2017/04/22 のログ
和元月香 > 「…………この学園って素性明らかになってる人の方が少なくない?」

げんなりとしたように吐き出された言葉。
完全に自分を棚に上げているが、それは置いておこう。

スマホに映し出されたのは少し時間を見つけて探し出した、
とある顔見知りの少女の情報だ。

ストーカー?関係ねぇな!とばかりに洗いざらい出された情報は、
最低でも高校生が探し出させれる量と的確さでは無い。

こういった仕事はしたことがある。
体は覚えてなくとも、心はしっかりと覚えていた。

「…謎すぎて笑うわ…」

そんな知識を総動員しても、
とうとう彼女の素性は全く不明なまま。

…宵町彼岸。
何かと月香と顔を合わせる、自分以上に危うい少女。

彼女について分かったのは、
……フルネームと、虫食いだらけの経歴と、大変曖昧な異能だけだった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 今日は風紀委員会の仕事は無しの非番だ。カフェテラスで何か軽く食べてゆっくりしようと思い立ち、何気なく足を運んできたが…。

「……っと、結構人が入ってるんだな…あ、すいません1名です」

店員さんにそう告げつつ、何となくグルリと店内を見渡していれば…。
「ん?」とその死んだ魚のような瞳が一人の少女を捉える。あれは…前に公園で会った…。

「……和元月香さん…だよな?…うん、間違いない。ある意味でインパクトがある遭遇だったし…」

公園での出会いは、もう一人…否、一体の出会いと絡めて印象が強かった。
流石にいきなり相席はあれだよなぁ、と思いつつも混雑しているのもあり、取り敢えずそちらへと歩いていこう。

「……こんにちは和元さん。相席大丈夫ですか?」

まぁ、こういうのは行動あるのみ。取り敢えず、律儀に挨拶してから軽く会釈混じりに尋ねてみようか。
彼女の後ろのほうから近づいてきた為、もしかしたらチラリと彼女のスマホの画面が見えたかもしれない。

和元月香 > 「…別にどうする訳でも無いけど…」

画面を流すようにスクロールしながら、
月香は何故かふて腐れたように唇を突き出した。

恐らく彼女は、自分の出自を知っている。

確証がある訳では無いが、ババアの勘が告げていた。
こいつ絶対なんか使って自分の出自盗み見たぞプライバシーの侵害や、と。
また自分を棚に上げるようだが、それは置いといて。

長い間生きていると、人の感情に鋭くなる。
カナタの場合もそれは同様。
彼女はいくら謎を隠しているといえど、まだまだ子供のようだ。

案外、分かりやすいものだ。

「…ふぃーっ…」

疲れては無いが気の抜けた溜め息をしてしまう。

そして不意に、後ろから声を掛けられて振り返る。

「…おっ、飛鷹君じゃん!やっほー」

うって変わって満面の笑みを浮かべ、さりげなくスマホはポケットに仕舞った。

飛鷹与一 > さり気なく彼女がスマホを仕舞ったのもあり、見えたのは僅かな文面やら画像のみ。
それだけで、普通なら気にも留めないのだが…問題が一つ。

「………っっ!?」

”意図せずに”第二の異能である「天眼」が発動し、そのスマホの画像やら文面を”読み取って”しまう。
勘が鋭い彼女なら、明らかに少年の瞳が変化していることに気づくだろうか?
具体的には、死んだ魚の瞳のように光が無い筈が、その瞳が僅かに虹色のように輝いているのだ。
…と、いうか目に明らかに光がある時点で違うのだが。

「……何だこれ……”メチャクチャ”だ…。」

何かを見たのは確かなようで、気が動転しそうになるのをグッと堪える。
ともあれ、小さく息を整えてから改めて彼女に顔を戻して。

「……あ、すいません。えぇと…。」

相席を尋ねてみた気がするが、今さっき異能で見えてしまったものの訳が分からず、やや挙動不審かもしれない。
この少年にしては、そういういかにも怪しげ、という態度は珍しいほうなのだが。

和元月香 > 「…へっ………?」

突如目の前の少年の様子が変わった事に、
驚いて声を掛けようとするも月香は見えたそれに思わず動きを止めた。

(…目の色が変わった…。異能…?だな…。
コントロール、できてないのかね)

頭の中は至極冷静に回り、
月香自体もすぐ落ち着きを取り戻した。
しかし、声を掛ける事はしない。

じっと飛鷹をガン見して、彼が落ち着くのを待つだけだ。

…そして、彼の呟きには
(お前もか………)
と何かを悟ったように通常運転の真顔になった。

「相席ならいいよ、どうせ誰も待ってないし。

…で、大丈夫?」

へらっと笑って相席を許した後、
穏やかな、しかし笑っていない目でそう尋ねる。
何らかの威圧感は感じるかもしれないが、
月香本人は完全に無自覚である。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > (…これ…アレか…もう一つの異能の方か…クソ、こっちもコントロール出来ないタイプなのかやっぱり…!)

内心で歯噛みしつつ、瞳の色はゆっくりと虹色から何時もの死んだ生気の無い黒瞳へと戻る。
”読み取った”情報はそれこそ断片的過ぎて前後不覚で繋がりも纏まりも無い。
そもそも、会った事も無く名前すら分からない。だけど見えてしまった。

ゆっくりと呼吸を整える。武道を齧っていたので、こういう呼吸法も多少は分かる。
何とか落ち着きはしたのか、改めて少女に意識を戻す…めっちゃ真顔で見られておる。

(…いや、まぁ明らかに挙動不審だったよなぁ、今さっきの俺)

泣きたい、変人扱いだけはマジで勘弁してほしいが心配だ。
ともあれ、彼女のお言葉に甘えて向い側の席に腰を下ろしつつ。

「……あ、ハイすいませんいきなり。もう大丈夫です」

おかしい、明らかに笑顔ぽいのに目は笑ってなくて謎の威圧感を感じる…!
和元さんにも発動しないよな?と、内心で己の異能に戦々恐々しつつ。

「…えーと、和元さん?目、目が笑ってないんで怖いですハイ…」

和元月香 > 「ならええけどねぇ??????」

笑ってない目で頬杖をついて飛鷹を見つめる月香。
クエスチョンマークを大量発生させて威圧感を無意識に上げる。
そして容赦なく、質問をぶつけた。

「で、何どしたの。邪気眼に目覚めたの?

何が“見えた”、とか教えてくれるかな?」

いつも通りの軽い口調だったが、
いつもよりずっと取り繕ったような嘘くさい笑み。
もし彼が比較的他人の感情に鋭いならば、

(話してくれますかね?ん????)
という威圧に満ちた副音声が聞こえるかもしれない。

そんな中パフェが運ばれてきて、
月香は一転店員にははしゃいだような笑顔を向けた。

しかし彼女がパフェをテーブルに置いて
背中を向けると、また嘘くさい笑みに戻った。

飛鷹与一 > 「………(あかん)」

何だこの尋問的な空気は!?こっちは異能が勝手に発動しただけで未だに訳分からんのに!
威圧感が無意識に最大発動している気がするのは気のせいではあるまい。

「……あ、アハハ…(うわーい、バレてるー…)」

こちらも乾いた笑みを返しつつ、心の中では笑顔のままで泣いていた。
と、いうか『話せよコラ』的なプレッシャーが凄い。どうしてこうなった…。

そして、店員さんがやって来た。彼女の注文なのだろう。パフェを持ってきたようだ。
それが来て彼女がはしゃげば、緊張感のある空気も緩んだ…訳が無かった!
店員さんが去っていけば、また嘘くさい笑みと謎のプレッシャー再開である。

「……何でそこまで知りたがるんですか?そもそも、俺が”見えた”のは乱雑で纏まり無いですよ」

何かが見えたのはもう正直に白状するが、彼女が何故そこまで気に掛けているのか。
そこをある程度話して貰わないと一方的に過ぎる、と言いたげに問い返し。

和元月香 > 「アッすまん……つい」

ハッと我に返った。
詰んでしまっていたので、何故か焦ったのかもしれない。
私とした事がッ、と大袈裟に天を仰いだ後両手を合わせて謝った。

「…いやぁね、顔見知りなんだけどね、妙に気になって調べてみたのよ。 

極端に忘れん坊で、医療系の魔術使えて、何か危険な薬物作れて、
多分君と同じ記憶読む系の能力持ってる子。

でも出てきたのは大雑把なのばっかでさー」

愚痴るように言うと月香はぱくっとパフェを一口頬張った。
別に隠すほどのものじゃないと、あっさりばらす。

「…飛鷹君も何か食う?奢らんけど」
甘さに頬をだらしなく緩めながら問う。

飛鷹与一 > 「……と、いうかすいません今のプレッシャーが引き金なったのか…和元さんの映像も若干見えました…何か別人でしたけど」

異能の発動が不安定すぎるのはさて置き、少年が見たのはおそらく彼女の”今までの人生”のどれか、だろう。
とはいえ、彼女についてハッキリとした詳細は未だに知らぬので、別人だった、という発言になるのだが。
それに、映像は基本的に断片的で繋がりが無いので、うまく説明が出来ないのだ。

「…忘れん坊で、医療系魔術が使えて、危険な薬物が使えて…俺と同じ?
…あぁ、えーとつまりスマホでちらっと見えたのはその人のプロフィールとかそういう感じのですか?」

愚痴るように口にする彼女の様子を眺めつつ、何とか空気がマシになったのでホッと一息。
とはいえ、本当に自分が見たものが彼女の調べごとに役立つとは思えないのだが。

「…いえ、ちょっとさっきの力の発動で驚いたのでアイスコーヒーくらいにしときます」

奢りはウン、別に自腹で普通に済ませるつもりだったから特に問題なし。
店員さんを呼び止めて、アイスコーヒーを注文しつつの。

「俺が見えたのは…”人体実験みたいな光景の一部”とか、マルコシアス?という単語とか…後は…”誰かが月を見上げている光景”、とかですね」

他にも色々見えた気がするが、記憶しきれなかった…と、いうかスマホの文章と画像だけで読み取れるのもアレなのだが。

和元月香 > 「…ほう?」

自分も見えた、という言葉に口の端を釣り上げる。
“いつ”が見えたのかなーなんて考える月香は、
別にばれてもいいのでそんな軽い考えしか無かったのである。

月香の今までの人生、大抵名前は同じ『和元月香』だった。
ヨーロッパ系などの理由により差異はあれど、
それは統率されていたように感じる。
だが容姿はそうでもなかったので、別人なのは当然だ。

「薬物…ってか爆発物だったよーな…。
いや、私の勘なんだけどねっ!
…うん、これは私が調べたものだよ」

テヘッと爽やかなウザいかもしれないおどけた笑顔で宣う。

飛鷹をにこにこしながら見つめていたものの、
本題に入ると流石に表情を変えた。

「…人体実験ねぇ……。
あと、マルコシアスって悪魔の名前よね?一体どゆこと?」

うーん、と悩んだ後月香はぼそりと呟いた。

「…月、ねぇ。
さっぱり文脈が無いな、そりゃ混乱はしますわ」

お疲れ、と気遣うように、母親のように
ぽんぽんと頭を撫でるように叩いた。

飛鷹与一 > 「……まぁ、そんな訳で絶賛制御不能で何時発動するか分からないんですけどね。
研究所にもこっちの力についてはあまり検査とか頼んでないですし」

吐息と共に肩を竦めて。異能二つ持ちの癖にどっちも自身でコントロール不可能とかどんな悪夢だ。
ちなみに、見えたのは欧風な感じだった。少なくとも日本ぽい光景では無かったように思う。

「……少なくとも、そういう方面については凄い人って事ですかね…。
気になったからって結構マメに調べてそうですよね和元さんって」

何か、それこそ出来る範囲で徹底的に調べそうな気がしないでもなく。
自分は彼女が調べていたその知人の人には勿論会った事はない。
…実際、本人と邂逅して「天眼」が不意に発動する可能性もある。
その時に何が見えるのか…はたして”自分の正気は保てるのか”。そこは少し自信が無い。

あと、テヘッとウザ爽やかな笑みを浮かべる少女に、心の中で正直にウザい…と、思ったが顔は穏やかだ。

「あ、ちょっと待ってください…マルコシアスじゃなくてマルコキアス、かな。すいません、本当に色々なのが混じって見えてしまったんで。
…まぁ、ウン。繋がりがあるハッキリとした情報としての映像を見れたらまぁまだマシなんですけど」

コントロールが可能ならそれも出来る目はあるが、コントロールが出来てない。
つまり、”見えるものの取捨選択が出来ない”という事だ。
そりゃまぁ、脈絡も何もあったもんじゃない。運ばれてきたアイスコーヒーを飲みつつ。

で、頭をポンポンと撫でられつつ…少し考え込んで。

「…俺はその人の事は”見えた”だけで会った事も多分ないでしょうけど…。
…何というか、”深い”人だとは思います。」

深みであり深遠であり深淵。底の底まで覗こうとすれば、逆に引きずり込まれる様な…。

(…って、憶測で面識の無い人をあぁだこうだ言っちゃ駄目だよな…うん)

異能に振り回されている、それを改めて痛感しながら彼女にこう尋ねる。

「…それで?和元さんはその人の事を調べてどうしたいんですか?」

和元月香 > 「あらまぁ…。
なんというか、うん。気を付けてくれ…」

頑張れ、も違うような気がしたのでそう言って月香は無駄に決め顔でサムズアップをした。

自分の異能はコントロールってなにそれみたいなタイプなので、アドバイスなど出来やしない。

「うん。
私は基本好奇心の赴くまま全力で当たって砕け散るんだ☆」

えへへ、と笑いながら。
…笑いながら言う事では無いが、生憎彼女の感覚は麻痺している。

「マルコシアスをマルコキアスって呼ぶ場合もあるらしいよ。
……オカルトなんこいつ…」

とことん謎だ、と忌々しげにスマホの写真を盗み見た。

そして問われた言葉には、にこりと笑って答えた。

「ん?さっきも言ったでしょ。好奇心だよ好奇心。
あまりにも謎で気になったの」

飛鷹与一 > 「気を付けて不意に来たりするんで、どうしようもないんですけどね…まぁ、頑張ります。」

異能の制御ってみんなどうやってるんだろうなぁ、と最近特に思う。
まぁ、コントロールも何もあったもんじゃない異能も多々あるのだろうけれど。
アイスコーヒーを飲みつつ彼女の話を聞いていたが…

(…あぁ、この人アレだ。好奇心で身を滅ぼすタイプかもしんない)

とか、思っていたりする。笑いながら述べている辺り、そういう感覚が麻痺してるのだろうか?

「……オカルト、かどうかは分かりませんが何かの暗喩とか皮肉、ジョークの類も有り得るんじゃないですかね」

本人に会った事が無いと、矢張り”見えて”も実感がイマイチ沸かない。
まぁ、この島はそれこそ謎に包まれた人々も数多く居るのだとは思う。

「……まぁ、ご本人と会った事が無い俺でも気にはなりますけどね。
実際、異能で断片的とはいえ色々見てしまったのもありますし」

好奇心、という点では完全に否定は出来ない。実際、少年もちょっと興味は出てきているのだから。

(…かといって、下手に踏み込みすぎてドツボ、も怖いよなぁ)

恐怖心じみたものがあるだけ、まだ少年は精神的には正気…なのだろう、多分。

和元月香 > 「いきなり来るのは怖いよねぇ…。
せめて発動するきっかけ、とか分かればいいんだけど~…」

うんうんと頷いて、チューっとストローでソーダを吸う。
せめて何らかの条件があれば、対策が出来そうな気もするのだが。

「まぁ、死なない程度に砕け散るからね!」

満面の笑顔で意味不明な念押しをする。

「そうかなぁ…。少なくともジョークでは無いような…」

…彼女の姿を思い浮かべる。
自由奔放な性格で、意外と友人も多いが…。
…そこに“狂気”を感じる事も少なくなかった。

飛鷹与一 > 「…多分ですけど、何かしらぶっ飛んでる人ほど俺の力は見やすいんだと思います。多分ですけど」

条件とも言えないかもしれないが。それに、見えたからといってそれがどうなるのか。
そもそもが、断片的過ぎて情報を拾い上げて纏めるのも一苦労だ。
ズズ…と、アイスコーヒーを飲みながら考える。

「…いや、砕け散ってる時点でアウトですよ和元さん。それ肉体が無事でも心が死んでるような」

満面な笑顔で意味不明な念押しする少女に、至極真っ当な返答をする少年。

「……狂気、だけではない気がしますけどね。それ以外もあるんじゃないかと」

人の心は単純なようでいて深い。だから、狂気の中に潜む、あるいは狂気に隠れた側面もある筈だ。
”相手を理解する”事を密かなモットーにしている少年にとっては。

(――誰であろうと向き合う姿勢は貫かないと)

そう、心の中で呟きながらアイスコーヒーを飲み干した。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「…と、そろそろいい時間ですね。俺はこの辺で失礼します。」

チラリ、と自分のスマホを取り出して時刻を確認してから一足先に席を立つ。
それではまた、と彼女に会釈をしてからレジカウンターで勘定を済ませよう。

そのまま、カフェテラスから外へと出れば一息。

「……見えないモノを見る、か…」

独り言を呟いて嘆息を零しながら、その姿は雑踏の中に紛れて行くだろう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から飛鷹与一さんが去りました。
和元月香 > 「ん……?
…じゃあ私がぶっ飛んでると!?」

少し考えて、勢いよく突っ込む。
心外だ、とプンスカするがどう見てもぶっ飛んでいる。

「大丈夫、直るから」

キリッとした顔でうなずくと、ソーダを再びすすり。
パフェの最後の一口を食べたところで、飛鷹は退席するようだ。

「じゃーねー」

ひらひら手を振りながら、考える。
…人体実験、マルコキアス、そして月。
宵町彼岸に巣食う物は、一体何なのだろう。

(…分かる訳ないや、調査再開だな)

スマホを取り出して、再び調査を始めた。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から和元月香さんが去りました。