2015/12/23 のログ
ご案内:「浜辺」に石蒜さんが現れました。
石蒜 > スンスンと鼻を鳴らし、潮風の匂いを嗅ぎながら砂浜を歩く石蒜。
右手にはスーパーのビニール袋を下げて、一定の距離を行ったり来たりしている。

そして、ある一点で立ち止まる。「ここらへんかなぁ。」周囲を見渡した。
産業区の灯りが綺麗だし、寮からそれほど離れていない。何より近くにコンビニがある。ここなら上等だろう。

石蒜 > 一旦ビニール袋を側に置いてしゃがみ込み、素手で砂浜を掘り始める。
「にゃーにゃにゃにゃーふんふふ~ん♪」いつだったかテレビで聞いた曲、歌詞は覚えていないがリズムだけは気に入ったそれを口ずさみながら。

この時期、夜の浜辺はただでさえ寒い。その上濡れた砂を素手で触っているので、手はすぐに真っ赤になった。
しかし石蒜は全く気にすること無く、歌いながら穴を掘っていく。

石蒜 > 砂を掘り続けていると、何か固いものに指先が当たり、手を止める。
「んー?」一旦手を引っ込め、もぞもぞと砂の中で何かが動くのを見つめる。
出てきたのは指先ほどの小さなカニだった。掘り起こされて驚いたのだろう、左右にちょろちょろと走り回っている。

「カニかー、本当に横に歩くんだなー。」興味深げに、しばらく逃げまわるカニを観察。
「ごめんねー、また別のお家さがしてね。」ひょいとカニをつまみ上げると、穴の底から逃がしてやった。
また掘り始める。

石蒜 > その後も、貝や海藻などを掘り出しながら黙々と砂浜を掘っていく。
息を弾ませなら砂を素手でかき分ける姿は、犬を連想させるかもしれない。
段々と穴は大きく、深くなっていく。時折息を手に吐きかけて温めるが、焼け石に水だ。

もう手の感覚は無いし、貝の破片で何度か手を傷つけた。
しかし、石蒜は砂を掘り続ける。額から汗が流れ、顎から滴り落ちた。

石蒜 > 随分深くなった穴の底に手を突き刺して砂を掬うと、海水が染み出してきた。海抜と同じ深さまで掘ったようだ。
「んー、こんぐらいかなぁ?」気付けば指先は切り傷だらけで、血が出ている。感覚がないので痛くないが、あまり傷付けるとサヤに怒られる。
立ち上がり、最初に側に置いたビニール袋に手を伸ばす。
「ん~んん~~♪」楽しそうに鼻歌を歌いながら、袋を逆さにして振る。
出てきたのは、アサリやシジミの貝殻と画用紙。
画用紙にはクレヨンで大小様々の四角が描かれており、それぞれの四角には拙い字で、『おふろ』や『しんしつ』などの文字もあった。
見ようによっては家の間取りにも見えなくはない。ご丁寧に隅には『しーしゅあんと畝傍のいえ』と書かれている。

それらを穴の底に残して出る。
「んふー。」一度、満足気に貝殻や画用紙を見やってから、周囲に盛られた砂を穴に戻して埋め始める。
何か目的があるのだろうが、事情を知らない人間から見たらゴミの不法投棄である。

石蒜 > 穴が大きかったため、戻すのも手間がかかっているが、石蒜は楽しんでいる様子だ。
すっかり穴を埋めて、少し盛り上がった部分の上で跳び跳ねて平らにする。
「えへー、楽しみー。」手にこびりついた砂と血を袴で拭ってから、楽しみで仕方ないといった足取りで、砂浜を後にした。

ご案内:「浜辺」から石蒜さんが去りました。