2017/08/06 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > カラン、と氷がガラスに当たる音が小さく響く。
水滴を浮かばせたカップの中の液体を、月香はここ10分ほど飽きもせず混ぜ続けている。

「____...はー」

だるそうな溜息。
日曜日の夜、少なくとも女子高生がついていいものではない。
明日から月曜日なのは関係無い。そもそも今は夏休みだ。
つまり、それとは別関連の悩みだということ。

しかし悩んでいるにしては、外の景色を眺める月香の表情は穏やかだった。

(どうしたもんかねぇ...)
胸の中にぽつんと、ほんの僅か。
ゴマ粒のように小さいそれに、月香はとうに気づいていた。
そう、あれだ。思春期が夢見る、あの感情である。

ご案内:「カフェテラス「橘」」にクロノさんが現れました。
和元月香 > 『失礼します。夏限定爽やかフルーツのシフォンケーキです。』
「あ、どうもー」

可愛らしいウェイトレスの女性が運んできたケーキを、月香はいつもの軽い笑みで受け取る。
しかしウェイトレスが去る頃には、月香の笑顔は再び穏やかな表情へ様変わり。
別に装っている訳では無く、どうも自然とそうなってしまっていた。

(恋、かー。仮にそうだとしたら、始めてかもなぁ)

人を好きになった事はある。
人を愛したことはある。

でも、それはいつも結婚をしてからや、相手から交際を申し込まれ了承したあとの事。
人を愛せないとか、そういう事では無いのだが、この長い年月の間で月香は恋をした事が、全く無かった。

「...まだ恋だって決まったわけじゃないけどさ」

すこし唇を尖らせて、拗ねたような表情でスマートフォンの画面を眺める。
電話帳アプリが開かれたその画面に、【彼】の名前が記されているのに対し月香の眉間の皺が深くなる。

「んんんー?なんだこれ...」

初めての感情に、月香は首を傾げた。
放置されていたケーキにフォークを入れながらも、月香の眉間の皺が緩むことは無い。

____不快ではない。ただ、快感でも無い。
感じたことのないそれに、月香はただただ不思議がる。

(...恋なのかさえ怪しい)

幼い子供のような戸惑った思考に一区切りつけるため、
一口サイズにカットしたケーキを口に放り込む。

クロノ > (日曜の夜、そろそろ街も明日からの一週間に備えて寝静まり始める頃。入り口の扉のベルを小さく鳴らして、のんびりと入ってきたのは…個性的な駆動音を伴う、スイーツ系男子だった。)

──……。

(さてどこの席につこうかな?と店内を見渡せば、ポツンと見知った人影。)

…やぁ。久しぶり。元気にしてた?
(ちょっとご無沙汰な相手の隣に立って、ニコニコ顔で小さく手を振りながら声を掛ける男の子。)

和元月香 > もぐもぐ、一口サイズのケーキを味わうように噛み締める。
夏の果物の酸味と甘みが口いっぱいに広がった。

「____.....。
.....え、あ、クロノ!!」

らしくなく、大好きな友人の声に気付くのが遅れた。
しかしぱっと輝いたような笑顔で、クロノの方を向く。
先ほどの感情は全く消えてはいなかったが、久々の友人に会えた喜びの笑顔は本物だ。

「久しぶりだねぇ、私は元気だよー。
そっちこそ元気にしてた?」

そう言いながら、相席しよう!と手招きする。