2016/08/29 のログ
ご案内:「浜辺」に暁 名無さんが現れました。
■暁 名無 > 「さすがにもうこの頃になると人も減るねえ。」
昨日のうちにあらかた新学期までの準備を済ませた俺は、残り少ない夏休みを満喫すべく再び海に来ている。
わざわざハーフパンツも買って、それに合わせてアロハの開襟シャツも買って!
ついでにビーサンも新調したのだけれど!!どうやら今シーズンはもう出番が無さそうかなー、なんて思っちまう。
「そうだよなあ、夏休み終わっちまうんだもんなあ。
宿題やったり宿題やったり、宿題やったりあるよなあ。」
おじさんはむしろ夏休みの間ずーっと過ぎた日の宿題のツケをこなしていたよ。
そんな事を思いながら、胸ポケットから煙草を取り出し……あ、あれ?
「……部屋に置いて来たかあ。
かーッ、きまぐれにお洒落なんてするもんじゃねえなあオイ。」
■暁 名無 > 「──まあ、」
いいか。
少しだけ口元が寂しくなるだけで、苛立ったりするわけでもない。
最悪海の家で串焼きでも買って、その串でも加えてりゃいい。
俺は少し背伸びをしてから波打ち際をゆっくりと歩き出す。
今月の頭に聞いた、“海底遺跡”の段取りを考える為に。
「一応、行く日は決めたし船も予約したが……俺一人で行くっつーのもなあ。
行ってみると言っちまった手前、そうそう反故にゃ出来ねえし……。」
ルインワーム、つったか。
そいつがどんな形態で生態で、どんな味がするのか非常に興味はある。
ワーム、というからには無論虫なのだろうから、食えない道理は無いと思う俺だが、いつからゲテモノ食いになったのか、とんと記憶にない。
■暁 名無 > 「でもまあ、やっぱり行くんならこう、な。
水着の似合う美人でも連れて行きたかったよなっていう。」
それで薄暗く湿った遺跡の中でああだこうだするのも一興じゃないかと思う。思わない?
まあ実際のところ軽薄な口振りをしていてもそこまで軟派に出られない俺はそんな相方を見つける事なんて出来やしなかった。
ていうか仕事だよ!仕事してたよ!
クーラーの風もいまいち届きの悪い隅っこで!
「そんで目の保養だけでもって思って来れば、もう最盛期過ぎてるだろ?
そんでこれから気温も下がり気味で制服も冬服になってくだろ?」
マジやってらんねえって感じだ。
■暁 名無 > 「さぁて……」
愚痴もほどほどにして、遺跡探索日当日の工程を考える。
遺跡の修繕か、害虫の駆除。どちらかと言えば俺の特異な分野は後者だ。
ただ、戦闘能力はからっきしなので修繕メインで、もし運悪くルインワームと鉢合わせしたら逃げるか出来る限りの事はしてみよう。
「は~ぁ、ホント、今の俺の10パーでも戦闘能力があればなあ……」
どうしてこんなもやしになってしまったのだろう。
嘆いていたってしょうがない事ではあるのだが。念願の身長と引き換えにしてしまったものの価値は大き過ぎる。
世の中、等価交換なんて楽な手段はそうそう使えないのが相場ってもんだ。
■暁 名無 > 「とはいえ、お金も貰っちゃうわけだし、そうなると“お仕事”だからねぇ……
よっしゃ、おっさん一頑張りしちゃおうか。」
ぱぱーっと終わらせて後は先日入った給料でおでんでも食いながらパーッと飲もう。
現在(むかし)の俺ならきっと、バイトが終われば素っ飛んで家に帰って、夕餉の席で一日の事を話して聞かせてたことだろう。
あの頃はそれは全てだったし、その気持ちは今もまだ隅っこの方に残ってる。
「けど、未来(いま)は一人だからねえ。
せーぜー明るいうちにしこたま酔えることを期待しとくか。」
そろそろ海を後にしよう。
このまま前準備としてどっかで一杯ひっかけるのも悪くない。
──俺は口寂しさから煙草を取り出そうとして、家に忘れて来たのをまた思い出すこととなった。
ご案内:「浜辺」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に世永明晴さんが現れました。
■世永明晴 > 「暑いスね」
夏季休暇も終わり際。人も多少少なくなった海の近く。
浜辺から多少離れて、防波堤に座り、手に釣り竿を握りながら呟いた。
海に来たかったのだ。きっかけは大したものじゃない。
しいて言えば、依然交わした会話をふと思い出しただけ。
……泳げないのだ、自分は。眺めるだけになるのは些か行く理由にはならない。それでも、なんだか。それが平凡であるかのように海に行きたかった。
やったこともない釣りをしているのも、そんなどこか空気のような理由だった。
頭に被った麦わら帽子をふと少し抑えて、と少し熱のこもった息を吐いた。
■世永明晴 > この夏季休暇の間にやったことは結局図書館に行く、課題をこなす。
部屋の中で、自分の異能についてを調べる。
学生らしいと言えば、学生らしい。
しかし、残念ながらそこまで自分は勤勉にはならないし、なにより平凡な生活の方がしたかった。
コレガそうだとは、あまり思えないが。
しかし――。
釣れない。
ここに来て、1,2時間程度しかたってはいないがピクリとも引っかからない。
海の家で売っていたラムネを飲み干してしまった。
この、自分の時間を浪費しているような感覚は悪くはなかった。
クイ、と分かりもしないのに釣竿を揺らしてみた。
■世永明晴 > ふと、強い風が吹いた。
頭にかぶっていた麦わら帽子が、それに乗りどこかへ飛んだ。
釣竿を握っていたから。反応が遅かったから。いろいろ理由はつけられるが、ともかくそれに反応できなかった。
「あー……」
どこへ行ったか。瞼を擦り、眠そうに目を瞬かせる。
海へは落ちてない。なら、とりに行かなくては、と。
ご案内:「浜辺」にシュシュクルさんが現れました。
■シュシュクル > 麦わら帽子を取りに行かねばならない。
そう思っていた世永の手にしていた釣り竿が、
びくり、と震える。
震えるどころではない。ぎぎぎ、と。
凄まじい勢いで糸が引かれている……!
■世永明晴 > 腰を浮かしかけたところだった。
意識は麦わら帽子へ向いていた。体の反応はついて行かずに、つんのめる。
「……は、お、は。え」
つんのめる。自らの貧弱さを省みる暇もなく、釣り竿を引くように。耐えるように引く。
「大物とかいってる……場合じゃ……ね、っスけど……!?」
当然だ。当然の結果であり、必然の末路である。
耐えれるわけがなかった。それでも釣竿を離さなかったのは、流れるものは藁をつかむを体現していたのかもしれない。
要するに引っ張られるままに落ちた。
■シュシュクル > ざっばーーーーーーーーん。
引っ張られるままに海に落ちる世永そして。
泳げない彼は海の中で一人……。
―――――。
―――。
――。
次に世永が気がついた時、視界に映っているのは海、ではなく。
青い空と、一人の少女の顔であった。
少女は、彼の顔を覗きこむように、目と鼻の先まで顔を
近づけて、じいっと世永の方を見ている。
「だいじょーぶか?」
■世永明晴 > 意識が点滅する。
目を緩やかに瞬かせる。いつもの、じゃあない。
いつものとはまるで違う。具体的にいうと口の中が塩辛い。
「……ェホッ! グっ、ほ」
激しくせき込んだ。なんだかまるで、呼吸が保てない状況にいたような――。
いつもとの違いは、すぐ状況を把握できないのも違う。
「……あ、アレ……あなたは……。……ア、俺、溺れ……」
――溺れた?
「あれ、俺落ちた……スよね?」
■シュシュクル > 「きがついた。いきなり魚にひっぱられて、シュシュクル、びっくりしたぞ」
少女はたどたどしい言葉を紡いでいく。
この世界の言葉に慣れていないような、そんな印象を受ける。
「およげないやつ海とびこむ、よくないぞ」
世永が咳き込むのを、心配そうな表情で見守るシュシュクル。
彼女もまた海水にびっしょり濡れているようであった。
「そう。おまえ、おちた。シュシュクル、たすけた」
尻尾を振りながら、にっこりと笑う少女。
何の穢れも知らなそうな、透明な笑みであった。
■世永明晴 > 「ハ、ハイ。引っ張られ……」
ん? 引っ掛かりを感じるものの、徐々に落ち着いてきた意識はもっと別の物を注視した。
無言で少し素早く後ずさった。近い。誰だ。
寝ている体勢だからそれはひどく不格好だったが。
あと別に素早くもなかった。
「シュ……シュシュクル、さん、スか」
目線を泳がせながら、混乱させる。意図的でもないそれは、思考をかく乱させることしかしなかったが、どうにも。考え付かない事が起こった、ということより……。
動く尻尾に目を見遣りながら、応える。
「……あ、ありがとうございまス? えっと……いや。……うん。落ちたんスよね」
飛び込んだつもりはないんスけど……と小さく付け加え乍ら。
■シュシュクル > 「シュシュクル、魚つかまえてた。おまえ、いきなり海のなか、きた」
どう考えても自分で引っ張った結果この青年が落ちてきたのであるが、
彼女としてはそうは思っていないらしい。
夢中で魚を捕まえようとしていた彼女は、彼がいきなり水の中へ入ってきた
ように見えたようであった。
「シュシュクル。シュシュクル・ラ・ガルクル」
こくり、と頷いて、自分の薄い胸を指差すシュシュクル。
尻尾はゆらゆらと揺れている。
「おちた、とびこんだ? シュシュクル、わからない。
おまえも魚とってた? なら、すまない。
シュシュクル、ひっぱりすぎた。おまえ、おちた」
ようやく自分が海へ引っ張ってしまったのだと理解したシュシュクル。
ぐぐぐ、と首を横に傾けて、目をちょーん、と丸くしながら
彼女は人差し指で自分の頭をつんつんとつついた。
■世永明晴 > 「…………」
想定外の事になると、人はどうすればいいか分からなくなると言うが。
つまり……自分が釣った魚に、この少女が食いついて、その力により自分は引っ張られた、と。
わからいでか。
半身を、少女とずれるように起こし頭を抱えた。
自分の初めての釣りは、少女を釣り上げ……いやこれは、自分が釣り上げられたというべきか……。
それでも、まぁ。悪気はないのは見れる。というより、少し……現代からずれているようにすら取れる。
「……いや、うん。大丈夫でスよ。ほら。生きてまスし」
それさえわかれば十分だろう。
「世永、世永明晴スよ。シュシュクルさん」
伝わりやすいように、少女と同じように自分の胸を指さしながら。
困ったように笑いながら答えた。
■シュシュクル > 「あんな強くシュシュクルひっぱる魚、はじめて。びっくりした。でも、おまえひっぱってたなら、
シュシュクル、りゆうわかった」
悪気が無いのは確かである。
申し訳無さそうに眉を下げて世永を見る目からもそれは分かるであろう。
「いきてる、よかった。いのち、いちばんだいじ」
にこにこと、笑顔のシュシュクル。
よくもまぁ、ここまでころころと表情が変わるものである。
「ヨナガ……ヨナガ!」
嬉しそうに名前を呼びながら、世永の胸を指差すシュシュクルであった。
「ヨナガ、これ、お前の? たべものいれるいれもの?」
す、と彼女が取り出したのは、彼の麦わら帽子であった。