2016/01/15 のログ
ご案内:「浜辺」に蔵田 怡与さんが現れました。
■蔵田 怡与 > (陽の落ちた浜辺。冷たい風に晒され、真っ白な息を吐きながら、一人の女生徒がそこを小走りで駆けていく)
(はっ、はっ、と短く息をするたびに、マフラーの隙間からは白い息がこぼれ、頬に、まつ毛に降りかかる。)
冬は………、最高。
(ぼそりと呟き、足を止める。女生徒が立ち止まったのは汀。いかにも通学用といったローファーのつま先を、海水が湿らせる。)
■蔵田 怡与 > (何度か軽く手首を動かしてみる。)
■蔵田 怡与 > (肩から提げた大きな鞄に手を突っ込み、取り出したのはプラスチックケース。)
玩具みたいだけど…本当に使えるのか?
まぁ…学校で借りたものだから、大丈夫だろうけど。
(ケースを開ける。中には手首に撒くビニールバンドと、パルスオキシメーターのような器具が入っている。)
(女生徒は躊躇なくそれを取り出し、右手首にビニールバンドを巻いて、メーターを右中指の先に噛ませる。バンドとメーターは細いケーブルで繋がっている)
……軽い。本当に玩具みたいだ。
(何度か軽く手首を動かし、女生徒はしげしげと右手を眺める。)
■蔵田 怡与 > (ポケットから携帯端末を取り出すと、指先のメーターの先にかざす。)
(ピ、と小さい電子音が響き、端末にタイムスタンプとグラフの軸が表示される。)
読み取りもできた。
じゃあ…始めますか。
(鞄の中に左手を差し入れ、折り紙の束を掴み出す。)
(器具がついているとはいえ、慣れた動きであっという間に紙飛行機を織り上げる。)
(女生徒の手のひらの上で、紙飛行機は戦闘機に変わった。ずんぐりとした機体が特徴の、局地戦闘機・雷電だ。)
行け。Jack。
(女生徒の声と共に、雷電は宙へと舞い上がる。海風を受け、一時は機体をふらつかせていたが、すぐに風を捕まえ、力強く舞い上がる。)
■蔵田 怡与 > 増槽なし。火星二六型の1800馬力。南寄りの上昇気流。直上まで……3分40。
最高だ。やっぱり戦闘機はこうでなければ…。
(遥か頭上に点ほどとなった雷電を見上げ、女生徒の口調が高ぶる。幾分高揚しているのか、白い頬に寒さとは異なる赤みが差している。)
(すっ、と左手を前に差し出す。海の彼方を指すように。
それに合わせ、点ほどの彼方を飛ぶ雷電も、その手が指し示す方へと機首を向ける。)
照明弾投下。閃光弾……放て。
(ボウッ、と薬剤の燃える音とともに、雷電から光の弾が投下される。ふたつ。みっつ。
投げ落とされた光は、風に流されることもなく、まっすぐに、ゆっくりと海面へと落ちていく。)
(雷電が機体をひねり、機銃が火を噴く。打ち上げ花火を上から下へ放つように、光の尾を引きながら、夜行性塗料入りのレプリカ閃光弾が放たれる。)
(ふわふわと海面へ降りていく光が、閃光弾に貫かれ、薬剤の反応で蒼白い炎を上げて燃え上がる。)
■蔵田 怡与 > (差し出した手を翻す。雷電も、その手の動きに追従するように機体を返す。大きく回転しながら、機銃で撃ちかかる。ふたつ目の照明弾が撃ち抜かれ、海面の近くで人魂のように炎を上げる。)
あと一つ…間に合うか。
(最後の一つ。照明弾は、雷電の引く風に流され、今にも海面に落下しそうになっている。)
(手を下から上へ振り上げる。海面すれすれを飛んでいた雷電が、機首を跳ね上げ、急上昇をかける。
「本物」ならば高度8000メートルまで達するのに10分もかからない、恐るべき代物だ。)
("台南空の三羽烏"よろしく背面宙返りの姿勢を取ったのは、ほんの数秒。閃光弾が放たれて照明弾へ襲い掛かる、直後。照明弾は海へと沈んでいった。)
(光が消え、闇が訪れる…)