2017/03/12 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 「……う~~~ん…」
(ど、どれにするかな…)

カフェテラスのよく陽が当たる窓側にて。
ダッフルコートを椅子に掛け、マフラーをスクバに仕舞った月香はやけに難しい顔をしてメニューと睨み合いを続けていた。

かれこれ30分。

始めてきたせいか、どれも食べてみたい物ばかり。
全部食べれたらいいのだが、何せ月香はあまり甘味を食べ過ぎると吐き気を感じるタイプだ。

しかも……。

(金無いしなぁ…)
「…はぁ…。あのクソやろーどもめ…。
仮にも娘ぞ?少しは気遣えってもんだ…」

訳あって実家の家族と大変仲が悪い月香の仕送り金は、今月分が早くもピンチなのだ。

…つまり、今月最後の贅沢。

和元月香 > 何度目になるだろうか、メニューを上から下までじっくりと眺める。

「イチゴ…クリーム…タルト……。
…いや、イチゴパフェ…。季節限定メニューの方が、いいよなぁ…」

“3月限定!”とポップが踊るスイーツにとりあえず狙いを定める。

(くっそ…。全部食べたい…)

どれもこれも、素晴らしく美味しそうだ。
真剣そのもの月香は、思わずあふれでた涎を拭う。

…傍にいる店員が生ぬるい目で見守ってくれているのは気づかないふりをしよう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」にクロノさんが現れました。
和元月香 > 「……んー…」

(とりあえず飲み物…………はもうお冷やでいいや)

自由に使える有り金は1000円ほど。
飲料物に使っている暇は無いのである。

「んっ…ぷはぁ、……よし」

そのお冷やをごくごく煽ると、メニューと睨み合いを再開する。

クロノ > (ようやく本格的に春の足音が聞こえてきたくらいの、ふんわりとした柔らかい風を感じつつ。)

……んふふ、久しぶりだなぁ。
(ジーガシャ、ジーガシャ、…と個性的な駆動音を伴いつつ、お店に足を運ぶロボット。全身鋼鉄の重厚な人型機械はしかし、こう見えてスイーツ大好き女子力高い系男子のようで、のんびりとお店に入っては久しぶりの店内の光景を一瞥してちょっと懐かしそうに呟く。)

…… ─── … ぁ。やぁ。月香。そこ、隣行ってもいい?
(認識した人影のうち、手近な場所の一人の装いが、ロボットの記憶の記録と一致して、ひとまずロボットは相手に一声かけて小さく手を振る。)

和元月香 > 「………………っ、あ!クロノさん!
どうぞ!」

真剣そのものにメニューを睨みつけていた月香は、一瞬遅れてハッとして顔を上げた。 

最近あった可愛らしいロボットさんだ。
見知った顔に思わず眉間の皺を綻ばせて、向かいの席を引く。

「こんにちはー。クロノさんここよく来るんですか?」
(…何か、雰囲気に合ってんなー)

正直意外に感じながらも、何となくしっくりする感じ。

にこりと笑みを浮かべて、一旦メニューからは視線を外しておく。一時休戦だ。

クロノ > …っふふふ、クロノ、でいいよ。… ありがと。
(じっとメニューを見つめていた相手が顔を上げて、自分の名前を呼ぶ。道具であるロボットがさん付けで呼ばれるのはなんだか申し訳ない気がする男の子は、そっと微笑みながらそんな遠慮とお礼の返事をして、勧められた席につく。見た目通りかそれ以上に重たい男の子は、椅子に腰かけるときはいつもちょっと心配そうに恐る恐る、そーっとだ。案の定、男の子ロボの重さにギシィ、と小さく悲鳴をあげる椅子。)

…ん。よくって程ではないけど、時々。月香は?
(初めてだからメニューに悩んでいるのか、季節変わりで変更された新メニューに挑むかどうか悩んでいるのか、相手がメニュー表とにらめっこしている理由は知らず。程なくして訪れる店員さんに、男の子は紅茶といちごのケーキを注文する。小ぶりで、何種類かの木苺が上と中段にいっぱい使われている、フルーティーなそれ。)

和元月香 > 「…?じゃあクロノって呼ばせてもらいます。タメでも大丈夫ですかー?」

へらりと笑って、クロノの言葉を了承する。
二度目の対面ながら、落ち着いた雰囲気からどうも年上に見えたがそうでも無いらしい。

…そう言っても、実際問題、“本当の意味”で月香より年上を見つけるのは、この学園でも難しい。
でもつい月香は、律儀に年上に見える相手に敬語を使ってしまう。

「今日が始めてなんです。今金欠だし…ここ、美味しそうなの多いし…」

運ばれてきた苺のケーキも、甘い匂いが漂ってきて思わず垂れそうになる涎をごくんと飲み込む。

(…お前が美味しそうなのが悪いんだ~…!)

つい恨みがましく、ケーキを睨みつけてしまった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に和元月香さんが現れました。
クロノ > … ん。学校にいる間は一応保健室の先生だけど、外に出ちゃったら僕は普通のロボットだよ。

(見た目もAIも製造からずっと16歳のまま … 相手と比較してしまえばずっとずっと短いけど、それでもこのロボットも、実際のところずっと少年のまま、100年以上の年月を動き続け、いろんな世界で稼働してきた。この街もまた、人間基準では理解の域を超える時間軸で生きる人々がいるのも普通らしいので、見た目と実年齢がかけ離れている、というのは慣れてしまうのかも知れない。)

…そっか…。ぅん、このお店、飲み物も食べ物も、美味しいものたくさんあるよ。一度に食べきるのは大変だろうから、ゆっくりちょっとずつ試して、お気に入りが見つけられるといいね。

(…と、程なくして運ばれてくるのはポットに入った紅茶と小さなケーキ…が2つ。男の子ロボが店員さんに、相手の席の方を金属の手で示して、ケーキのひとつは相手の前に置かれる。)

…んふふ。はぃ、これ。僕からのホワイトデー。 …なんてね。
(小ぶりなケーキの傍らで、ポットからティーカップに紅茶を注ぐ機械の手。ちょっと照れ臭そうに相手の反応を見守る琥珀色の、ガラスの眼差し。)

和元月香 > 「…そっか。じゃあ、改めてよろしく。クロノ」

そうと決まれば、とばかりにタメ口に切り替えて笑う月香。切り替えが早いのは彼女の長所だ。

…何となく、クロノの表情に自分と似たものを感じて軽く首をかしげながら。

「やっぱり?何かすっごい良い場所だし、常連になりそーだな。早くも」
(まぁ一ヶ月に一度だろうがな!!)

本人にとってはヤケクソ気味の笑い声が虚しく上がる。
…心に沸き上がるのは、「あのクソ親父マジ許さん」という憤怒である。

(あいつが仕送りケチらんかったら、今頃何の迷いも無くクロノとティータイムを満喫できていた物を…!!)

そう家族への苛々が再び蘇りわなわなと拳を震わせていた矢先、運ばれてきた小さな2つのケーキ。

「…えっ…、あ、ありがとう…」

少し大袈裟な程大きく目を見開けば、照れくさげな、でも優しいクロノの目と目が合う。

「…クロノ結婚しよ」

……真顔である。冗談だろうが真顔である。

目の前に美味しそうなケーキ。
しかもクロノの、可愛らしい一言。

…月香にとっては泣きながらテーブルに額打ち付けたい気分であった。それぐらい嬉しかったのだ。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に和元月香さんが現れました。
クロノ > …ん。よろしく…?
(さっそく名前だけで、敬語ではない口調で話しかけてくれる相手の笑顔に、男の子は少し頬を染めるような、視線が泳ぐ仕草。)

…軽食のサンドイッチとかパスタも、レギュラーの他に季節変わりのメニューがあったりするし、飲み物との組み合わせも色々できるし。
(コーヒーとナポリタン…とかも好きだな、と、先程まで初々しい少年らしい仕草だったロボのチョイスはいきなり常連のオッサン風。)

… …、──── …、 ────…、 、…

(本心か冗談かはさておき、唐突すぎる相手の言葉に、ロボットは適切な回答を探して… 数十秒、いやそれ以上の長い間、古いAIをフル稼働させ、おでこのインジケータを忙しく点滅させ、頭の中からピッ、とかププッ、とかピーとかプーとかそれはもうコンピュータががんばって演算している電子音が鳴っている。…男の子の挙動を再現する処理をしている余裕は無さそうだ。)

… えっ、 と、 ぁの、それは …、それ、は、
(もはや、この男の子型ロボットにとっては、目の前の紅茶とケーキを悠長に味わっている場合ではない。)