2016/02/10 のログ
■不凋花 ひぐれ > 「そういう貴女様は、異世のお方でしょうか。
大変不躾ながら、初めて見ました。」
"見た"などと、見えもせんのに。含む言葉は喜びを重ねる。
耳に馴染む御声は、目を閉じる限りはこちらの世界の言葉と変わらんのに、不思議なものだ。
「お恥ずかしながら、恋愛話に花を咲かせたことがございません。好きなお相手も、まだ。
――嗚呼、ですがきっと、貴女様はお声を聴く限りは、見目麗しいご容姿でしょう。
きっと、今この場で香るチョコレートがもっと間近に味わえることでしょうね」
カッコいい女性がいると、その人物も対象に含まれることはたまに、あるらしい。
この女子寮で部屋を持つなら翌朝プレゼントの如く積み上げられていたり――などと、指を立てながら冗句を交えた。
■セシル > 「ああ、ここで言う「他の世界」というところの出身だな。
こちらに来て、まだ一月経たないくらいだ。
…生活にはそれなりに馴染んだつもりでいるが、その手の慣習はまだ分からんばかりだ」
そう言って、くすりとハスキーな笑みを零す。
例によって、セシルも島の翻訳魔術に大いに助けられている人間である。
「私も、その手の話はもっぱら聞き手に徹していたよ。
…元の世界での状況は、貴殿の察する通りだ」
そう言ってふ、と柔らかい笑声を零す。
そういう扱いに割と慣れているようだ。
「…しかし、この世界に来て間もない、しかも同性の私をわざわざ送る対象にする物好きが、そうそういるとも思えんがな。
…まあ、私の元いた世界ではチョコレートも立派な贅沢品だったからな。
元の世界に帰れた時の土産話に、1人か2人物好きがいてくれたら嬉しいよ。
気持ちには応えてやれんのが申し訳ないがな」
そう言って、楽しげに笑った。
■不凋花 ひぐれ > 「……それは随分と近しいのですね。
異国に行くだけでもカルチャーショックを受けるでしょうに、世界も異なればその大きさも凄まじそうな」
感嘆として言葉を並べながら息を落とす。関心と、感心がそれぞれ半分ずつ。
短く、笑い声を合わせて漏らす。
「まぁ、世の中には会ったばかりの男女が結ばれる童話や物語はいくつもございますよ。
あなたはその立ち振る舞い、声からして、きっと王子様のような御方に見えるでしょう。
この世界――いえ、この地はそんな物好きとて多数ございましょう。
あなたが横暴な性格であれば寄り付かないでしょうが、あなたはまるで、騎士《ナイト》のようですから」
ともあれ、それならば致し方ない。つらつらと謳うように吐く。
「あぁ、そう、ちょっとお顔をお傍に見せて頂いてもよろしいでしょうか。
私は、少々目が悪いので。よく見てみたいのです」
■セシル > 「まだまだ苦労も多いがな。
私は元の世界でも学生で寮暮らしだったから、その分最低限の適応は何とかなっているのだろう」
「学生は学生でも、士官学校だがな」と、軽く笑いながら。
…しかし、「物好き」の話題になればその表情と笑い声に若干の苦みが混じり。
「………まあ、否定はしない。
元の学校の寮でも、私が絡む部屋割りは大変だったという噂くらいは聞いたからな。
しかし、剣士たるもの、前線で戦えん女性は守るべき存在だからな。蔑ろには出来ん」
元の世界でも、ちょっとした面倒はあったようである。
…と、顔を傍で見たい、と言われれば。
「…近くに寄せて見えるのであれば、構わんが」
と、やや不思議そうな表情を浮かべ(入ってきた時の仕草から、少女が盲目なのだと認識している)、やや腰を折って顔を少女の方に寄せる。
長いまつ毛に縁取られた、切れ長な印象の青い瞳。
鼻筋が通り、女性にしてはやや高い。それが、顔をより中性的な印象に近づけていた。
■不凋花 ひぐれ > 「士官学校……軍人さんの」
おそらくその学校だろう。興味深そうに顔をあげた。
察する限り、ひと悶着あったことは察するに余りある。
「大変―――とはまぁ。
まだ、貴女様は日が浅いようですが、一応はお気を付けくださいね。あなたはきっと強い御人でしょうけれど。
――その騎士道精神、というものでしょうか、あなたはやはり素晴らしい人格をお持ちらしい」
ああそうだ、何かあったら頼っても良いのだ。そう続けながら己の腕に巻かれた腕章を指す。
風紀委員の証である腕章である。矮躯もまた弱く守られるべき立場だが、同時に守る立場でもある。
そんなことを示しつつ、その顔が間近にある気配を察すると、刀を立てかけて両手を伸ばす。
彼女の肩に手を掛けることが出来たなら――仮令、できていなくとも目を開き姿を目にする。
すぐ傍にある、彫像のような造形のすっきりとした顔立ち。外国人にも見えるそれは、異世の者所以か、異なる雰囲気を覚えた。
見る者が見れば息を呑むだろう。実際、息を吐くのに一瞬詰まった。
「――やはりあなたは素敵な御人ですね。」
ささめくよに笑い声を転がして、子供のように笑った。
■セシル > 「ああ、そうだ。
そのままあちらの学校に入れば、間もなく卒業して、どこかの支部に配属される…はず、だった」
そう言って笑うが、その笑い声と表情には、若干陰が混じる。
やはり、「元の世界ではないどこかに来てしまった」ことについて、思うところはあるのだろう。
「流石に、熱を上げている者とその対象を同じ部屋にしては寮の風紀が危ういだろう。
…まあ、その程度の事だったよ。大事になるほどの行動力がある者はいなかったから。
…しかし、ところ変われば、というところか。気をつけておくとしよう。
助言、感謝する」
そう言って、ふ、と柔らかく笑む…が、少女が示す腕章を見て、目を瞬かせる。
「…風紀委員…貴殿がか?
いや、貴殿ほどの使い手であれば、視覚の差はよほどの事が無ければ問題にならんのだろうが…」
やはり、体躯の差から、心配にはなるのだろう。
「無理はするな」と、穏やかで優しい口調ながらも、やはり低い声で諭したのだった。
そして、少女の評価に対して、そのままの顔の位置で、柔らかく、口元に微笑を浮かべ。
確かにセシルは、地球で言うならば「(西・北)ヨーロッパ系の顔立ち」そのものずばりと言えただろう。
「ありがとう。
…貴殿のような者にも褒められるのであれば、やはり「物好き」はあるものと思っておいた方が良いか?」
礼を述べるとともに、そのような軽口を叩いた。
■不凋花 ひぐれ > 「意図してここに来たのではないのですね。それはお辛いでしょうが」
乾いたような笑い声に矮躯が察するのは早かった。目が見えぬ手前、色々なものが"見え過ぎてしまう"。
まだ一月しか経っていないというが、それだけ不慣れな点も、不安に思うところもあるだろう。
「よろしければ、私とお友達になりませんか?
貴女様が抱え込むものを、少しでも取り払えるような――風紀委員としてそうありたい」
そして、心配される言葉。日本人としても平均以下の身長故に大分小さくみられてしまう。そこは少しばかり気にしている。
特に、目の前の美麗な容姿と比べると。相手は人を気遣える、優しい御人だ。
こちらの世界でいう西洋の顔立ちそのもののイメージは、大概あたりだったらしい。紅眼で瞬きを数度。
「そのように捉えて頂いて相違ありません。私も物好きですから。」
三日月のように引いた口元とともに、あっけらかんと答えてみせた。
■セシル > 「そうだな…思うところが無いといえば嘘になる。
しかし…生きていかねば「その先」も無いのでな。まだ、諦めてもいないし」
「その足がかりのためにも、まずこちらに馴染まねばな」と、困ったように…しかし、陰を追いやった優しさで笑った。
…そして、「友達」と言われれば、意表を突かれたような表情をしながらも…その後、笑みを全面に広げて、
「こちらこそ…セシル・ラフフェザーだ。よろしく頼む。
同性としても…剣士としても、な」
と、握手のために右手を力強く差し出す。どちらかといえば、男性的な作法だった。
…そして、少女の「物好き」宣言には、目を丸くした後。
「………ははは!随分あっさりと言ってくれるものだな………!」
大きく笑い出した。
■不凋花 ひぐれ > どうもこの人、前向きに生きるまっすぐな性格らしい。どこまでも、どこまでも。
その意思が揺らがないのは、うらやましい限りである。
陰る笑みは日向の様相を示し、けれど突拍子もない発言に驚きはすれど、すぐにその表情は戻った。
「不凋花ひぐれと申します。よろしくお願いいたします、セシル様」
自己紹介を織り交ぜながら、こくりこくりとうなずきながら、差し出された手の気配を追って手を伸ばす。
挙動が、所為が、そのすべては男性的な風を纏うようで、目を閉じてしまえば分からないのではないか。
笑い声もまた――女性的というよりは中性さが目立った。
「だって、そう。あなたはまるで物語の登場人物のように美麗だったものですから。
興味がないだなんて云ってしまったら、それもまた不本意です」
言葉を選ぶよう躊躇いがちに指を回して、言葉を紡いだ。どこか照れくさそうに控えめな声。
単純な好奇心、単純な興味。ただ面白そうと思う対象であることは、否定しない。
■セシル > 「ヒグレだな、よろしく頼む」
伸ばされた手をしっかりと掴む。
男性的な力の籠め方ながらも、少女の手に負担にならない程度の加減をして。
「物語の登場人物か…流石にそこまで言われてしまうと気が引けてしまうな。
…この島でも、私と近い系統の容姿の持ち主はあまり見かけんから、仕方が無いのかもしれんが」
そう言って、軽く肩をすくめてみせる。
実際、元の士官学校でも女子にかなりもてたとはいえ、本気に近い熱を上げる人間ばかりではなかったのだから。
■不凋花 ひぐれ > この感覚は、そう。試合をした時の相手のそれとよく似ていた。
握手の感覚からしてそう思ってしまうのは、勇ましいせいか、異世界人たる所以か、武人としての礼節か。
どれも微妙に違う気はした。
「それでも、できれば対等に接したいですから――今後はそのような夢物語と同列視するのは控えましょう。
気を害したなら申し訳ありません。
異国にあるようなお顔でしたから、中々目にするのは珍しいとは思います、が――この世界もまた、異世界と同じように広いですよ」
偶像崇拝――端的に言えばアイドルとしての熱であったやもしれんし、いわゆる『お姉さま』かもしれないし、象徴として、彼女は映えたのではないだろうか。
けれどそういったものとて、ないわけではないのだ。常世島は様々な人種が入り乱れている。なればきっとかち合う日も来る――かもしれない。
控えめに謝りながら刀の先を床につける。テーブルの端をなぞるように這わせると、ぐっと立ち上がった。
「そろそろ就寝の時間ですし、私はお暇させていただきますね。
今日はありがとうございました、セシル様」
■セシル > 「そうだな…そうしてくれると有難い。
私も、ヒグレの事は1人の剣士として、対等に見ていこうと思う」
そう言って、柔らかく…それでも、どこか男性的に笑む。
背の高さが違うし、彼女にはハンディもあるが…気配が彼女を「使い手」と教えてくれるから。
彼女が対等に見てくれるならば、その気配の方に、忠実であろうと心に決める。
「そうか…こちらの世界には私のような風貌の者はいても、大体はもっと遠いところにいるのか。
この世界の事はまだ学んでいる途中だが…覚えておこう、有難う」
そう、礼を言って。
地球よりも封建的なところがあったセシルの生まれ育った社会は、この島などと比べて男女の別が基本的には厳格だった。
だから、セシルは異性慣れしない女性の最初の憧れだったり、あるいはアイドルとして見られる事が多く、それ以上の事はあまりなかったのである。
…それでも、そういう見方には十分過ぎるほど慣れてしまったのだが。
「そうか…お休み、ヒグレ。
私は少し走ってくるとしよう」
「この匂いの中では、少し疲れるくらいでないととても寝る気になれん」と、困ったように笑って。
「こちらこそ、貴殿のような者と会えて嬉しかった。
また、ここで他愛も無い話に講じるとしよう」
そう言って…まずは、着替えるために自分の部屋に戻ろうと。
ひぐれに軽く手を振って、ロビーを後にした。
なお、走って帰ってきてもなおチョコレートの匂いが濃いことに、がっくりときたのは別の話である。
ご案内:「ロビー」からセシルさんが去りました。
■不凋花 ひぐれ > 「剣士……」
どことなく、くすぐったい感覚がした。そんな風にみられることもあまり経験がなかった。
目を薄く開いた先の彼女は、どこまでもカッコよく"視えた"。
音が、挙動が、気配が、只ならぬ存在感を発揮し、耳に残る声色は、素敵なもので。
やっぱり、羨ましいと思った。
「……今度、世界地図でも持ってきましょうか」
そんな風につぶやきながら、含み笑いをひとつ。彼女はおやすみと云った。次いで走ってくると云った。
あぁ確かに、この"甘い匂い"の中はどうしても慣れない。それでもチョコが希少な環境にあったわけでもなく普通の学校に通っていた手前には、そちらの意味で慣れ親しんでしまった。
気にもならないし、意識することもなければ別に構わんのだ。
「今日見ないふりをして」
本当は心の内であるくせに。早々にロビーを後にした彼女を見送り、自分もゆっくり後にする。
まだまばらに人のいる空間には、下駄の音がからんころんと鳴り響き、存在感を発していた。
ご案内:「ロビー」から不凋花 ひぐれさんが去りました。