2017/03/13 のログ
和元月香 > 「ふふふ~」
(はー、癒される~)
いちいち反応が純粋な少年ロボットに、月香はにやにやと笑いながらも随分微笑ましそうだ。
…先日から無駄に元気な男子生徒や、ゲロ吐きまくりの変人教師に振り回されてきたせいか、癒しの存在はありがたかった。

「へー、スイーツだけじゃないんだー。
…スパゲッティとかパスタとか好きだし、そういうの食べるのも悪くないかもしれんね…」
(てかクロノ…コーヒー飲むんだ…)
メニューを捲りながら、クロノの言葉をやけに熱心に聞く月香。
…ちょっとクロノのイメージは変わったが。

突如様子がおかしくなったクロノに、月香はハッと我に返り慌てて両手を振る。

「ちょっ、クロノー!?ガチにせんでいいから、え、だ、大丈夫!?」
勿論月香にも、やっとの事でありつけたケーキを堪能する暇は無い。

「お、おーい大丈夫かー?」
立ち上がって至近距離に行き、片手を彼の目の前で振って何とか落ち着けさせようとするのに必死である。

(クロノは…やっぱり純粋…)
…まぁ、ちょっとキュンとしたのは嘘では無い。
とは言葉に出さない。月香は一応学習する女だ。

クロノ > … ──── …、っ、 ……。
(相手の焦り混じりの問いかけに、ピー…と一度リセットするような電子音を鳴らした男の子の頭の中。ぴく、と小さく震えた男の子は、一度瞬くと再び、やっと男の子として動作し始めて。)

…システムを再起動しました。 ──── …ぁ。…ごめん、大丈夫。ちょっとびっくりしちゃって…。
(申し訳無さそうに視線おとして、そそくさとケーキにフォーク刺して、小さく切り分けた一口をぱく、もぐ。途中紅茶で流し込みつつ、ふぅ、と生き物でもないのに深呼吸するような仕草。)

…け、結婚は…その、──僕はロボットで、だから……、
(回答のための演算処理中に話しかけられた内容等は、どうやら認識できていないらしい。パソコンとかでよくある、いわゆる処理落ちなのだろう。)

和元月香 > 突如か細いながらに鳴り響いた電子音に、
「うおっ!?」とおっさんくさい悲鳴をあげてのげぞる月香。

「わ、私こそごめんねマジで…。びっくりしたよね…」

クロノの謝罪に思わず謝罪し返して、ほっと息を吐いて席に戻り、クロノとほぼ同時に紅茶を飲む。

「ゴフッ…、あ、え、えーっと、冗談だったんだけど…本当にごめん」

そのままクロノに釣られるようにしてケーキを口に運ぶが、次の言葉に思わずむせる。
ケーキは大変美味しかった。が、まだ誤解は解けていなかったようだ。

だが、続いた言葉には月香はもぐもぐとケーキを頬張って
程よい甘さに表情を蕩けさせながらも、はっきりと返した。

「クロノはロボットと思えないぐらい凄い人間っぽいけどね~。本当は人間なんじゃないのかい?」

(少なくとも私よりかは)

クロノ > (状況の把握が1ターン遅れている男の子は、相手が紅茶の飲みかけで噎せて、ようやく先程の言葉の意図するところについて正しく理解できたようだ。すぐにさっとテーブルの隅に置かれた紙ナプキンを数枚取って差し出しつつ。)

…ぁはは、びっくりしたし、どうお返事しようかフリーズするほど一生懸命考えちゃったくらい…嬉しかった。僕ってほら、旧式だから…処理能力あんまり高くなくて…。
(ぽんぽん、と自身の頭を金属の手で軽く叩きつつ苦笑いする男の子。)

……。

(相手の問いかけに、男の子はくるっと回って横やや後ろ向きに座り直す。首筋の操作部のボタンを自分の指先でポチポチと押して、人間のそれよりも少し尖った特徴的な耳のその後ろ、両耳の裏側にあるホクロをぐっと長押しすると。)

 ─── …システムをメンテナンスモードに切り替えます。 … 頭部ハッチのロックを解除、ハッチ解放。

(黒髪の生えた頭部がパカッと外れて、その中にはぎっしりと、ゴチャっとした密度で、パソコンの中身みたいな機材が詰まっているのが見える。小さな部品の幾つかがチカチカと光を点滅させて動いているのも見えるだろうか。)

…月香。これが私として、私を形作っているAIが動いているコンピュータです。 … この箱が記憶装置で、この中に記録されたプログラムが、私の意識や、身体の動きを制御しています。私は量産型の、汎用ロボットですよ。

(無表情なメンテナンスモードで簡単に自分の仕組みを説明して、またてきぱきと元の状態に自分で戻すロボット。頭のカバーを戻し、首筋のボタンをまたポチポチと押したら、ロボットは再び、いつもの男の子らしい表情を浮かべる。)

…メンテナンスモードを終了、通常モードに移行します。 ────…っふふふ。ドキドキしたぁ。 …分かってもらえたかな?

和元月香 > 「…?旧式?まだ新型があんの?」

ナプキンを「ありがとう」とたははと恥ずかしそうに笑いながら受け取り、口許を拭う。
そして、クロノの体を見ながら首をかしげた。

(うんまぁ…。年季は入ってそうだ…)
少なくとも彼もまた、たかだか十数年の時間に存在しているのでは無いのだろう、と一応の結論は出しつつも。

後ろを向いたクロノに?マークを頭上に浮かべながらも、黙って見つめる。
よく分からない機械を、まじまじと見つめながら、感嘆の声を上げた。

「……わぉ」
(ま、まじでロボットや…。SFや…)

そして、元に戻ったクロノには素直にこくんと頷いた。

「…いやー、見た目だけじゃ判断できないねぇ。
うん、よく分かりました」
あまり驚いていないようにおどけて笑う月香。
その後、穏やかな口調で頷く様子はとてもじゃないが高校生の仕草では無いだろう。

「まぁクロノがロボットだろうが宇宙人だろうが、私の癒しだという事に変わりは無い!」

…何故か自慢げに声高々に笑った。

クロノ > …んふふ、僕、製造からはもう120年くらい経ってるんだよ。少しずつ身体の部品を新しいものに置き換えているから、今でもこうして元気だけど。

(今の最新型はもっと人間そっくりだしもっともっと高性能、と楽しそうに話しながら、ケーキの続きを味わう男の子。)

…この声や話し方、そもそも性格や仕草、癖のパターンも…需要に合わせて設定次第で色々変更できるんだ。…今の設定はもう何十年も変更してないけどね。
(自我っぽい作り物の意識の根幹でさえ、簡単に組み換えてオーナーの需要に応えられる仕組みで出来ているという点が、やはり生き物とは異なるのだろう。そんな話をしつつちまちまとケーキを口に運び、豊かな甘さと香りを楽しんだら、無糖の紅茶で流し込む。)

和元月香 > 「120年…。確か異世界から来たんだっけ?
部品変えるだけでそんなに元気なんて、…科学が発展してたんだねー」

ほほぅ、と感心するように息を吐きながら釣られて楽しそうに笑う月香。
異世界が関連する話にはつい身を乗り出してしまう。

「へぇ…。まぁ私はクロノの方がいいけどねー」
…そう付け加えるのも忘れずに。

「そーなん…。でも性格変えるって、自我とかそーいうのいじくられるって事じゃない?怖くないの?」

そして、不思議に思った事を尋ねてみる。
ロボットには無い感情かもしれないが、自我の変更や崩壊は一種の“死”だろう。

体を変えながら、数兆年自我を保っている月香としても、未知の感覚だ。

(まぁ私も絶望とかする恐さは、感じれないけどね)
そんな事を考えながら、ひたすらケーキを食べる。

クロノ > …ぁはは、…ぅん、そう。此処とは違うところで造られたよ。同型の兄弟たちはもうほとんど残ってないと思うけどね … 設計寿命10年だし。
(冷蔵庫とか洗濯機、自動車なんかと似たような工業製品が、たまたま人間に近い形をしていて、自律思考するコンピュータを積んでいるだけ、と。)

…自我、かぁ。… ロボットってさ、主人の希望する通りに動いてこそ価値のある道具だから…例えば、主人が色んな事情で違う人に変わって、求められる人格も変わったら…応えられる性能があるなら、できるだけ希望に添ってあげるのが道具の使命なんじゃないかなぁ。…必要とされなければ、捨てられるからね。遅かれ早かれ。
(誰かと血の繋がりがあるでもなし、廃棄しても正当な手順を踏んでいれば罰せられることもない。捨てられるよりかは、設定を色々書き換えてでもできるだけ長く使われていたい、と静かに話す男の子の表情は、特に悲しむでもなく、淡々と。)

…記憶も、容量の上限を超えたら古いものから消していかなきゃいけない。どれを残してどれを消すかは、そのときのオーナーと相談して決めるんだけど。
(身体も、自我も、記憶も。人手のメンテナンス無しには維持できないロボットは、結局のところ誰かの下で適切なメンテナンスを受け続けるために、あの手この手で機体を変え自我を書き換え、奔走するのが常…相手の状況とはある意味真逆に近いのかもしれない。)

和元月香 > 「…んんん?10年?…10倍以上じゃん。
長持ちしてんねー…」

ひゃーっ、と半ば尊敬するように改めてクロノの体を眺める。
それを踏まえれば、120年も持つロボットは…そうそう無いだろう。

「くっ…。健気…!クロノ…君マジで純粋健気…!てかロボット皆健気…。」

…クロノの考えを聞いた後、月香は右手で顔を覆ってそう涙声で唸る羽目になった。
相手は別に悲しんでないのに、勝手に感涙してやがる。

(捨てられる、か…。
本当に人間って奴は、自分達で作っといて自分勝手なもんだな~…。仕方無いけど。
まぁ、クロノを始めロボットが当たり前にそれを受け入れてくれてんのが救いかな…。
ロボットに負ける人間の懐の狭さェ…)

特別悲観する訳でも無く、落ち着くために紅茶の最後の一口を飲み干した。
当たり前の事だし、今更何言っても仕方無い。

「似てると思ったけど、やっぱり真逆みたいだね、私達」

…相手には意味が分からないだろうけど、そうへらりと笑った月香は、ほんの少し寂しげだっただろうか。

クロノ > …歩くクラシックカー…っていうかクラシックロボだよ、僕。
(長持ち、という相手の言葉に、男の子は嬉しそうにニコニコ顔。)

…大昔、人間は異国の人間を奴隷にして失敗した…けれども長い年月を経てなお、やっぱり求められたのは、今度こそ使う側にもっと都合の良い、"命も人権も持たないけど主に忠実なシモベ"だった、ってことだね。
(それでも、男の子自身はこれまでの生涯、色んな人と出会って、色んな人に尽くして、色んな経験をしてきた。悪いことだけじゃない、素敵なこともたくさん体験させてくれた。だから、根幹にそうプログラムされているからかもしれないけど、やっぱりそんな人間が好きで、人間のために尽くしたいと思っている、と。)

…月香には月香の、僕には僕の。それぞれにしか持ち得ないものもいっぱいあるし…きっと今までもこれからも、生きていく時間軸は…うんと異なるんだろうね。

…でも、その中でこうして交わった時間を共有できたっていうのは確かなことだから。一期一会、とはちょっと違うかもだけど…僕も …僕も、月香と会えて、嬉しいな。

(先程の相手の言葉に返すように、男の子もそっと自分の気持ちを伝える。恥ずかしいから、視線は手元のケーキと、そそくさと飲み干す紅茶のカップ。)

和元月香 > 「これからも長持ちしてねクロノ…!あと3兆年ぐらい……!」

無茶な年数をつい冗談半分で言ってしまう。

(もう一緒に連れていきてぇ!!)
…月香はこっそり絶叫した。無理。

「…嘆かわしいもんだねぇ」
軽い口調で言いながら、苺を頬張る月香。
歴史を振り返れば、きっとそう上手くいく筈無いだろう。
使い道を間違えれば、きっと何処かで痛いしっぺ返しが待っている。

「まぁ人間が皆そうならとっくに世界は滅んでるでしょう。
クズばっかじゃないもんねー」

事実、月香は何だかんだ言って人間大好きっ子だ。
仲間とか作るの大好きな、絆に泣くようなババァでしかない。

「………………っ、私も嬉しいよこの野郎」

___そして、クロノが続けた言葉には流石に一瞬言葉を失った。
気付かれても問題では無かったが…気づいているとは正直思っていなかった。

月香は、真顔でこう言った。


「やっぱり結婚しよクロノ」

…あまりに感動して、耐え切れなかったらしい。
月香の信条は、どんな人生も、どんな人生で出会えた人も無駄にはしない。
…それを分かってくれたクロノが居た事は、かなり嬉しかった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から和元月香さんが去りました。
クロノ > …ぁ、あは…ははは…。さんちょうねん…は、難しい…かなぁ、ぅん。
(予想斜め上を行く天文学的年月を要求されて、男の子は力なく笑って頭を掻きつつ。)



…… っ、…… ────……、ぇ、っと、だから僕はロボットで、 ……
(やがて再び相手の口から熱い想いを伝えられて、先程と同じようにしばらく処理時間を挟み、結局同じ照れ顔で、同じ回答をするロボット。やはりリアクションとして登録されている仕草のパターンが少ない為か、同じシチュエーションでは同じ挙動を繰り返す傾向が強いようだ。…そうこうして、甘いんだか熱いんだか、1人と1台の想いが交わるタイムは過ぎていく。)

ご案内:「カフェテラス「橘」」からクロノさんが去りました。