2015/07/11 のログ
ご案内:「職員寮@矛海の部屋」に矛海 遼さんが現れました。
矛海 遼 > 物が揃い、整った環境にて男は台所で一つの存在と対峙する。
専用のまな板良し。包丁良し。そして千枚通しも良し。

準備は整った………!

部屋の隅で、
【おめがとむはんくす28ごうのいえ】と書かれた段ボールの中で大きな犬が眠りにつく中、静かに眼が変わる………。

矛海 遼 > 矛海の視線の先にある物。それは…………

「……………」

冷蔵庫から取り出した鰻である。
予め水洗いを済ませ、冷凍保存しておいたものだ。

ゴム手袋を引き締め、冷たくなった鰻をまな板の上に乗せて千枚通しを胸鰭に突き刺し固定する。
この時は、頭は右側にし、背は手前に置くといいだろう。
まな板にはあらかじめキリなど で目打ち穴を開けておくとなおよい。
市販の物を使っても良いが、臭くなるので木材などを利用する手に限る。

矛海 遼 > 冷凍保存する際は、30分を目安にするのが良い。
まな板に固定し、胸鰭のすぐ左側に包丁を入れる。
中骨に当たる感覚を感じた所で、刃が常に中骨へ当たるようにし、鋸のように繊細に、時に豪快に引いては突き入れる。
これを繰り返しながら斬り進めて行く。

この際、左手で抑えながら。腹側のギリギリを意識して貫通しないように気をつけ、尾鰭まで無理に開かないようにするのがポイントだ。
波形になってしまうからだ。

矛海 遼 > 敷き詰められたカステラは異能で【カステラの時間を凍結させる】という荒業を行っているので、部屋に充満する匂いは鰻の物だ。
それでも起きない犬はある意味で図太い神経をしていると言った所か。

包丁が奥まで通った事を確認し、肩の力を抜いて少し息を漏らす。
長距離砲台の向きが数ミリずれただけで射線が大きくずれることがあるように、ほんの少しのミスで捌くのに失敗するという事は良くあることである。
これまで、何度も失敗した経緯剣がある以上、油断をできない。

そのまま開きの状態にし、通った包丁を再び動かして中骨を。
そして鰻の肝を手で剥がし、細かく付着した部分と肝付近の血合は包丁で取り除いて行く。

矛海 遼 > 全長80cm以上の鰻は、腹骨を切るように、包丁で数本の切れ目を入れてから、包丁で頭を切り落として身を半分に切る。

背鰭と臀鰭の切除は、切れ味の鋭いうなぎ包丁以外だと、高度な技術が必要なため省略する。
蒲焼にしてもあまり気にならない物でもあるのも理由の一つだが。

小型なら別の手法がある物の、この島の鰻は妙にデカい。
生態系などは大丈夫なのだろうかとも思いつつ、半分に切った身を水道水で流して行く。
血などよりは砂などや埃を流すための作業だ。

矛海 遼 > 捌いた鰻の身をジッパー付きの袋に詰め、冷蔵庫へ保管しながら、次なる戦いを始める。

懐からニッパーを取り出し、余った骨へと視線を向けて、細かく切断して行く。
鰻の骨は硬く、下手に包丁などを使うと刃が痛みかねないからだ。
このような所で無駄に出費を増やすわけにはいかない。

細かく切り分けた所で、油を加熱しているその間にゴム手袋を外し、ビニール袋に入れてからパン粉でまぶしつつ暫く待つ。

矛海 遼 > 適度に熱を与えた窯の中の油へ、箸で袋から骨を摘まんで投入。
揚がる音が煙と共に、部屋中に響いて行く。

投入し、全体へ通ったと思ったら直ぐに引きぬき、開いた新聞紙の上に乗せて冷まし、再び窯へ投入、これを5回ほど繰り返す。

新聞紙は油を良く吸い込んでくれる物だ。古新聞も侮れない。
自身が戦場にいた時はこんな便利な物は無かった……などと感傷に浸りながら、
揚がった鰻の骨から油を、追加で出したキッチンペーパーで吸い取って行く。

所謂おつまみ。鰻ボーンの完成である。

矛海 遼 > これらをジッパー袋に入れて、台所の棚を開く。
その中には無数のカステラ箱とジッパー袋に入った鰻ボーンが大量に入っている。
何時お裾分けに出しても良いように、あらかじめ複数用意してあるのだ。
この男の几帳面な部分である。

矛海 遼 > 棚に鰻ボーンをしまうと手洗いを済ませ、使ったキッチンペーパーとビニール袋、新聞紙をゴミ箱にそれぞれ分別しながら捨てて、
リビングの椅子に座りながら本を読み始める。

タイトルは【ケイジ・オブ・メモリー 著:M.M.N】と書かれている。
今は亡き友に何度も勧められた本だ。入手にはかなりの時間を要し、
取扱店を昨日見つけて購入した物である。
まさか数年かかるとは思わなかったが……。

矛海 遼 > 著者はまったくの無名である。むしろ何の略かもわかった物じゃないし他の所で聞いたことも無ければ、見たことも無い。
恐らく異世界から流れ着いた遺物か何かだろう。このような学園都市が存在する世界では何も珍しい物ではないのだが。

内容は、異界の英雄たちを閉じ込めた空間……通称【鳥籠】での、英雄同士の戦いや共闘、そしてそれを仕組んだ黒幕の思惑。
英雄の中に現れた【救世主】などを主体にしている。

「……………つまらんな」

あまりにも、突発的、そして固有名詞の多さにうんざりして数十分経った頃にはしおりも挟まずにテーブルの上に放置してしまった。

矛海 遼 > 「………私には面白さはわからんな」

期待値を上げすぎたというのもあるが、個人で読もうと思える内容では無かった。
友の声が無ければ触れることも無かっただろう。
『そのうち読む』などと考えながら、自身のベッドへと足を運ぶ。
風呂に入る気は起きないので、明日の朝にシャワーを浴びて海にでも行こう。
その前に、水着も買って、釣竿も準備せねば………。
そう独り言をつぶやきながら、ゆっくりと眠りに就いて行く。

ご案内:「職員寮@矛海の部屋」から矛海 遼さんが去りました。