2015/09/25 のログ
蘆 迅鯨 > テレパシーを驚かれることには慣れている。
相手の方から触れられなければ、特別言及はしない。

「星座ねェ。俺ちゃんも詳しかねェな。そもそも興味ねェし」

と答えたところで、迅鯨はひとつの考えに至る。

「(……異邦人……?)」

もしやこの少女は単に星座の知識がないというのではなく、
異邦人であるが故に『この世界』の星座のことがわからないのではないか?そう考え。

「あー、アレだ。見たところお前人間みてェだけど……どっから来た?」

彼女の出身を訪ねてみる。迅鯨の知り得ない地名が出てくれば、可能性は高いだろう。

サヤ > また、心に直接響く声。聞き間違いではないし、石蒜は今寝ている。
独白のような口調だが、それをこちらに聞かせる意図がわからず、少し困惑する。
まさか無差別にテレパシーを送って居るとは思わない。
とりあえず、肉声で聞かれた質問に
「あ、はい…お察しの通り、私は異邦人です。ファーイースト・レルムという地域の、ク・ラトールという国から来ました。そちらでは星がもっとたくさんあって…星座も、いくつか知っていたんですが……。こちらでは、色々と違うみたいで…」困ったように、寂しそうに、笑う。違う世界に一人来てしまった孤独を、もう慣れたと思っていたそれを思い出してしまう。

そして、遠慮がちに質問を返す。
「あの、ええと……失礼かもしれませんが、どうして…私に独り言を送ってくるんですか…?」

蘆 迅鯨 > 「なるほどな。そンならこっちの星座が分かんねェのも無理ねェや」

迅鯨の見立て通り、黒髪の少女は異邦人であった。
ならば、『この世界』の星座が分からない、という彼女の言葉にも納得がいく。
恐らく、彼女が知っているという星座も、『この世界』とは異なるものなのだろう。
続いて、少女がようやく彼女自身の脳内に響いているであろう、迅鯨の声について触れれば、
迅鯨もその問いに答えるため再び口を開く。

「独り言?あァ、こいつァ俺ちゃんの異能だよ。異能つっても便利なモンじゃねェけどな。送るだけで人の声は聞けねェし、送りたくねェようなことも送っちまう。相手だって選べねェしな」

それこそが迅鯨の異能、『夢見るままに待ちいたり』<ウェイツ・ドリーミング>である。

サヤ > 「ええ、ですから…先に調べてから来ればよかったんですけど、段取りが悪くて……。」声に、自嘲が混じる。思えばいつも自分は要領が悪かった、それは自分の世界に居た頃から。

「あ、あ、そうだったんですか。ええと……」指先を合わせた両手をせわしなく動かしながら、言葉を探す。「それは、大変ですね。でも、ええと……。つまり、嘘をついてもすぐわかるってこと、ですよね。不便かもしれませんが、本当のことを言っていると相手にはすぐわかるわけで……とっても正直な人ってことにならないでしょうか。」動き続ける指で口元を隠して、上目遣い。
無理に褒めたわけではないが、言葉を探していたので、途切れ途切れでたどたどしくなってしまった。

蘆 迅鯨 > 「正直、ねェ……まァいいけどよ」

少女のたどたどしい言葉を聞けば、若干の溜め息。
迅鯨は自身が正直な生き方をしているとはとても思えていないがために、
そうした印象を抱かれることに慣れていなかったのだ。

「で、お前、名前は何てんだ?俺ちゃんは蘆迅鯨<ルー・シュンジン>」

いつまでも『お前』では不便だろうと、早いうちに名前を聞きだしておかんとする。
勿論、迅鯨のほうからも先に名乗っておくことにした。

サヤ > ため息をつく相手に、気分を害したように見えて、微かに身を縮こませる。
しかし、次の言葉が罵倒の類ではなく、また質問だったので、密かに安堵した。

「私は、サヤと申します。」いつまでも座っていては無礼かと思い、立ち上がって、袴を払う。

「るー…しゅんじん、さんですね。よろしくお願いします。」聞き慣れない名前の発音を、拙いながらも真似してから。腰の前で手を合わせて、丁寧にお辞儀する。

「ええと…」目線を空に泳がせて、話題を探す。
「るーさんも、学園の生徒の方なんですか?」生徒用の女子寮に用があって来たのだろうから、そう推測して、聞いてみる。

蘆 迅鯨 > 「……サヤ?するってーとお前か?ヨーコちゃんが言ってた、畝傍のルームメイトっつーのは……」

迅鯨自身はとうに命を落としたと思い込んでいた畝傍・クリスタ・ステンデルが生存し、
学園で生徒としての生活を送っていること。そして、彼女にはサヤというルームメイトがいること。
それは先日、歓楽街において嶋野陽子から聞かされていたことだ。念のため、彼女自身にも問うてみる。
迅鯨が学園の生徒であるのかという、サヤの問いには。

「そうだな。俺ちゃんは二年だ。つっても教室棟のほうじゃあんま会うこたねェだろうな」

迅鯨はその異能の性質ゆえ『たちばな学級』の所属であり、一般の生徒とは異なる場所で授業を受けている。
そのため、同じ学生であっても教室棟で出会う事は稀だろう。
だが迅鯨は『たちばな学級』の所属でない生徒に自身の所属を明かすことを好まない。
なので所属はぼかしつつも、そう答えた。

サヤ > 「え、あ…畝傍さんをご存知なんですか?ええ、私がそのサヤです。畝傍さんのお部屋に、お邪魔させていただいてます。」共通の友人の存在に、少し気安さを覚えて微笑む。
「ヨーコというのは、嶋野陽子さんでしょうか、でしたらそちらの方も知っていますよ。」

畝傍さんを知っているということは、二人に共通する豊満な体は何か秘訣があるのだろうか……。
そっと自分の体を見下ろして、ほとんど何も遮るものがないままに足の甲を見ることが出来る貧相な体に、少し悲しくなった。

「私は一年です。確かに、ご一緒したことがあれば、きっとすぐわかりますよね。多分、ええと、私はまだ読み書きが不自由なので、普通の学生の方と一緒の授業は、とれないですから。」たちばな学級の存在を知らないので、単純に受ける授業が違うからだろう、とサヤは考えた。

蘆 迅鯨 > 「そうだな。俺ちゃんも畝傍も同じ国で育ったダチみてェなモンだ。つっても今となっちゃ直接会うこたねェけどな。……そうそう、嶋野陽子。俺ちゃんもちょっくら世話になっててな」

畝傍との関係と嶋野陽子について訪ねられれば、
『星の子ら』<シュテルン・ライヒ>に関する情報を伏せた上でそう説明する。
自身の体を見下ろすサヤの姿が目につくと、ややにやけつつ。

「……そっか。お前もお前で大変なんだな」

サヤもまた普通の学生とは異なる授業を受けているということを彼女の口から聞くと、
詮索はしようとせず、腕を組み、深く頷いて納得したような態度を示す。
組まれた腕は迅鯨の豊満なバストをさらに強調した。

サヤ > 「同じ国、ですか。」やはりその体型はお国柄なのだろうか、食べ物や風土のせいだろうか…だが、何かあまり詮索して欲しくないように見える。

「ああ、やっぱり嶋野さんでしたか。私も何度かお世話になりました。すごく頼りがいのある方ですよね。」背負われた時の、広く頼もしい背中を思い出す。そういえば嶋野さんも出るとこ出ている体型だったように思う。
自分と似たような体型といえば迦具楽さんだが、あの人は体型ぐらい自在に変えられるだろう、味方が居ないことに、暗澹たる心地。

「いえ、そんな…ええと、私なんか全然そんな、授業が少ないから平日に休みの日とかありますし。とてもとても。」と、両手を前に出して慰めを固辞する。自分より大変な人間はいくらでもいる、自分は慰めに値しない。

そして、強調されたバストに、「あの…つかぬことをお伺いしますが……」聞いてしまおう、意を決して、切り出す。
「その……ルーさんも畝傍さんも、その…体型が、とてもよろしいのですが、それは…何か原因はご存知、で…しょう、か…」

蘆 迅鯨 > 自身、そして畝傍の豊満なバスト。そうなった原因のようなものについて聞かれ。

「あ?知らねェな。畝傍もってェのはたまたまだろ、たまたま」

タハハー、と笑いつつ答える。
実際、迅鯨は自身のバストについて、大きくするための秘訣や、
そのために意識した事柄、摂取していた特定の食物といったものを持たない。
やがて、笑っていた迅鯨の表情は、しっかりとしたものに変わり。

「……なァ、サヤよ。『星の子ら』<シュテルン・ライヒ>って聞いたこたァあるか」

『星の子ら』についてサヤの側から詮索を受けなかったため、今度はこちらから切り出してみる。
畝傍と迅鯨の双方に関わる重要な事柄だ。念のため、畝傍の同居人たるサヤにも尋ねておかぬわけにはいかなかった。

サヤ > 「そうですか……。」がっくりと肩を落とす。大きいと動きづらいという話は聞くが、それでも憧れるものだ。

そして、相手の表情が変われば、それを察して、こちらも真剣なものになる。
「しゅてるん、らいひ…ですか…」サヤ自身に聞き覚えはないが、念のために覗いた石蒜の記憶に、該当するものを見つけた。

「聞いたことがあります。畝傍さんと、『黒フード』の人物の命を狙っている集団だと。淀という人物を畝傍さんは倒したとか…となると…もしかしてその黒フードというのが、ルーさん、なんですか?」同じ国の出身で、確かに黒いフードをかぶっている。

蘆 迅鯨 > 「そうか……淀の奴が動いてたたァな」

淀・ツェツィーリエ・ハインミュラー。『星の子ら』の一人であり、自らの身体を黒い粘液に変える異能者。
それが恐らくは畝傍を襲撃し、返り討ちとなった。
――やはり、迅鯨の危惧した事が起こりはじめているようだ。

「連中が言ってた『オレンジ色』つーのは畝傍のことで間違いねェみてェだな。ンなら、その『黒フード』つーのも俺ちゃんの事だろうよ」

そして、しばしの沈黙ののち、蘆迅鯨は再び口を開く。

「サヤ。お前は畝傍のルームメイトだっつーから話しとくが……俺ちゃんも『星の子ら』の一人なんだ。勿論、畝傍もだ。……正確には『星の子ら』"だった"っつーほうが近いかな」

『星の子ら』。それはかつて某国において異能・魔術犯罪に対抗すべく作り出された、少女を素体とする強化人間の総称。
四肢の欠損など特に重大な身体障害を抱える者にはサイバネ化も施され、各々が軍属や都市防衛など異なる役目についていたが、
多くは精神への異常をきたしたこと等を原因として役を追われ、その中のさらに一部が、何らかの手段でこの常世島に入り込んでいる。
その事についても、迅鯨の口から説明を試みる。

サヤ > 「ルーさんと畝傍さんが、ですか。」まだサヤも石蒜も実際には出会っていない。淀の話も千代田から聞いただけだ。
だから、まだあまりそれがどういう意味を持つのかは掴めていない。

「何故、命を狙われているんですか?お話を聞く限りではお二人に狙われる理由はないように思えるのですが…。」説明の中に、二人が星の子らに何か被害を与えたという話は出てこなかった。ただ途中で抜けただけで、命を狙われているとも考えづらい。

蘆 迅鯨 > 「大した理由じゃねェよ。畝傍はどうだか知らねェが……俺ちゃんは今のこの異能が目覚めたせいでお役御免になった後、国の異能者保護団体から支援を受けててな。学費も団体のほうが出してる」

迅鯨の異能は母国において兵器として使用するための実験も行われたものの、実験は失敗。
お払い箱となった後、母国の異能者保護団体から支援を受けることとなり、
その一環として常世学園へ入学することとなったのだ。――だが。

「だけどな……この前落第街で会った『星の子ら』の一人だった奴は、そうじゃなかった」

先日遭遇した『星の子ら』の一人であり、迅鯨に強い敵愾心を抱く少女、河内丸・マリー・グラーザー。
そして河内丸が会話の中で名を出した、筑紫なる少女。
彼女らは正規の手順での入学はできておらず、母国の団体からの支援も受けていない。
――故に、恵まれた環境下にある迅鯨や畝傍、その他の『星の子ら』を憎悪している。
河内丸の口から聞いた断片的な言葉から考えた、迅鯨なりの憶測ではあるが、それについてもサヤに伝えんとする。
だが迅鯨や畝傍のように、『星の子ら』とて一枚岩ではない。中にはまったく異なる動機で迅鯨らを狙う者もいるだろう。

サヤ > 石蒜は畝傍さんの過去を聞いている。とても恵まれているなどとは言えない過去を。
そんな彼女が掴んだ精一杯の幸せを、『星の子ら』は阻もうとしている。

「畝傍さんは、辛い思いをして生きてきたんです。それで今ようやく、幸せを掴めたんです。なのに……。……そんなの、逆恨みじゃないですか…。」あまりの不条理に、どう反応すればわからなくて、それだけ呟いた。

蘆 迅鯨 > 言葉を紡げずにいるサヤの姿を、ただじっと見つめ。

「……あァ、逆恨みだろうよ。けどな……」

畝傍の悲惨な過去については、迅鯨の知り及ぶところではない。
なにせ、迅鯨は今の今まで畝傍がとうに命を落としたと思っていたのだ。
だが、河内丸らの動機が完全な逆恨みであることは迅鯨にも否めなかった。
迅鯨もまたそれ以上言葉が続かず、静寂が訪れた、その後。

「……なァ、サヤよ。もし畝傍がまた襲われたりしたら、そん時は頼むぜ」

そう、サヤに頼んでみる。

「俺ちゃんのこたァ心配すんな。てめェのことぐらいてめェで守れらァ」

もっとも、実際はそうもいかない事のほうが多いのだが――

サヤ > 「ええ、わかっているつもりです、世の中には……そういう人が居るってことを。」けどな、のあとに続かなかった言葉を、自分なりに補完した。
逆恨みなど、理解しがたい理由による殺人などは、サヤの居た世界でもあった。

「はい、全力でお守りします。」畝傍さんはサヤの友人であり、石蒜の恋人だ。言われなくても、そのつもりだった。力強く頷く。

心配するな、と言われて、薄く笑って首を振る。
「でも、助けられるところにいたら助けますからね。それはルーさんだからとかじゃなくて、私がそうしたいからです。誰であろうと、困っているなら私は助けます。」お節介と言われても、損ばかりしていると感じても、辞められない。それがサヤの生き方だった。

蘆 迅鯨 > 「そうかい。そん時ゃよろしく頼むぜ」

誰であろうと、困っているなら助ける。サヤのその言葉に、迅鯨は笑顔で答えた。

「(……安心したぜ。こんな奴が傍にいてくれンだから、畝傍も幸せモンだ)」

そう思いつつ、また口を開き。

「……さて、と。話すこたァ話したな。そんじゃ、俺ちゃんは先に中入ってるわ」

そう言ってサヤの横を通り抜け、寮の扉に近づいたところで立ち止まると、
迅鯨はサヤのほうを振り向いて。

「お前も早く入っといたほうがいいんじゃねェか。風邪引くぞ」

そう、告げた。

サヤ > 「あう…」送られてきたテレパシーに、お世辞ではなく本心から褒められているのを感じて、顔を赤くして頬を押さえて硬直する。

数秒して硬直から解けて「あ、あ、はい。私も、もう戻ります。」
と相手の背中を追うように、一緒に寮に入っていった。

ご案内:「その他」から蘆 迅鯨さんが去りました。
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