2017/02/19 のログ
ご案内:「ロビー」にクロノさんが現れました。
クロノ > (忙しい日々も過ぎ去り、のんびりと週末を過ごして、もうすぐ休日も終わる。そんな休日の夜。春分を前に、年が変わってから比べてみればだいぶ日も長くなったし、街の空気も少しずつ春めいて優しく湿り気を帯びてきた。)

……。

(しんと寝静まった寮のロビーで、ソファにごろんと横たわりながらのんびりと雑誌を眺める…ロボ、1台。消灯時刻をすぎて、ダウンライトだけになった照明が優しく、温かく室内を照らす。壁に沿って並ぶ自販機の稼働音が、ロボットの体から鳴るそれと入り交じってすっかり男の子の気配はほぼ無い。)

クロノ > (男の子の形をした機械が雑誌のページを捲る、乾いた僅かな音が時折聞こえる空間。長くて大きな、ちょっとくたびれたソファにごろんとうつ伏せで寝転がりつつ、寮生共用のために最新号でありながら既に折り癖とシワがいくつも刻まれたそれに視線を走らせる。)

……ふぅーん。

(この春のトレンド、流行、おすすめのアイテム、新発売の便利グッズ…モデルたちがそれぞれのページで紹介する斬新な個性と、ちょこちょこ挟まる安っぽい広告、知っていると得した気分…になりそうな豆知識のコラム、あるあるネタの四コママンガ。)

クロノ > (製造されてからかれこれ120年余。生まれてこのかたずっと16歳の男の子は、いつの世も16歳の視点で世界を見ながら生きてきた…生き物じゃないけど。)

……────。

(故に、今の時代、今こうして自分が存在する日常の理想とするものや形を、こういったメディアから学習するのもすっかり日常的な習慣のひとつになっていた。…とはいっても、機体が機体なので極端に濡れたり汚れたりするか、徹底して衛生的な状態が要求される場合を除いて衣服を着ないロボットだから、ファッションのトレンドとはほぼ無縁なんだけど。それでも、いろんなアイテムがそれぞれ一定の周期で流行と衰退を繰り返すのは、やはり見ていて飽きない不思議さがある。)

クロノ > (ご長寿誌のロゴデザインや表紙を彩るタレント、モデルさんたちの変遷、時代によって色々と変わる理想の姿、そのなかに埋もれるようにひっそりと生き続ける、信憑性に疑問のある占いの記事…。移ろいながらも、変わらないのはその時代、その場所に生きるたくさんの人々が、確かに今日の世界を形作っているという事実。)

……──── 。

(今月号の雑誌をのんびり眺める男の子は、雑誌の記事の隅にあるバーコードから自分の機体に内蔵された回線でWebページにアクセスしてみて、イチオシのお店の詳細な情報を確認してみる作業を同時進行で実行中。端から見ればぼーっと雑誌を眺めているだけの男の子のだけど、そのおでこのインジケータランプは2つの処理を同時に進行しているから忙しくチカチカと点滅を繰り返す。)

クロノ > (今こうして雑誌を読んでいるロボットは、先日は図書館でこの街の歴史や文化等についての本や、貸し出し頻度の多い人気の小説などを読んでみた。頭の中身は0と1の電気信号を処理するデジタルなコンピュータだけど、何故か日頃からこうして求めるのは紙媒体のレトロな情報源で。)

……。
(一冊目を読み終えて、今度は先程とは少し趣向の異なる雑誌に手を伸ばす。ファッションとかトレンドアイテムとは違って、大自然の美しい瞬間の写真がカラーで綴られた、ちょっと大人向けのネイチャーサイエンス誌。)

クロノ > (紙面に何が書かれているかはもちろん大事なんだけど、漫画誌の再生紙であるザラザラの質感から、ファッション誌の薄くてつるつるとした質感、写真誌の厚めで少し硬い、高そうな感触…そして雑誌によってずいぶんと変わるインクの匂い。こういった違いは、やっぱり電子版の書籍にはない奥深い情報で、実際に手に取ってみないと分からないもの。)

……きれーぃ。行ってみたいなぁ…。

(この世界にも、こんな景色が見られる場所があるのか、と写真誌のページを捲る手を止めて見入るロボ。)