2017/12/29 のログ
ご案内:「その他」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 12月某日、日中。
今期の授業が全て終わり、一大イベントであるクリスマスも過ぎ去った。
一息つく間もなく次にやってきたのは新年を迎えるための準備、大掃除であった。

ザッ…ザッ…ザッ…

寮生総出となる大掃除。彼女もその例外とはならず、こうして参加していた。
使い古された竹箒を手に、寮をぐるりと囲む塀、その外側の落ち葉掃きを行っている。
前日の夜の内に少し雨が降ったらしく、濡れた落ち葉が路面に貼り付いていまひとつ捗らない。

ザッ…ザッ…にっ…ザッ…ザッ…にゃ…

「……?」

定期的に奏でられる箒と地面がこすれる音に、何か異音が混じる。
思わず手を止めて耳を澄ましていると、その音は今度はより明確に耳に届いた。

にゃぁ…

鈴ヶ森 綾 > 音の出どころを探してみるが、声はすれども姿は見えず。
そこでふと目に止まったのは、道路の反対側に植えられた大きな街路樹。
落葉樹ではないらしく冬でも緑を残すそれの根本へ近き見上げてみるが、生い茂る葉と枝以外の物は見つけられない。

試しに竹箒の先で枝を揺らしてみると、今度ははっきりと猫の鳴き声が樹上より聞こえてくる。
だが相変わらずその姿を見る事はできず、どうしたものかと思案顔で木を見上げ続ける。

しかし結局無視する事に決めたのか、踵を返して元の位置へと戻ろうとすると、
その背に追いすがるようにまた一つ鳴き声が。
気のせいか先程よりも切迫したもののように聞こえる。

「あぁ、まったくもう…。」

苛立ち混じりの声と共に再び木の真下まで帰ってくると、
軽く周囲を見回して他人の目がない事を確認する。
それから大きく張り出した太めの枝に手から伸ばした糸を枝に巻き付け、
一度体重をかけて強度を確かめた後、身体を引き上げてその枝の上に飛び乗る。

鈴ヶ森 綾 > いた。
枝をかき分けて視界を広げると、そこよりやや高所の枝の上に、縮こまった一匹の黒猫を見つける事ができた。
生後数ヶ月といったところだろうか。はっきりとは分からないが、まだ幼さの残る風貌だ。

昨日の雨露がまだ残っているのか、樹上で身じろぎする毎に髪や服に水滴が飛ぶ。
それがまた一層苛立ちを募らせるが今はぐっと堪え、するすると木を登って猫に近づいていく。

「ほら、おいでなさい。」

そうして猫が留まる枝の根本までやってくると、手を差し伸べてこちらへ来るように促すが、
近づくほどに猫は怯えたように枝先の方へと後退していく。
いや、単に怯えているだけでもないらしい。その反応には明らかに別種の警戒の色が濃い。

鈴ヶ森 綾 > さもありなん。
こういった事には人間より動物の方がはるかに勘が鋭い。
自分のような化物に対しては、これが真っ当な反応というものだ。

あぁ、やはりこんな柄にもない事はするものじゃない。
樹上で手を伸ばした体勢のまま、そんな詮無い事を考えていたが、
その直後に体重をかけていた枝の一部がミシリと嫌な音を立てる。

その音は発生源から次々と伝播し、瞬く間に枝を破断させる。
足場を失った猫が空中に投げ出されるのを見るや、瞬間的に身体が反応し、
手のひらから放たれた糸が落下する猫の身体を巻き上げ、宙吊りにする形で捕獲する事に成功した。