2015/06/17 のログ
ご案内:「浜辺」にハナノメ ココさんが現れました。
ハナノメ ココ > (夜の浜辺。雨が降っていた。しとしとと、降りすぎるわけでもなく、かといって小雨でもない。優しい雨だ。あたりは暗く、人気もあまりない。音響は波の音と、そこに落ちる雨音だけで構成されている)
ハナノメ ココ > (そのくらい砂浜にひとつ、ポツンと明かりが踊っている。ちろちろと忙しく動く光。小さな懐中電灯だ。それを持つのは雨ガッパを着た女の子。低い姿勢で足元を見ながら、ゆっくりゆっくりと黒い足跡をつけて、歩いていた)
ハナノメ ココ > 「うーん……あ、あった!」
(女の子は懐中電灯を一箇所に向け、そこへと小走りで駆け寄る。小さな暗い影を作り出しているのは、貝殻だ。アサリより一回り大きい黒い貝殻。名前は知らなくとも、この学園ならそれなりに多く見られる貝のようだ)

ハナノメ ココ > (女の子は雨がっぱのポケットからビニル袋を取り出すと、しゃがみこみ、その黒い貝殻を袋に入れた。袋の中には同じように黒い貝殻がいくつか入っているのか見て取れた)
ご案内:「浜辺」にナナさんが現れました。
ナナ > さく さくと砂を踏む音。
杖が砂に埋もれて少しだけ歩きにくい。

が、今日はなかなか寝付けなかったし、
何より少しだけ遠出したい気分だった。

火照った頬に夜風が当たる感触。
目隠ししていて夜空は見えないが、
きっといい星空なのだろう、と思う。

ハナノメ ココ > 「うーん……まだ足りない……? 足りないか……? どれくらいあればいいのだろう……」
ビニル袋を覗き込み、ためいきをひとつこぼす。姿勢を低くしていたせいか腰も痛い。一度軽く伸びをしたとき、いままで聞かなかった音を聞いた。

「人……?」
特に理由もなく、誰かわからない人間が自分以外にいるというだけで緊張が走る。
戦闘能力がないことの危うさをそろそろ覚えてはいた。

ナナ > さく さく さく。
砂を踏む音が響く。

と、ここで耳が別の音を捉えた。
ビニールの袋が擦れるような音。

そして、家を出た時には気づかなかった雨の音。

興味を示したのは前者だった。
そちらを向こうとした瞬間、砂に杖を取られる。

「ひぇっ!?」

そのまま足をもつれさせてすっ転ぶ。
砂の上で怪我をすることはないだろうが、
雨のせいもあってあっという間に砂まみれ。

ハナノメ ココ > 女の子の悲鳴が突然聞こえ、そちらに懐中電灯を向けた。
うっすらと雨を示す白い線がまばらに輝く向こうに、人が倒れているのが見える。

「あ、あの〜……大丈夫ですか……?」
照らしながらその人物に徐々に近づいていく。
気配の正体が小さな女の子だったことで、ほのかな安心感もあった。

ナナ > びくっと少女の肩が震えたのが見えた。
慌ててそのまま杖を使って起き上がる。
その目は包帯で巻かれ、隠されている。

そして内心は。

(ししし、知らない人!?
し、静かな方にきたとおもったら、
え、え、え、どうしようどうしようどうしよう……)

すごく、パニクっていた。

ハナノメ ココ > 自分の声に合わせて、相手の女の子が震え、ココはおもわずしまったと思った。
こんな夜中に知らない人がいて怖いのは自分だけじゃなかったかもしれない。
そういう類の心配をした。

「あ、大丈夫ですよ……私は一年の……」
女の子の気を紛らわせてあげようととっさに自己紹介をしようとしたが、その包帯を見て、おもわず絶句した。
夜の闇にわずかな懐中電灯で照らし出される目を覆う包帯は、ココの心臓の鼓動を早くした。

静かに恐怖するココにとって、起き上がったまま喋らない女の子が、その理由がパニックにあるなどとは想像もつかない。
照らしたまま動けず、沈黙で返す。

ナナ > 「………す……」

知らない人と話すのには慣れていない。
そんな少女がパニックになりながらどうするべきかと
考えに考えてたどり着いた結論は。

「すいませんでしたぁっ!」

思いっきり頭を下げて、謝る。
正直何に対して謝っているかなど自分でもわからない。
ただ、何かあったら謝れば許して貰えるのではないか、
という甘い考えからの行動だった。

ハナノメ ココ > 「……へ?」
想像の斜め外。予想外の反応に、おもわず気の抜けたような声が出た。
それはそれは深々としたお辞儀であり、どうやらそれは自分に対して向いているようだ。
なぜ謝られたのか、皆目見当がつかない。

「え、えっ、なんで謝るの? こっちこそその……ごめんね? 急に声をかけたりして……」
そう謝り返しながら、おずおずと近づいていく。
なんであれ、敵意がないことだけは強く伝わっていた。

ナナ > 「え、あ、いや……」

なんで、と聞かれれば今度は返答に詰まる。
理由も考えずに謝ったのだから、当然といえば当然でもある。

手探りで落とした麦藁帽子を拾い、かぶり直すと改めて
少女の方へと体を向けた。

目は隠しているので、方向は声から推測しているようだ。

ハナノメ ココ > 「ううん……」
女の子が黙り込んでしまったことに困り果て、顔をぽりぽりとかいた。

落ち着いて対峙してみると、目の包帯が気になりはしていたが、それ以外は普通の女の子のように感じられた。
いちいちそういうことに一喜一憂するべきじゃないかもしれない。
そう思いなおして、会話に励んでみる。

「あ、そのえーと……大丈夫? 転んでいたみたいだけれど……怪我はない?」

ナナ > 「は、はい。なんとも、です。怪我とか、そういうのは、全然……」

緊張でガチガチになりながら返事をする。
その姿は小動物的な何かを彷彿とさせるものがある。

本人のいうとおり、怪我らしきものはどこにもない。
転んだおかげで砂だらけにはなっているけれども。

ハナノメ ココ > 「それならよかったけど……」
そう言いつつも、女の子の歯切れの悪い返事を不思議に思った。
身体にはたくさんの砂がついているが、それを払おうともせずに突っ立っていることもまたわからない。

「砂ついているよ……? 払ってあげてもいいかな」
そう言いながら、大きく近づいて、そこでようやくココは気がついた。
この子は怯えているのだ。

そう考えれば、違和感が全て氷解する。
思えば、包帯に驚いて勝手にこちらが恐怖したことが問題だったのかもしれないとも、考えた。

砂を払ってあげようと、女の子の目の前まで行く。

ナナ > 砂を払うという申し出を受けると、
反射的にぴしっと背筋を伸ばす。

本人としては払いやすくしたつもり、なのだろうか。

ハナノメ ココ > 背筋を伸ばした女の子を見て、ココはおもわず微笑んだ。
それこそ、小動物をみるときに思うかわいさを覚えたらしい。
「あー雨でちょっと湿ってるからいっぱいついてるね……」

女の子の周りを立て膝で回りながら、隙間ないように払った。
「……よし! だいたい取れた……かな。もう大丈夫だよ。えっと……」

一瞬何を言おうか悩む。とりあえずは安心させてあげなくてはならない。そう思った。
「私は……そう、えっと。1年のハナノメココ。あなたは?」

ナナ > 「は、はひっ……わ、わたしっ、ナナ、です。
中等部3年の……えと、15歳、です……」

自己紹介されれば、慌てつつも同じく自己紹介で返す。

「えと、えと……す、砂落としてくれて、ありがとうございますっ……」

再び頭を下げる。帽子が落ちそうになって慌てて抑えた。

ハナノメ ココ > 「か、かわいい……あっ じゃなくて……えっと……」
おもわず漏れた心の声に、慌てて手で押さえて口をつぐんだ。

「ナナちゃんね! 私も15歳! あ、でも一個下……になるのかな? どうなんだろう。この学校、入学時期とか人によって結構違うらしいし……まぁ……いっか! そんなことより、同い年だよ! わぁい」
純粋な喜びが無意味な感嘆となってこぼれた。
同じ15歳だという相手をココはあまり知らなかった。

「こんな時間に、どうしたの? あ、私は貝殻を拾ってるんだけどね。脅かしちゃったよね。ごめんね」

ナナ > 「わ、わたしは寝つけなくて、お散歩に……
雨降ってるのは、気づかなかった、ですけど……」

かわいい、と言われればぼんっと音がしそうな勢いで真っ赤になる。
それを誤魔化すように後半の問いにだけ答えた。

ハナノメ ココ > 「雨……そうだね。まぁそれほど降らなかったし、ね……」
ココは一瞬、聞いてもいいのかどうか気にかかった。
目の包帯についてだ。

あまりそういうことを初対面で聞くのは良くないかもしれない。
そういう思いも多くあったことにはあったが、格好の悪いことに、好奇心が勝った。
代わりに、できるだけなんでもない風につとめて、聞いた。

「おめめ、それは怪我してるの? 包帯を巻いているみたいだけれど……」

ナナ > 目の話を振られると、一瞬肩が震える。
『包帯』でも『怪我』でもなく、『目』という部分に。

「え、えと……わ、わたしは、目が見えなくて……
でも、閉じっぱなしとか、開けっ放しも、
なんだか落ち着かなくて……」

たどたどしく、答える。
それはどこか言い訳じみて聞こえるかもしれない。

ハナノメ ココ > 「そうなんだ……ごめんね。その、つい……」
やってしまったと思った。
自分の中の好奇心に薄々気がついていたからこそ、罪悪感もひとしおである。

同時に、たどたどしいナナの答え方にも何かしら違和感のようなものを感じていたのも確かだ。
しかし罪悪感が先立っていたため、その違和感の正体を暴くには至らなかった。
気になることがあっても、今すぐには聞けないだろう。

ナナ > 「あっ、いえ……き、気にしないでください。
やっぱり、その……みんな、変に思うみたい、ですから。
えと……な、慣れてます。平気です。」

謝られると、今度はこちらが慌て始める。
それでも、最初に比べて緊張感は取れてきたように思える。

ハナノメ ココ > 「……そうなんだ。その、でも、よろしくね、ナナちゃん。あっちの屋根のあるところに行かない? 雨に当たってると、風邪ひいちゃうしね」
とても申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、ここでこちらが落ち込んでは余計に失礼だと思い、明るく振る舞った。

かるく手をナナの腕に触れ、手を引くよ、という動作を示した。

ナナ > 「あ、はい。」

杖を突き、転ばないように注意しながらついていく。
その足取りは遅いがしっかりしている。

話題が目から離れれば、元どおりの様子にもどる。

ハナノメ ココ > 手をつないで、ゆっくりと歩く。歩幅をあわせて。
だんだんとナナの緊張もほぐれてきたように思えて、ココは嬉しくなった。

今はまだやっていないらしい海の家につけられた簡素な屋根の下まで移動した。
「はい到着〜 ここ、座れるよ」

貝殻の入った袋をポケットから出して横に置きながら、ベンチ状になっている場所へと誘導した。

ナナ > ココさんの言葉を頼りに手探りで椅子を探して座る。
ベンチに座ると はふ とひとつため息。

「な、なんか、すみません。ありがとうございます。」

杖を傍らに置くと、ごとんという重い音。
木製に見えるが、中に何か詰めてあるのかもしれない。

ハナノメ ココ > ビニル袋を開き、中の貝殻を数えるココ。
しばらく数えたあとウーンとうなった。

「私、魔術すごい習いたてで、いろいろ初歩的な魔術を試しているんだけれどね」
手元の真っ黒な貝殻を見つめたまま、言う。
「自動筆記……というか、念じた文字を書き出す魔術に、黒い貝殻を粉にしたものを用いることもあるって書いてあったから、集めてたんだけど……思い立ったのがさっきで、暗いと、全然みつかんないのね……よくよく考えると愚かだったかも」

そう、自嘲気味に微笑んだ。

ナナ > 「魔術……うっ頭が……」

冗談交じりに頭を押さえる。
勉強に関してはナナもいい思い出がないようだ。

「と、言っても魔法書なら持ってるんですけどね。
もし読みたい本があれば言ってくださいね?
好きなだけお貸ししますよ。」

そういってくすくすと笑って見せた。

ハナノメ ココ > ナナが頭を押さえたのを見て、先ほどまでうつむいていた様子から、一瞬、本当に痛いのかと心配した。
しかし、どうやらジョークのようだった。
人見知りだっただけで、明るい子なんだなと理解して、頬が緩んだ。

「魔法書……って、一般人でも扱えるものなのかな……? 私本当に魔力とか、うっすーいの……一般人以下。だから魔力に頼らない魔術を勉強してるのだけれど……」

ナナ > 「ものによる、って感じですね。
初めから魔力が込められている魔法書なら
本人の魔力は無関係……とまではいきませんけど、
なんとか言うことを聞かせるくらいはできるかも、ですね。
それに、術式の起動用に限らず、
別に教科書として読んでもいいですから。」

ジョークを飛ばしていた癖に案外詳しい。
もっとも、魔法書以外はからっきしだったりする。

ハナノメ ココ > 口ぶりからして、魔法書に詳しそうだと感じた。
難しい単語でも、一種の迷いのなさがある。

「ナナちゃんは魔法書、得意なんだ……すごいなぁ。あ、そうだ! ねぇねぇ、なん……っでもいいんだけど……私でも使えるような魔法書、今度触らせてもらえないかな……!? 無理にとは言わないけど!」
顔の前で拝むように手をあわせ、嘆願した。その仕草が相手に見えてないことなど忘れているかのような、大きい仕草だった。

ナナ > 「はい、大丈夫ですよ。
できるだけ簡単なものを見繕っておきます。」

そういうと、ちょっぴり恥ずかしそうに笑ってみせた。

ハナノメ ココ > 「ありがとう! ナナちゃん大好き!! ってハッ……! ごめん、つい勢いが……さっきあったばかりなのにね……ナナちゃんかわいいからつい……」
照れ臭そうに頭をかきながら、いいわけする。それが実際に、いいわけになっているかどうかは別として。

「ところで、ナナちゃんは女子寮? もしそれなら、一緒に帰れるけれど……」
気がつけば雨はほとんど降っていないようであった。波の音が気持ちよい夜だ。

ナナ > 「えっ、あ、寮ではないです。そっか、もうこんな時間……」

雨の音が聞こえないことに気づくと、
杖を突いて屋根の外に出てみる。

わずかに聞こえる鳥の声が、
予想以上に時間が経っていたことを教えてくれた。

ナナ > ちなみに好きという発言にはあえて
返事をしなかったものの、
分かり易すぎるほどに真っ赤っかである。

ハナノメ ココ > 「そっか……残念。こんな時間まで、ごめんね、つき合わせちゃって」
そう言うと、立ち上がり外に出る。
ビニル袋は雑にポケットに突っ込んで、大きな伸びをした。

「じゃあ……途中まで一緒に帰ろ? もしよければ、手……つないで」
そっと、ナナの横まで歩いて行って、手を差し出す。
ナナが手を少し動かせば当たるような位置だ。

ナナ > 「はい、途中までなら。」

そっと手を差し出し、もう片手で杖を突いて歩き出す。
向かう先は未開拓区域。おおよそ人が
住むには向かない方向だが……

ある程度進んだところで別れることになる。
手をつないでいる間は終始楽しそうにしているだろう。

ハナノメ ココ > 「うん、途中までね!」
手をつないで2人で歩く。 ココも楽しそうだ。
よく見れば、ココの耳がすこし赤くなっていたが、ナナにはおそらく気付けないのだろう。

別れる位置まで来た。
「じゃあ、またね! 魔法書、約束だからね!」
ココはナナの行き先を知らず別れる。
魔法に詳しい、たんなる普通の女の子だと、思っていた。

ナナ > 「はい、また。いいやつ揃えておきますよー!」

手を振る、というか杖をぶんぶん振ってその姿を見送る。
そのまま機嫌良さそうに家へと戻った。

その素性を知った時、彼女はどう思うだろうか。
少し前までならそう思っていたかもしれないが、
今日の彼女は深夜の高揚した気持ち、
そして、久しぶりに人と話す楽しさを思い出した
おかげか、そんな心配は頭から吹っ飛んでいたようだ。

ご案内:「浜辺」からナナさんが去りました。
ご案内:「浜辺」からハナノメ ココさんが去りました。
ご案内:「浜辺」にヘルベチカさんが現れました。
ヘルベチカ > (桟橋である。)
(潮風が吹く。肌を撫でる。少年は折りたたみ椅子に腰掛けている。)
(少年の手元から伸びた長い竿。その先端から垂らされた糸。)
(水面に立ウキがプカプカと揺れている。)

ヘルベチカ > (頭にかぶった麦わら帽子が、風にパタパタと揺れる。)
(顎にかけた帽子のヒモが食い込む度、なんとなく飛んでいかないように、口を尖らせた。)
…………何が釣れるんだろここ。
(どうしようもない発言をしながら、ウキを眺めている。)

ヘルベチカ > (時折ウキが沈んだ気がして竿を上げるも、魚は居らず。)
(逆に、動かしすぎて魚が逃げているのではないかと放っておいたら、餌を獲って逃げられた。)
奥が深いな……。
(しみじみと言っているが、隣においたバケツの中に魚は0である。)

ヘルベチカ > ん。
(リールを巻く。ウキが持ち上がり、その下にある糸が水面から上がって。)
あー。
(また、餌がなくなっていた。糸を手繰って、手元に寄せて。)
(袋に入った蛹に、針を通す。)
(再び海の中へと投げ込んだ。)
なんか餌付けしてる気分だな……。
(一応釣りである。)

ご案内:「浜辺」にスピナさんが現れました。
スピナ > 「…………?」

海へ帰ろうとして、海に潜ってから、なにやら不思議なものを見つけた。
投げ込まれた蛹である。

通された針には気づかず、蛹を手にとって見る。

ご案内:「浜辺」に山吹 冠木さんが現れました。
ヘルベチカ > (ぼへーっと水面を眺めている。)
…………。ん。
(なんとなく、ウキが揺れたように見えた。)
いや、待て。もしかすると気のせいかも知れない。
(動かしすぎると魚が逃げるという考えに取りつかれた愚かな少年。)
……でも、ちょっとくらい引いてもいいよな。
(ちょこっとだけ糸を引いてみる。)

山吹 冠木 > 「ん……?」

箒を片手に桟橋の上を歩いていると、
海釣りをしている影が視界に入ってきた。
今の時期なら、海だと何が釣れたか……
そんなことを考えながら、邪魔しない様にゆっくりと近づいていく。

「釣れてるか?」

スピナ > 「っ!?」

いきなり掴んでた蛹が上に引っ張られるもんなので
びっくりしてこっちも引っ張る。
力としてはそんなに強くなく、姿が見えなければそれなりの大きさの魚が食いついたようにも思えるだろうか。

ヘルベチカ > (山吹から声をかけられれば、相手の方を見ずに。)
いや。なんか、今、キテるような、来てないような。
(水面を見たままで、返事をする。)
(そうしていれば、突然深く引かれた糸。)
よっしゃ来たァ!
(まさか水面下に人間が居るとは思わない。)
(ぐっと竿を引き上げて、リールを巻いて。)
釣れた!今釣れた!釣れる!釣る!
(やっと魚に巡りあったと信じていれば、山吹に対してテンション高めに声を返して。)

山吹 冠木 > 「お、頑張れよ!!」

どうやら何か大物が引っかかったらしい。
しかし、釣りは釣り人と獲物との一対一の勝負。
観客は静かに見守り、その行方を見守るのがマナーだ。

「負けるなよ!! 結構でかそうだぞ!!」
よく見えないが、糸が引かれる様子からそう判断して。

スピナ > 「!?!?」

引っ張るよりも更に強い力で引き寄せられていく。
じたばたして抵抗を試みる。が、それも姿が見えなければ魚が抵抗してるようにしか思えないだろう。

おまけに、少女は軽い。
抵抗虚しく、どんどん引き上げられていくだろう。

ヘルベチカ > ありがとう!ここで釣れなければ俺の4時間26分が無駄になるから頑張るわ……!
(昼前から今まで、完全に時間を無駄にしていたことが明らかとなった。)
(バタバタと糸が暴れるさまは、水中で魚が右往左往しているようにも思えて。)
(釣りなど本日が初めてである少年には、判断など突くはずもなかった。)
でかい!でかいぞ!マグロか!?
(マグロは遠洋の魚であることなど、今の少年には関係がなかった。)
(そして。)
いよっしゃあ!
(スピナの姿が水面から見えるであろうほどにまで、糸を引いた。)

山吹 冠木 > 「長いな4時間は……!!」
だがその時間も、今大物を釣り上げるまでの貯めと思えば報われるだろうか。
しかし、一体何がいるのか……随分と大きい。
暴れる様子は、ヌシか何かかもしれない。

「おっ!!」

糸を引いた様子に息を呑み

スピナ > 「きゃぁっ!?」

結局、水面まで引き上げられてしまった。
見えたのは、何かを持っている少年と、それを見守る青年。

一方の少女は、針の引っかかった蛹を握りながら、唖然としているだけであった。

山吹 冠木 > 「…………へ?」

間の抜けた声が漏れた

ヘルベチカ > あぁ、しかし、4時間でこれなら!
(長かった。とても長かった。)
(通りすがりのおっさんに鼻で笑われ。)
(女子二人の通行人に指さして笑われ。)
(この時まで続けていたかいがあった。)
(そう、今こそ、我が雪辱を果たすときである――――!)
マグロ獲ったぞオラァァァぁぁぁぁ…………。
(勢い良く引き上げた糸の先。)
(びっくりした声を上げている、少女の姿。)
(一瞬の硬直。)
(山吹を振り返って。)
……マグロ?

スピナ > 「マグロ?」

復唱する。
少女はまだ状況が飲めていない。

これは何?あれは、なに?マグロってなに?
そもそも私に何が起こったの?
あと、なんで手がいたいの?

それは手に針が刺さってるからだった。血は出てない。

山吹 冠木 > 「……マグロ?」

目の前に釣り上げられた少女を見て、
思わず呟く。

「……いや、違うだろ」

ヘルベチカ > そっか……マグロじゃないか……
(マグロではなく人であった。残念ながら。非常に残念ながら。)
(しかし認めよう。現実を見るべきなのだ。あれは少女だ。)
(だから、また、糸の先、針に餌を付けて海に投げ込もう。)
(少女はキャッチ・アンド・リリースしよう。ん?)
(Q.針はどこに有るか)
うわああああああ針ささっとるうううううううう!?
(A.少女の手の中である。)
(完全に事故っている。)
(慌てて山吹を振り返って。)
なにか、棒、それ、箒!箒!引き上げて針取らないと!!!

スピナ > 「え!?え!?」

なんで騒いでるのかわからない。針?マグロ?棒?箒?
蛹を掴んで宙ぶらりんな少女には、どうすることもできなかった。
別に手に針が刺さってようが不思議な顔はしてないし
そんなことより

「わたし、マグロ、じゃないよ?」

誤解は解いておこうと思った。

山吹 冠木 > 「へ!? 棒!? 箒!?」

慌てて箒を差し出す。

「だ、大丈夫か!?」

ヘルベチカ > 知ってるよ!あと女児がマグロじゃないよとか言うと風紀委員来るからやめよう!?
男子二人で女児にマグロさせて風紀に捕まるとか何の救いもない……!
(魚であれば糸を引っ張って手元まで寄せるけれど。)
(針が刺さっているであろう少女相手にそんなことをしようものなら確実にえぐる。)
ありがとう箒マン……!
とりあえずその棒につかまってこっちに来るんだ……。
(野生動物を説得する如く慎重に声をかけて。)

スピナ >  
「だ、だいじょうぶだよ?
 え、えっと、あの、あっ、うん……!」

そんなことより状況の把握を急ぎたいと思っていた少女であったが
とりあえず言われるがままに箒に捕まって少年のいる方へと向かう。

聞こえてくる単語の意味は少女もよくわかってないし
今はそれを考えたり聞いている余裕はなかった。二人の様子を見てると、多分それどころじゃないと思ったから。

山吹 冠木 > 「間違いなく表を歩けなくなるな、それは……!!!
あと俺の名前は山吹冠木な!! 箒マンじゃねえ!!」

箒を精一杯伸ばしながら、思わず叫び返した。
そんな理由で風紀委員の世話になるのは生徒として、いや人として避けたい。

山吹 冠木 > 「よし、針の刺さった手で強く持つなよ?
深く刺さると危ないからな……!!」

ゆっくり、慎重に箒を引っ張って少女の動きを手助けする。
まだ痛んでいないのか、それとも深くは刺さってないのか……
一見して平気そうだが、放っておいて良いものでもないだろう

ヘルベチカ > (少年の棒につかまって、少女がマグロではないと訴えかけながら、釣り上げられる。)
(完全に事案である。)
猫乃神ヘルベチカは無罪です。
(この島であれば風紀委員は、突然桟橋の下から顔を出しても不思議ではないくらい大量にいるので、誰にでも無くアピールしておく。)
(スピナが棒を伝って傍まで寄ってくれば。)
よっこいせ。
(立ち上がり、スピナの両脇の下に手を差し入れて抱えて。)
(己の座っていた折りたたみ椅子に座らせた。)
て、手は大丈夫か。針、針を抜かないと……。

スピナ > 「かぶき、おぼえたよ、かぶき。
 えっと、わたし、スピナ。うみのせいれい。
 ……て?てはだいじょうぶだけど、あ、ちょっといたいかも」

と言いながら、針の刺さった手を差し出す。
たしかに針が刺さっている。しっかりと。でも血は出ていないようだ。
……ちょっとだけ、刺さったとこから光の粒子が漏れだしてるかもしれない程度だった。

山吹 冠木 > 「お、おう? スピナ……精霊?」
その言葉に首をかしげつつ、やっぱり刺さってたか……と僅かに眉をひそめる。

「というか猫神さん、こっそり自分だけ無罪アピールするなよ!!
 こっちもフォローしてくれよ!?」
箒を海から引き上げて、軽く水を払う。
後でしっかり洗わなければ、恐らく使い物にならなくなるだろうが……
今はそれを気にしている余裕はあまりない

スピナ > 「うん、せいれいだよ。
 ……ねえ、これは、なあに?」

刺さってない方の手に握られた蛹を見せながら言う。
少女の顔は未だにきょとんとしてるし、特に痛がる様子もない。
ただ、不思議なものを見ているような目をしているのみである。

ヘルベチカ > (スピナの手の中、針が確かに肉に潜り込んでいるのを見て、うわぁ、と眉間に皺を寄せて。)
これ血が出るのと光が出るのって、どっちがヤバイんだろな……
これ、抜くから。ちょっと目瞑って、一瞬我慢するんだぞ。
(素朴な疑問を口にしながら、針を抜こうと、スピナに一声。)
だってマグロ少女に棒突き出すのは人助けといえど風紀案件でしょ……。
(一因どころか完全に原因であるが、そっと山吹から視線をそらす。)

スピナ > 「んっ」

言われたとおりに目を瞑る。
両手は差し出したままで。

ヘルベチカ > それは蛹。釣りの餌だよ。魚に食べさせて、針に引っ掛けて釣り上げる。いくぞー。
(スピナの手の中、針に対して、ポケットから出した釣り糸をかける。)
(勢い良く引きぬいた。ストリング・ヤンク・テクニックというやつである。傷を広げずに、針は外れた。)
とれた。痛かったな。ごめん。

山吹 冠木 > 「誤解を招く表現だけで言うな!?
 そうするしかなかったことだろうが!! あと、箒!!」
ぜいぜいと息を荒くしながら何とか言ってのけ、
肩を揺らしながらスピナの言葉に視線を向ける。

「……釣りえさだけど……そういえば、水の中にいた、のか?」

ヘルベチカ > (自分用に持ってきていたのだろう。ポケットの中から消毒薬と絆創膏を取り出して。)
(消毒薬を多めにかけて消毒してから、絆創膏をぺっと貼り付けた。)
すまなかった……。
(まさか海の中に人がいるなどとは思っても居なかったが、刺したのは刺したで悪いので、頭を下げて。)
そうだよ。海の中に居たのか?
(そういえば、と。山吹の言葉に頷いた。)

スピナ > 「ううん、だいじょうぶ。あ、ありがとね……。」

絆創膏のついた手をまじまじと見つめながら、「なんだろうこれ……」と呟いた。
とことん世間知らずである。

「……ん、そうだよ。スピナ、うみのせいれいだもん。
 いまからかえるとこだった。」

微笑んで自己紹介する。
片方の手は、蛹を掴んだまま海を指さしている。

「……さかな、つりあげて、どうするの?」

魚を釣り上げる
その単語にちょっと眉がぴくりと動く。

ヘルベチカ > 海の精霊……?
(この島であれば、居てもおかしくないといえばおかしくはないが。)
(なんとなくもっと、こう、海の精霊というと、人魚のようなイメージがあったのだろう。)
(少年は首を傾げてから。)
箒の精霊:冠木ははどう思う?
(山吹の意見を聞きたい!と言わんばかりに相手の方を向いた。)
ん。小さければ海に返すけど、大きければ食べる。
(少女の質問に答える。少女の眉が動いたのには、気づかなかったらしく。)
まぁ、そもそも今日初ヒットがスピナなんだけどな。

山吹 冠木 > 「そ、そうか……悪かったな、帰り道で巻き込んで」
正確には自分がしたわけではないが、
同じく釣りを見ていた以上、頭を下げる。

「俺は箒の精霊じゃねえよ!?
 まあ、そういうのも居るんじゃねえか……? 多分」
詳しくは分からないが、居るというからには、いるのだろう

スピナ > 「ん……たべる。」

そっか、と一言。
陸の上の文化はよくしらないし、人間は海にもぐるということをあまりしない。
だから、きっとそういうものなんだと納得しておいた。
ただ、

「いただきます、と、ごちそうさま……わすれないでね。」

笑顔で、言い聞かせるように、そう言っておいた。
それは少女の信条、大切にしてもらいたいことだったから。

「んと、かぶきは、ほうき、の、せいれいさん?」

勘違いしてしまった。

スピナ > 「……ぁ」

気づいた。

「わたし……たべられる?」

ヘルベチカ > 言う言う。こう見えてこの猫乃神、挨拶だけはちゃんとしてるねと言われる生き物……!
(自信満々に言っているが、つまり他のところはちゃんとしていないということであろう。)
えっ 山吹さん この子お食べになられるの?
(ドン引きフェイス。そりゃ敬語にもなる。)

山吹 冠木 > 「箒の精霊じゃない、人間だ……あと、誰が喰うか!?
んなわけねえだろ!!」
なんでだ!!と声を荒げる。
こいつは人を犯罪者にしたいのだろうか?

「あー……物を食べる時は、ちゃんといただきますとご馳走様は言うな」
故郷でもよく言われた言葉だ。それをしないと、
じい様に静かに説教されたことを思い出す……あれは、幼少時には怖かった

スピナ > 「ちゃんと、いってる。よかった……」

少女は安堵した様子。
海の精霊である少女も、魚を喰らう時がある。
その時は、命の重み、感謝を忘れず、いただきますとごちそうさまを忘れない。
そして、他の人にも、それを忘れてもらいたくはない。

「あ、だって、わたし、つられたから
 つったものは、たべる、だったから。」

キョトンとした顔で言う。

ヘルベチカ > よかった……もし食べるッ!て言われたら、図書委員会だけど戦わなければならないところだった……。
(ホッとした表情で胸をなでおろした。)
(とりあえず釣り糸はくるくると竿に巻きつけて、輪ゴムで固定しておいて。)
俺は小さな魚はリリースするから、ヤマビーが食べないなら、リリースされていいんじゃないかな……?

山吹 冠木 > 「その時は土下座してでも誤解を解くわ……」
男として、いや人として。

「くわねえって言ってんだろおおおおおがああああああ!!??」
思わず叫んでしまった。
ヤマビーなのはもうこの際構わない

ヘルベチカ > だそうです。
(スピナへ向けて、山吹を紹介するように、手のひらを上に向けたバスガイドさんのポーズ。)

スピナ > 「ひっ!?」

流石にちょっと怯えた。
ちょっとキョドってるようで、泣きそうな顔でおどおどしている。

「あの、ご、ごめんなさい……」

と言うか涙がもう溢れてる。

山吹 冠木 > 「あ、いや、その……すまん」
頭を下げた。寧ろ綺麗な土下座を決めた。
つい、頭に血が昇ってしまったようだ……

ヘルベチカ > スピナや……。
(スピナへハンカチを手渡しながら)
こうやって山吹くんも謝ってるんだ……許してやってはくれないか……?

山吹 冠木 > 「いや、危害を加えたりはしねえから、大丈夫だ……」

流石に、少女に泣かれると心苦しいものがある。

あと、猫神は後で覚えてろよ。
そう視線に力を込めて一瞬にらむ

スピナ > 「え?あ、あ……」

なんか最初から状況をうまく飲み込めていなくて
少女の方も少しどころじゃない混乱状態になっている。
ただ、わかるのは

「ううん、だいじょうぶ、かぶき、わるくない。」

ハンカチを受け取りつつ、土下座する冠木へ歩み寄る。

ヘルベチカ > (山吹の視線などどこ吹く風、と言った様子で海の向こうを眺めて)
よかった……人間と人間は分かり合える……

山吹 冠木 > 「いや、人間と精霊だろ」

土下座の姿勢のままツッコミをいれる。

「そう言ってくれると嬉しいわ……」

スピナ > 「……ふふふ」

二人のやりとりを見て、涙目のままクスクスと笑う。

「ふたりって、なか、いいんだね。」

今日一番の笑顔を見せた。
その視線は、ヘルベチカと同じ、水平線へと向いている。

ヘルベチカ > つまり人間と人間は分かり合えない……悲しみ……
(そっと外した麦わら帽子を胸に当て、悲哀の表情で水面に視線を落とす。)
仲いいだろ?この4時間47分の釣りの結晶です。
(いえーい、と両手の親指を立てて決めポーズ。)

山吹 冠木 > 「仲が良いっていうか……」
別の何かだろ、と言いかけて口をつぐむ。
わざわざ否定して、笑顔を悲しませることもないだろう……

お調子者だが、悪いヤツではなさそうであるし

スピナ > 「ふふふっ。
 ……そういえば、あなた、なまえ、きいてなかった。」

今度はヘルベチカの方へ歩み寄る。
そして見上げる。あどけない表情だ。

ヘルベチカ > (いそいそと麦わら帽子をかぶり直していれば、飛んできた質問。)
んぁ?あぁ。俺は猫乃神ヘルベチカ。
猫乃神でもヘルベチカでも猫でもチカちゃんでもヘルでもヘルにゃんこでもいいよ……。
ただし猫の精霊ではなくて人間なので、人間扱いしていただきたい。
釣り竿を持っていたけど釣り竿の精霊でもなければ麦わら帽子の精霊でも折りたたみ椅子の精霊でもない。
ところでこの海、魚いるの?
(実に5時間近い戦いの結果、本日の釣果は坊主であったので。)
(知ってる?と山吹にも振り向いて聞く。)

スピナ > 「ヘルベチカ……ん、わかったよ、ヘルベチカ!」

名前を覚えれば、笑顔を見せる。
魚がいるかと問われると

「んー……ここらへん、あまりきてない。
 もうちょっと、むこう、いっぱいいるよ?」

沖からだいぶ離れたところを指差す。船でも無いと行けない距離だ。

ヘルベチカ > フルネームで呼ばれたの久しぶりな気がする……。
(感動した様子であった。)
向こうかー……ちょっと遠いなー……乗り物がなきゃなー……
実は箒にまたがって空を飛べる魔女の類だったりは……
(期待に満ち満ちた視線で山吹を見つめるじゅんすいな少年。)

山吹 冠木 > 「猫神は釣りの精霊ではあるかもな」
意趣返しも兼ねて、少しだけからかう様に言ってみる。

「んなわけねえだろ……俺も普通の人間だよ。
 そんな便利な魔法は使えねえよ」
その手の中で箒ががさりと揺れ……
ふと、言われて気がついた様にそれを確認する。

「ん……と。流石にあんまり放って置くとよくないな。
一足先に、俺は戻るわ……それじゃ、またな」
そう言って二人に背を向けると、軽く手を振る。

スピナ > 「ん、またね、かぶき。
 また、あおうね!」

去っていく冠木の背中に手を降って見送る。
その姿が小さくなって見えなくなるまでその手を降っていた。
健気である。

ヘルベチカ > 釣りの名人太公望は魚が釣れずに英雄が釣れたという。
もしかして山吹は英雄なのではあるまいか。
(極めてポジティブなシンキングであった。)
だめか……ここだったら魔女くらい居てもおかしくないのにな……
(残念、と肩を落として。それから、相手の視線の先、箒を見て。)
あぁ、そっか。洗わなきゃまずいよな。悪かった。助かったよ。
またな、ありがとう。
(ぱたぱたと手を降って、山吹を見送る。)

山吹 冠木 > 「おう、またなー」
島を一周しても面白いかもな……
そう言いながら、その場をゆっくりと離れていった

山吹 冠木 > 「つれたのは精霊で、釣ったのはお前だろうが」
何処か楽しげに言いつつ、箒を軽く揺さぶる。

「ま、今日中に掃除すりゃ大丈夫とは思うが、念の為だな
次は大物釣り上げろよ? またなー」

そのまま、背中がどんどんと小さくなり……やがて、見えなくなるだろうか

ご案内:「浜辺」から山吹 冠木さんが去りました。
スピナ > 「えいゆう……?
 わたし、えいゆうなの?」

『魚が釣れず』『英雄が釣れた』
そしてスピナが釣られたという事実
その二つの言葉をつなぎあわせた結果がこれだった。
それが何かはしらないけど。

ヘルベチカ > しかし、海の向こうへ行かないと、釣れそうもないか……。
(スピナの示した先へと視線を飛ばす。)
(正直なところ、船を出してまで釣をするつもりもない。)
よし。釣りは諦めよう。
(すぱっと諦めた少年。バケツの中に汲んでいた海水を海へ捨てて、中に荷物を詰め込んで。)
わからん……英雄かどうかは、歴史が判断する、らしい……。
(尤もらしい台詞を吐いて、うむうむ、と頷いて。)
しかし、英雄になんてならずに静かに暮らすほうが幸せかもしれない。

スピナ > 「……あとで、さかな、とってきてあげる。」

それは少女なりの気遣いのつもりだった。

「さかな、いっぱいしってるし、すこしほしかったら、とってくる。」

その顔は純粋に、ヘルベチカの役に立ちたいという気持ちが現れていた。

「えいゆう……ならないほうが、いいの?」

英雄になると、静かじゃない、なんて想像が少女の中で組み立てられつつあった。

ヘルベチカ > あー、いいよいいよ。自分の食い扶持くらい自分で取ってこないとな。
俺のほうがスピナよりでかいんだし。次の勝負に期待するわ。
(なんとなく、プライドの問題なのか、少年はそんなことを言って笑って。)
(麦わら帽子が、風にゆらゆらと揺れた。)
なんか英雄ってめっちゃ忙しくてめっちゃしんどくて、色々辛くてでも人に褒められて嬉しい!みたいなイメージ有る。
(完全に個人的な印象だけの問題であった。)
だから、まぁ、なりたい人がなればいいんじゃないかな。

スピナ > 「ん……わかった。
 次は……がんばってね。」

勝負、という単語を出されると
納得して、おとなしく引き下がる。
勝負は、真剣なもの。介入が不要な、1対1の勝負。
そんなことを、昔聞いたことを思い出したから。

「えいゆう……ほめられる……んー
 スピナ、ちょっとだけ、きょうみあるかも。」

言われたイメージを、そのまま取り入れて組み立ててみる。
きっと、大変なものなんだろうけど、褒められるんだろうな、っていう想像が出来上がっていた。

「えいゆうって、よくわからないけど、なれたら、なる。
 ほめられるの、すきだから。えへへ。」

ヘルベチカ > うむ。次はなんとしても夕食のおかずを釣らねばならない……
だからスピナは次は針に捕まらないように……おかずには出来ないからね……
(そっと視線をそらし、陽光を反射してキラキラと輝く水面を眺める。)
(綺麗なものを眺めて心を綺麗にしようという無駄な足掻き。)
マジで。興味あるの。女の子では珍しいな。
(数度続けてまばたきをして、首を傾げて。)
褒められるかもしれないけど、その分嫌われるかもしれないから、プラスマイナスが激しくなるだけかもしれないぞ。
褒められるのが好きなら、普通にいいコトしてるだけの方がいいと思うけどなぁ。
(少し考えこんでから。)
……ま、なろうと思ってなれるものでもなし。なるようにしかならないか。
じゃあとりあえず、針が刺さったけど泣かなかったので褒めよう。
(えらいえらい、とスピナの頭をぐしぐしと撫でる。)

スピナ > 「ん、わかった。はり、きをつける。」

絆創膏が張ってある部分を指で撫でる。
光の粒子は、もう漏れだしていない。痛みも、消えている。

「ん……きらわれるの、ちょっとこわい。
 ……いいこと、してるほうが、いいかな?」

だんだん英雄というものがよくわかってきたのかわからなくなってきたのか。
とりあえず英雄という言葉を覚えて、あとで先生に聞こう。少女はそう思った。

「ん……えへへへ」

頭をなでられると、表情が綻んで、にへら顔になる。
とても心地よさそうだ。その髪質はちょっと硬くてチクチクするけど。

ヘルベチカ > うむ。これは魚用なので、海の精霊を釣るためにはできてないからね。
ていうかよく糸切れなかったな……先輩高いの買ったんだな……
(改めてしげしげと釣り竿を眺める。)
いいコトしてるほうがいいんじゃないかなぁ。
なんにせよ人それぞれだから、やりたいように生きればいいさ。
(からからと少年は笑う。無責任であった。)
(撫でつつ、なんか栗頭だな……と思いつつ手を離して。)
そんじゃ、俺も先輩に釣り竿返しに行かなきゃいけないから、そろそろ行くわ。
スピナも釣り針やら、投網やらに引っかからずに帰るように。

スピナ > 「ん、わたしも、そろそろかえるね。」

ドボン、と音を立てて海に飛び込む。
そして水面から顔と手を出して

「さよなら、ヘルベチカ!またあおうね!
 はりと、あみ?きをつける!」

と言うと、海に潜って沖の方まで泳いでいった。

ご案内:「浜辺」からスピナさんが去りました。
ヘルベチカ > おう、そんじゃまたなー。
(スピナの潜っていった海に向けて、パタパタと手を降って。)
さて、釣り竿返して、シャワー浴びて、バイトだわ……。
(少年も桟橋を後にした。)

ご案内:「浜辺」からヘルベチカさんが去りました。