2016/05/18 のログ
ご案内:「部屋」に高峰 司さんが現れました。
■高峰 司 > 「…………」
自室にて、集中した様子で紙に何かを書いている司。
その紙には、記号のような文字の羅列が記されていた。
ルーン文字による書類、である。
「ユル、オセル、ウル……あークソ、毎度毎度こればっかりはめんどくせぇなぁ……」
ルーン文字は北欧の文字体系。それぞれの記号がそれだけで意味を持ちながら、またアルファベットにも対応している。
例えば、ユル、オセル、ウルでは「YOU」と言う文字列になるのだ。
当然、無意味にルーン文字で記しているわけではない。
これは、召喚契約の際に使う書類であり、ここに名前を記入する事でお互いに魔術的な制約を課し、契約を成立させるのだ。
術式としてはそこまで難しくないのだが……「いちいち英語で文章を作り、ルーン文字に直して記載する」と言う作業がとても面倒臭いのである。
■高峰 司 > 「アイツに必要な制約ってなんだ……?人間だから、まあ食事中、睡眠時、排泄時、性交時辺りの召喚不可制約は必須だろーが……」
そして、司の契約は一方的な支配ではなく、相互の納得の上で成立する。
そのため、人間などを相手に契約する際は、その生活の中で「呼び出されたくないタイミング」を指定させ、そのタイミングを契約に織り込むことで、そのタイミングでは召喚用のパスがそもそもつながらない様にするシステムになっているのだ。
自然の化身ともいえる精霊ならばこの手の制約は殆ど必要ないのだが、人間はそうもいかないのである。
そして、人間にとって「人に呼び出されたくないタイミング」と言うのは様々だ。
例えば、且つて邪教の神を召喚する贄にされかけていたところを救出し契約した人間の巫女は、上記の条件に加え「祈祷中」を条件に加えてきている。
そこら辺も織り込んで書類を作っておいた方が、契約が手っ取り早い。
そして、この契約は「双方の同意なしに解約出来ない」ので、一度結んでしまえば一方的な心変わりは出来ないのだ。
なので、機が来れば速攻で契約に持ち込んでやろう、と思って書類を作っているのだが……。
「……わからねぇ。マジにわっかんねぇ」
アイツ……契約自体はOKだと口にした伊都波凛霞と言う女性。
彼女には日々連れ回されているので、一緒に居る時間はかなり長いのだが……彼女が要求してくる制約がこれと言って思いつかないのだ。
■高峰 司 > 「……家族団欒中、とか言い出すんじゃねーだろーな、アイツ」
そう言えば妹が居て、とても大切そうにしていたなと思い出す。
その妹とは一切接点がない……一応調べはしたが、能力に大してみる所が無かったので興味の対象外だった……のだが、先日の様子を見るに、彼女にとって妹が非常に大切な存在なのは理解できる。理解しがたい事に。
高峰司にとって、家族愛などと言うものは幻想に過ぎない。
人間とは、他者には完全を求める癖に己の不完全さは許容し、気が向けば善を為すが気が向かなければ巨悪すら見逃し、上に妬いて下を踏みつけ、誰かがミスを犯せばよってたかって「正義」を気取って袋叩きにする。
気に入れば媚び、気に入らなければ侮蔑する。他者の成功を憎み失敗を喜ぶ。外見(りくつ)ばかり立派に積み重ねて中身(せいしん)を置き去りにした醜悪な獣の名だ。
今まで生きてきて、人の醜さ、身勝手さと言うものは嫌と言うほど見てきたのだ。これは事実に間違いないと確信している。
……だというのに。家族を心配する彼女の眼に、一切の偽りを感じ取れなかったのは如何なることか。
「アイツがわっかんねぇー……それなりに一緒に居たのに、思った以上にわかってねーのな、アタシ」
だー、と椅子の背にもたれ掛かりつつ嘆息。
だが、当然と言えば当然である。理解する必要などない、と突っ撥ねてきたのは、司の方なのだから。
■高峰 司 > そもそも、司自身に自覚はないが、この考えに至ることがかなり異常な事である。
高峰司にとって、他者とは是皆利用するモノ。相互理解など不要であるし、ただ自分の手駒として有能に働けばそれでいいのだ。
契約書類のためとはいえ、他者の心情に気を回している事自体が、高峰司と言う人間らしからぬ振る舞いである。
「……ま、これが終われば、うっとーしいオトモダチごっこも終わりだ。次の相手を探す時間がゆっくりと取れるってもんだ」
しゃーねー。と気合を入れなおし紙に向かいながら、そんな事を口にする。
そう、終わり。もうひと押しで、放課後毎に振り回されるストレスフルな日々が終わる。
いつも通りの、気ままにのんびりしつつ、目的のために手駒を探す日々が帰ってくるのだ。
そう思うと、猶更胸がすっと……
「……あ”ー?」
ちくり。
なんだか、よくわからない感覚が胸に走った。
なんとなく不快である。なんだかよくわからないが、不快だった。
■高峰 司 > 「……クソ、なんだこれ。最近アタシどーかしてんじゃねーのか?」
先日、よくわからぬまま机を蹴り上げたこともそうだが。最近、どうにも自分の思考と行動が合致しない時がある。
もしかして、連れ回され過ぎで気が参ってしまっているのではなかろうか……と少し心配になった。
「ま、いーか。どっちにしろ、契約が終わればそれで仕舞いだ」
あくまでそれはひと段落、であるが。
高峰司の目的を達するための過程にしかすぎないが。
それでも、契約を済ませてしまえば、一息つけるのは確かだろう。
取り敢えずはモヤモヤしたモノを務めて無視しつつ、資料作成に励むのであった。
ご案内:「部屋」から高峰 司さんが去りました。