2015/09/08 のログ
磐野 州子 > 海。一夏の思い出…あるにはある。
慧と海に行ったぐらいしかないが、それでも州子にとってはそれなりの思い出だ。

「ケイ…」

そういえばカフェテラスで会った時はどこか様子がおかしいから声をかけたが、
自分は別に彼にとって特別な存在ではない、ただの友達だから必要以上に踏み込むことはしない。
その友達に何かしてやれたか、と言われれば何も出来てない事も確かなのだが。

「…ま、ケイですし、大丈夫です。ウン」

きっと持ち前の軽さでそれなりに持ち直しているだろう。
慧だから、慧だし。

ご案内:「浜辺」に笛木 奏太さんが現れました。
笛木 奏太 > 「秋の夜更けの海岸……パシャリ」

彼は月にめがけて光を投げかける。
レンズに浮かぶ返事の写りに納得がいくまで彼はそれを続ける。
こんな静かな夜更けには、正義の味方も休みがほしい。

笛木 奏太 > 「誰もいない夜更けに写真を撮るのは気持ちが休まる……ここでなら……」

彼はおもむろにカメラの機材を入れるバッグからマスクを取り出してコートを脱ぎ始める。
するとコートの下からはスパイダーマッじみた衣装が現れ、笛木は一瞬でアメコミ的マスクの自警団姿に変わってしまった。

「真夜中の撮影会!」

磐野 州子 > 「……?」

静かな夜に波の音だけかと思えばパシャリ、とシャッターを切る音が聞こえる。
釣りをする州子はその音に釣られて音の方向に向けばどうやら月をひたすら写してるらしい。

「あ、えーと。」

声をかけるべきか迷ったが恐らく写真を取るのが趣味な彼の時間を邪魔してはいけない、と考えてしまう。
しかし、夜に、海で、写真を撮るという行動はあまりオススメは出来ないという意図は伝えたい。
カメラだって機械だ。潮風や海水に当たれば駄目になってしまう

「…海で写真撮るのはオススメしねーですよ?
 もしも海水が――――?」

いきなり脱ぎ始めている。どうやらこちらに気付いていないのだろうか。
いや、流石に腹筋は見たくとも男の全裸を見る気はない――と思いきやどこかのヒーローなのだろうか、
ヒーロースーツのような服装をしている事に気付けば無意識に腰元に置いてあったカンテラの火を消す

笛木 奏太 > 「――――見られたっ!?」

流石の彼もその辺りで気付く。

「あ、あなあなた……一体何時から見てたんですか?」

日曜のデパートの屋上にも居そうな姿の青年は勇ましい姿と裏腹におっかなびっくりだ。

「あ、あ、怪しいものではないんです! 通りすがりのヒーロー的なアレです! 今はオフ! オフなんですよ! その間は写真撮ってイメージ画像集をつくろうかなって……」

マスクの下の顔は真っ赤だ。

「つまり、その、あの……見なかった……」

小さな声で懇願する。

「見なかったことに……すくなくともマスクの中身だけは」

蛇のような凶暴なデザインのマスクに似合わぬ実に実に情けない声であった。

磐野 州子 > 反応を見る限りやはり見つかってなかったらしい。
しかもこの様子だとどうやら弱みを握られるレベルらしいが…
州子はそっと腰元のカンテラの明かりを強くして白衣の姿を現す

「いや、オフとか言われても分かんねーですし、州子はそんなヒーローとか全く分かんねーですし…」

俗世的な物に興味が無い訳では無い。
ただ、知らない物に興味を持てと言われるのだけは中々難しいだけで

「見なかった事にするですけど…そもそもテメーはナニモンです?
 何か変身とかしてる限りだとヒーローみてーですけど」

暗い世界の中視線はヒーローの方を向いて、
ため息をついたところで釣り竿に反応があった為釣り上げて見るが、
どうやら餌だけ取られたらしく更にため息をつく。

笛木 奏太 > 「俺は趣味でヒーローをやっているんだ。ここらへんだと異能者同士で諍いが多いからさ。勿論そういうことがしたいなら風紀委員に行くべきだし、自分の善意とはいえ争いや事件に介入するのは治安を乱す行為かもしれない。だけど――――!」

ヒーロー的ポーズを決める!

「俺がやりたいのはヒーローであって治安の維持じゃないんだ! 自分が正しいと思うことを自分の趣味で自分だけでやりたい! だから独立独歩のヒーローをやっている! ……んだけど今見られてしまった」

また落ち込む!

「太公望と決めているのかい? 随分と風雅だね」

磐野 州子 > 「なるほど。
 趣味で善行したくて
 でもそれが治安を乱す行為と自覚があって
 委員会にも相談しないと」

どうやらこのヒーローは慈善事業でヒーローをしているつもりらしい。
それも一つの生き方だろう。
しかしそれで治安を乱すという自覚があるならば無視するのは良い気分ではない

「ヒーローってこー…命がけで悪と戦うイメージあるですけど、趣味で命かけるってどーなんです?
 命かけない程度に頑張るんです?」

袖越しに濡れた釣り糸を持って何も刺さってない釣り針を見れば餌だけ取られた事を改めて確認する。
更にそれはこの辺りに魚がいる、という意味でもある。
すぐにエサ箱からミミズを取り出し、釣り針にミミズを刺せば振りかぶって釣り針を海へ落としていく

「太公望とかそんな大袈裟な物じゃねーですよ。暇潰しです」

笛木 奏太 > 「いいじゃん。趣味で命かけるの。命かけるに値する趣味だよ。頼みもしないお節介を気持ちよくぶちまけて、風のように去れば良い……」

満足そうだが要するに一種のテロリストであることには違いない。

「暇つぶしにしても中々絵になるものだよ。月下の釣り人。一枚撮ってもいいかい? お嫌でなければだけど」

磐野 州子 > 「ありがた迷惑って言葉がとても似合いそーですね
 その熱意だけでも風紀か公安にでも持っていけば採用してくれるんじゃねーです?」

委員会にテロリストもどきを斡旋するのは心苦しいが、
少なくとも現状よりは良い方向に転ぶ…はずだと信じたい

「別に写真撮るぐらいなら別にいーですけど…
 州子の顔はそんな綺麗なもんじゃねーですよ」

火傷痕のある人物の写真なんて撮った所であまり良い気分にならなさそう故に一言だけ付け加えておく
今更写真撮られたところで特に困るような事はしないだろう。ヒーローらしいし

笛木 奏太 > 「組織に属するなんてノットヒーローだからねえ……」

カチャカチャとカメラを準備する笛木。
随分と手慣れた仕草である。

「適当に釣り針でも眺めてて~カシャリ」

笛木はデータを端末に表示して自慢気に笑う。

「題名は『月と釣り人』、月の光が逆光っぽくなって釣り人がシルエットになるわけよ」

彼の言うとおり、州子の姿は影になって映らない。
そしてその影法師だけが静かな夜の海辺に映えている。

「美醜正邪は見方次第。俺は俺の見る世界にある美しいものを守るのだ!」

手持ちのプリンターで写真をプリントすると州子の足元に置く。
彼の動きから州子は笛木が彼女について一応知識があるということに気付くかもしれない。

「それじゃあこれはお礼! 困ったときは空に向けて助けてウロボロスとでも叫んだら来れるかもしれない! 来れなかったらごめん! バイバイ!」

笛木の姿が瞬く間に霞んで消える。
実に実に単純な高速移動。
しかしそれはあまりにも速すぎ、そしてその速さに比べて静かすぎた。

ご案内:「浜辺」から笛木 奏太さんが去りました。
磐野 州子 > 「いやヒーローってどっかの組織に属してるものじゃ……」

そんな言い訳のような一言を発する間に何回かシャッターを切る音が静かな浜辺に響く。
まぁ、いいかな、と思いつつ言われた通りに釣り針をジッと眺めている

写真を取られ続けるという状況は初めてな為に中々新鮮なのだが、どうしても気になる、がまだ我慢する

そしてそのヒーローは自分のとなりに写したものを置いていったと思いきやいつの間にかいなくなっている

「…何か、ほんとありがた迷惑って感じですねー」

隣に置かれた写真を手に取ろうとすると潮風に乗ってどこかに飛ばされていく。

「…まぁ、いいや」

自分が写ってる写真を欲しがるなんてナルシストがする事だから見るのは気が進まなかった。
そして再び釣り竿に反応があった為にこれまでにない反応速度で釣り竿を持ち上げる。

しかし、その釣り針には何も釣れておらずまた逃げられたようだ

「…なるほど。風が釣れたとでも言いたそーですね」

自分で上手いことを言ったつもりになりながら釣具を片付けてその場を後にする
ウロボロス。と叫べば風が釣れるらしいからまた今度釣る事にしよう。その時は風紀のお世話にならないといいが

ご案内:「浜辺」から磐野 州子さんが去りました。