2017/10/11 のログ
ご案内:「部屋」に和元月香さんが現れました。
■和元月香 > 非常に珍しいことだが、月香は昼間に関わらず自室にいた。
本棚の奥に仕舞っていた漫画を引っ張り出してきたらしく、
ベッドに座り込み、くすくすと独り笑いをしながらページを捲っている。
だが。
____...♪
「.....ん?」
唐突に、滅多に鳴らない電子音。
甲高い音を繰り返すスマートフォンを、月香は怪訝な目で見やる。
枕元に置かれたそれを拾い上げ、
発信元を確認した月香は思わず眉を顰めた。
「...あいつ?何で今更...」
いつもの口振りだが、どこか違う声色。
両親に向ける興味皆無のものとは、また違う。
月香は不思議に思いながらも、電話に出るために右耳にスマートフォンを押し当てた。
■和元月香 > 「もしもーし」
『やっほ、月香。俺だよ俺』
「知ってるわ」
スマートフォンから流れてきたのは、
酷く耳触りの良い爽やかなテノール。
若者らしい軽い口振りではあるが、
容姿の良さまで伝わってくるほど綺麗な声だ。
実際発信元の容姿は良い類に余裕で入ると、月香は知っていた。
「なんの用ー。私今忙しいんやけど」
『元気かなって思ってさ。
そっち行ってから全然連絡くれないじゃん』
「てか私からお前に連絡したことあったっけ?」
『あはは、無いねぇ』
月香としては、珍しく扱いが雑である。
しかしそのぞんざいな口調からは、お互いが心を許し合った旧知の仲だということがよく分かるだろうか。
■和元月香 > 「で?」
本題を急かせば、相手はけらけらと笑って。
『それだけだよ?』
「嘘つけ」
『うん嘘』
あっさりと認めた相手の思考は読めない。
だが月香は読む気もしないのか、
気だるげに溜息を吐く。勿論だるいなんて感情は知らない。
『そんなに面倒くさがらないでよ。
別に昔みたいに後ろめたい事しろって訳じゃないから』
「.....ふーん、でなんなん?」
警戒するようにぶすっとした顔になる。
月香はこいつの頼み事はろくな事がない、と
この十数年でしっかり学んでいるのだ。
『常世学園、楽しい?』
しかし、その問いは酷くありふれたもので。
月香は思わず「は?」と声を上げて拍子抜けする。
■和元月香 > 怪訝な顔で、ハテナをいくつも浮かべながら、
しかし月香はとりあえず素直に答える。
「まぁ、楽しいけどー?
いろんな人いるしね」
『悪い人も、いいひとも?』
「うん。いっぱいいるよ。
...お前が好きそうな人も、いっぱい」
すると、電話口から笑い声が聞こえた。
無邪気な明るい笑い声。しかし、月香は知っている。
その底に溜め込まれた、血に汚れた純粋な悪意を。
『.....そっか!!ふーん、よく分かった!
ありがとう、月香!助かったよ!』
「良かったねー。...で、もしかしてこの島に来るつもり、お前?」
『.......来るとしても、月香には会わないよ。
そこは安心して』
(つまり来るって事か)
その返事を肯定と受け取り、月香は無感情に思う。
(...ま、どうでもいいや)
■和元月香 > 『じゃ、また電話するから!
またねー』
「えー、もう電話してくんなよぅ」
月香の乗り気では無い返事に、
相手は慣れたように軽やかに笑ってから、通話を切った。
ツー、ツー、と鳴るスマートフォンを枕元に置き直した月香は。
「私に会わない理由は分からないけど、もういいや」
どこまでも無関心に言い放ち。
何事も無かったかのように、再び漫画を手に取りくすくす笑いながら読み始めた。
ご案内:「部屋」から和元月香さんが去りました。