2017/12/30 のログ
鈴ヶ森 綾 > その後は、一旦猫を手元まで引き寄せ、胸に抱く形にしてから手早く地面へと舞い戻る。
肝心の猫はと言えば、糸を解いてやると大暴れして自分の胸元を脱し、振り返りもせず道路を駆けていってしまった。

「堪らないわね、まったく…。」

残されたものと言えば、水滴と木の葉にまみれた自分と、折れて足元に転がる枝。
後は土の地面に残された猫の足跡ぐらいか。
何とも言えない疲労感に暫くは掃除を再開する気にもなれず、逃げた猫が曲がっていった路地の辺りをぼんやりと眺めた。

ご案内:「その他」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 学生寮の大掃除。一応去年も参加しているので勝手はわかるのだが、
外回りを担当している自分はイマイチ仕事が進まない。
というのも木から落ちて時間が経った落ち葉が
雨風にさらされてボロボロになり、掃き掃除に苦戦していた。

「落ち葉の掃除だけもっと先にやっておけばいいのに……ん、黒猫?」

ちょっとした文句を口走って作業をしていると、曲がり角かた黒猫が。
何かから逃げるように一目散に駆け抜けていく。
何かあったのかと角から顔を覗かせると、
そこには初めて見るような女子生徒と折れた木が>

鈴ヶ森 綾 > 「ま、こんなものよね。」

スマートとは程遠い結果だったが、ともあれ目的は果たせた。
元より見返りを期待していたわけでなし。
立てかけておいた竹箒を手に、再び掃除に戻ろうとするが、
先程の猫が曲がっていた角から女性とがこちらを見ている事に気づく。

一応、人間としての鈴ヶ森綾は、あってもなくても大差ないような平凡な異能持ちという事になっている。
仮に今の一部始終を見られていたとしても、それが面倒事に直結するわけではないが、少し気が緩み過ぎていたか。
とにかく、不自然でない態度を取り繕って声をかけようとするが…。

「そちらの方、進み具合はどうで…あら、ラウラさん。」

ついこの形では初対面のはずの彼女の名前を呼んでしまった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あっと、大丈夫ですか?怪我とか……」

何となく状況を見て推測するに
『木に登って下りられなくなった猫を下ろそうとして一緒に落ちてしまった』
と言ったところだろう。
さっきの猫から感じたおびえた感情は複数の者が混ざりあっていたように感じたが、
下りられない恐怖と、知らない人間に対する威嚇と、落ちたことへの驚きと、か。

「……あ、あの、ごめんなさい、どこかでお会いしましたっけ?」

名前を呼ばれた。
こちらの名前を知っているということは、少なくとも知り合いであるはずなのだが、どこで話しただろう。
記憶の引き出しを開けて数える程度しかいない知り合いをさがすが、心当たりがない。>

鈴ヶ森 綾 > どうした事だろう。
こんなしでかし、早々ある事ではない。
先日の公園での一件で、彼女に対してもう気を許したとでもいうのか、自分は。

「……あら、分からないかしら。ちょっと待って…。」

暫し逡巡した後、相手の前で眼鏡を外し、隠形の術を解く。
向こうにとっては、単に眼鏡と髪型のせいで見分けられなかったという程度の事に映るだろう。
幸い、彼女は風紀でもなく、今のところは危害を加えた事もない。
自分の術も完璧というわけではない。相手も自分の名前を知ってる事だし、
下手に誤魔化すよりこの方が良いだろうと心の中で自分に言い聞かせる。

「さっきの、見られてしまったかしら。猫を助けようとしたのだけど、ちょっと失敗してしまって。」

そう言ってちらりと、自分が折った枝の方を見やる。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あっ…ごめんなさい、気づかなくて……」

彼女が眼鏡を外すと途端に誰なのか認識できるようになった。
するとどうして気づかなかったのだろうという感情がこみあげてくる。
咄嗟に謝るが、それと同時に感じる違和感。
前々からだが、彼女は何か隠していることがあるように思う。
そんな疑問をぶつけるべきか悩んで、心の内に押し込んだ。

「ええ、きっとそんな感じだろうなって、見た感じ思っていました。
 何よりも怪我がなくてよかったです」

結果として猫には逃げられてしまったが、それはまぁ、仕方のないことだ。
そして折れた枝に視線を移せば、なかなか高所から落ちたように思えて、
本当に怪我がなくて良かったと胸をなでおろす>

鈴ヶ森 綾 > 「別に構わないわよ。自分でもたまに鏡を見て驚くもの。」

そんな内心に気づく様子はなく、彼女が気づかなかった事を気にしすぎないようにと冗談を口にして場を和ませようとする。

「ええ、私は平気。でもあの子はどうかしら。
 すぐに逃げていってしまって分からなかったのだけど、怪我をしてるような様子はなかったかしら?」

今更のように身体に引っかかっていた木の葉を払い落とし、彼女が見たであろう猫の様子を尋ねる。
糸で捕まえた時は咄嗟だったので加減が出来たか微妙なところだが、
あれだけ暴れられるなら問題はなかろう。
そう思いながらも、やはり少しは気になるものだ。

「あと…あれの事は、できればナイショにしておいてもらえるとありがたいわ。」

あれ、そう言ってもう一度、地面に落ちたままの折れた枝を見る。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「こんなに印象が変わるとなると、自分で見ても驚きそうですね」

自分で見て驚くというのはさすがに冗談だと思うが、いまの自分には冗談に思えなかった。
そんな彼女の言葉に苦笑いをしつつ、改めて枝を見やる。

「さっきの子なら、たぶん大丈夫だと思います。
 驚いてはいましたけど、特に痛みとかを感じてる風ではありませんでしたし」

その辺は獣人の血が入っているからなのか、
動物が何を考えて感じているのかは何となくわかる。

「はい、わかりました。
 といっても、この島じゃ枝が折れるくらいどうってことなさそうですけどね。
 もっと大きな事件が起きては消えていく島ですから」

彼女が何を隠したいのか、その真意を汲みきれないまま頷く。
大きな事件というのは、言葉には出さないが落第街やそういう場所のことだ。
言わずもがな皆知っているものの口には出さない場所。
自身も立ち寄ることが無いわけではないが。>

鈴ヶ森 綾 > 「そうなのよ。だから寮や学校では大体これに制服で統一してるの。
 …ラウラさんは、どちらの私の方が好みかしら?なんて。」

外していた眼鏡を改めて装着し直し、相手にやんわりと微笑みながらどうかしら?と感想を求める。

「なら良かったわ。助けたつもりが怪我をさせたんじゃ、やりきれないもの。」

それですっかり気がかりはなくなったのか、最後に猫が姿が消えた曲がり角を見つめて小さく息を吐いた。

「ありがとう。、まぁ、悪いことは他人に知られないに越したことはないもの。
 ひとまず、目撃者が増える前に片付けてしまいましょうか。」

そう、どこか含みのありそうな言葉を口にする。
それから落ちた枝のもとまで歩いていくと、処分し易いように折って小さくすると、
掃き集めた落ち葉と共にゴミ袋の中へと投じる。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうなんですね。
 あ、えっと、そうですね。私は眼鏡を外している時の方が見慣れているので……
 でも眼鏡をかけている時も素敵だと思い……ますよ?」

きっと狙って言っているのだろが彼女の問いかけは返答に困ることがある。
そして再度眼鏡をかけた彼女を見て、違和感が一層強くなった。
先ほど、最初に見た時の顔と今の顔が、造りは同じはずなのに『違う顔』のように思える。

「ええ、あの子は怪我をしてませんよ。だから安心してください。
 ……あの、綾さん。綾さんて、何物なんでしょうか」

ゴミ袋に枝を折って入れる彼女の後姿に、問いを投げかける。
さっきの猫が感じていた恐怖と、同じ恐ろしさが胸の中に渦巻いていた。
彼女は本当に人間だろうか。そんな疑問から湧き出る恐怖が。>

鈴ヶ森 綾 > 「あら本当?嬉しいわ。ラウラさんもメガネかけてみない?きっと可愛いと思うわ。」

少し身体を近づけると、相手の顔を覗き込むように身体を傾ける。
メガネ姿の彼女をイメージしているのか、片目を閉じて何度か頷いたりしてみせる。

「何者…名前は鈴ヶ森綾、常世学園の一年生。ここの寮生で、歳は17。後は…誕生日とか血液型?急にどうしたのかしら。」

背後からの問いかけに振り返ったその表情は、質問の意図をはかりかねるといった感じの曖昧な困り顔。
紙に書いたプロフィールを読み上げるようにそう答えると、最後に目を細めて口元に笑みを作る。

「きっとラウラさんが聞きたかったのは、そういう事ではないのよね?でも、自分が何者かなんて考えた事もなかったわ。」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「私は、目は悪くないので……」

伊達眼鏡という発想は今この場においては無いようだ。

「そう、ですね。私が訊きたかったのはそういうことじゃないです。
 もっとこう、根本的は部分……思うに、人間ではないように思えるんです」

正体がわからないというのは不気味だ。
のらりくらりとはぐらかされて、掴めない違和感を抱える気持ち悪さ。
もし能力を自身に使うことが出来たなら、冷静を取り戻すためにも真っ先に使いたいところだ。

「何者か考えたことはなくても、知らないわけではないんですよね」>

鈴ヶ森 綾 > 「あらそう、残念だわ。とってもよく似合うと思ったのに…。」

本気で残念そうに姿勢を正すと、再び作業へと戻ろうとするが…。

「ふぅ…勘がいいのね。それとも、あの時何かされたのかしら。だとしたらちょっとショックだわ。」

小さく嘆息し、芝居がかった動きで大げさに頭を振ってみせる。
あの時、それは先日の公園での事。
ショックというのが具体的に何に対してかまでは言及しなかったが。

「お察しの通りよ。ちょっと訳ありで人間の振りをして生活してるの。隠していてごめんなさいね?
 こちらにも事情があって、あまり他人に知られたくなかったの。…これで、満足かしら?」

表面上は淡々とした調子、しかしその内側でどのような思惑が渦巻いているか、肝心な事の一切を伏したまま言葉を続けた。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「い、いや、あの時私は何も…!」

ショックだ。そういわれると公園でこちらが何か詮索を入れたと勘違いしていると思い込む。
咄嗟に弁明しようとするがどう言葉を選んでも白々しい感じになってしまい、言葉に詰まった。

「……わかりました。これ以上は何も聞かないです。
 今聞いたことも誰にも言いませんから」

ハッキリとした部分をはぐらかされた。
本能的にこれ以上の詮索はやめるべきだと感じた。

「でも、何かできることがあれば言ってください……協力しますから」

あの時感じた、彼女が抱えていた生き物として本能的な部分が不安定になっていることを思うと、恐怖と同時に何か抱えているのではないかという不安を感じる。>

鈴ヶ森 綾 > 「良いのよ、別に。あれで随分気持ちが落ち着いたのは本当だもの。」

だからこそ、安易に身を委ねてしまった事も含めてショックなのだが。
もっとも、それは自分の勘違いであるらしいが、今はその勘違いが正される事はなさそうで。

「そうしてくれると助かるわ。ええ、本当に。私、意外とこの島は気に入っているの。
 ま、気に入らない所もあるけれど。いずれ出ていくとしても、もう暫くはいるつもりでいたから。」

遠回しな言い方であるが、要するに面倒事になるなら島を出る、と。
嘘か誠か、そんな事を口走った。

「協力…?妙なことを言うのね。私を助けて、貴方は何か得るものでもあるのかしら。」

協力、その一言は泰然とした様子の彼女の表情を怪訝そうな物へと変えさせた。
緩やかな動きで手が相手の顔に伸ばされ、その顎を掴んで上向かせようとする。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「だ、だって、おかしいですよ、生き物としてあんな精神状態……
 野生動物ならまだしも、人間として生きているのにあんなに不安定だなんて……
 だから、だから何かできることがあるなら。
 言ったじゃないですか、罪滅ぼしだって。
 もし協力できることがあるなら協力したい。半分はあなたのために。もう半分は私のために」

仮に彼女が人間ではないとして、
人間として生きている彼女があんなに追い詰められるというのは異常だ。
少なくとも先ほどボロを出すまでは、完全に人間として過ごせていたのだから。
彼女の手が伸びてくると、本能的な恐怖が警報を鳴らす。
しかし理性がここで逃げてはいけないと、軍隊で鍛えた精神が本能を抑え込んでいた。
心臓が早鐘を打っているのがわかる。>

鈴ヶ森 綾 > 「…あぁ、そうなのね。貴方、本当に…。」

先日、自分は彼女の能力を優しい魔術と言い表した。
だが本当に優しいのはその力ではなく、彼女自身だったのだ。
彼女は半分は自分のためと言ったが、半分でも赤の他人のために行動できる者がどれだけいるだろうか。

掴んでいた顎を放すと、詫びるようにそこを優しく撫でてから指を離す。

「疑ってごめんなさい。…それから、ありがとう。」

また一つ、らしくない事をしてしまう。
自覚すると少し顔が熱くなるのを感じ、それを誤魔化すように袋と箒を手に早足で歩きだす。

「掃除に戻りましょ。まだ庭の掃除も残っているもの。早くしないと、日が暮れてしまうわ。」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「……えっと、はい、何にもわたし、してないですけど…」

ただ顎に触れて顔を上げられていただけなのに、
彼女の手が離れていくとまさに『解放された』と感じた。
謝罪と礼を同時に言われると、果たしてそこで何というべきか迷う。
迷った挙句、当たり障りのない言葉を選んでしまった。

「そ、そうですね。早く終わらせちゃいましょう!」

掃除に戻ろうと促されると、呆気に取られていた気持ちが急激に戻ってくる。
ハッとした様子で自身が持っていた箒を持ち直せば、
彼女についていくように掃除に戻っていくのだった>

ご案内:「その他」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。
ご案内:「その他」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。