2018/06/24 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 午後、ティータイムのど真ん中よりは少し後、くらいの時間帯。
一人の少女が店内の中ほどの席で、アイスティーのグラスのストローをかき回している。

「…。」

少女の唇から、意図して体の中から凝りを吐き出すような、絞った呼気が吐き出された。

美澄 蘭 > 休日ということでソロ奏者との伴奏合わせの予定はあったのだけれど、他のソロ奏者が部室に顔を出したため、急遽彼とも打ち合わせをしてから練習を引き上げてきたのだ。
予定になくて楽譜を持って行っていなかったため、軽くしか話せなかったけれど。

(メモは取ってきたし…帰ったら楽譜に写さないと)

メモを軽く確認して、アイスティーをすする。

美澄 蘭 > 入試対策は教師に頼ることの多い蘭にとって、同好会での練習は同年代の相手と対等に、それでいて濃密な会話の出来る大事な機会の1つだ。頭の切り替えにもなってくれるし。

(演奏会まであと1ヶ月ちょっとだから…私の誕生日まで、1ヶ月ないのか。
最近忙しかったから、あんまり実感なかったかも)

「本土で教育を受けていたら既に大学生になっていたかも知れない歳だし」ということで、今年度から特に用事がない時は私服で通学するようにしているのだが…いよいよ大学生らしい年齢に突入するのだと思うと、何とも言えない感情を抱く。

(…ちゃんと、大人に近づけてるのかな、私)

微妙な顔で、アイスティーをすすり続ける蘭。

美澄 蘭 > この学園都市に来て、本土ではそうそうないくらいに多様な人々と出会って、話をして、色んな経験をして。
自分の視界は、世界は、確かに広がったと思う。
けれど…その広さを受け止める、引き受ける力が、自分にあるかというと…。

(…焦っても、しょうがないんだけどね…)

ストローから口を離して、少し沈んだ吐息を零す。
世間知やら何やらが取り柄ならば早熟という形もあり得るのだろうが、良くも悪くも自分がそういうタイプではないことを、蘭は自覚していた。

美澄 蘭 > 今思えば、中学校時代の学校生活の辛さも、自分の出自だけではなく、そういった特性の衝突に由来していた部分があるのだろう。
…まだ、「彼ら」と正面きって向き合いなおす勇気はないけれど。

(…今の私に、どれだけ「何か」を積み重ねたら、向き合えるようになるのかしら)

経験。知識。記憶。何でも良い。
…でも、どれだけの積み重ねが要るのだろう。少しだけ気が遠い思いをしながら、アイスティーをすすり直した。

美澄 蘭 > (…と、将来のこともいいけど、そのことにばっかり囚われて悲観的になるのも良くないわよね)

アイスティーを飲み切ってから、頰を両手で軽く叩くようにして包む。
遠い目で先の方を見過ぎて、うっかり足元が疎かになりそうな自分を自覚したからだ。

残りの学園生活、やりたいことに溢れ過ぎているくらいなのに。
後悔を出来るだけ減らせるように、走りきろうと決めていたのに、遠大な目標に視界を奪われて、うっかり足元を掬われるところだった。

美澄 蘭 > 頰を掌で包むようにしながら、鋭く息を1つ吐いて、立ち上がる。
それから掌を離して荷物を手に持つと、立ち上がる。

(帰ってからもやりたいことはあるんだから、あんまりぼーっとしてるのも良くないわよね。
この「距離」を考えるのは、やりたいことが一段落してからで十分だわ)

まずは、今日の同好会での練習の復習やら、楽譜へのメモの写しやらだ。
蘭は会計を済ませると、力み気味の早足でカフェテラスを後にした。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。