2015/07/16 のログ
矛海 遼 > 予め、括流先生がひっかけやすく制作してくれたおかげで作業は楽に終わった。

………そもそも、透けない構造になっていればこのような事にならなかったのだが、魔術に関連する道具や礼装などと言った物の知識は疎い。
構造上仕方のないことだったのだろう。
そう、心の中で納得させつつ針穴に糸を通し、切り取った円状のメッシュ生地に紐のように細長い布を縫いつけていく。

今度会う時には、ばら撒かれていない鰻ボーンと焼いてタレを付けるだけで良い捌いた鰻も共に送るとしよう。
少々引っ越しの後片付けや命を狙われたことがあったにしても、少々間が開いてしまっている。以前生きたままの状態で鰻を持ち込んだ事もある、それを加味した上での行動だ。

矛海 遼 > しかし、このローブを着こんだコゼット先生は可憐であったと思う。
正装と休日時の私服は以前見たことがある物の、普段とは違う印象が自身に残っている。

………いつから自身はこんなにも他者を意識するようになったのやら。
どうにもこの【甘さ】を満喫している自身と、馴染めない自身の二つの感情が揺れる炎のように踊っている。

以前までならば、見知った者が傷ついていようが亡くなろうが知ったことではないと斬り捨てられていたのだが。それを普通と思う自信と、それを拒絶する自身も居る。

「――――おっと」

考えながらの作業という物はやはりよくない。
勢い余って【針が指の腹から爪ごと】貫いてしまった。
血の付いた糸を抜き、新たに糸を針穴に通しながら何処か、その表情は笑っていたか。

矛海 遼 > ここ最近、自身が【平凡な育ち方】をしていたら、と【もしも】の話を考えることがある。
生まれた時から視界に映る物は血と煙、親も無ければ名も無い。
親代わりになった者は最終的に自身と共食いになり、そして殺した。

空っぽのままただ、呪われた体で戦場を廻り廻って、【セイギノミカタ】を騙る唯の愚者。
呪われた時間を通して、【ヒト】を織る時には死神が微笑んでいた。
今までの罪を清算するのだと、その時は思った。
それで自身が完成するのだと、そう考えていた。
それ以上の地獄があったとも思わずに、あまりに滑稽で笑いが出る。

矛海 遼 > 以前、一人の少女に力とは何かと、言葉を溢した。
アレは本当は私自身への問いだったのだろう。

……どうにも小難しいことを考えると気が沈んでしまう。
今度派手に酒盛りをするのも悪くない。
頭の片隅にそんな事を沈めながら血の付いた糸を小さなゴミ箱に捨て、
先ほどのミスを物ともしないような流れるような動きで布を縫い通して行く。
これで準備は整った。後日、顔を合わせることになった際に手渡すとしよう。
今夜は何かをして、ざわつく何かを解消しておきたい。

矛海 遼 > 作業を終え、ローブを畳みアイロン台へ乗せて裁縫道具を片付けてからちくわを一つ口に咥える。

この学園都市に来る以前、【断頭台】の仲間が『かむかむ先輩はもっとゲームとか漫画とかのサブカルに興味を持つべきッス!』と言い、ゲーム機とソフト、漫画やDVDを送ってきたのだが…………箱は未開封のままだ。
流石に手を付けずにいるのは問題があるだろう。

ふと、一つのダンボールを抱え込み、リビングへと持ち運んで開封する。
埃とカビの匂いがどうにも心地悪い、後で空調を整えておくとしよう。
開いたダンボールから出てきた物は【PADとリモコンの入ったゲーム機】と【イカのシューティングゲーム】と【ヒゲ男やら丸いのやらあらゆる作品の登場人物が殴り合うバラエティ番組のような掻格闘?ゲーム】のソフトである。

「……………」

わからん、全くわからん、このリモコンは何だ?ヌンチャクか何かか?
それにPAD。弾除けにでも使えとでも?

矛海 遼 > 「落ち着け遼、これは罠では無い……罠ではないのだ………」

またとない強敵との遭遇である。
なんなのだこれは、どうすればいいのだ。

落ち着け、まずは取扱説明書だ。何も、初めて触れるのだ。
それくらいは同梱して…………ねぇ!

「…………恨むぞ、戦友」

矛海 遼 > こうなってしまったら仕方がない。
勘で弄るしかない……!

先ずはこの似非信号機色の赤白黄色の端子だ。
これは流石に分かる。ゲーム機には触れた事は無いがDVDレコーダーやプレイヤーは触れた事がある。

次はこの黒い端子である。恐らくは主電源、と言った所か。
此処までならいいが問題は………

「……コントローラーは何処だ?」

矛海 遼 > 以前、戦友の私室に置いてあったレトロゲーム機は操縦桿などの形状を取っていた。
それに値する物は……一つはあったが、これだけなのだろうか?
だとすればこのPADとリモコンは何だ?
見当がつかない。

「接続自体は済ませた……電源を入れてみるとしよう。」

おそるおそる、点灯したランプを人差し指で押し込み、テレビの電源を付けて表示を変える。
騒がしい音と共に光り輝き………無言で音量を小さくする。

矛海 遼 > 以前、【決選!あなたの街のスイーツ特集!】のDVDを見る際に音量を大きくしすぎていた。
不覚である。

………どうやら画面のレクチャーによるとリモコンとPADはコントローラーの一つのようだ。面妖な変態科学者め。

数分後、どうにか細かい事は【だいたいわかった】。
だが、今在るソフトを起動しようと思えはしなかった。こんな所で精神力を使う事になるとは思わなんだ。

「………今日は読書にしよう。」

矛海とゲーム機との戦闘は、ゲーム機の勝利に終わった。

矛海 遼 > ゲーム機とテレビの電源を落とし、再び静かになったリビングに出されている椅子に座り、静かに本を一冊読み始める。
以前、変わった古本屋で見つけてきた【陰陽術】の本だ。
ある種の黒魔術に近い物の知識や技術は持ってはいるが、それ以外に着いてはからっきしだ。
こう言った物を手に取ってみるのも気分転換になるだろうと、そう考えて購入した物だ。

矛海 遼 > 元々はこちらとは別の世界における地球からもたらされた技術の一つらしい。
最も、こちらの世界にも奥深くを探せばある物だろうが、少なくとも名前を知っているくらいで大々的な物では理解は少なかった。

術の基礎、開祖などと言った項目を読み流し、技術の面に至った所でちらりと時計を流し見る。
既に数時間も経過しているではないか。楽しい時と言うのがあっという間に流れるとはこの事だろうか。
そう、感じるほどの魅力を矛海は感じ取っていた。

栞を挟んで本を静かに閉じ、椅子から立ち上がりテーブルの上に乗せて再び自身の作業室へ戻る。
夜はまだまだ続いているのだ。



翌朝、オメガトムハンクス28号がコントローラーのケーブルを噛み、脱線したのはまた、別のお話。

ご案内:「職員寮@矛海の私室」から矛海 遼さんが去りました。