諦めにも似た感情とともに苦笑が漏れた。
自分の運命を呪い,そして与えられた力にすがって生きてきた自分では,決して越えられない壁。

「……委員会街へ,ですか。
 以前も,図書館でお会いした方にそう勧められましたけれど……。」

それさえも躊躇してしまうのは,マリアの弱さなのだろう。
生まれ落ちて以来運命に振り回され続けた,自分を変えようと努力した経験のない哀れな“少年”。
踏み出すことのできない歯がゆさが,マリアの表情を曇らせる。

「………短期の,お仕事?」

が,もう1つの提案については,少し前向きに考えることができた。
それは数少ない知り合いである貴女が“一緒に参加”するからなのだが,

「私では足手まといになってしまうかと思いますが……どのようなお仕事なのです?」

クローデット > 「興味を持てる事であれば、努力もさほど苦にはなりませんわ」

にっこりと、花が綻ぶような笑みを向ける。
そう、クローデットはここまでの「魔女」となったのは、使命感も大きいが、魔術を学ぶ楽しみがあってこそなのだ。

「正規の学生証を持っていらっしゃるのですから、堂々と赴けば良いのですわ。
何か不安要素がおありでしたら、あたくしで良ければ助力いたしますし」

目の前の「彼」が、正道を歩く事に慣れていないのは今までの会話の内容からも明らかだった。
「再教育」まで誘導しない事にはクローデットの委員としての職務にも差し支えるし、多少の助力は惜しまないつもりでいる。
………何より、まだクローデットは委員会に対して「秘密」を握っているのだから。

それでも、短期の仕事に食いつくマリアに対しては

「夏の間だけ調査が出来る遺跡の、内部で巣食うモンスターの駆除と遺跡の修復です。
一日拘束されてしまいますけれど割は悪くありませんし、成果によってはボーナスも出るそうです。
あたくしが遺跡の修復をいたしますから、シュピリシルド様にはモンスターの駆除をお願い出来ればと思うのですが…いかがです?」

と、にこやかに説明をした。
…もっとも、学園地区では結構あちこちで掲示を見るものなので、マリアがちゃんと表の街に溶け込めているなら、既に知っていても不思議ではない情報ではあるが。

マリア > 「興味を持てること……ですか。
 私も外の世界への憧れは,ずっとありましたけれど…。」

それを努力と結びつけるには至っていない。
……そもそも,憧れという言葉は自分が到達できないという前提があってのものだった。
だからこそ,こうして困惑しているのだ。

「………そうですね。
 いえ,ルナン様の手を煩わせるほどのことではありませんわ。私がどうにかすべき話ですから。」

申し訳なさそうに視線を下げて,それから,小さく頷いた。クローデットとの仕事が終われば,委員会街へ顔を出そう,と。

「……そういう仕事なら,私でもお手伝いできそうですわね。
 ルナン様には経験でも力でも及びませんけれど……こんな私でよろしいのでしたら。」

どうやら知らなかったらしい。
聞かされた内容から判断して,マリアはその仕事を受けることに決めた。

クローデット > 「…憧れの中に急に放り込まれても、何をすべきかは判断に困るかもしれませんわね」

困惑の表情のマリアを見て、くすりと柔らかく笑む。

「…もし表で居場所を得たいのであれば、「社会がどう回っているか」を、注意深く見て回るとよろしいかと存じますわ」

その上で、努力と結びつけるヒントまで与えてやった。

「………あら、そうですか…。
委員としては、あたくしが関われた方が都合が良かったのですけれど」

「残念ですが、シュピリシルド様の意向を尊重いたしますわ」と、くすくすと笑った。
マリアが「再教育」に辿り着いたとして、それがクローデットの誘導であるかないかは、クローデットのこの後に関わるのだ。
…まあ、表情から、大して気にしていない様子なのは伺えるだろうが。

「お引き受け頂いて、感謝いたしますわ。
遺跡の中ではほぼ2人きりで動く事になってしまいますけれど…船での移動なども含めて、シュピリシルド様の社会勉強の一助となれば幸いです」

マリアが承諾の意を返せば、クローデットは晴れやかな笑みを浮かべた。

マリア > 「表で居場所を……きっと私は,それをあきらめてしまっているのでしょうね。
 ……ご助言に感謝いたします。すぐには,変われないかもしれませんが。」

申し訳なさそうに目を伏せて…しかし,続けられた言葉に視線を上げる。
貴女の委員としての都合までは知り及ぶわけもないが,マリアとしてもクローデットがいるかいないかの違いは大きい。
今この瞬間は,居てほしいとさえ思ってしまっていた。

「…ルナン様に都合が良いのでしたら,仕事が終わってから同行させていただいてもかまいませんし…。
 あ,でも,きっと2,3日は動けなくなってしまうと思いますので,余計にご迷惑をおかけしてしまうかも……。」

「ご迷惑になるようでしたら,捨て置いていただいて大丈夫ですので。」

貴女の笑みに,マリアも笑みを返す。
その笑みは貴女に畏怖に近い感情を抱きつつも,貴女を信頼し始めている複雑な感情の表出だった。

クローデット > 「そのお年まで縛られていたら、すぐに変えるのは難しいでしょうね…
少しずつ…他の方の手を借りながら、前に進まれると良いと思いますわ」

そう、にこやかにマリアの視線に応えるクローデットは、純粋にマリアの成長を応援する意思を感じさせる事だろう。
…もっとも、それがいつまで表にあり続けるかは、マリアのこの後の「成長」の中身次第になるのだが。

「ええ…しばらく仕事は詰められておりませんので、特に差し支えはございませんわ。
………しかし…シュピリシルド様は、それほどまでに反動の大きい力を使われますの?」

驚いたように、目を瞬かせる。
2、3日も動けなくなるとは相当だ。恐らく、マリアは「前職」でも、その役割を果たした事はほとんどなかったに違いない。

「あら…あたくしが誘ったのですから、最後まで面倒は見させていただきますわ。
あたくし、白魔術を得意としておりますから、治癒も慣れておりますのよ?」

「捨て置いて構わない」というマリアの言葉には、そう言っておかしそうに笑みを零す。
普通に考えれば良心の表出だが、クローデットの表情からすると力の誇示、という側面もあるだろう。

マリア > 「……ありがとうございます,ルナン様。」

強制するでもなく,優しく笑んで背中を押してくれる貴女の言葉は,
今のマリアにとっては心強いものだったに違いない。貴女への感情は,わずかながら変化しつつあった。

「無理をしなければ大丈夫なのですが…任された以上,ルナン様を危険な目に遭わせるわけにはいきません。
 ……できるだけ,お手を煩わせずに済むよう努力しますね。」

できるだけ,と,言外に,万が一のときは頼ってしまうかもしれないという自身の限界を伝えておく。
クローデットの意図には気づいていないだろうが,結果としてその意図は達せられることになるだろう。

クローデット > 「困っている後輩を助けるのも、先輩の務めでしょう?
あたくしは委員会に所属しておりますから、尚更ですわ」

マリアに素直に礼を言われれば、そう言って謙遜する。
口元には、品の良い笑み。

「…今回は単発なので問題ありませんけれど、表の仕事で安定したものは、「続けられる」事が重要な意味を持ちますわ。
「動き続ける」ための加減も、考えておいて下さいね。
…あたくしのためではなく、シュピリシルド様ご自身のために」

「いざとなれば、助力は惜しみませんけれど」と、優しげに笑む。
…その裏で、クローデットがマリアの「力」の情報収集を目論んでいるなど、マリアには分からないだろう。

「…さて…それでは、休憩も済みましたし、あたくしは研究の解析に戻りましょう。
久々にお話し出来て、安心いたしましたわ」

いつの間にやら、紅茶も焼き菓子も綺麗に平らげて。
そうして立ち上がると、ポシェットからいつぞやのメモパッドを取り出し、一枚めくりとる。
そこに浮かび上がってきたのは、日時と場所…恐らく、「仕事」の待ち合わせだろう。

「こちらが、「仕事」の日取りです…よろしくお願いいたしますわね」

そう言って、品のある笑みを浮かべながら日時と場所の書かれたメモパッドを差し出すと…それを引く手の動きに合わせて、スムーズにマリアの伝票をかすめ取る。

「…それでは、また」

2人分の伝票を手に、最後に少しだけ不穏な艶のある微笑をマリアに向けると、会計を済ませてカフェテラスを立ち去るのだった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からクローデットさんが去りました。
マリア > 待ち合わせ時間のメモ,その内容を決して忘れないよう頭に叩き込む。
けれど,その返す手で伝票を持っていかれるのは予想外で…

「あ,ちょっと待ってください…!」

慌てて立ち上がって,マリアも貴女の後を追った。
きっと結局なにもできずに言いくるめられるのだろうけれど。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からマリアさんが去りました。