2015/08/06 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に惨月白露さんが現れました。
惨月白露 > 「いらっしゃいませー、何名様でしょうかー❤」

彼は、そう言って、
にっこりと笑顔でお客さんを迎え入れる。

「はーい、では、こちらのお席にどうぞー。」

入って来た客を空いた席に通しながら、彼は内心でため息をつく。

『風紀委員として働いてると給金が出るけど、
 正直それに手をつける気にはならねぇしなぁ……。

 だけど、学生には色々とお金が入用だってーことで、
 あくまで健全に金を得るためにアルバイトをーって思ったはずなんだけどなぁ。』

『健全に』というつもりだったのに、
彼はスカートを翻して店内を走り回っている。

夏休みはお客さんが増える、が、実家に帰るとか、遊ぶとか、
そういった事情でシフトは穴あきになりがちだ。
つまり、むちゃくちゃに忙しい。

「―――あ、はーい!!!ただいまお伺いします!!!
 しばらくお待ちくださーーーい!!!!」

『ったく、これだったら身体売ってる時のが疲れなかったっての。』

内心でもう一度ため息をつきながら、店内を右に左にとひた走る。
ホールスタッフが微妙に足りていないのだ。

だからこそ、即日で入れたとも言うが。

惨月白露 > 奥でこっそりと水を飲んでパンパンと頬を叩く。

『風紀委員で働くのは、あくまで俺の贖罪の為だ。
 ……それで貰った金は自分の為じゃなくて、
 他のヤツを助ける為に使いたいからな。

 ―――自分が使う分は、それとは別にかせがねぇと。』

時計を見る、勤務時間は残りわずかだ。
誓いを新たにすると、再びホールのほうへ出て行く。

「―――大変お待たせしました、
 ご注文をお伺いしても宜しいでしょうか。」

にっこりと笑って、ハンディを取り出す。
ぴょこんと頭上の耳が揺れた。

惨月白露 > にっこりと営業スマイルを浮かべていたが、
目の前でニヤニヤと下卑た笑顔を浮かべている客を見て眉を顰める。

「―――なんでこんな所に来てんだよ、
 あんたらには落第街のやっすい店がお似合いだぜ?」

その客は、落第街でよく見た二級学生の一団だった。
『お前こそ、なんでこんな所で働いてんだよー。』
『オイオイオイオイ、俺たちは客だぜ?そんな口のきき方はないんじゃないかなーー!!!』
『あっれーーー?来る店間違えたかなァーーー!!!』
『あ、注文?アレ頼むよアレ、いつもやってくれたやつさ!!!』

そんな事を言っている二級学生を見ながら、
ギリギリとハンディを操作するようのペンを握りしめる。

惨月白露 > 『二級学生からあの『一斉審査』で一般学生に上がったのは、
 一部の生徒だけだから、それを妬んで嫌がらせに来たってとこか。
 
 ―――こいつらも本当、暇なやつらだな。』

ハァ、と息をつく。

「で、注文は?なんだって?
 そんなメニューはここにゃねぇよ。
 冷やかしならさっさと帰れ。」

しっしっと手であしらうと、
踵を返して別の客の所へ行こうとすると、
『オイオイ、注文取らずにどこいくんだよ』と呼び止められる。

『クソが、この忙しい時に。』
ギリギリと拳を握りながらも、にっこりと振り返る。

「お客様、ご注文が決まりましたら。またお声を―――。」

彼が振り返ると、ぐいと胸元を引かれ、
そのままバランスを崩して、大きな音を立てて机に倒れこむ。

そこに追い打ちをかけるように、二級学生の一人が、
『あー、この新人店員さんが転んだ拍子に水が倒れちまったー。』
と、ワザとらしく言いながら、頭上からコップに注がれた水をかけた。

その二級学生の連れが、その様子を見てケラケラと嗤う。

惨月白露 > ぷるぷると震えながら立ち上がると、
手の甲で顎に垂れて来た水を拭う。

「これで満足したか?
 したなら、もうここらで帰っておけよ。
 ―――お前らの為だからさ。」

ピクリと二級学生の男の身体が動く。

『この……ッ!!!アガリの癖にばかにしやがってぇッ!!!
 てめぇのがどうかんがえても職歴やべぇのに、
 なんでお前が通って俺が通らねぇんだよ!!!』

勢いよく立ち上がって叫ぶと、拳を握りしめて白露に迫る。

惨月白露 > 男の拳は白露の頬を捕え、異能によるものか、
白露はゴム毬のように吹き飛んで、その場に転がった。

『フーフーッ』と息を荒げながら興奮する男は、
追撃を仕掛けるべく白露にゆっくりと歩み寄る。

遠巻きに眺める客は、直前のやり取りから事情を察しているのか、
あくまで『我関せず』の沈黙を貫いている。

取り巻きの他の二級学生は、
『ちょっ、パイセン、さすがにやべーっすよ!!!』と声をかけているが、
どうやら頭に血が上っている男には届かないようだ。

ぐいっと殴られた頬を手で拭うと、
上半身を起こし、歩み寄る男を睨んだ。

「―――おい、そろそろやめとけよ、
 ……ここは『落第街』じゃねぇんだぞ。」

その静止の言葉は、男の怒りに油を注いだのか、
男はさらに呼気を激しくする。

『さっきからバカにしてんのかお前はよぉッ!!!!
 二級学生じゃなくなって調子のってんじゃねぇのか?ああん???』

獣の吠え声に近い声で叫ぶと、
まだ体を起こし切れていない白露の腹目がけて蹴りを放つ。

惨月白露 > 蹴りが腹に突き刺さると、
転がった後に『ゲホッゲホッ』と嘔吐きながら蹲る。

さすがに騒ぎは大きくなり、
客も各々に風紀委員や公安委員会に連絡を入れる。
それを見て慌てて取り巻きの男達が
未だに呼吸を荒くしている二級学生の男を必死に抑え込み、
『―――す、すみませんっしたーーーッ!!!』と謝りながら店を出て行くと、

ようやく、他の店員に『大丈夫か?』支えられて立ち上がる。

「すみません、俺のせいで。」

彼が耳を伏せて謝ると、店員は苦笑いしながら頬を掻く。
やがて、申し訳なさそうに、
今日はもう帰っても良いという事、加えて、
もう来なくてもいいという旨を彼に告げる。

「ああ、はい、当然ですよね。」

ますますしゅーんとするが、
しゃーないかと息をついて、再び謝った。

『さすがに、喜んで厄介者を置くってことはねぇだろうしな。
 ―――あぁ、だから、風紀で働いてると給料がでんのか。
 仕事柄あんな手合いから恨みも買うだろうし、店に迷惑かかる事もあるわな。』

と、妙に納得しながら、制服から制服へ着替える。

「すみません、ご迷惑をおかけしました。」

最後に店員にぺこりと一礼すると、
耳を伏せて、元気なく垂れ下がった尻尾を引きずるように店を出て行った。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から惨月白露さんが去りました。