2015/06/09 のログ
ご案内:「浜辺」に苗羽 寧々さんが現れました。
苗羽 寧々 > ハーイウェーイトゥーザデンジャゾーン♪
(天気のよい日の午前中。往年の名優気取りでゆっくりと歩いてきた寧々はかっこうつけて着用していたその辺で100円で売ってるサングラスを外したが当然ここは滑走路ではないし向かう先は大空ではなく浜辺である)
(左肘に提げられているのはヘルメットではなくバケツであり、右手で肩に担ぐようにして持っているのは釣竿であった)
(今日の寧々は投げ釣りのトップガン。トップガンとはアメリカ海軍戦闘機兵器学校のことであり別段トップエースとかを意味するものではないのだが、普通の女子高生であるところの寧々は知る由もない)
(そのくらいの気合いということである。何しろ今日のおまんまがかかっている)

苗羽 寧々 > (浜辺からの投げ釣りである。寧々がいる浜辺は遊泳禁止区域である泳いでいる奴がいて針が引っかかったりするようなことがあればそれはそいつが悪い)
(仕掛けは貧乏もといDIY精神に基づき自作であり、エサは集めるのがつらかったのでさすがに買った。アオイソメと呼ばれる海のミミズ的な奴であり、生理的にたいへんおぞおぞしたがおいしいお魚を食べるため涙を呑んで我慢した)
せい!
(エサを針に装着したのち、できるだけ遠くを狙って投げる。女性の筋力では沖合まで飛ばすのは難しいといわれるがそれはそれ、助走をつけるなりフォームを工夫するなりして何とかする。した)
(あとはアタリが来るのを待つだけである。本来いくつか竿をセットするのがよいらしいが、用意できた竿はこれ一本である。男なら一本勝負。寧々は女子高生である)

苗羽 寧々 > (アタリをゆっくりと待つ。狙いはキスである。いわゆるちゅーの意味ではなく、テンプラで美味しいアイツである)
(産卵期を迎えたこの時期、沖合から浅いところへ上がってくる。産卵期であるからには栄養をしこたま蓄えており旨い。いわゆる旬である)
(それもいっぱい釣れるというから期待していたのだが)
…………
(釣り、思いのほか暇。手持無沙汰感に早くもやられて水平線をみつめはじめる)

苗羽 寧々 > (海の底でいちゃこらこいてる魚どもを一網打尽にしてやるぜ。釣りだけど)
(そんな感じの気合いをもって始めたのだが如何せん、こう、わりあい活発な気質の寧々としては性に合わない感がある)
(潜って銛突きでもするほうが楽しいのは間違いない。だがそれをするには許可がいるし、その許可はそうそう下りるものでもない。無許可で強行したとして、漁業組合に見つかると五体満足では帰れない)
(例の物騒な海底遺跡群というのはこの浜辺の反対側なので、半魚人とかに襲われたりする心配はないのだが、やはり本当に恐ろしいのは人間であることだなあ)
(そのようなことを青い空と青い海を見ながら考えた。暇である)

苗羽 寧々 > (と、竿の感触が変わった。なんか左右にぷるぷるしている。さてもこれはキス様のアタリではないか。喜ばしい。魚偏に喜ぶと書くだけのことはある)
(なんか魚との駆け引き?みたいなことはまどろっこしいのでしない。寧々はそういう性質である。釣りは実戦だ、とどこかの釣りキチが言っていたような気がする。要は釣れればよろしい。所詮は初心者。出来ることをするだけである)
(すなわち真っ向からの力勝負である。キスは体長30センチほどであり、さほど引きが強い魚ではないから、駆け引きもくそもないような気がしたがきっと気のせいであろう)
フィーッシュ!
(見事一匹釣りあげ満面の笑みを浮かべた。だがまだまだ釣らねば元は取れない。先は遠い。今日は長くなりそうだな……とプロ気取りで水平線を見つめた。調子に乗っている)

苗羽 寧々 > (ところで、釣り用語に外道というのがある)
(狙った魚以外に釣れてくる魚を呼ぶ言葉であり、別に悪いお魚がいるわけではない。海のギャングと称されるウツボも狙って釣るなら外道ではないし、狙っていない高級魚がうっかり釣れるととても嬉しい)
(再び餌をつけ、仕掛けを投擲して待つことしばし。強烈な引きを感じた)
(鱚とは比較にならないパワーを前に思わず喉を鳴らす。これは大物。スズキあたりでも掛かったろうか。釣りあげられれば一発で元を取れる。そうであれ寧々は駆け引きを知らぬから思い切り引く)
(たまにはこちらの引きを緩めたりしてスタミナを奪うとか聞いたことがある。試してみる。よくわからない。まどろっこしいので力押しをする。安物の竿が悲鳴をあげる)
あっ
(ヤバイ。そう思った瞬間にぼっきりといった。反動で仰向けにぶっ倒れる。青天井を見つめてしばし放心が続く)