2016/11/04 のログ
ご案内:「大浴場」に斉藤遊馬さんが現れました。
斉藤遊馬 > 「べーっくしょい畜生!!!」
大声でクシャミをしながら引き戸を開ける。
両腕を擦りながら入ってくる歩き方は寒さ故だろうがくねくねして気持ち悪い。
「秋口は流石に立ちっぱなしは寒いってマジで寒いってマジで」
おーおおお、と意味の特にない音を口から漏らしながらカランへ近づけば、シャワーを出して。
「つめっつっつめた」
出てきた水の一撃にほわっほわっと身を捩る。

斉藤遊馬 > しばらくして湯が出れば、椅子を備え付けのボディソープで洗ってから座って。
「あー……」
シャワーの湯に癒やされて声を漏らした。
誰もいないからやりたい放題。
右肩に湯をかけて、左肩に湯をかけて。
最後に頭からシャワーを被った。
「ああー……」

斉藤遊馬 > 自宅風呂であればガス代が恐ろしくて出来ないような湯の使い方もできる。
そう、大浴場なら。
「…………」
暫くの間頭から湯を掛け続けている。
耳から入るのは湯の流れる音だけ。
他には何も聞こえない。聞こえる音は何もない。
そのまま暫く、その姿勢のまま。シャワールームの負け犬の如く。

斉藤遊馬 > そして顔を上げる前に、シャワーの水流で顔を洗って。
「ぶは」
ガラスの中、毎朝見るマヌケな顔が見える。
調子を確かめるように、首をぐるぐると回して。
「……よし」
何かに納得したかのように頷けば、頭を洗い始めた。
整髪料を流すように一度ざっと洗ってから、二度目は大きく泡立たせて。
「…………」
無言の侭に鏡の中を見て、髪をいじっている。
モヒカン、リーゼント、オールバック、獣耳。
短すぎれば形作れず長過ぎれば保持できない。
そういう意味では丁度良い長さの髪を、泡の力を借りて弄り回す。

斉藤遊馬 > 「小学生か」
容赦なく頭から湯をかぶった。
腿の上から付け根を経て、泡が流れ落ちていくのを感じる。
がしがしと頭を擦りながら泡を洗い流し終えれば、
持って入ったタオルで頭を拭いて。そしてそのまま体も洗い始めた。
上半身から下半身に向けて、器用に右手を脇から背中へ。
背中の全面に広がった古い傷痕も、もう痛みは残っていない。
ケロイド状に引きつった幾筋もの線の上を泡が覆って。
暫しの後、洗い終えた。

斉藤遊馬 > 身に残った泡を全て流し終えれば、頭に絞り畳んだタオルを載せて、湯船へ入る。
「あ゛ー……う゛ぇい……」
顔を洗って、身を、ピン、と伸ばした。
湯船の中、まだ成長を終えていない手足が、ぐい、と広げられて。
バランスを崩して湯船の中、ひっくり返りそうになるのを、堪える。
「……手足伸ばせる湯船、よい」

斉藤遊馬 > 言語野に致命的な障害が発生したかの如く、口から言葉が零れ落ちる。
体の芯に残っていた冷気が、湯から伝わる熱で払われていくのを感じた。
「…………はぁ」
頭の上、載せたタオルを右手にとって。
後頭部を風呂の縁に預ければ、目の上に載せる。
暗闇の中。換気扇と、循環される湯の音。

斉藤遊馬 > 一時間後、のぼせて大浴場から搬出される少年の姿があった。
ご案内:「大浴場」から斉藤遊馬さんが去りました。