2018/09/13 のログ
ご案内:「ロビー」に椰月 文霞さんが現れました。
椰月 文霞 > 秋の夜長とはよく使われる言葉ですが、単に夜更かしが多い文霞にとっては年中夜長でして。今日は特に何の理由もなく"眠くはないから"というだけで部屋から出て彷徨ってみることに。

これでもちゃんと準備はした。毎晩自室の扉に耳を当て、聞き耳を立てて警備員が何時に部屋の前を通るか、どちらからどちらに向けて歩いているか、毎日同じルートなのか、メモしながら1か月分のデータを貯めた。データのために寝ずに朝を迎えた日もあった。
何故か。"ズレがある日があったから"。
ただのノイズかもしれない。でも、警備員なのかもしれない。トイレに起きた同級生や先輩かも知れない。ヤキモキして眠れないだけの日もあった。

そんな準備をして、とうとう本日深夜のロビーに潜入することになった。

「見回りのおじさんの目を盗んで徘徊……さながら忍者かスパイです。」
普段おとなしい自分がこんなことをしている。それがたまらなくて、アドレナリンが過剰に出てしまうようでちょっとニヤリとした表情になってしまう。でも、今日はもう警備員は歩かないはず。そう思い込むような、信じるような気持ちをもって自室の扉を開けた。

思ったよりも静かで、暗いだけの廊下をゆっくり、足音を最小限に抑えながら歩いていくと、全く難なく、誰とも出会わずにロビーまで来れてしまった。全く拍子抜けしてしまって、まずはソファに座ってみた。

椰月 文霞 > 「物事は計画をする時間が一番充実感を得られる、ということですか?」
これだけの準備をして、いざ実行してみたら何も問題なく今私はロビーのソファにちょこんと座ってしまっている。
小さいころ買ったゲームのことを思い出した。発売された当初はとっても魅力的に見えて、3か月待ってやっとお年玉で買ったと思ったら数日で飽きてしまったアレ。想像を膨らませて期待値を膨らませ過ぎた結果の現実。早く記憶から消したいのだけど、いつまでも憶えてしまっている。

椰月 文霞 > 「今ならちょっとくらい寝転がっても大丈夫ですよね」
一度緊張が途切れると遠慮も何もなくなる。我が物顔でロビーを独り占めでもしたような気分で、背徳感に溺れる。こんな姿誰にも見せたことないのに。
「ふぁぁぁぁ、こんな気分なんですね。ふかふかで気持ちいい……。」
全身でソファのスプリングを楽しむ。パジャマ姿でなら全く怖くない。むしろ人の目はない。制服の時ではこんなこと絶対できない。

椰月 文霞 > これまで人の目が気になってずっとできなかった夢が実現した。
……したけれど、結構大きな音がたっていたのは自分でも気づいている。
きっと人生で何番目かに楽しい10秒くらいが過ぎた後で、高揚感は一瞬にして疑心に塗りつぶされる。
「誰も来ませんよね。いませんよね。」

壁とソファの狭い隙間に隠れてじっと気配をうかがう。出来る限りソファには身体を当てず、音をたてないようにしてひっそりとしていれば誰かが起きてこっちに来たって絶対気づかれない、そう信じた。

椰月 文霞 > 「……ぅぅぅ。助かりました。なんであんなことしちゃったんでしょう。」
また、きっと人生で何番目かに長い1分程度を体験して緊張の糸を解く。隙間から顔を覗かせ、誰もいないのを確認すると改めてソファに腰かけた。

現在のところ、特に気になる物音もなく計画は順調に進んでいる、誰の目にも止まらず、自分のしたかったことを計画通りに進められている、はず。
「明日の朝が一番怖いです。気付いていて泳がされていたらと思うと」
こればかりは自分の耳を信じるしかない。見えないものを怖がっても仕方がないので、恐れる気持ちを抑えつけて平常心を保とうと努めた。

椰月 文霞 > もうちょっとだけ、もう1回だけソファに寝ころんだら部屋に戻って寝よう。
「このソファ、部屋に一つ欲しいです。」
再度寝転んで、うつぶせになって足をぷらぷらさせる。腕でスプリングの感触を感じながら、顔をうずめると眠気が襲ってくる。
「ちょっとだけなら……いい?」
朝まで寝ていたら間違いなく見つかる。見つかること自体悪いことなのかはよく分からないが、変なことをする子だと思われるのは不服であり避けたい。
気怠い誘惑には乗らず、ゆっくりと身体を持ち上げて立ち上がった。

「計画は成功です。この時間なら誰にも見られず気付かれずに遊べるのが分かりました。」
次なる計画を練るために、部屋に戻っていった。
「今度は何しましょう。お菓子やパン食べたいです。」

ご案内:「ロビー」から椰月 文霞さんが去りました。