2016/10/08 のログ
ご案内:「部屋」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 他に誰もいなくなった寮の一室。
そこで、高峰司は魔術の研究を行っていた。
しかし……それは、普段のルーン魔術ではない。

「死霊魔術(ネクロマンシー)は、趣味じゃねぇし……黒魔術(ウィッチクラフト)は……生贄がめんどくせぇ。元素変換(フォーマルクラフト)は……クソ、単純に短期間での習得が難しいな」

ルーン「以外」の魔術である。
高峰司はルーン魔術師であり、召喚術師だ。
それで大体何とかなってきたが、ルーン魔術には一つの欠点がある。
『ルーンを刻まないと効果を発揮できない』と言うものだ。
これが厄介で、相手がルーンを心得ていれば、効果内容をルーンを刻んだ時点で推測される可能性がある。
また、ルーンを刻むという行程を挟む関係上、奇襲に向かない。
一行程(シングルアクション)だけで多様な効果を発揮出来るのがルーン魔術だが、逆に言えば一行程は要求されてしまうのだ。しかも身体動作で。
ルーンを刻んであるルーンストーンやルーンカードを使うのも手だが、それはそれで取り出す手間がかかり、実戦的とはいいがたい。
それを補う魔術を模索していたのだ。

高峰 司 > 「(マネキンの野郎は、アタシがルーン使いだと知ってる。逆に言えば、そこが裏を掻くチャンスでもある)」

高峰司は召喚を交えたルーン魔術師。そのデータは目下の最大の敵であるマネキンには既に知れているところであるし、一切偽りのない事実である。
……だが、情報は常に更新されるもの。昨日まで真実であった情報が、今日には嘘になっている事だってある。
司がやろうとしているのはまさにそれだ。
『ルーン魔術以外の魔術を用いることで、マネキンの裏を掻く』。
奇襲程度の姑息な手ではあるが……ないよりはマシだろう。上手く使えば、相手を混乱させる有効なカードになり得る。
そう思って模索しているのだが……。

「クソ、時間が足りねぇ……魔術式が分かっても、アタシがそれに慣れるのに多少の時間がかかる」

当然と言えば当然の如く、難航していた。

高峰 司 > 簡単なものはそうでもないが、実践的な魔術となれば、それは時間をかけてその身に刻むもの。
何より、特定の魔術体系に特化して鍛えてきた人間が、全く別の魔術体系を運用するのがそう簡単に行く筈がない。
式は分かっても、それを運用する人間の方にエラーが生じてしまうのだ。

「魔力の精密操作は得意なつもりだったが……それが裏目たぁな」

ち、と舌打ちする。
高峰司は精密な魔力操作を得意とする魔術師であるが、その精密操作性を常にルーンに対して使ってきた。
即ち、ルーンに慣れ切ってしまっており、別の魔術動作をしようとしてもルーンの動作の癖が混じってしまうのだ。
人は、難しく緻密なものほど高度だと考えがちだが、それは見方によっては誤りである。
寧ろ、単純で分かりやすいものの方が、システムとしては堅牢。余計なエラーが発生しづらく、安定感が増すのだ。
ましてや、人間の体は『全く同じ動作を全く同じように繰り返す』ことができるようにはできていない。
同じ動作をしても、そこには多少のブレが生じる。いくら精密に行ってもブレは生じるし……精密さを要求すればするほど、少しのブレが致命的になって行く。
『そういう運用』をルーンで行ってきた司にとって、想定以上に他の魔術を交える事での『ブレの発生』は致命的であった。

高峰 司 > 新しい魔術を付け焼刃で覚えようとしても、ルーンにもその新魔術にも悪影響が出る。
野球のピッチャーが、スライダーを覚えたことでストレートのノビが損なわれ、それを補おうとして今度はスライダーが曲がらなくなってしまったりするように。
人間は別々の動作でも、完全にそれを区分して処理する事が出来ない。
そんなことは、機械の領分である。

「下手に付け焼刃で覚えても寧ろ逆効果か……機械みてぇに、安定した動作を動作ごとに区分してできりゃあな」

できもしないことを口にする。
そんなことが出来る人間は人間を止めている。生物である以上、もうそれは仕方ない領域なのだ。
―――生物である以上。

「……あ”?」

何かが、閃いた。

高峰 司 > 「……そうだ。人間に出来ねぇなら、機械にやらせりゃいい」

異端の発想。
魔術とは基本、生命が行使するものである。
原初、魔術とは世界に己の意志を刻み付ける手段であった。
己の中にある力に意志を乗せて、世界に放出する事で臨む事象を生み出すものであった。
だが、猿人の雄たけびが人類の言語となって行ったように、魔術も曖昧なイメージ論だけではなく、しっかりとした体系として整えられてきている。
魔術式、などと言う概念は最たるものだ。
式の通りに魔力を使えば、理論上誰だって同じ効果を発現出来る。それが魔術式と言うものだ。
そして。

「魔術ってぇのは、人体を通して魔力を運用し、狙った効果を発現させるものだ。極論、人体が電子回路にすげ変わったところで大した違いはねぇ……!」

つまり、機械に魔力を詰めたバッテリーを与え、それを引き出して特定の魔術式を運用するようにプログラミングすれば。
『自動で魔術を行使する魔導機械』を作り出すことが出来る……!

高峰 司 > 真っ当な魔術師がこれを聞けば、軽蔑するかもしれない。インチキだと喚く者もいるだろう。
だが、高峰司は、そんなことに拘泥しない。
そも、魔術師とは足りなければ他所から持ってくる生き物。
魔術を行使する基盤が足りないのならば、それすら外注すればいい……!

「これなら、アタシがいちいち慣れる必要はねぇ。判明してる魔術式の中で、アタシの魔力の質と相性がいいのを選んでプログラムすれば『ルーン以外を使う高峰司』を簡易的に用意出来る……!」

そして、何より。
人は、特定の動作を高速で、正確に、連続で行うという事に関して、機械には絶対に敵わない。
そもそも、それ自体が人間の領分ではなく、機械の領分なのだから。
逐一魔力操作を気にする必要なく。本来自分が使えない、使っていない魔術を安定して行使することが出来る。
成程、魔道の探求と言う意味では論外だろう。
だが、こと戦闘での運用においては、相手の意識の外から首を取る刃となり得る。

「取り敢えず、仮組みからだな……」

これを最低限でも実用化出来れば、奇襲には十分だ。
まずはやってみる。可か不可かはさておき、自分の持ちうる知識を総動員して、魔術を行使する魔導機械を考案し始めた。

高峰 司 > 「まずは手ごろに、スマホ辺りでも基盤に使うか……」

とは言え、完全自作は流石にハードルが高い。
既存の機械を改造して、出来そうならそれでやってしまうのがいいだろう。
……『機械魔術(マキナ・マギカ)』
そう名付けた魔術を、高峰司は可能な限り早く、実用に移そうと模索し始めた……。

ご案内:「部屋」から高峰 司さんが去りました。