2016/07/09 のログ
ご案内:「部屋」に霜月零さんが現れました。
霜月零 > 「…………」

沈痛な面持ちで部屋に帰ってくる。
ついさっきまでデートをしていたとは思えない表情だ。
……それもその筈。恋人の雪城氷架に異常事態が発生したのだから。

「何が何でも、ありゃおかしいだろ……」

異能の暴走。
それだけなら、ままある話ではある。だが、あれだけ日常的に異能を使っていた氷架が、あのレベルの暴走をやらかすのは考えづらかった。当人の動揺っぷりがその違和感を後押しする。

霜月零 > そして、もう一つの不安要素。
直感である。

「……俺の『直感』の正体は、根源接続だ」

霜月零の異能『根源接続』は、この世の根源に接続し、そこにあるあらゆるデータを引き出す事が出来る異能だ。
当人が使いこなせていないため、現在は『根源接続・武典再生』として、武術しか任意で引き出す事は出来ない。
だが、零自身が異能を自覚する以前より、無意識に『直感』と言う形でアクセスし、情報を読み取って来たのだ。
異能を自覚し、その説明を受けた際に自分の『直感』の正体も認識している。
根源接続によって得た情報が、強い危機を訴えかけると言うことは。

「何か、何かがマズいんだ……!」

アレは、決して単なる偶発的暴走ではないという事。
恐らく、ちょっと体調が悪かったとかそう言うレベルの話でもない。もっと致命的で、もっと大きな問題のはずだ。

霜月零 > だが。
霜月零の異能は、不完全。
否、異能自体は完全だが、それを使いこなせていないのだ。
よって。

「何かがマズい……のに、その何かが分からねぇ……!」

あくまで『その状況が良くない事だ』と言う事だけが確認できており、そこから先はすべて不透明。
現状、何かがマズい以上の情報を得られていないのだ。
これでは不安は増すばかりである。

霜月零 > 「…………」

少し考える。
ここ最近は、本当に平穏そのものだった。何かショックな出来事があったというわけでもなく、確かに触れ合ってドキドキはしたものの、それはデートの中ではよくある事だった。
最初に体を重ねた時は異能の暴発もあったものの、それ以降はそんな事も無く。
やはり、メンタル面での問題は考えづらい。つまり。

「体調。もしくは、異能自体のエラー」

だが、霜月零の専門は武術。異能は門外漢。
よって、それ以上の所はどうしても思考が届かない。

「……やるか」

それでも、決してこの状況は放置できない。
故に、一つの覚悟を決め、精神を集中する。

霜月零 > 異能『根源接続』発動。
自分の体を通じて根源に接続、アカシック・レコードよりこの状況の元凶を読み取ろうと―――

「……っづぁ!」

瞬間。
余りに強烈な頭痛に根源接続が強制的に解除される。
当然、読み取りは失敗。
この世全ての始まりである根源には、この世全てが記録されている。
その情報量は膨大で、人一人に扱い切れるものでは決してない。異能を使いこなせていない零では、任意の情報を獲得する事は出来ないのだ。
それはまるで、とてつもない広さを誇る図書館にいるようなもの。
自分の専門分野の本は見つけられても、そうでない本を見つけるのは至難の技。
偶発的に使える本を見つける事はあっても、それこそ星の数ほどある本の中から目当ての一冊を見つけるのはほぼ不可能だろう。
それが現時点での霜月零の限界であり、それはすなわち、異能でもって氷架の異常を診断する事は出来ないと言う事だった。

「クソ、が……!」

苛立ちに思わず壁を強く殴り付ける。
何かがマズい、その何かが分からない。分かる手段はあるのに、自分が使いこなせないから分からない。
そんな状況に苛立ちが募り、この数十分で零の精神も相当に参ってしまっていた。

霜月零 > 「今、俺がああだこうだ考えても意味はねぇか……」

現状出来る事が無い。それを認め、それに苛立つ。
だが、肯定要素も存在する。雪城括流がその場にいた事だ。
その場を離れかけていたにせよ、恐らくその瞬間は確認しているだろう。
彼女は異能に関して造詣も深く、氷架についても自分より余程詳しい。
彼女ならば、適切な判断を下してくれるはずだ。

「一息置くしかねぇな」

そうやって、自分を納得させる。
そうしないと自分の方がどうにかなってしまいそうだった。

霜月零 > 「……クソ、走るか」

だが、何も出来ないからと言って、何もしないでいたら精神がもたない。
気持ちを切り替えるために、ランニングをすることにした。



―――結局、心配が募って気持ちが全然切り替わらず、一晩中走り続ける事になるのは先の話である。

ご案内:「部屋」から霜月零さんが去りました。