2015/06/25 のログ
ご案内:「食堂」に桜井 雄二さんが現れました。
■桜井 雄二 > 食堂に男が姿を見せる。
いつものスーツ、いつもの無表情、いつもの食材、そして。
いつもの料理を作るはずだ。
「キッチン、使わせてもらうぞ」
誰に言うでもなく呟き、前もって冷蔵庫に入れておいた白ごはんを取り出す。
■桜井 雄二 > 夕方、男が一人で作る料理はチャーハン。
男は異能ゆえに火の温度を完璧に管理できる。
材料さえ揃っていれば―――――完全なるチャーハンができる!!
「にんにくはみじん切り、玉ねぎは粗くみじん切り、ソーセージは幅2~3mmで斜め切り」
「缶詰のコーンは水気を切っておく」
半端な水気などチャーハンには不要だ。
冷やした白飯の中に水分を閉じ込められればそれでいい。
■桜井 雄二 > 「バター! にんにく! たまねぎから鍋へ入れる!!」
「以降、『マジで?』というくらい強火でいく!!」
「無論、温度の調節は異能による熱視界によりプラスマイナス2度の誤差だ!!」
それにしても料理中によく喋る男である。
彼は普段、ぱっと見や対応から氷の男と称されることがあるが。
実際は天然の入った、真面目だがちょっとIntの低い兄ちゃんである。
男子寮住まいの学生なら彼の奇行を目撃したことも一度や二度ではあるまい。
■桜井 雄二 > 「たまねぎがその身を半透明にする頃にコーンとソーセージを投入ッ!」
「以降、軽く熱が通るまで3分21秒……いや、3分19秒ッ!!」
彼の紅い右目が爛々と輝く。
「経過―――――ごはん投下ッ!!」
「味付けに塩と顆粒のコンソメを追加!!」
「あとは中華なべを振りながら全体に火を馴染ませるッ!!」
断っておくが彼は一人である。
食堂内にいる学生たちも『また桜井か』という表情で半ば以上諦めている。
桜井は独り言の多い男である。
ご案内:「食堂」に湖城惣一さんが現れました。
■湖城惣一 > ぐぎゅるるる。
腹の虫を鳴らしながら食道に足を踏み入れる不審者が一人。
和装ベースの奇妙な服装、腹筋を見せつけるが如き装い。
腹には真一文字の美しい傷が刻まれている。
名を、湖城惣一。いかにも空腹といった顔色で扉を開けると、暴力的なまでの香ばしい香りが腹に直撃する。
「……これは、まずい」
戦慄。その香りに胃袋が活性化し、男の体力を全力で奪っていく。
■桜井 雄二 > 「ご飯がパラパラになってきたな…」
「水分を米粒の一つ一つに封じて外側がコーティングされた最高のコンディションだッ!」
なお、諸説あるがパラパラのチャーハンはあくまで日本人の好みである。
「ここに醤油で最後の味付け! というやつだッ!!」
「中華料理であるチャーハンの味付けに醤油というのもおかしな話だが、とにかく醤油だ」
「ここで完成かなぁ……フフフフ、自分のことながら完璧な出来栄えだ」
「ダメ押しに乾燥パセリを散らせておくとしよう」
料理を終えて食堂のテーブルスペースに行くと。
「あ……」
腹の音を鳴らしている奇妙な服装の男。
「……腹が減っているのか?」
■湖城惣一 > 「ああ……少々限界でな」
元々、日常を貧血・飢餓状態で過ごしている男だ。
限界まで酷使された肉体は明らかに栄養を求めていた。
たまらず、普段はあまり利用しない学生寮に飛び込んだのだが――。
米の一粒一粒に火が通ったようなパラパラのチャーハン。ほのかに香る醤油の香り。
べちゃっとした焼き飯とは一線を画すその出来栄え。
食にこだわりの薄い男ですら、ややも腹を鳴らしてしまうのは仕方がない。
「何か食べようと思っていたところだが……」
■桜井 雄二 > 「そうか、限界か………」
沈思黙考。ここで自分の腹を満たすのは簡単だ。だが。
「よかったらこれを食わないか? ガーリックバター焦がし醤油チャーハンだ」
「それとも、もっとおかゆのような胃に優しいものがいいか?」
皿とスプーンをテーブルに置いて対面に座る。
「俺は生活委員会だ。困っている人をそのままにはしておけない」
■湖城惣一 > 「……む」
しばし、停止。魅力的な提案だ。嗅げば嗅ぐほど腹は減る。
改めて目を閉じてたっぷり十秒。己の活動限界と諸々にかかる時間を冷静に弾きだしたあと。
「かたじけない。有り難く頂戴しよう」
頭を少し下げ、座り込む彼の対面に己も腰掛ける。
「俺は湖城惣一。一応はここに居を構えてはいるが……事情があってな。あまり男子寮に顔を出しては居ない」
世話になる以上、名乗るぐらいはしておこう、と。竹刀袋をすぐ近くに立てかけながらもう一度頭を下げた。
■桜井 雄二 > 「湖城惣一か。俺は桜井雄二、生活委員会で、怪異対策室三課の新人だ」
「食えるのであれば食ってくれ、人に料理を食べてもらうなんて久しぶりだけどな」
座ったまま彼の容姿を見る。
「……金欠なのか? 奨学金制度や常世の学生を優遇するバイトもあるが」
「非礼に当たらないのであれば、事情を聞かせてほしい」
胸ポケットからメモ帳とペンを取り出しておく。
相手の事情は込み入っているかも知れないからだ。