2016/06/08 のログ
ご案内:「浜辺」に八雲咲雪さんが現れました。
八雲咲雪 > 白い飛行機雲をつくりながら浜辺に着地する。
もっていた鞄を適当に放り投げ、肩を動かしたり屈伸をしたりして体をほぐす。
運動の前の準備運動。
怪我をしないように、また怪我をしてもひどくならないようにするための行為。

体のラインをくっきりと出すボディスーツは、伸縮性に優れており、咲雪になんの違和感も抱かせず準備運動に付き合ってくれる。

八雲咲雪 > 浜辺は既に夕方。
沈みかけている太陽はオレンジ色を放ち、海を蒼ではなくオレンジに染めている。

風は既に冷たい。
夏が近いと想像させる昼の風を、否定しているかのような風。

(まだ、夏じゃないのね)

ポニーテールを揺らしながら頬を撫でていく風に、気付かされたように。

八雲咲雪 > 準備運動も終わり。
背中、足につけている魔道具の調子を確かめる。
先ほど、浜辺まで飛んでくるのに使ってはいたが、あれは通常飛行。
これからは最高速を出すため、魔道具の接続がしっかりしていないと痛い目をみる。

足に魔力を送り、魔道具【S-Wing】を起動させる。
フォン、という起動音とともに足には真っ白な、魔力で構成された羽根が展開される。

背中に魔力を送る。
背中のS-Wingも魔力に反応し、起動音を上げた後推進力を出し始める。

「足、よし。
背中、よし」

八雲咲雪 > 確認完了。
何も問題ないことを確認したら、膝を軽く曲げ、空へジャンプする。

「ふっ――」

ジャンプの勢いで空へと昇っていく。
ものの数秒で地上は離れ、海の上まで飛び出していた。

八雲咲雪 > 海の上の風は予想以上に寒く、寒さに、ふるり、と体を震わせた。
不意に心が寂しくなった。
しかし、そんな寒さはすぐになくなるだろう。

軽く前傾姿勢をとり、足に、背中に魔力を送る。
通常ならばこの時点で推進力が足、背中のS-Wingから得て前へと進む。
だが、咲雪のS-Wingが推進力を生まない。
足のS-Wingと、背中のS-Wingを反発させあい、推進力を消している。
つまり、今咲雪のS-Wingは半ば暴走仕掛けている。

八雲咲雪 > 推進力を高めていく。
細かく、しっかりと反発させあい、強い推進力を育て続ける。

【エアースイム】という競技は、当然スタートダッシュがある。
一秒でも速く相手より前に出たり、認識外へ出なければいけない。
その際に行なう技法の一つが、この方法。
例えるなら、磁石のS極とS極をゆっくり近づけながら、合わせようとしている状態。

ガタガタと揺れ始める咲雪の体。
それは寒さからではなく、推進力の均衡が取れなくなってきているため。

(――っ!)

苦虫を潰したような顔をし始める。
これ以上は、抑えられそうにない。

八雲咲雪 > 「――いっけぇ!」

自らの合図をもって、両方の推進力を前に向ける。
開放された力は咲雪を吹き飛ばすかのように、前へ押し出した。
風を切る音。
ほぼ一瞬で最高速まで達し、海の上を、空を泳いでいく。

八雲咲雪 > 魔力で作られた、白い飛行機雲を生み出して海の上を飛んでいる。
咲雪のS-Wingは最高速があがる様チューニングしてあり、その分、旋回や加速がきつくなっている。
だが、ソレを克服する方法はいくらでもある。

「っ!」

一瞬だけ、S-Wingに送る魔力を全て切断する。
咲雪の体は、言葉どおり速さで吹き飛んでいる状態になる。
いつもこの瞬間は恐ろしい。
失敗すれば、大怪我をするかもしれない。
だけれど、だからこそ、咲雪は続ける。

八雲咲雪 > (ここで――)

靴への魔力供給を開始し、前転するように、体を捻りながら回す。
飛んでいる方向と真逆を向き、足が海に着きそうになる、その瞬間、更に背中への魔力供給を開始。
靴と背中へ、一気に魔力を流し込んで

「っあああ!!」

海を蹴る。
全身をバネのように扱い。
咲雪の体にまとわりついていた速度を全て殺し、新たな速度をその身に纏わせ、飛び出す。

八雲咲雪 > 先ほど行なったスタートダッシュより何倍も遅い。
だが、それでもいい。
海上を飛ぶ咲雪は前傾姿勢を止め、足を海に突き出して止まる姿勢を作る。
足が海を抉り、伝わる振動。
こけそうになるのをぐっと堪え、少しだけ、遅くなったところを狙う。

「っりゃあああ!」

強く、吼える。
膝を曲げ、もう一度前傾姿勢を行い、倒れそうになる前に、また海を蹴って、今度は大空へと飛び出した。

八雲咲雪 > 白い飛行機雲を作りながら、大空へと飛び立つ。
速度を緩めず、重力すら打ち破り、駆け上がる。

子供の頃、思った。
走れば転び、歩けば何かに当たり。
なんて、狭い世界なんだろう、と。
なんで、鳥はあんなに自由なんだろう、と。

そして翼を手に入れたとき、思った。
空が、恐ろしい、と。
足はどこにも着かず、自分はふわふわした存在になる。
私は、鳥にもなれなかった。

――だけど、だからこそ。

八雲咲雪 > 再び、S-Wingを止める。
空を駆け上がった体には慣性だけが残り、ぽん、と咲雪を空へ放り投げた。
水平線の向こうはすでに太陽が沈み、闇だけを生み出していた。
空を見上げれば、無数の星が輝いている。

――だからこそ、私は私でいられた。

空中に投げ出された体が地面を向いたとき、もう一度S-Wingを起動する。
重力と、推進力を合わせ地上へ突っ込んでいく。

八雲咲雪 > 一切の減速をせず、砂浜へ急降下。
何の遠慮もなく突っ込んだため、衝撃波で小さなクレーターをつくり、砂を周りへ吹き上げた。

砂埃が止み、クレーターを見れば、砂まみれの咲雪が倒れている。
とはいえ、特に怪我もなく。
ただ、寝ているかのように空を見上げていた。

八雲咲雪 > 【人】を疎ましく思い、鳥に憧れ。
求めた翼を手に入れたとき、空に恐怖を覚え。
【人】でも、鳥でも、何者でもなくなったとき。

一つの壁を越えたあの日に。
八雲咲雪は意味を見出した。
【私】という意味を。


(……砂、入っちゃった)

冷めていく思考。
ボディスーツの中に入った砂が気持ち悪く、周りをキョロキョロと見てから、スーツをまさぐる。
不快感に顔を歪ませながら砂を出す。

八雲咲雪 > はぁ、と疲れたようなため息。
練習をするつもりが、いつの間にかウサ晴らしに飛んでいただけだった。

原因、という言い方は良くないが。
影響はおそらく彼女のせい。
きっと、羨ましかったのだろう。
だから、もう一度自分を見直した。

(嫉妬、なのかな)

あらかた砂をかきだすと、形を直す。

八雲咲雪 > 砂にまみれた体。
汗のせいで、砂が避けにくっついている。
このまま海にはいったらとれるとおもうが、濡れたままで帰るという事になってしまう。

(……大人しくタオル、かな)

置いた鞄のほうへ歩き出し、タオルを求める。

ご案内:「浜辺」に鮫汰さんが現れました。
八雲咲雪 > サイバーグラスを外そうと、ポニーテールを纏めていたゴムを取る。
ぱさりと髪が背中へ流れれば、ようやくサイバーグラスも外せるようになった。

「ふぅっ……」

小さなため息。
顔をごしごしとふき、砂を払う。
ついでに、邪魔な背中のS-Wingも外す。
ぷしゅ、と音を立てて、背中から落ちる。

鮫汰 > 波打ち際に、幼児用の小さな浮き輪が流れ着きました。
アヒルさんの形をしたそれの中心から、丸い鮫がのそのそ降りて来ます。

「よくねたわ~。なんかコンブアメたべてるゆめみたな……ドリーム…イズ…」

ぶつぶつ喋っていましたが、女の子らしき姿をやや遠目に見ると、
水着ギャルのおねーちゃんかどうかを確かめるために静かに砂浜を這いずります。

八雲咲雪 > 肩が凝った、みたいに肩を回す。
背中用のS-Wingは割と重く、実際飛んでいないときは邪魔だし肩に負担がかかる。
ゆえに、さっさと外したが。

なんか、ずりずりという音が聞こえる。
なんだろう、ウミガメの産卵でも始まるのだろうか。
音の聞こえるほうを見るが、暗いせいか良く見えない。

鮫汰 > さり、さり、さり、すり、すり。
あなたの耳に何か届いたなら、それは比較的質量の軽そうな物体が動く音です。
しかし、それは徐々に音の感覚が狭まっていきます。

さり、さり、さりさり、さりさりさりさり……。

妙に耳に残るような音です。ちょっぴり不安も描き立てるような、そんな砂の上を這いずるもの。
あなたのちかくに、あなたの、近くに――――。

八雲咲雪 > 動く音。
その軽い音に、微妙なホラーを感じていた。
すくなくとも、ウミガメじゃないのは理解できた。

荷物をまとめ、翼をばっぐにしまい、立ち上がる。
この海に変なものが出るというのは聞いていないが。

鮫汰 > 「ちょっと~~、おねーちゃん~~」

砂の上を動く雑音に混じり、声がします。
どこか舌っ足らずなその声は、確実にあなたへ呼びかけているようです。
さりさりという柔らかな音が変化して、ザッザッと力強いものになりました。
もうそれは、あなたのそばにいるのです。

「ねーちゃんてば!!!」
丸くて少し湿った光をうすく返す、丸い鮫のようなものが。

八雲咲雪 > 「…………」

まるで地面を這うような声。
無表情のまま、内心怯えながら一歩ずつ、一歩ずつ下がり。

「……え」

足元にいる小さい生物をみる。

キモ。
カワ……?

鮫汰 > 黒くて大きな眼が、あなたを見あげています。
その生物の首もと(?)に視線をやる余裕があれば、よだれかけのようなものをつけているのがわかるでしょう。

「いまなんじか、わかる?さめたのいってること、わかる?
 ホッタイモイジルナー、リピートアフタミー?」

どうやらこの生物は時間が知りたいようです。
あなたの戸惑いには、これっぽっちも気にかけていない様子で。

八雲咲雪 > 「…………」

言っている言葉は聞こえる。
なるほど、時間を知りたい。
でも、これはなんだろう。
魚…。
いや、人魚だろうか。

そっと、持ち上げてみる。

鮫汰 > 「ちょっとー、さめたがいくらプリチーだからって~」

持ち上げられると、丸い鮫は小さく尾ひれを振ります。
ちいちゃな前ヒレをぷんぷんと動かしながら、じかんじかんと騒いでます。
手触りはどこかぷにっとしていて、もっちりと、しかし鮫肌が遠くにいるような…。

八雲咲雪 > 「……ぷりちー」

ぷりちーかもしれない。
わりと、こう。
キモカワ。

「あなたはさめたっていうの?」

魚みたいに鱗がない。
だからといって鮫?っぽさもない。
なんというか、なんだろうかこれ。

鮫汰 > 重さも大したものでなく、綿がたっぷり詰まった重めのぬいぐるみのようなものです。
名前を問うあなたにぱちくりとまばたきをして、急に得意げな表情に変わりました。

「そーだよ!さめたはねぇ、さめたっていうの!」

まさかキモカワだと思われているなんて、ひとかけらも想像してないのでしょう。

「さめたはぴかぴかいちねんせい!だからじかんがしりたいの!
 ねーちゃんはジカンしってるの?ねーちゃんはおなまえホッタイモイジルナージョ?」

八雲咲雪 > これはすごい。
うごくキモカワだ。
ゲームセンターで今まで何匹ものキモカワを手に入れ、部屋に飾ってきたがこの子はピカ一かもしれない。

「いまは……詳しくはわからないけど、もう夜の7時越えてる、かも」

さめたを頭に乗せ、帰る準備。
女子寮はペットOKだっただろうか。
先生か誰かに聞いてみよう。
そう考えながら、歩き出す。

鮫汰 > 頭に乗せられてしまいました。
ただ、こうやって誰かにくっついてるのは、この鮫にとって満更でも無いことなのです。
ちいちゃなヒレであなたのおでこあたりを、そっとペタペタ触っています。

「しちじ!しちじこえてるの!もうばんごはんのおじかん!
 おひるねしすぎもよくないな……」

おねーちゃんのお名前が聞けなかったことはすでに、頭の中からポンと飛び出てしまいました。
歩きだされるままに、連れて行かれます。

八雲咲雪 > 当然、名前のことなど咲雪もぽんとぬけている。
というか、聞いてすら居なかったかもしれない。

「晩御飯、寮にあるのでよければ出せるから。
ついておいで」

なんていいながら、誘拐を実行したのだった。

ご案内:「浜辺」から八雲咲雪さんが去りました。
鮫汰 > 「ごはん!ごはんあるの!!」

そんなこと言われたら、もうついていくしかありません。
誘拐されるがままに、ナスがままに、今の時期ならソラマメだって美味しいはず。

ご案内:「浜辺」から鮫汰さんが去りました。