2015/07/08 のログ
ご案内:「蓋盛の部屋」に蓋盛 椎月さんが現れました。
蓋盛 椎月 > 職員寮、蓋盛に割り当てられた部屋。妙に物が少なく殺風景さを感じる。
最後の期末考査が終わったその日の夕方。
ベッドに横たわる蓋盛の姿。あまり顔色はよくない。

小刻みな電子音が三度。
腋に挟んでいた小さな棒状の機械――体温計を引き抜いて頭上にかざす。
表示されたデジタルの数字が『めっちゃ高熱で~す』と主張していた。

「…………」
風邪であった。

蓋盛 椎月 > 基本的には保健室には放課後も長く居残るのがいいのだが、
体調が優れないため後詰を他の保健委員にまかせてさっさと帰宅したのである。
そうしたらこれだ。

常世学園は学校施設としてはかなり巨大だ。
そして保健室というのは一種の聖域となっているところがある。
つまりは少しサボっても露見しにくいのだ。
逆に言えば、力を入れて仕事をしようと思えばいくらでも体重のかけられる仕事である。
実のところ養護教諭がやることはとても多いのだ。

働くのは苦手である。
おそらくサボるのも自分が思うより得意ではないのだろう。
完全に仕事を放棄するか熱を上げすぎるかの二択になってしまう。
この手の疲労からくる体調の崩し方は一度や二度ではない。

「…………」
恥ずかしい。ひとり布団の中で身をよじる。

蓋盛 椎月 > (こういう時に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる……
 そう……美少女メイドがいれば……)
熱に浮かされた頭でそんなことを考える。
別に熱がないときでもそういうことは常日頃から考えてはいるが。

(美少女メイドってどれぐらい資産があれば雇えるんだろう?)
一介の養護教諭では無理な気がする。

汗をタオルで拭って、ビタミンC飲料を一口飲む。
身体は熱いしひどい吐き気だ。

「まあ……薬飲んで水分取って、
 おとなしくしてれば治るでしょ……」

いざとなれば、《イクイリブリウム》だってある。

蓋盛 椎月 > 実のところ、ちょっとした体調不良で《イクイリブリウム》を
使ったことは何度かあった。
別に少しぐらい記憶が飛んだところで大したことはないのだ。
側に置いておいた、弾倉がカラの拳銃に手を伸ばし
《イクイリブリウム》の弾丸を込める。
そして側頭部に当て…………

「…………」

別に少し記憶を失って困るほど大した生き方をしているわけではない。
しかし。

蓋盛 椎月 > 本当のところを言うと、
どこまで記憶を失っていて、
どこまで記憶を失っていないのか、
自分では判然としていない。

異能《イクイリブリウム》に痛みは存在しない。
無痛で自殺できるスイッチを持っているようなものだ――
と、蓋盛は考えている。
この異能のことが、ずっと恐ろしくてたまらない。
自分は既に死んで、今見ているのは永い長い夢なのではないか――
そんなことをしょっちゅう考える。