2016/06/15 のログ
ご案内:「浜辺」に八雲咲雪さんが現れました。
■八雲咲雪 > 「はっ、はっ、はっ」
浜辺で息を切らしながら走りこみをしている。
腰を覆っている透明なスカートが、ひらひらと良く揺れている。
寄月を師事して以来、トレーニングに費やす時間が以前より何倍にも増えた。
早くなった気はまだしてないものの、この行為に無駄がないことくらい分かっている。
故に、文句は言わず、例え彼が居なくとも自己トレーニングを行なう。
「はっ……はぁ……はぁ……」
(……つ、疲れた……)
とはいえ、疲れるんだが。
目標の距離を走り終え、一旦地面にぺたりと座り込む。
ご案内:「浜辺」に迦具楽さんが現れました。
■迦具楽 >
「……あれ、コーチ?」
【すっかり日課になった飛行練習で、未開拓地区、青垣山を経由して浜辺沿いに異邦人街に戻るコースを迦具楽は飛んでいた。
そしてちょうど、来月あたりからにぎわうだろう浜辺に差し掛かったところで。
見覚えしかない姿が浜辺を走っているのを見つけた】
「コーチー!
こんにちは、走り込み中?」
【咲雪の近くまで降りていきながら、上空から声をかけた。
格好は練習用の赤いジャージと、両手足の赤いS-Wing。
飛んで来た赤い軌跡と、靴からは赤い魔力の羽根が広がっている】
■八雲咲雪 > 「……?
あっ……」
上空から声が聞こえ、空を見上げる。
少ししてから、それが迦具楽だと理解すると、近くまで来た迦具楽に小さく手を振る。
綺麗に、赤い飛行機雲を発生させているのをみて分かるが、もうかなり上達したのだろう。
腕のS-Wingのおかげもあるのかはわからないが、その軌跡を見る限り、乱れは見えない。
「こんにちは、迦具楽。
ちょっと走りこみをね。
私も迦具楽に負けてられないから。
……そういえば、迦具楽はジャージだけど、競技用スーツ、かわないの?」
と、問うてみる。
■迦具楽 >
「負けてられないって、まだまだ追いついてだって居ないのになあ」
【負けてられないなんて言う咲雪に、少し子供っぽい表情を見せて返す。
飛んで来た軌跡には乱れは勿論、迦具楽の表情に疲労はまだ見られないだろう】
「うーん、スーツも欲しいといえばほしいんだけど……。
別にまだ試合をするわけでもないし、いいかなあって」
【飛ぶのが楽しくて仕方ないけれど、まだ競技に挑むかどうかは考えあぐねているところだった】
■八雲咲雪 > 「そんなことない、迦具楽はすぐ私に追いつくよ。
綺麗な飛び方してるもの」
勝手にライバル認定している咲雪にとっては、迦具楽はいつ追い抜かれるか楽しみであり、怖くもある存在だ。
とはいえ、そんなことは言わないが。
「競技をするにせよ、しないにせよ、スーツはあると飛びやすくなるかも。
サイバーグラスとかアンテナはつけなくてもいいけれど……スーツを着ればもっと風を感じられるから、飛んでて楽しいとおもえるよ」
■迦具楽 >
「うーん、そうなのかしら?
自分じゃちょっと、良く分からないかも」
【その場で軽く、円を描くように飛んでみるが……目の前のコーチに追いつけそうな実感は、まだ得られない。
それだけあの夜に見た姿が、印象に強く焼きついているのだが】
「ふうん、そうなんだ……。
じゃあちょっと、作ってみようかしら」
【上空で魔力供給を切り、浜辺にすとんと着地する。
目の前の咲雪のスーツを参考に、自分のスーツをイメージ。
そして両手を軽く前に伸ばして、思い描いた物質をそのまま《創造》する】
「……うん、こんなものかしら」
【数秒か、数十秒か。
迦具楽の両手から黒く蠢く液体のようなものが溢れ出たように見え、それが迦具楽を覆って瞬く間に装いがエアースイム用のスーツに変わっていく。
そして迦具楽がこんなものかと呟いた時には、赤と黒を基調としたスーツが完成していた】
■八雲咲雪 > 「そう……ね。
軽く飛んでみれば分かると思うけれど……。
迦具楽、一緒に飛んでみる……?」
自分が、うまくなっていると分かったきっかけは実際に人と飛んでみることだった。
人と比較することで、それは理解できた。
ゆえに、彼女に一緒に飛んでみようかと提案する。
「……。
え……と。
な、に、それ……」
どろりとした黒。
意識的に気持ち悪いと感じてしまったそれに、若干引きつつも問う。
■迦具楽 >
「これは、私よ。
私の本質はこの黒い液体なんだけど、私はこれを好きな形、物質に作りかえられるの。
だからほら、どこからどう見ても、ばっちりでしょ?」
【そう言って、完成したばかりのスーツを腕を広げて見せてみる。
触ってみても、生地からなにから咲雪が着ているものと違いはないだろう】
「んー、コーチがそういうなら飛んでみようかしら。
けど全然追いつけないと思うなあ。
設定も私、スピーダーじゃないし」
【と、少しだけ気がすすまなそうにだが承諾する。
咲雪からすれば、迦具楽がスピーダーじゃないというのは、少し意外に感じるかもしれない】
■八雲咲雪 > 「……ほんと。
一瞬で着替えたみたいになってる……」
ちょっと気になり、迦具楽のスーツを触ってみる。
それは、どう触っても確かにスーツだった。
あれが、こんなになるなんて思わなかった。
「だいじょうぶ、私も本気では飛ばないから。
……でも、迦具楽、スピーダーじゃないの?
てっきり私、スピーダーになるのかとおもったけど……」
■迦具楽 >
「ふふん、凄いでしょ?
ただこれ、凄く燃費が悪くてお腹が減っちゃうのが難点なのよね」
【作ったばかりのスーツで少し体を動かしてみつつ。
自慢げに言うが、すぐに苦笑に変わってしまった。
幸い今日はエネルギーは充実しているので、これくらいならなんて事もないのだが】
「……それはそれで、ちょっと悔しいかも。
うん、ファイターのつもり。
どうも背中とか腰に余計なもの着けるのが嫌みたい。
それに、スピーダーはコーチのイメージが強すぎて、かえって上手く飛べなかったかも」
【実際、スピーダーのつもりで練習してはいたものの。
思い浮かぶのは咲雪の動きばかりで、いくら練習しても思うように飛べなかったのだ】
「それで……一緒に飛ぶにしても、何をするの?
ただ飛ぶだけ?
一応競技のルールは頭に入ってはいるけど……」
■八雲咲雪 > 「……ふふっ、そうなんだ。
じゃあ飛び終わったら何か食べに行きましょ」
迦具楽の言葉に笑いを見せ、後で何か食べに行こうと誘う。
コーチとして、何か奢ってもいいかもしれない。
「そっか……、それは、それで残念かも。
スピーダー勝負ができる相手って、あんまりいないから……」
例えば全国大会にいっても、あまりスピーダー勝負になることはすくない。
種目にもよるが、最近は技術でスピーダーを抜けることが多くなってきているようだ。
「……そう、ね。
それじゃあ……」
道具箱からバルーンファイト用の機械を取り出し、二個だけバルーンを膨らませる。
そして軽く飛んで、一個目のバルーンをすぐ近くに、直線距離1kmほど離して二個目のバルーンを置く。
「このバルーンの間、多分1kmほどあるけど、この距離を二回往復してみよっか」
一個目のバルーンから飛びだして、二個目のバルーンにタッチ。
旋回なりなんなりして、二個目から一個目へ戻る。
ということをしようといっているのだ。
総距離にして4kmになるが、そんな時間はかからないだろう。
■迦具楽 >
「うーん、それもいいかも。
出来ればうん、チャレンジメニューのあるお店で……」
【主に食費的な意味で色々厳しいのだ。
まさかコーチにおごってもらうわけには、なんて思っていたりもするのだろう。
勿論、おごってくれると言われれば、大喜びするだろうが】
「そっか、そう言うものなのね。
でもごめん、私にはやっぱりファイターの方が性に合ってるみたいだから」
【スピード勝負、してみたい気もするけれど、やはりそれは上手く行かないような気がしてしまう。
最初のイメージが鮮烈だったがためか、どうしても自分の中で消化不良が起きてしまいそうだった】
「なるほど、往復競争ね。
えっと、これなら相手への接触は無しかしら」
【競技としての1kmスイムなら、その途中で打撃は認められているが。
今回は試合というよりはちょっと遊びのようなものだろうし、と。
S-Wingを起動して浮かび上がりながら、スーツのフィット具合に満足そうな顔を浮かべて】
■八雲咲雪 > 「チャレンジメニュー……ん、ちょっと後で探してみるわ」
流石にそんなお店は知らない。
探せばあるだろうが……もしかしたら迦具楽が既にいってるかもしれない。
「ううん、いいの。
合わないなら無理にやっても仕方ないし。
それに、迦具楽がファイターなら私もファイターの対策ができるし」
それはそれで面白い。
同じなら教えることは増えるが、スタイルが違っても基礎は同じなため、教えられることはある。
「ん……そうね、打撃はなしで。
そのかわり私は出力を抑えてファイターレベルにまで下げるから。
一緒に飛んでみて、今の自分を見るのが目的だから」
そういうと、下に誰も居ないことを確認してから背中のS-Wingをパージする。
ばすん、と音を立ててS-Wingは落ち、咲雪は脚部S-Wingだけで飛ぶ。
ちょっとゆらゆらしているが、飛べないわけではないらしい。
■迦具楽 >
「あはは、ごめん。
ちょっとここの所食費が大変で」
【大部分は狩りと山菜採りや漁で何とかしているが、それでも中々大変なのだった。
貧乏の大飯喰らいは辛いのである】
「……さすがに、それで負けたら悔しいわね。
ちょっと気合入れていかないと!」
【そう、軽く頬を叩いて上がってきた咲雪と共にスタートラインに着く。
迦具楽のS-Wingは、安定重視の腕と足とはいえ、どちらも安定性よりは攻撃よりの加速と初速を重視する高出力タイプの物を参考にして作ってある。
まあつまり、本来は足だけで飛ぶのと比べればずっと早く飛べる……はずなのだ】
「えっと、スタートの合図は?」
■八雲咲雪 > 同じくスタートラインに立ち、軽く足を開いて前傾姿勢になる。
背中の補助がないために、かなり姿勢をとるのが難しく、真顔で集中している。
「……そうね。
それじゃあわるいけど、私がスタートを合図するわ」
そう答え、迦具楽が位置についていること、構えていることを確認すると
「――スタート!」
そう、叫び。
一拍遅らせてから飛び出す。
加速が遅めのため、迦具楽に先手は譲るだろう。
■迦具楽 >
「うん、わかった」
【短く答えて、咲雪が出す合図をじっと待つ。
S-Wingへと送り込む魔力を制御し練り上げ、合図と同時に飛び出そうと】
「――――っ!」
【咲雪の合図とほぼ同時に、許容量限界の魔力を送り込み強引なスタートダッシュを切る。
初速と加速を重視した設定は、送り込まれた魔力をそのまま推進力へと変えて、僅か十数秒で最高速へと迦具楽を到達させる。
恐らく予想通り、安定した飛行姿勢を見せながら1kmの半ばまで迦具楽が先行するだろう。
しかし、最高速とは言え、スピーダーの咲雪からすればそれほどの速度ではない。
ただ、ファイターにしてはかなり早い速度ではあり、その点だけで見ればやはり体格や姿勢を維持する筋力の分、スピーダーに向いていると感じるだろうか】
■八雲咲雪 > (流石に早い)
ファイターはその加速が売りで、例に漏れず迦具楽も早い。
しかも、その速さはファイターの中でもそれなりだ。
どちらかといえばスピーダーよりちょっと遅く、オールラウンダーより速いといったところ。
しかし咲雪もだてに全国にいっていない。
1km後半、800mになったあたりからスピードを増し、迦具楽の数十m後ろまでくらいつく。
迦具楽がバルーンに触れるまでは追いつけないだろう。
しかしそれでいい。
咲雪がバルーンに触って、その後が勝負だ。
■迦具楽 >
【――まだ追いつかれない?
足だけなのだから当然だ、と思う気持ちと、それでもこんなに早いのかと思う気持ち。
そこに、こんなものなはずがない、というコーチへの信頼が加わり疑問となった。
けれど距離が詰まっているという事は、相手の方が早いという事実でもある。
疑問は疑問として、迦具楽は自分に出せる最速を咲雪へと見せようとした】
「バルーン――!」
【に、指先が触れる。
そこからは減速して旋回なり反転なりしなければならない、往復レースなのだから。
そこで、迦具楽は腕のS-Wingには腕を翻し逆方向への推進力を全開で与え、足へは極限まで魔力供給を"絞る"。
それで急減速は起きるのだが、逆方向へ進もうとし速度を相殺させるのは腕のみ。
両腕だけを残し、体は慣性に従い腕を軸に振り子のように最初の進行方向へ投げ出される】
「――ここ、でっ!」
【その直後、また限界まで魔力を注ぎ、最初のバルーンへと向けて急加速が行われる。
推進力を保ち続けていた腕の力もあり、スタートダッシュよりも早く加速する。
無理な反転でもあり、少々機動は乱れるが、それでもほぼ最高速を維持したまま折り返してみせた】
■八雲咲雪 > (――っ!)
横を抜けて飛んでいく迦具楽。
その速さ、その姿勢、そのターン。
どれも咲雪の心に火をつけ、そして喜ばせてくれるものに違いなかった。
迦具楽が横を抜けて数秒。
小さく笑い、迦具楽に続くようにターンをしようと
「――いきますっ」
脚部S-Wingへの魔力供給を一旦停止。
そうすると、咲雪は慣性に従ってくるりと回転する。
ちょうど百八十度。一個目のバルーンへ体がむいた瞬間、もう一度脚部へ魔力供給を行い、空気を蹴って飛び出す。
まるで空を泳ぐ水泳選手のように、綺麗にターンを決め、加速。
そのまま一気に加速していき、迦具楽の横に並び、そのまま――。
■迦具楽 >
「……悔しい」
【二人並んで浜辺に降りて、迦具楽の最初の発言がそれだった。
迦具楽の思いつきから始まった強引なターンと違い、咲雪のそれはとても綺麗で。
しかも一度追い抜かれてからはちっとも追いつけなかった。
ハンデを貰ってもこれだったのだから、悔しさも一入だ】
「はあ、やっぱりスピーダーじゃなくて良かったかも。
スピード勝負じゃ、同じ装備でも勝てない気がする」
【そう肩を落した迦具楽には、試合中にもそういう思い込みがあった。
最初に抜かれた時点で、追いつけないと思い込んでしまった、この結果はそういう精神的な敗北でもあったかもしれない】
「まあでもうん。
コーチと飛べて楽しかったし、思ったよりは飛べた気がするし、いいかな。
……あー、お腹すいた!」
【自分の実力と相手の実力、その双方はある程度感じ取れたように思う。
自分自身も成長しているし、そして勿論コーチ、咲雪も以前より成長しているに違いないと。
そして最後に、早く御飯が食べたいとアピールして】
■八雲咲雪 > すごく、楽しかった。
勝てたから楽しいんじゃない。
迦具楽がみせたあのターンが、そして飛び方が。
なにか、咲雪を熱くさせた。
迦具楽のあのターンは、研究するべきものかもしれない。
「迦具楽、お疲れ様。
すごく楽しかったし、面白かったわ。
とりあえず、ご飯食べに行きましょ」
そして、その先であのターンについて聞いてみよう。
あれは、本当に使えるかもしれない。
ご案内:「浜辺」から八雲咲雪さんが去りました。
■迦具楽 >
「うん、私も凄く楽しかった!
でも負けちゃったし、私がお店紹介するわね。
凄く美味しいお店だから、咲雪もきっと気に入ると思う」
【そして、食べながら自分の課題や、練習すべき事を聞いてみようと。
直すべき所が分かれば、まだまだ早く飛べると、そんな気持ちになっていた。
だからまさか、あのターンについて聞かれるだなんて夢にも思わない。
そこでどんな話が繰り広げられたかは定かではないが、まず一つ間違いなく言える事は。
4kgのチャーハンに挑み美味しそうに平らげる迦具楽に、咲雪がドン引きするという事だろうか……】
ご案内:「浜辺」から迦具楽さんが去りました。