2016/05/21 のログ
ご案内:「部屋」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 「…………」

ふらつきながら、何とか自室に戻ってくる。
どっと疲れた。柄にもなく気持ちがあらぶってしまったのもあるが、あのルギウスと言う教師が何より精神的ストレスを喜んで与えてくるタイプだったのもある。
そして、見失った自分。
愛や信頼など信じず、あくまで利害と契約に基づき行動する。
それが高峰司だったはずだ。
だが、その非常に魔術師的な価値観は、いつの間にやら壊れ始めていた。
いや、もうすでに壊れてしまっているのかもしれない。

高峰 司 > 「アタシはなんで、どうして、何してんだ……?」

分からない。
ただの■■■■■のために、なんでこんなに苦労して。
あまつさえ、自分の研究成果まで売り渡しているのか。
そう言う契約をしていたわけでもなければ、それによって得る利益もないというのに。

「ぁ、契約……」

ぽつ、と呟いて、ムニンを呼び出す。
ムニン、記憶の共有能力を持つワタリガラス。これを、あの妹の下に送らねば。

「行け……さっきまでの話、全部伝えて来い」

カァ、と一鳴きして飛んでいくムニン。これでやるべきことはやった。
後は、もうあの妹に任せて……。






ちくり。






……また、よくわからない感覚が胸に走った。

高峰 司 > 「……んだよコレ。アタシ、何考えてんだ」

自分の心は、合理的な選択を拒否していた。
そもそもここまでの道のりが非合理の連続だ。利益もない、契約もしていない。歪とは言え、どうやら救われてはいるらしい。
そんな相手の事を、何を想って助けようとしているのか。
魔術師らしい合理性とはかけ離れた、馬鹿馬鹿しい思考。
なにやってんだ、と溜息を吐き、そこで。


『魔術師でなくなった貴女にできることなんて限られてるでしょうに。
 悩むだけ時間の無駄です』


先程投げかけられた言葉が、脳裏に浮かんだ。

高峰 司 > 「ぁ、そうか……アタシ、もう魔術師じゃねーのか」

そうだった。
魔術師としてあり得ざる、己が秘術を売り飛ばすという行為。
自分が作り上げた神秘を、他者に晒すどころか他者に明け渡してしまう愚行。
それをやってしまった時点で、もう高峰司は魔術師ではない。
魔術師高峰司は、死んでしまった。
……なら。

「……あは、あははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!」

笑う。
なんだ、親切なのかこういう思考に至るまでを愉しむつもりなのか知らないが、あの言葉は助言だったんだ。
そうだ。魔術師じゃないのなら、魔術師らしい価値観に縛られる必要もない。
魔術師として育まれた感性にしがみつくこともない。
元より売り渡したアイデンティティ。その残滓に縋る必要が、どこにある?

「はははははははは!!!!!! …………なら」

もう、魔術師ではないのなら。ルーン魔術師にして召喚術師、高峰司はもう亡いのなら。
一人の高峰司として、自分のやりたいように、やるだけだ。

高峰 司 > 覚悟は決まった。
後は、出来る限りをやるだけだ。

「あークソ。もうこれ、アタシじゃねーなぁ」

悪態を吐く。どうやら、喰うつもりが喰われていたようだ。今の今まで気付かない自分も大概間抜けだが。

「……待ってろよ。いや、待ってなくてもいい。
今度はアタシが、テメーを振り回してやっからな」

決意は確かに。その覚悟は万里を渡る。
等身大の『高峰司』として……自分勝手な一歩を踏み出す事を、心に決めたのであった。

ご案内:「部屋」から高峰 司さんが去りました。