2015/07/22 のログ
ご案内:「浜辺(海開き状態)」に緋群ハバキさんが現れました。
ご案内:「浜辺(海開き状態)」に夕霧さんが現れました。
緋群ハバキ > 白い砂浜、青い海。
焼けるような日差しもなんのそのと、海を満喫する若い学生たち。
常世島の浜辺は、観光会社のイメージボードに出来そうなぐらいに盛夏ムードであった。

長身の少年もまた、夏の風景へと入り込むに相応しい格好である。
涼やかな色合いの海上仕様ピクセルカモ柄の帽子を被り、サマーパーカーの下はひざ上の水着。
赤いマフラーは海には不似合いだが、時折巻いたり外したり。
そんな少し不審な行動は、緊張故のものであろう。

楽しい海を前にして、少年は若干萎縮気味であった。
否、これからの出来事に心が踊らない筈は無い。無いのだが――

「昨日はしゃぎすぎて、今緊張がめっちゃ来てるよね……」

待ち合わせに遅れてはならぬと約束の五時間前に起床し、浜辺に着いたのは二時間前である。
ビーチパラソルの下で相手を待って居る間、最初は浮かれていた気持ちは次第に緊張へと転じている。
駅の改札にて主人を待つ忠犬の如く場所を確保しながら、二時間固まり続けているその姿。
何だか監視員の役を果たす風紀委員にも奇妙に映るらしく最初こそ遠巻きであったが、先程など「気を落とすなって」などと慰められた。何だと思っているというのか。
ひょっとしてデートをすっぽかされた哀れな男か。
でもこの長時間微動だにしてないとそう思われても仕方ないよね!!

埒もない事を考えながら、耐水仕様のスマホで時間を確認すれば、待ち合わせの15分前。
緊張でがちがちになりつつ、視線を巡らせた。

夕霧 > 彼女がその場に到着したのは一時間前。
買った水着の試着はしてあるし、色々と準備も前日までに終わらせた。
勿論仕事の事務も一日、二人空けても問題ないように終わらせておいたし、常に連絡が付く様に携帯端末の番号、有事の際の処理も書置きしておいた。
問題はない、はずだ。

私服を脱ぎ、水着を着る。
少し肌が出過ぎているかも知れないが、まあこれぐらいなら許容だ。
パーカーを羽織り、眼鏡を外し持って来たトートバックへ治す。
泳ぐのだから纏めておく方がいいだろう。
そう考え、髪も後ろで纏めてポニーテールのようにする。
身鏡の前で最終チェックを行う。
問題は無い、ハズだ。
そのチェックが終わったのが待ち合わせの15分前。
思ったより掛かっていた。
ゆっくりと浜辺へと踏み出す。
じりじりと照りつける日光。
夕霧は、それほど暑いのは得意では無かった。
「暑いですなあ」
少しうんざり、といった顔になるがこの顔を彼に見せる訳にはいくまい。
今日一日を、恐らく楽しみにしてくれているのだろうし。
この顔はここまでだ。
表情を戻し、浜辺を見渡す。
先ほど来たメールでは既に待っている、と言う事らしいが。

まだハバキを見つけてはいないが、ゆっくりとハバキの方に近づいてはいる。

緋群ハバキ > 目の前で戯れる学生たち。
人間砲弾めいた勢いで馬鹿笑いと共に海上へ吹っ飛んで行く男子学生たち。
あの異能の使い方は風紀委員的にどうなんだ。スルーか。
かしましくも微笑ましい、水着から伸びる健康的な肢体が眩しい女子学生たち。
これぞ海。目の保養。だがしかし、彼女たちには失礼だが本日の少年にはそんな水際の天使達も霞んで見える。
あとはなんか、こう、常世学園らしい、異邦人たちの姿もちらほらと。
リザードマンって海水どうなんだろう……とか、無用な心配をしてみたり。

無意味に時間を何度も確認しつつ、きょろきょろと首を巡らせる。
いやまだ待ち合わせには早いんだって、と心の中で自分にツッコミを入れつつも、湧き上がる期待感は抑え切れず。

「……あ!」

いつもとは違う髪型で、いつもと違うパーカー姿。
モデルのように高い身長は、この浜辺においても特に目立つ。

「セーンーパーイーーーーー!!!!」

お預けを食らっていた犬が尻尾を振るが如く、ぶんぶんと腕を振って己の存在をアピール。
視界の端で先程悪い笑みを堪えつつ声を掛けてくれた親切な風紀委員が舌打ちをしたような気もするが最早己がそんな有象無象を気にする理由など何処にもないのであった。

夕霧 > センパイという声。
そちらを見る。
「ああ、おりましたなあ」
ほっと息を吐く。
この暑い中を探し回る愚はしなくてもよさそうである。
ゆっくりとサンダルで砂場を踏みしめ、ハバキの方へ。
「ごめんなさい、少し遅かったです?」
声を掛けれる範囲に来たので声を掛ける。

当然ではあるが彼も水着で普段と違う出で立ち。
つい、と思わず身体に目が行く。
十分に鍛えられており、やはりというか剛ではなく柔に重きを置いた肢体。
かと言って剛も十分に備わっており、非常に理想的な身体と言えるだろう。
以前の模擬戦でその膂力は実際に痛いほど知っている。
「ええ身体ですなあ」
故に率直に、ころころと笑いながら身体を褒めた。

緋群ハバキ > 「い、いいいい今来たトコでス!!」

裏返り気味な語尾。呆けた顔で見惚れていたのに気付かれただろうか。
常のパリっとしたパンツルックを見慣れているが故に、普段とは違う夕霧の装いが過剰に眩しく見える。
高速で首を横に振りつつ、テンプレートな応えを返して。

前を開いたパーカーの胸元に盛り上がる筋肉は、十二分に鍛え上げられたもの。
鈴の音のような笑い声で評された言葉に、赤面しながら頭を掻く。

「やー、お恥ずかしい……あんま、人前で見せられたもんでもないスけど」

そう言いつつもパーカーを脱ぎ、晒された上半身には言葉を裏付ける無数の古傷が存在した。
16歳の男子としては少々普通とは言い難いその肢体。が、模擬戦である程度手の内を明かした相手だ。
羞恥を別にすれば、特に隠す理由も見当たらない。

「えーと。
 ……と、とりあえず何から、ですかね……!」

眼鏡を外した夕霧の顔を覗き込みながら、緊張した様子で思わず問う。
入念にリサーチした海デートプランは頭の中から吹っ飛んでいた。

夕霧 > 「そうです?」
今着た所、と言うには随分とその場で時間を潰した、という感じが出ているが。
それを聞くのも言うのも野暮なのだろう。

パーカーを脱いだ彼を更ににやにやしながらじろじろと見る。
恥ずかしそうにしているので少しだけ、いじわるをしてやろう、そんな気分であった。
「誇ってええと思いますよ、ふふ」

まあそれはさておいて、だ。
「とりあえず海に入ります?」
何から、と言われれば夕霧も特に何を、とは考えていない。
そもそも海ではお仕事で何度か本土に居た頃に来たっきりであり、それも特に遊んでいた訳でも無かった。
故に海に来たのだしとりあえず海に入るのが正答ではないのか、という考えであった。
ぱさ、とこちらもパーカーを脱ぐ。
海に入るのだからどちらにせよ脱がねばなるまい。
水着は黒。
前から見ればワンピースで、後ろからはビキニという、所謂モノキニ、という奴であった。

緋群ハバキ > 古傷は、背中に回る程に多かった。

「向こう傷なら誇れるもんですけどね」

それは、少年にしては前時代的な言葉に響くかも知れない。
が、赤面と共に語られた台詞には字面程の羞恥は無い。

「いやまぁ俺のボディはいいんですよ!
 ほらむしろこの浜辺において主役は先輩であり俺は刺身のツマみたいなもんというか……!」

衣服の落ちる音と共に、露となる水着姿。
想像の中で逞しくしていた姿よりもその破壊力は大きく――先程と比しても呆けた、というより最早アホ面で見惚れる。
黒い色彩と白い肌とのコントラストは、今この瞬間を夏と言う名の結晶に封じ込めたくなる程であり――

「……ぅあ、はい!
 波が、波が俺たちを呼んでいる!!」

はっと我に返り、手と足が同時に出るようなぎこちなさで波打ち際へ歩を進める。
エスコートなどする余裕は何処にも無いのであった。

夕霧 > 「傷は何処にあっても傷ですよ」
軽く微笑む。
何時もとは少しだけ調子の違う笑い方。
傷つくほどに何かを成したというだけで、それは賞賛に値するものだ。
ただの失敗の傷もあるだろう。
だがその傷は、何時かの糧となる。
故に彼女にとってハバキの傷だらけの身体は、好ましいものに映る。
愛しいほどに。

前を行くハバキの後ろで少しだけ胸を撫で下ろす。
とりあえず水着姿は喜んでくれたようだし。
選んでもらった時に協力してもらったあの女性には感謝せねばなるまい。
「えぇ。じゃあ、行きますか」
荷物をパラソルの下に置き、サンダルも置いておく。
素足で踏みしめる砂は少し熱を持っているがきっとこれも海に入る時の気持ちよさを高めてくれるものだろう。

緋群ハバキ > 傷は何処にあっても傷。
その傷に相応しい経験を、己はして来たのだろうか。
             いもうと             きず
思い出すのは本土に居る唯一の肉親の事であり、本来己が負うべき責務を、誰よりもそれを忌避していた者に押し付けてしまった負い目でもあり――

その傷に相応しい生き方を、己は出来ているのだろうか。

自問は刹那の事。
ただ、肯定するような彼女の微笑みには、先行するが故に誰にも見せぬ安堵の滲んだ笑みが漏れた。

「砂、熱くないスか?」

振り向き、尋ねて。波打ち際の湿った砂に足を着ければ、ああ、と声を漏らす。
この感触は、焼けた白砂を踏みしめてこそなのかも知れない。
足の甲へと掛かる波にくすぐったさを覚えながら、夕霧を振り向いたままで海の中へと後ろ向きに歩を進め、

「ぶ」

石に躓き、背中から思い切り水面へと転げる。
水飛沫がきらきらと、陽光を照り返した。

夕霧 > 海面へと転げたハバキを見て、あっと声を上げる。
少し小走りに近づいていく。
「ふふ、大丈夫です?」
しゃがみこむと、ハバキを覗き込み、手を差し伸べた。
波打つ海水が足に当たり、それが心地いい。
「はしゃぎすぎて怪我したらあきませんよ?」
めっ、という感じの注意。
これぐらいで怪我はしないだろうし、とは思うが故に柔らかい注意だ。

彼が転んだ際に舞う水しぶきが光を反射してそれはとても幻想的な眺めで。
余り海に来ていなかったからこんな景色を見る事は少なかった。
それは純粋に少し損をしていたかな、と思わせるに十分足る景色だ。

緋群ハバキ > 「がばぼ」

大丈夫、という言葉は泡となった。
差し伸べられた手を取り、身を起こす。体躯に見合わぬ膂力で引き上げられるのは分かっていた。
犬のようにぶるぶると頭を振り、水を滴らせながら困ったような笑みを返す。

「大丈夫で――あー、はい。
 昨日はしゃぎ過ぎて今日緊張気味というか。ああでもなんかこう、いいなぁ……!!」

幼子にそうするような口調での軽い注意。
心の底からこの先輩の後輩で良かったと思う。今日の日の約束を耳ざとく聞きつけた事務の他の男子先輩陣から理不尽な量の仕事を申し渡され死ぬ気で片付けた甲斐があった――!

水飛沫に心を和ませた夕霧の雰囲気に、繋いだ手を引いて海へと誘う。
ゆっくりと、今度は足元に気をつけて。

「頭まで浸かるのも中々気持ちいいすよ」

夕霧 > その余りにはしゃぐ姿に。
ふと思うのは確かに犬のよう。
何処から漏れたのか、他の事務の後輩や同僚に「犬君と海へ行くんだ」と言われたのも思い出す。
確かにはしゃぐ様、嬉しそうにする様などは尻尾を振る犬のように、見えない事も無い。
意識したことは無かったが、成程、と一人納得する。
とはいえ別に犬扱いをするつもりもなく、納得した所でどうだと言う話ではある。
一先ずその思考は中断し。

ハバキに手を引かれ、少し深い所まで進み。
「そうです?」
言われ、海に全身を投げ出す。
ふわ、と浮いたまま空を見上げる。
これは確かに。
「ええですねえ」
目を軽く閉じ、波の音と感触を全身で味わう。
なるほど、海とはこういうモノか。

緋群ハバキ > 「でしょー」

身を投げ出して天を仰ぐ夕霧へと人懐こい笑みを向ける。
自分とて海を満喫するなどというのは初めてのことだが、成程。

周りを見渡す。
明確に「何かをして遊んでいる」という手合よりも、自分たちのようになんとなく海での時を過ごしている者の方が多い。
つまり、海を楽しむというのは、その時間を共有するという事か――
今更ながらに、そう思った。

寄せては返す波に攫われぬよう――或いは単にそれは己への方便なのかも知れないが――夕霧の手を握ったままで視線を落とす。
黒のモノキニはシックながらに出る所の出た彼女のスタイルを際立たせ、気持ちよさげに水面に身体を預ける彼女を眩しく演出して。
ごくりと喉を鳴らし、高まる鼓動に首を振る。
平常心、平常心。

「なんか、別の時間が流れてるみたいスねー……」

気の抜けた声で、そんな風に漏らした。

夕霧 > 「……そうですねえ」
ゆっくりとハバキの言葉に同意する。
「うちはもう少し、はしゃぐものかと思ってましたけど。こういうものなんですねえ」
てっきり、海なので泳ぐ、だとかビーチバレーだとかで遊ぶものなのかと思っていたが。
これなら確かに海にきて楽しむというのもわかる。
夕霧的にはこちらの方が海を楽しめそうである。

握る手が、少しだけ熱い気がする。
「……」
特にそれに関して言うことは無い、無言のまま静かにただ水面に揺られる。
「ハバキはん」
目を閉じたまま、手を握って横に居るであろう彼に。
「ありがとう」
ただただ感謝を口にした。

緋群ハバキ > 「いや……正直、色々考えてたんスけど。緊張で吹っ飛んじゃって……」

SNSやネットに氾濫する夏の海を楽しむ様々な方法。
だが、今はそんな知識はどうでもいいとすら思えた。
こうして波に佇むだけでも、ひと夏の経験値となり得るのだ。

「……っ!」

ぼんやりとそんな事を考えながら、水平線の向こうを見つめていた折に掛けられた言葉。
鼓動は跳ね上がり、かぁっと顔まで熱くなるのを感じた。
全く――こんなの反則だろ、と僅かに残った冷静な自分が頭の中で呟く。

答える前に、手を離して。
己もまた、再び水面へと背中を預け、並ぶ。
今度はそっと、控えめな水飛沫と共に。

「どう致しまして――へへ」

青い空を見上げながら、赤くなった頬を左手で掻いて。
一度離した夕霧の手の甲へ、己の掌を重ねた。

夕霧 > 一度離れた手が、答えと共に戻ってくる。
少しだけ強く握って。
「……」
何も言わない。
今は言う必要は無い。
ただ浪間に漂う全身のこの感覚と。
それとは逆にはっきりとした掌の感触だけを楽しむ。
それだけでいい。
ハバキはどんな顔をしているのか、それも今は些細な事で。
ただ、彼が今を楽しんでくれているのなら。
彼女が水着を選んだ甲斐もあったし。
来た甲斐もあった。
それでいて私も楽しめているのだ。
これ以上望むことは無かった。
だから、今はただこのままで。

緋群ハバキ > 握り返される手。
それは、いつかの演習場や先ほど引き上げて貰った時よりも弱く。
けれど、繋がりを実感出来るぐらいに、強く。

「……、」

熱くなった胸に浮かんだ想いを言うべきか惑い、けれど口にする言葉が浮かばない。
夏の海の水温は心地よく、隣の体温すら感じられるような錯覚。
波音の合間に吐息が聞こえ、鼓動さえも伝わってしまうような錯覚。

言葉が見つからなくて、ただ波間に漂う。
日差しに目を細めながら、いつまでもこの時間が続くのではないかと思い、いつまでも続けばいいと祈った。

――そうして、いつまでそうしていたのか。
ほんの数分だったようにも、数時間だったようにも思えた時間。
ゆらゆらと揺れ、互いを繋ぐ手を握ったまま。
少年は不意に口を開いた。

「水着――似合ってて。綺麗でした」

これだけは伝えておかないと、そう思えたから。

夕霧 > 確かに時間の感覚すら曖昧になる。
どれだけの時間が経ったか、わからない。
日差しはまだまだ強いままで、それほど時間は経っていない、そう思うが。

「―――ああ」
堪らず声を上げる。
それは感嘆であって意味は無い。
自然と口から漏れたようなもので。

「……おおきに。選んだ甲斐、ありましたよ」
綺麗だ、そう言われ。
ただただくすぐったい。
少しだけ、彼女の手も先ほどよりほんの少しだけ熱を持つ。
気づかれるだろうか。
だが、それでいい。
綺麗と言われて嬉しくない訳が無いし―――。
照れない訳でもない。
だから素直にその言葉を受け止めて、喜んだ。

緋群ハバキ > 少年は女性の機微には疎い方である。が故に、複雑怪奇なその心理の深奥へと踏み込むのを躊躇し、恐れる。
だが今はその言葉を素直に受け取りたい、心の底からそう思った。
自身とのひとときの為に選んでくれたものだというのも、その理由。
同じこの時間を共有している男性としてささやかな優越感と、深い感慨が鼓動を早くさせた。

「……ま、折角来たんですし。
 もうちょい色々してみましょーか。海の家とか出てるらしいですしねー」

だから、もう少し勇気を出して。
起き上がり、先程そうして貰ったように手を引く。
気づけば緊張はすっかり解けていた。

「先輩、今俺超楽しいっす。
 ありがとうございます!」

ひとまずは、浜辺へと戻って次に何をするかを考えながら。
真っ直ぐな声と態度で、少年はそう告げるのだった。

夕霧 > ざぱ、と海から立ち上がる。
手を引かれ、浜辺へと。
「そうですね、折角ですし」
ここから先も彼女にとって未知数だ。
もしかしたら彼にとってもそうかも知れない。

それでも。

「じゃあ、お任せしますよ?ハバキはん」
それでもここは、誘ってくれた彼に全てを委ねよう。
何時もの笑いを浮かべ、ただただハバキと一緒に楽しむとしよう。

まだ今日は続く。

ご案内:「浜辺(海開き状態)」から緋群ハバキさんが去りました。
ご案内:「浜辺(海開き状態)」から夕霧さんが去りました。