2016/07/14 のログ
ご案内:「ロビー」に永江涼香さんが現れました。
ご案内:「ロビー」から永江涼香さんが去りました。
ご案内:「ロビー」に永江涼香さんが現れました。
■永江涼香 > 「……あのね、帰る気はないって言ってるでしょ!?」
ロビー、少し夜遅く。
だが、そんな状況に関わらず遠慮なしに大声を出して電話の相手に応答する。
「だから、こっちの寮で休みも過ごすから!どうせ帰ったらもう家から出してくれないでしょ!?」
電話の相手は父親。家出で勝手に抜け出してこの学園に辿り着き、そして勝手に入学手続きを済ませて勝手にこの学園に通っている涼香にとって、本来は無視できないスポンサーであるはずなのだが……それでも、帰る気はないという気持ちは強いようだった。
■永江涼香 > 「分かってるわよ、悪いとは思ってるしわがままは自覚してるってば!
でも、私は嫌!これからずっとあの神社に閉じ込められて過ごすなんて考えたくないの!」
永江涼香は、天性の巫女である。
生まれた時から天照大御神と親和性のある肉体を持っており、天照大御神の神威を行使できる力を有していた。
生まれた時から、神に選ばれた者。生まれつきの巫女。
そんな涼香を、両親は大事に育てた。万一が無いように。
……その慎重さが、万一を引き寄せたのは皮肉でしかないが。
「私は特別、そんな事は分かってるわよ!この学園を卒業したらいい加減帰るし、卒業も手は抜かない!だから、せめてこの学園にいる間は放っておいて!」
万一が無いように無菌培養するが如く育てられた彼女は、それ故に俗世への興味を駆り立てられた。
封鎖された世界の中では空気は澱むのみ。永江涼香と言う存在は、新しい空気を望んで止まなかったのである。
「休みくらい、って、ほんっと分かってない!その休みこそが私が自由に世界を見る事が出来る時間でしょ!?一番有意義な時間を、なんでそっちに帰って過ごさなきゃならないのよ!
帰らないわ、絶対に帰らないわよ!!」
故に、巫女は世界に飛び出した。
新たな空気を、全身で感じ取るために。
澱んだ聖域から逃げ出すために。
■永江涼香 > そう言う意味で、彼女は両親に対してよくない感情を抱いている。
つまり、自分を縛る鎖のように思っているのだ。
聖域に巫女を縛り付ける鋼鉄の鎖のように。
だが。
「突然家出したのは、流石に悪いと思ってるわよ。天照を持ち出したのも。
でも、分かってよ!私がなんで外に出たかったのか!私がなんで家出したのか!分かってよ!」
両親を嫌えてはいないのが、彼女である。
丁寧に厳しく育てられた彼女は、奔放な精神性を持ちながら、しかし誠実な倫理観も持っている。
それが、わがままで他者を嫌い切る事を阻害しているのだ。
それに、彼女は神に選ばれた巫女でありながら、両親の娘でもある。
だから、親に分かって欲しいのだ。自分の気持ちを。自分の嘆きを。
■永江涼香 > 「だーかーらー!帰らないってば!連れ戻しに来たら天照ぶっ放すわよ!?
もう、今日は寝かせて!ばいばい!」
ぴ、とケータイの通話ボタンを押す。そう、数世代前のガラケーを使っているのである。
しかも機能は制限されまくり、インターネット接続とか出来るはずがない。
理由は簡単……家族との連絡用としてしか使用を許されなかったからだ。
「時代はとっくにスマホだってのに……なんでこんなの使ってんのよ私」
外に出て分かった。
あの神社で身に着けた自分の常識は、あまりに古い。世間ズレしているのが流石に分かる。
ナイフとフォークの使い方は未だに怪しいし、最初はスプーンの持ち方すら間違えていた。
俗語ですら意味が分からないものが多く、公共交通機関すら利用に四苦八苦したくらいである。
あの中で生きていては、どんどん世界から切り離されていく。世界から取り残されていく。
神社の中で感じた不安が、間違っていなかったことを痛感する日々を送っているのである。
■永江涼香 > 「あーもう……なんで私の事分かってくれないのよー……」
ロビーのソファにぐてーっと体を預け、溜息を吐く。
親の心子知らずではあるのだが、子の心親知らずである。
何より、その特別処置は『天性の巫女である涼香を守るため』と言う要素が強い。
それを思うたび、自分は本当の意味で大事にされているのだろうか……と不安にもなる涼香である。
■永江涼香 > 「寝る前にどっと疲れた……」
げんなり。
自分のわがままは自覚しているしその罪悪感はあるけれど、それでもそれに足る(と自分では持っている)理由があるのは分かって欲しいのだ。
どこまでも噛み合わない会話を繰り返して、精神的に結構疲れてしまっていた。
「……絶対、帰らない」
ぐ、と気合を入れなおす。
やはりあの家に今すぐ帰って、良い事は何一つない。
とにかく世界を見て、学び、感じる。それが今やるべきことだ。
「よっし、寝よ!」
すっくと立ちあがって部屋に戻って行く。
……でも、やっぱりあんまり寝れなかった涼香であった。
ご案内:「ロビー」から永江涼香さんが去りました。