2016/10/07 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 放課後。ティータイムにはやや遅いが、夕飯には早過ぎる…というくらいの時間。
蘭は、少し疲れた表情で店に入ってくる。
「こんにちは…」
それから、窓際の空いたテーブルに、糸が切れたようにすとん、と腰を下ろす。
時々暑さがぶり返すものの、蘭にとってまずいのは暑さより日差しそのものなので、この時期ならば窓際に座ってもそこまで問題はないのだ。
寧ろ、疲れた神経に日差しの優しさ、暖かみが沁みて心地よくすら感じられた。
■美澄 蘭 > メニューを適当に確認して、すぐに店員を呼ぶ。
「すみません…アールグレイにミルクをつけて…あ、ホットで大丈夫です、あと、焼き菓子のセットをお願いします」
そう注文をして…店員が背を向けて割とすぐにブリーフケースから取り出すのは、楽譜だ。
その楽譜を広げると、携帯端末のイヤホンジャックにイヤホンをセットして…耳にはめる。
何やら、非常に複雑そうな顔をしている。
■美澄 蘭 > それから、何やら端末を操作すると、それをテーブルの端に置いてしまう。
そして…楽譜を確認しながら、イヤホンから流れてくる音に意識を集中させ始めた。
テーブルの上に開かれた楽譜は、恐らくコピーをとったものなのだろう。ただでさえ音符の多い楽譜が、あちこちの書き込みで更に黒くなっている。
イヤホンから流れてくる音を、時折眉を寄せながら聞いていたが…
(………ああ、だめ。ペダルと鍵盤のリズムがきっちり合いきってないわ。音が濁ってる…)
イヤホンの外からでは何が起こったのか判断は難しいが、憤懣やるかたない表情で一旦端末をたぐり寄せて何か操作すると、イヤホンを耳から引き抜いて、ブリーフケースから筆記用具を取り出した。
楽譜に、更なる書き込みを加える。
幸か不幸か、蘭が注文したものが届いたのは、その時だった。
■美澄 蘭 > 「………あ、ありがとうございます」
呆けたような顔で店員の方を見てしまった後、あわてて取り繕って頭を下げながら楽譜を一旦閉じて置くスペースを作る。
そうして、店員がお茶とお菓子を置いて背を向けたところで、まずは紅茶に手を伸ばす。
ミルクティーの気分ではあるが、最初の一口くらいはストレートで。
「………はぁ………」
何やら、重くて長い溜息を1つ吐いた。
■美澄 蘭 > 一旦ティーカップを置き直すと、ティーカップにミルクを注ぐ。
焼き菓子の1つに手を伸ばし、口に放り込んで…それを味わった後、ミルクを入れた紅茶にもう一度手を伸ばし、一口。
「………ふぅ」
今度は軽めの息を吐いてから、またいそいそとイヤホンを耳にセットし、楽譜を膝の上に立てるように開き、筆記用具を手にして…端末を操作する。
恐らく、先ほどの操作で音を止めていたのを再開したのだろう。
紅茶とお菓子で和らいだ表情が、再び険しさを帯びる。
■美澄 蘭 > (うぅ、ここの左手なかなかミスなくならないなぁ…
追い込みで、きっちり辿り直さないとダメかも)
どこか泣きそうに眉を寄せ、目尻を下げながらも楽譜へのメモは怠らない。
(ゆったりした部分は大分音綺麗になってきたし、全体的にはちゃんと曲になってるけど…
折角の発表会なんだから、きっちり仕上げないと)
そんなことを考えながら、楽譜と睨めっこ。
困った表情はしているが、瞳には強い意思の光があった。
■美澄 蘭 > 「………はぁ〜」
そうこうしているうちに、音を聞き終えたらしい。
力なくイヤホンを外すと、ぐったりと背もたれに身を預け、天井を仰ぐ。
「………やっぱり一番の課題は左手かー………」
頑張ってるんだけどなー、という弱々しい声が、天井に向いた蘭の口から零れる。
■美澄 蘭 > とはいえ、発表会で「がんばりました」で終わらせていいのは「子供」だけだ。
…いや、今の蘭だって子供には違いないのだけれど、そういう意味ではなく。
きちんと「技術」と「表現」を形にして、その「成果」を評価されなければいけないと思うのだ。
………もし、これから本気で音楽に取り組むつもりでいるのならば、尚更。
(まずは、憧れの曲の完成に向けて全力を注がないとね)
よいしょ、と小さく呟いて姿勢を正すと、ティーカップに手を伸ばす。
それを口に運んで、傾け…そして戻すと、ほぅ、という柔らかい息をついた。
■美澄 蘭 > (とりあえず…ここでお茶休憩したら、また練習しに行こう。
今の録音確認して気になったところ、次の授業までにさらっておかなくちゃ)
そんなことを考えながら、ゆったりとお茶とお菓子を楽しむ。
日が短くなりつつある今日この頃だが、日が暮れるにはまだ少し時間があった。
■美澄 蘭 > 「………よし」
お茶とお菓子をマイペースに楽しんでから、楽譜と筆記用具をブリーフケースに仕舞って立ち上がる。
そして、さくっと会計を済ませるとカフェテラスを足早に後にした。
目指すは学園地区の音楽実習棟。つまり、ピアノの練習室だ。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。