2016/07/18 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に秋月文海さんが現れました。
■秋月文海 > かれこれカフェオレも4杯くらいは飲んだだろうか。
学校からここまで歩いてくる間にすっかり水分を失ってしまっていた。
減ったものは、補う必要がある。
そうして光る髪の女子生徒、秋月文海の机の上には、大量のスティックシュガーの残骸が並ぶこととなった。
■秋月文海 > じめじめとした嫌な季節をため息混じりに通り過ぎれば、次は夏が来る。
気候の移ろいは、「今日は先生が居ないから」などという理由で急に時間割変更になったりはしない。
当然のことではあるのだが、文海はそれがたまに恨めしくなることもある。
「……ここから駅まで……えーっとそれから家まで……
か、帰れる気がしない、です。無理です、死んじゃう、です」
すっかり暗くなった窓の向こうで、遥か遠くに電車の通り過ぎる音。
つまり、少なくともあの辺りにある駅までは歩いて行く必要があるわけで。
それが何とも恨めしい。まあ、それはそれは風流に欠けた理由であった。
■秋月文海 > 「夏、ですか」
すっかり量の減ったカフェオレ(ほとんど砂糖に近い)を手持ち無沙汰にマドラーでかき混ぜながら、文海は呟く。
去年の夏もこうしてニルヤカナヤでドリンクバーのコーヒーを飲みながら、外の暑さを憂いていたような。
……もっと言えば、冬にもここでホットドリンクを片手に「寒くて死にそうだ」などと考えていた気もする。
一年が、穏やかに過ぎている。
少なくとも彼女の周囲では、だが。
■秋月文海 > 何もない、という事を彼女は嫌っていないし、むしろ最善ではないにしろ好ましいとも思っている。
それは、自分の身や周囲の生徒達に何かまずい事が起きた、あるいは起こしてしまったという訳ではないことを意味している。
つまるところ、自分が一年「普通に」生きることができたということの証左であって。
秋月文海という少女がこの学園で手に入れたい未来の一部を、前もって体験しているとも言える。
「……そう、ですね。
また、来年も……卒業まで、こうしているのも悪くない、です」
■秋月文海 > 虚しいようで、充実しているような。
砂糖のように甘いようで、コーヒーのように苦いような。
夏のように暑くて、この席のように涼しいような。
割り切れないけれど好ましい未来を過ごせればいいなと、文海は思う。
「……そろそろ良い時間、です。
もう帰らないと、……ですよね」
ふう、と息をひとつ吐いて、砂糖の塊に近いコーヒーを一気飲み。
かたんという軽い音を立ててカップを置くと、彼女は席を立った。
その後日が暮れてもなお犯罪じみた外の暑さに、「もう少し店にいればよかった」だの「コーヒーテイクアウトすればよかった」だのとこぼしていたそうな。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から秋月文海さんが去りました。