2016/10/16 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に東瀬 夏希さんが現れました。
東瀬 夏希 > 「…………」

カフェテラスでちょこんと座る少女。
その目の前には、多数の甘味が置いてあった。

「…………あむっ」

そして、祈りをささげた後、チョコケーキを口にする。
普段苛烈な表情しか見せないその少女の表情は……


「……はふぅ」

笑顔だった。

東瀬 夏希 > 緩んだ笑顔で、パクパクと口にケーキ、あんみつ、プリン、カステラその他をどんどんと口に運んでいく。
異端を前にした時の苛烈さから、時に『狂戦士』とまで呼ばれることのある夏希であるが……意外というべきか、年相応と言うべきか、甘いものに目がないのであった。

「先日は、あむっ、この任務を面倒だとばかり思ったが……ぱくっ、こんなに美味しいスイーツがあるお店があるなんて……もきゅ、思わなかった……!」

お行儀悪く独り言を呟きながらぱくむしゃと甘味を口に放り込んでいく。
その量も尋常じゃない。甘味のみで一食済ませる気か……と言いたくなるような量を、平然と食べまくっていた。

ご案内:「カフェテラス「橘」」にルギウスさんが現れました。
東瀬 夏希 > ついでに、ざっと見た感じ、この場にはまだ異端はいない……はずだ。
と言うのも、夏希は異端を明確に見分ける目を持っているわけではない。
殆どは外見からの判断、直感、そして……対異端法化兵装『インノケンティウス』の固有性能、『異端迫害聖域(スンミス・デジデランテス)』による確認だった。
『インノケンティウス』に限った話ではないが、対異端法化兵装群は全て異端に対し特攻効果のある法化素材を用いている。
その為、単純に異端に対し触れさせれば、浄化効果が作用してその反応で分かるのだ。これもまた有用な判別手段である。
……が、流石に異端疑惑のかかっている相手に向けて、武器を向けて『触ってみろ』と言って、ハイそうですかと聞いて貰えることは殆どない。
加えて、切ってみるなどの行為も、もし異端でない場合が大変なので、判別方法としては微妙だ。
だが、『インノケンティウス』の固有性能『異端迫害聖域(スンミス・デジデランテス)』は、異端である存在にのみ苦痛を与える結界を、剣を突き立てた中心地点から半径7mに渡って展開するもの。
よって、異端でない人間には何の効果もないため、判別に使いやすいのだ。
だが……その『異端迫害聖域(スンミス・デジデランテス)』は、使用を禁じられている。
故に、見ての判断任せになっていた。

「あむっ……しかし、本当に……んくっ、今見ただけで異端かそうかを判断出来ているのだろうか……ほむっ、私は、おおよそインノケンティウスに頼ってばかりだったからな……ぱくっ」

食べながら思案する。顔は緩んでいるが、それでも真面目だ。
……もし、異端がこの場にいたとしたら。
異端を前に自分はのんきにスイーツを食べていることになる。それは、異端狩りとして……否。
『東瀬夏希』として、許しがたいことだった。

ルギウス > 白い司祭服に身を包み、サングラスが非常に胡散臭さを醸し出している男が来店。
とりあえず、ゆっくりできる席を探して店内を見回す。

お客はそこそこに入っており、活気があるのは結構ですねぇ。
ほらあそこのテーブルなんて甘味だけで一食分は余裕でカロリーが賄えそうな。
……二度見した。

「まぁ、そういう方もいらっしゃるでしょう。
 ひょっとしたら直前まで将棋を指していらしたのかもしれませんし」

ただ、開いている席がその近くにしかなかったのは幸運か不運か。

ルギウス > 店員に紅茶と季節のケーキ(今週はモンブラン)を注文し、いい食べっぷりの少女をじぃ と見つめる。

なんというか、顔が緩んでいるのにたまに眉根に皺が寄る。
その後に甘味を食べて再び緩む という傍から見れば退屈しない百面相状態なのであるし。

東瀬 夏希 > 「……!」

びく、と反応する。
先程まで緩み切っていた顔が、唐突に引き締まる。
近くに座った司祭服の男……雰囲気に、違和感がある。
そう、まるで異端のように。

「……セット」

もしもの場合に備え、ゲート魔術を待機。いつでも対異端法化兵装を呼び出せるようにした上で。

「そこの司祭。貴様、種族は何だ?」

薄暗い光を宿した瞳で睨み付けながら、問い掛ける。
……そこは普通に穏やかに聞いた方が素直に答えやすいだろう、と言うのを彼女に言っても無駄である。
夏希は腹芸が得意ではないし……何より、異端を前にすれば、全ての感情が憎悪で塗り替えられるのだから。

ルギウス > 周囲を見渡して、他に司祭がいないか確認する。
非常に面倒くさそうな顔をして己を指差す。

「もしかして、私に言っておられます?」

ただし、口元はヘラヘラとした笑いが常に張り付いているのだが。

東瀬 夏希 > 「貴様以外にこの場に司祭がいるか。
……何、問題なければそれでいい。己の種族、それを正直に答えろ」

こんなに威圧的な態度で……と言うのはやはり言っても無駄。
その瞳は、表情は、声色は、先程までの幸せそうな少女とはまるで別物。
人格だけが入れ替わった……と言っても信じる者が出そうなくらいには、変質していた。
それほどまでに、この少女の抱える闇が深いと言う事であろうか。

「早く、答えろ」

催促。普通の神経の者ならば見ただけで逃げ出しかねないような憎悪を込めた視線で、答えを促す。

ルギウス > ふぅー と深いため息。

「私が人間以外に見えるのならば、いい眼科をご案内しますよ?
 それとも神の奇蹟で目玉を入れ替えますか?」

台詞とともに椅子にふんぞり返る。

「いやはや、怖い目ですねぇ。
 店員さんが怯えてしまって、商品を運んでくれなくなるじゃあないですか」

東瀬 夏希 > 「ああ、貴様は見た目はどう見ても人間だ。
……だが、纏っている雰囲気が異端のそれだ。また、異端の中には高度な変身能力を持つ者もいる。
故に、外見のみの判断は、本質的には当てにならん」

鋭い目を向けたまま告げる。
結局、本質的には明確な手段で確認するしかないのだ。
この問い掛けも、ほぼほぼ意味がないと言っても過言ではない。
ただ、問わずにはいられなかった。それだけの話だ。

「生憎、目つきが悪いのは生来ではないにせよ、筋金入りでな。最早治らん。
……異端が生きている。それだけで罪だ。異端に食わせる飯などあってよいはずもない」

ルギウス > 「私は『異邦人』ですからねぇ。 雰囲気はそのせいかもしれません。
 この世界に着てからそこそこにはなりますが、異世界で過ごしていた日々の方が長いので。
 雰囲気に馴染めていないのでしょう」

嘘は言っていない。
事実、肉体はこの世界で新しく調達しなおしたものではあるが……魂そのものに関しては異端で済めば御の字なのだから。

「なるほど、異種族に殺されかけた経験でもありますかねぇ。
 貴女の怖い目は、見飽きた目でもありますが……。
 
 ふむ、貴女のいう 異端 とは、一体なんでしょう?」

東瀬 夏希 > 「…………そうか」

取り敢えずは納得して気を静める。
余りに禍々しい雰囲気に思わず警戒したが、異邦人と言うだけでは裁けない。
流石に、この場で武器を取り出してまで確認するのは、夏希にも躊躇われた。
そして、そのまま問いに答える。
鋭い目の、そのままに。

「異端とは、人の世に非ざる者。人ならざる異形、化け物共だ。
異端は人の世に不要。それどころか、人の子に害を為す。
なれば、断たねばならぬ」

ルギウス > 「なるほど」

どうやら目前の人物は、異端審問官……それもバケモノ担当らしい。
となると、この暗い目のバックボーンも凡そ想像がついた。

「なるほど。
 ところで人間が文明を起こす以前から存在していたモノから見れば人間そのものが異端なわけですが。
 それらについては、どうお考えを?

 ああ、私は別に人が死のうがバケモノが滅びようがどうだって構わないスタンスである という事は先に明確にしておきます」

東瀬 夏希 > 「人の子には神の祝福がある。神の祝福無き化物こそこの世の害、異端だ。
そんなことはわかり切っている」

くだらないことを聞くな、と言わんばかりに言い捨てる夏希。
…………だが。
人の観察に長け、人の心を読むことを得手とし、人の業を知り尽くしているのであれば。
その言葉に、どこか『棒読みのような感じ』を受けるだろう。
口調がではない。心がどこか籠っておらず、あくまで教本のセリフをなぞっているだけのようであるのだ。
……余程注意深く聞いていないと分からないような差だが、果たして。

ルギウス > 「なるほど。神の祝福。
 唯一絶対の神がおわすなら、一つの指針ではありますね。
 では、異教徒も全て異端である との結論になりますが―――やぁ、困った。
 それでは私も異端になってしまいますねぇ」

くっくっと笑う。
事実、故郷でも異端の神ではある。闇を司る自由神なのだから。

「では、逆に……バケモノが神の祝福を得ていた場合はどうなさいます?
 エルフやドワーフ、それに順ずる肉をもった隣人は神を崇める事もあるでしょう」

東瀬 夏希 > 「我が異端審問教会はそこまで狭量ではない。
人の子は何を信じていようが、遍く神の祝福を受けている。信じる宗派は些細なことだ」

また、同じような口調で。
そして、更に言葉を紡ぐ。

「そして、異端共にはそもそも神の祝福があろうはずもない。異端は悪、そう決まっている」

……滅茶苦茶である。
が、それも当然と言えば当然。
倫理学の世界において、『事の善悪は神が定めたものであり、神が善と言ったものは善、悪と言ったものは悪』と言う考え方は『神命説』と呼ばれる。
そして、その神命説は……論理的に成立しないと否定されているのだ。
エウテュプロンのジレンマ、と言うものがそれである。
神命説は『神は善である』と言う前提の下、『神がそうであるとしたから、ある事柄は善もしくは悪である』、もしくは『ある事柄は、善もしくは悪であるから、神がそう言った』と言う解釈を取る。
だが、前者を前提に代入して言い換えれば『神は神が善であるとした事柄である』となり、後者は『神は神であるから神がそう言った』となってしまう。
神と善悪の判断基準に、論理的な因果関係を証明できないのだ。
故に、神がそう言っているを前提にして話を進める夏希の論に、これと言った正当性は発生しない。
そこにあるのは……揺ぎ無き信念。
『こうである』と言う固定した考えが、神と言う絶対存在を経由してより強固に固定化されているのだ。

ルギウス > 「なるほど、神の信徒としての理屈は理解しました。」

店員がおっかなびっくりモンブランと紅茶をもってきたので礼を言う。
その際に、喧嘩ではないですから大丈夫 と一言添えた。
始まるとしたらそれは喧嘩ではないだろうから。

「それでは、貴女の本音を伺ってもよろしいですかねぇ?
 教科書そのままの言葉なんてツマラナイんですよ」

モンブランを一口食べる。
甘すぎない栗の甘さが心地よい。

「貴女の魂に直接聞いたほうが早そうですが―――。
 何からそんなに怯えて逃げ回っているのです?」

東瀬 夏希 > 「何……?」

訝し気に眉を顰める。
今言ったことは、神の信徒としての理屈であり、『司祭様』に教え込まれたことだ。
だが……確かに、夏希の本質はそこではない。
夏希の抱く深い憎悪はそこにはない。
それは、もっともっと根深いところにある。
そして、それは軽々に口にすべきものではなかった。

「ふん、何を考えているかは知らんが、私はこの教えを信じている。
下衆の勘繰りは止めることだ」

ぴしゃり、と言い放つ。
動揺と怒りは腹の底になんとかねじ込んで、問い掛けそのものを拒絶する。

ルギウス > 「貴女のような目をした方は、以前の世界でよく見かけましたよ。
 大体は―――殺されたか殺されかかったか。
 家族を皆殺しにされているか。

 その上で、狩る対象が魔術師でなく異端となると……そうですねぇ。
 ネズミ、狼、蝙蝠、鬼―――」

お喋りはまだ終わってませんよ、とばかりに聞こえるように独り言を続ける。

「なるほど、妖精族などと異なりアレらとの共存は不可能に近い。
 捕食者と被捕食者が一緒にいられる環境は牧場か神の膝元くらいでしょうねぇ?」

東瀬 夏希 > 殺されたか、殺されかかったか、家族を皆殺しにされているか。
―――どれもハズレだ。
なんせ、彼女は……

「黙れ、貴様に私の何が分かる」

憎悪ではなく、嫌悪。
それを滲ませた目で紡がれる言葉を断ち切ろうとする。
ハズレではある。だが、答えに近い所、そしてこの憎悪の源泉には近づいてきている。
それが、純粋に不快だった。

「眼を見た程度で私を理解した気になるな。
私の魂を、じろじろと見まわすんじゃない」

ルギウス > 「私の経験則からくる推理です。
 私にしかわからない貴女というものは確かに存在するのですよ」

モンブランを食べ、紅茶を味わう。
良い香りだと満足する。

「嫌ですねぇ……まだ、見てませんよ。
 貴女の魂は、実に脆く、歪で……美しそうですからねぇ。
 もっとゆっくり丁寧に。薄皮一枚に至るまで、じぃぃぃっくりと貴女の舞台を見ることにしますよ」

わざわざ、サングラスを外して舐めるような視線を這わせる。
その深紅の瞳は夏希の全てを見透かすようで。

東瀬 夏希 > ぞく、と怖気が走った。
嫌悪だけではない。
そのすべてを見透かすような真紅の瞳に、ほんのわずかだが怯えてしまった。
それを即座に振り払い、気丈に言葉を返す。

「汚らわしい。
貴様のような下衆に、この東瀬夏希の魂が穢されるものか。
貴様は異端ではないかもしれんが……成程、その魂は腐り切っているようだな。
―――狩ってやろうか?」

壮絶に笑い、手を横に出す。
念じれば、ゲート魔術が起動し……彼女の武器、異端狩りの兵装が顕現するだろう。

ルギウス > 「出来るならどうぞご自由に。
 ただし―――剣を抜けばこの場に居る貴女以外の子羊は全員死ぬと心得てくださいね?」

改めてサングラスをかけなおし、優雅に紅茶を口にする。
口元の笑みが濃くなった気がした。

「先にも言いましたが、私は『人が死のうと』どうでもいいのですから」

東瀬 夏希 > 「きさ、ま……!」

その瞳が憎悪に揺れる。
溢れ出るのは、圧倒的ですらある憎しみ。そして……
―――絶対にそれは許容できない、と言う拒絶。
目の前の男にそれが可能なのかはわからない。
異端ならば話は簡単なのだ。
インノケンティウスを呼び出し、異端迫害聖域を展開する。それだけだ。
だが、目の前の男が『異端』なのか、まだ判別がついていない。
となると、想定されるのはヘルシングの固有性能による攻撃。
だが……剣を取り出し、突き立てる。そのタイムラグの間に、この男が周囲の全員を本当に抹殺できるとしたら?
守るべき人の子を、全て失わせることができるとしたら?
……そんな賭け、『出来るわけがなかった』。

「…………この、下衆が…………!」

絞り出すような悪態と共に、ゲート魔術を解除。
そのまま、力なく手を下した。

ルギウス > 「いやぁ、貴女が理性のある方で助かりました。
 狂信者なら一も二もなく刃を私に向けていたでしょうからねぇ?」

紅茶を最後まで飲み干す。
ご馳走様でしたと口にした後で、神への感謝の言葉を口にする。

「さて、貴女に足りないのはなんでしょうねぇ?
 憎しみ?恐れ?信仰?狂気?
 まぁ、またお話しましょう……東瀬夏希さん」

そう言って、男は舞台袖から退場する役者のように歩き去っていった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からルギウスさんが去りました。
東瀬 夏希 > 「…………理性、か」

苦笑する。
理性?そんなものではない。
その時夏希にあったのは……恐怖だけだ。
だが、同時に少し安心する。
あの男にも、見透かせないものはあったのだ。

「そうだ、スイーツ……」

まだ、たくさん残っている。
食べないと。彼女は初めて義務感で、好物に手を付ける。

「……うん、美味しい」

笑えはしないけれど。
笑顔になれはしないけれど、ささくれだった心が、少しだけ癒された。

東瀬 夏希 > 周囲から、主に店員から、嫌な視線が飛んでくる。
恐怖。まるで異端に向けられるような視線が、自分に向かって飛んでくる。
それはとても不快だったけれど、一方でそれを受け入れている自分もいた。
アレだけのことをしたのだから、ではない。
既に自分は、穢れ切っているからだ。

「……あむ」

食べる。
もさもさとスイーツを食べる。
やはり笑顔にはなれなくとも、好物のスイーツは少しずつ心を癒してくれる。
多めに頼んでおいてよかった……流石に今の状態から、注文するのは気が引ける。

東瀬 夏希 > そうだ。
確かに、夏希の中に異端審問教会で教わった教えは根付いている。
だが……それは一方で、夏希の中にある、異端狩りへのモチベーションを肯定するためのものでしかないのも確かなのだ。
夏希は異端が『嫌い』なのではない。
異端が『憎い』のだ。
そうせねばならぬから異端を狩るのではない。異端が存在することが許せないだけなのだ。
『司祭様』も、それを分かってて夏希に教えを説いた。
……夏希の中の憎悪を肯定し、異端狩りに走らせるために。
流石に、その真意にまでは、夏希は気付いてはいないが。

「やはり……異端は、狩らねば」

それだけではなく、あの男もいつかは狩る。
何故ならあの男は……最も憎い異端と、種類は別でも、根底に似たようなものを感じたからだ。
他者の苦悩を見て愉悦する、そんな歪み切った感性を。

東瀬 夏希 > 「人の心を弄び、人を人形のように操り、舞台仕立てのようにして愉悦する……!」

それは、彼女が最も憎む精神性。
汚らわしい……その言葉では足りない。
いくら殺しても足りないくらいの憎悪を向ける対象だ。
そんな心を持っている奴がいることが許せない。
生きていることが許せない。
この手で殺してやらないと気が済まない!
狂おしいまでの憎悪は、夏希の心の中で沈殿する。
そして、異端狩りへのモチベーションとしてくべられるのだ。
全ては……あの日を清算するために。

「……うっ、うえっ……!」

決意を新たにすると同時、『あの日』が脳裏にフラッシュバックしてしまう。
彼女が異端を憎むようになった原初の悲劇が。
思わず戻してしまいそうになるが、必死に堪える。

東瀬 夏希 > そう。
『あの日』、夏希を襲った悲劇は、家族が殺されるとか、自分が殺されかけるとか、そんな生易しいものではなかった。
もっと根深く、暗い絶望。そして、罪。
それを、幼い身の上で背負い込むことになってしまった。

「駄目、だ……食べ、なきゃ……!」

思い出せば思い出すほど、吐き気は強くなり動悸も早くなる。
だが、注文したものを残すわけにはいかない。
その一心で、何とかスイーツを口に運ぶ。

「美味しい……のに……!」

美味しいのは美味しい。味には一切の不満がない。
だというのに、体の調子も、心の調子も、最早スイーツでは癒しようのない状態になってしまっていた。


……結局、気合で全てを食べ切った夏希は、ふらふらとカフェテラスを後にした。
先程の騒動のために、誰も声を掛けなかったのは幸か不幸か。
ともあれ、道中何度も戻しそうになりながら、何とか拠点にしている部屋に帰って行った……。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から東瀬 夏希さんが去りました。