2017/08/20 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にセシルさんが現れました。
■セシル > 8月も折り返し地点を過ぎながら、まだまだ蒸し暑さが続く昼下がり。
セシルは、珍しく私服姿(それも、男性とは考えにくいスタイル)でカフェテラス店内のテーブル席に腰掛けており、ストローでアイスコーヒーのグラスをかき回していた。
「………。」
グラスの中で回る氷に向けられた視線は、心ここにあらずといった風情である。
■セシル > 『………ラフフェザーさんは、帰れる人達が羨ましいって、思ったりしない?』
先日の警邏業務の中で、同僚から投げかけられた問い。
夏期休業中、オフの日は基本的に鍛錬にあてることにしていたのだが…落ち着いて考える時間が欲しかったのと、本格的に暑くなる前に購入した夏用の私服にろくに袖を通していないことに気付いてしまったので、こうして外で考え事をしている次第なのだった。
(彼女はこちら出身の異能者だから…色々あるのだろうなぁ)
セシルの場合、「帰れない」というのは物理的な事情だが…物理的には帰れても、他の事情が帰郷を許さない場合。
それが意味するところが…「自分は島の外での受け入れ先がないが、帰れる者にはある」ということが、羨ましかったり………あるいは、妬ましかったりするのだろう。
同僚はその口ぶりには感情を乗せることをしなかった。その意味をぼんやり考えながら、アイスコーヒーをすする。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に藤巳 陽菜さんが現れました。
■藤巳 陽菜 > 暑さに負けて立ち寄ったカフェテラス。
そこで見かけたのは以前困っていたところを助けてくれた風紀委員の先輩。
今の格好であれば男の人だと間違える事はなさそうだった。
「ラフフェザー先輩?もしかして、ラフフェザー先輩ですよね?」
…一回だけしか話してない事と以前と服の印象が違っていたことが陽菜の語尾を疑問形にしていた。
あの時は第一印象とその所作のせいで男性的にしか見えなかったけど…。
「えっと、覚えてますか?4月に案内していただいた藤巳です。
あの時はありがとうございました。」
■セシル > 「…?」
女生徒の声がかけられて顔を上げると、そこには年度始め頃に案内した後輩。
「ああ、ヒナか…久しいな。元気そうで何よりだ」
穏やかなアルトの声はあまり男性的ではないが、一方で口を横に広げるような、大らかな印象の笑顔の作り方は、あまり女性的ではない。
彫りの深い中性的な顔立ちは、見た目の印象と立ち振る舞いのどちらを重視するかで、どちらの性別ともとれそうであった。
とにかく、この中性的な先輩は、陽菜のことを覚えていたようである。
■藤巳 陽菜 > 「何というか…私服だと雰囲気違いますね。」
女性だとしっているのもあるが服装が違うだけで大きく印象が変わる。
それでも、その人のよさそうな笑顔は以前と変わらないものだった。
「おかげさまでこの島での生活にも慣れてきました。
…見ての通り未だ元には戻れてないんですけど。」
そういいながらその蛇の身体を相手に向ける。
前に会った時の今にもコケそうな様子はもう無い。
「えっと、そこ、先輩の前の席に座らせてもらっても大丈夫ですか?」
■セシル > 「鍛錬をしっかりするつもりでいると、なかなか着る機会がなくてな…
こちらの夏の気候に合わせた私服を6月頃に仕入れたは良いが、実際に着て外出するのは今日が初めてという有様だ」
「様になっていればいいんだがな」と、楽しさと気恥ずかしさの入り交じる、やや複雑な笑顔を見せる。
「…大分動けるようになったとはいえ、まだ色々と大変そうだな。
ああ…構わんぞ。一人でぼーっとしているよりよほど良いからな」
陽菜の近況を聞いて、少し気遣わしげな視線を向けるが…相席について尋ねられれば、朗らかな笑顔で了承した。
■藤巳 陽菜 > 「似合ってますよ!それだけに、あんまり着れてないの勿体ないですね。
やっぱり、風紀委員って忙しいんですね。」
そう言えばこの島に来てからいや、異能に目覚めてから新しい服なんて買っていないし
私服も殆んど来ていない事に気がついた。
こんな身体だから仕方がないのだけれど…。
働くとき以外でも自分を鍛える必要があるとか大変そうだ。
「普通に生活する分にはもうそれほどでもないですよ。
…この島だったら不便も多くないですし。
いいんですか?ありがとうございます。
でも、ラフフェザー先輩ってボーッてしてるってイメージはなさそうですよ。
何か考え事でもしてたんです?」
今ではこの身体は問題なく扱える。
それこそ、着れる服が制限されるとか環境に問題があるものが多い。
それらは、努力してもどうしようもない。
■セシル > 「いや、ある程度メリハリを付けて務めることも出来るんだが…
私の場合、昔からの習い性で、全く鍛錬しない日がそうそうないからな。そうなると着替えるのが億劫になってしまうんだ。
…でも、ありがとう。せっかくそう言ってもらったなら、まとまった時間がある日は着てやるべきかもしれんな、私服も」
私服姿を褒められて、自然に受け取って柔らかく大らかに笑う。
…セシルは本当に、用事がなければ私服を着ないくらいの生活をしているのだ。
「元に戻る手段を探るにも、その手前の日常生活でつまづいていては大変そうだからな…何よりだ。
そうだな…普段ぼーっとするとしたら大抵自室でだから、あまりそういう姿は他人に見せていないかもしれん。
………まあ、今日は気分転換も兼ねて、外でという感じだな」
「理由はお察しの通りだ」と軽く笑いつつ、陽菜の着席する様子を伺っている。
介助の必要性を、それとなくチェックしているのだろうか。
■藤巳 陽菜 > 「是非そうするべきですよ。
折角、似合ってるんですからもっと着てあげればいいと思います。」
風紀委員は制服でいる割合が多くて難しいかもしれないけど…。
それでも着れる時は着るべきだと思う。
「確かに気分転換は必要ですもんね。
…ここ初めて来ましたけどいい感じのお店ですね。」
そう言いながらその蛇の身体で椅子を引いてそこに座る。
椅子に蛇の身体を軽く巻きつけてしっかりと安定している。
無意識のうちにここまで身体を使えるのだから恐らくもう介助の必要などはないいだろう。
■セシル > 「ははは…前にも「最初に女だと言うべきだ」と言われたが、ヒナはこういう時には押しが強いな」
朗らかに笑って「そうしてみるとするよ」と言うあたり、悪意は特にないのだろう。
「職務はともかく、鍛錬に気分転換の必要は特に感じていないがな…というか、職務の気分転換にランニングをしたりするし」
制服でいると王子様っぽい容姿の割に、思考は割と体育会系だった。
「ああ、私も普段はそんなに来ないんだが…落ち着いた雰囲気が考え事に向いていると思ってな」
陽菜が無事に座ったのを確認して、改めてアイスコーヒーのグラスを手に取り、少し啜る。
■藤巳 陽菜 > 「お、押しが強いですか?
す、すいません!実際似合ってるしそうした方が良いと思ったんです!
はい、そうしてみてくださいね。」
…なるほど確かに押しが強い。
謝りながらも勧めて勧めていく。
「なんていうか…凄いですね。
…私はそういうの得意じゃないほうなので。」
体育祭やマラソン大会では休みたいタイプ。
自分から進んで走ったりすることはまずないだろう。
「確かに…で、どんな事を考えてたんですか?
仕事の事とかですか?あっもしかして恋愛関係とかだったり!?
あっすいません、えーと私もアイスコーヒーください。」
そんな事を言ってからすぐに通りかかった店員に飲み物を頼んだりする。
■セシル > 「そこまで服に執着があるわけではないが、似合うに越したことがないとは思っているからな。
好意的な感想ならば有難いよ。少なくとも、私は」
穏やかに笑って、謝りながら押してくる陽菜の言葉を受け止めた。
「昔から、随分鍛えられたんだ。おじい様が、剣で名を馳せた方だったから。
私も、座学よりは身体を動かす方が好きな子どもだったし」
思案がちに視線を落として、腰に差した剣の柄に触れる。
口ぶりは、在りし日を好意的に思い出すそれ。
「仕事は今出来ることをそれなりにこなせているし、今更考えるべきことは多くないよ。
…恋愛も、今のところ特にするつもりはないしな」
そう気安く語るが、恋愛に関してセシルが口にした言葉は、人によっては冷酷に響くものかもしれない。
「………まあ、「異邦人」という己のあり方について考えていた、というところだ」
そして、肝心の内容は、穏やかに笑う顔とは裏腹に、的を射る気がないかのような大雑把さだった。
■藤巳 陽菜 > 「おじい様の影響だったんですね。じゃあ、仲良かったんですねそのおじい様とは?
私も家の中で遊ぶのが好きなこでしたよ。」
…たとえそのおじいさまがいきていたとしても
会う事は難しそうであるとは思うが。
「そうなんですね…。」
何となくがっかりとしたようなトーンで言う。
恋愛関連の話を聞きたかったのしれない。
「異邦人ですか…。
…私はこの島に来て余りたってないのでなんとも言えませんけど…。」
異邦人、別の世界から来た存在陽菜にしてみれば思うところはある。
「…やっぱり、他の人と違うって怖いですからね。
ラフフェザー先輩はあまり気にする感じじゃないですけど。」
普段の格好や仕草をみれば彼女はあまり他の人と違う事を気にするタイプには見えないけども。
■セシル > 「ああ…うちはしばらく男の子がいなかったからな。随分可愛がって頂いた。
父上も、趣味の狩りに同伴させて下さったし」
朗らかに笑いながらも、過去形。
そして…その口調から察せられるのは、「男の子の代用」としての、幼い頃のセシル。
「随分がっかりされているな…どんな話を期待したんだ?」
露骨な陽菜の声のトーンに、苦笑い。
「…いや…別に元の世界でも、そこまで「同じ」わけでもなかったからな。
その辺りは気にしていないよ…少なくともこの島にいる間は、気にすることもないだろうな」
穏やかにそう言って、アイスコーヒーを啜る…と、なくなってしまった。
店員を呼んで、おかわりを頼む。
セシルの「王子様」の板につきっぷり。子どもの頃の扱い。
「元の世界でも「同じ」でなかった」と語る、その意味とは…。
■藤巳 陽菜 > 「じゃあ、小さい頃から今みたいな感じだったんですね。
…想像したらなんか可愛い。」
その異常さに陽菜は気づけない。
その、小さい頃からのそれが今まで続いてる事も変だと思わない。
それほどまでに今のセシルが違和感なく男性的だったから。
「えー、普通に実は好きな人がいて悩んでるみたいな?」
それが男子か女子かとかはどっちでもいい。
陽菜は自分にはそういう話はないくせに人のそういう話を聞くのが好きだった。
「確かにこの島では人と同じ人なんて殆んどいませんからね。
流石に本土の方とかだとかなり気になりますけど…。」
セシルの格好ならばともかく陽菜の格好は酷く目立つだろう。
普通に外出しても噂になるし人だかりも出来てしまう事だろう。
身体的にはともかく環境的に島外は難しい。
「本土の方ももう少し生きやすい環境ならいいんですけどね…。
やっぱり異能を何とかしないとな…。」
そう言うと来たコーヒをさっさと飲んでしまって…。
「すみません考え事の邪魔をしてしまいました…。
私そろそろ行きますね。また、よろしくおねがいします!」
するりと椅子から身体を解いて伝票を持てばそのまま会計を済ませて出ていく。
あのカッコいい先輩でも悩むことはあるのだなあ…なんてそんな事を考えながら。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から藤巳 陽菜さんが去りました。
■セシル > 「あんまり小さい頃だと、今とは別の意味で男女の区別は問題にならなかったし…そういう意味では、まあ普通に可愛い幼少時代だったと思うぞ」
そう言って、鷹揚に笑う。
セシル自身も、「女」を押し付けられるくらいならば「男の子の代用」で良かったと思っているので、その異常さと、それが自分に与えている負の影響について、しっかり認識出来ているとは言えない。
ただ…幼少時代の扱いが、「男の子の代用」や、「妾の子」という立場ではなく。
「セシル」そのものを、認めるような形でそうなっていたならば。
しかし、今のセシルは、自分が「家」によって傷つけられたことに気付けないまま。
元の世界のことを懐かしく思いつつも、かつてほど帰りたいと思えなくなっている自分に、戸惑いを覚えているのだった。
「そういった気持ちが未だによく分からんからなぁ…期待に添えず残念だ」
しかし、陽菜がセシルの歪さに気付かず、追求することもしなければ、頓珍漢な陽菜の願望を鷹揚に笑い飛ばす。
「皆、背負う歴史も、身体も、力も様々だからな。
島の外に出ればそうもいかんのだろうが…まあ、私の場合この世界にも似た言語があるようだから、そこまで悲観はしていないよ。
………「モデル都市」としてのこの島のあり方が、少しずつでも波及すれば良いんだがな」
身体の見た目だけならば、今の陽菜よりセシルの方が、溶け込みやすいかもしれない。
だからこそ、今の陽菜のような身体の者が、少しずつでも、島の外で生きやすくなるように、願う言葉を口にした。
「いや、一人で悶々としているよりよほど有意義な時間だったよ。
機会があれば、またコーヒー片手に話そうか。場所は、ここでなくとも構わないし」
そう言って、片手を挙げて陽菜を見送り…自分も、おかわりのアイスコーヒーを飲んでしまうと、勘定をしてカフェテラスを去ったのだった。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からセシルさんが去りました。