2016/12/17 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 常世祭を終えて、大分日常を取り戻しつつある…といってももう一週間ほどでクリスマスが控えているのだが…常世島。
そんな、日常に帰ってきたカフェテラスの午後。窓際のテーブル席に腰掛け、憂鬱そうな表情でチャイをかき回す蘭の姿がある。
「………はぁ………。」
沈んだため息が、1つ。
■美澄 蘭 > 何もかもを突き詰めることなど出来ない。
分かっていたつもりだったが…いざ突きつけられてみると、ショックだった。
いつもは味方の両親も決して甘いことを言わなかったことが、ことの厳しさを示していた。
(…お母さんも含めて、皆ほとんど意見が違わなかった。
こっちの先生だけは、一応道を示してはくれたけど…)
こちらでピアノを教えてくれている教師が示した「可能性」。
それは、
「出来るだけ早く本土の高校に転校し、今からでもコンクールの実績を積み重ねるなど音大受験に向けた対策漬けの生活にすること」
だったのだ。
…そして、蘭はそれを選ぶことが出来なかったのである。
■美澄 蘭 > 理由として、大学に近い常世学園の授業システムにすっかり慣れてしまって、今更クラスの縛りが強い学校生活を送れる気がしなかったことはもちろん大きい。
だが、しかし…音楽教師の前では言えなかった、もっと比重の大きい本音がある。
常世学園ならではの学習内容…魔術を、中途半端で放り出したくなかったのだ。
「………。」
もう一度、深い、深い溜息を吐いて…こねくり回していたチャイのカップに口を付けて、少し飲む。
それなりの時間物思いに沈んでいたのか、チャイの温度は下がりつつあった。
■美澄 蘭 > 魔術は、制御が出来なければ危険なものだ。
だからこそ、この学園の卒業の際には、魔術なり異能なり、その卒業候補生が持つ力の制御の確認が必要になる。
蘭は、今までのところ魔術の成績は悪くない。悪くはないが…不安がないかといえば、決してそんなことはないのだ。
危機感を覚えた時に生じることのある、「魔力の暴走」。
流石に、島から出さないと言われることはないが…少なくとも、力の制御について試験を受けないままこの学園を去れば、これまで学んだ魔術は、社会的には「使えない」ことにせざるを得ない。
■美澄 蘭 > もっとも、「これまで学んだ魔術が活かせなくなる」こと自体は、最悪の事態ではない。
一番ひどいのは、「力の制御に不安があるために、社会的な活動を大幅に制限されるのを余儀なくされること」…母に近い生き方をせざるを得なくなる事態だ。
母を人間として嫌いとか、そういうわけでは決してない。
ただ…自分の能力を社会に認められないことの寂しさや、自分の身近な人間に「力」を向けてしまったときの辛さを、再現したくないのだ。母のために…誰よりも、自分自身のために。
■美澄 蘭 > 「瞑想」の成果で、蘭の魔術制御能力は夏からかなり向上した。
望む効果を得るためには、どの程度の魔力を籠めればいいのか、かなりの精度で、「感覚で」掴めるようになっていた。
…少なくとも、戦闘を想定しない場面においては。
(…そういえば…結局私、まだこの島の「安全じゃない」部分を、全然知らないまま…)
チャイのカップ、お茶の残りの水面に視線を落とす。
…しかし、色違いの二つの瞳には、どこか、この少女らしくない…いや、ある意味この少女らしいのかもしれないが、反抗的な光が宿っていた。
■美澄 蘭 > 無論、この学園を去ると決めたわけではない。
…けれど、音楽に専念する道を選ぶのであれば、きっと、そういった部分を「知る」ための機会からは、永遠に遠ざかってしまう。
「………。」
先ほどまでの重いため息とは違う、強く、太い息を1つ吐いて。
蘭は、残ったチャイを一気に飲み干した。
■美澄 蘭 > (…「ヒト」と「魔物」…どっちが怖いかしら?)
今までのこの少女の生活からは考えられない剣呑な思考を、その可憐な面立ちの奥に隠しながら(いや、瞳には全然隠れていないのだが)、席を立つ。
そして、勘定を済ませると、気の強そうな足取りでカフェテラスを後にした。
その、まっすぐに物事を見通す瞳を、自らの心に向けることを避けたまま。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。