2016/08/30 のログ
■世永明晴 > 「俺もあんなに強い魚は初めてでしたね」
冗談のように、伝わらずとも言い物を交えて小さく笑う。
「はい。ヨナガでスよ」
ころころと変わるその表情を見ながら、少しばかりその顔を指で引っ張りたくなるものの、まぁそのような悪戯心ともつかないそれを引っ込めた。
「……あぁ、俺のでスね。それは……ちょっと貸してもらえまス?」
そう言って手を伸ばす。
こういった場合。説明するより、見せたほうが早い。……と、思う。
■シュシュクル > 「? やっぱり魚が、つよかったか?」
やはり、冗談はさっぱり伝わっていないようで。
首をぐぐぐ、と傾けた状態で人差し指で頬を掻くのであった。
「ヨナガ! いいなまえ!」
ぷにぷにとした頬は、何とも幼気である。
「ヨナガのなら、わかった、かえす。さかないれるか?」
そんな風に言いながら、少し寂しそうな様子で麦わら帽子を手渡した。
少し気に入っていたらしい。
■世永明晴 > 「大分」
そう言いながら、受け取った。
そうして、自分の頭に被って見せた。
「こういう風に使うんスよ。帽子、というんでス」
そうして、少女の表情を見るに、んー……と唸り多少の沈黙を挟み。
「こうやって、ス」
少女の頭に被せた。……まぁ、別にいいだろう。自分には似合わないと思っていた。
■シュシュクル > 「あたまにのせるもの。ぼうし。シュシュクルおぼえたぞ」
シュシュクルはそう口にした。帽子は知らなかったようである。
尻尾はぶらぶらと下に垂れて砂を払っており、耳も少ししゅんと垂れ下がっている。
彼の物であれば返さなければいけない、と。手渡したはいいのだが、未だ後ろ髪を
引かれているようである。
「おー、ぼうし! ぼうし! ちょっとすずしい?」
頭に乗せられれば一転。
ぱあぁっ、と顔が明るくなる。瞳がきらきらと光る勢いだ。
尻尾もぴんと上がり、ぶんぶんと振られている。
■世永明晴 > 「そうっスねー。こういう暑い日に被るんでスよ」
少女の方がよほど似合うだろうが……問題は、多少野性味あふれるファッションにはちょっと浮いてしまうだろうか、等と考え苦笑した。
まぁ、いい。
「あげまスよ」
高い物でもない。ただ、家に合った物を適当に引っ張ってきただけだから。
それに帽子があると……頭をかけないし。
そう考えながら、頭をガリガリとかいた。
しかし……。……いやしかし。
この経緯から察するにとても野性味あふれる少女だ。
常世で暮らす異邦人も、ここまで行かないと思っていたのだが。
「いつも泳いで魚をとってるんでスか?」
■シュシュクル > 「? これ、シュシュクルにくれるか? ヨナガ、いいのか? ほんとに!?」
きゃっきゃと笑いながら、帽子を押さえて砂浜を走り回るシュシュクル。
大喜びである。
ひとしきり走ってから、世永の所へと帰ってくるシュシュクル。
その顔には満面の笑みを浮かべている。
「んー、いつもは、山。きのみ、どうぶつ、たべる。でもきょうは、海。
さかな、たべたかった。ここにきてから、川、よく行った。海、はじめて。」
どうやら普段は野山を駆けまわっているようだ。
■世永明晴 > 元気だなぁ……等と呟きながらその様子を眺め。
ふぅ、と一つ息をついた。周囲を少しだけ眺め、今更。
そこまで時間がたっていないであろうことを把握した。
おかえりなさい。と言った後、その言葉に怪訝な顔をする。
「……異邦人街で暮らしてないんでスか?」
余り……そこに行ったことはないのだが。不本意、事故。
こちらに来てしまった異邦人に対しては保護するシステムがこの学園にはあったと思うのだが。
■シュシュクル > 「いほーじんがい? シュシュクル、しらないぞ。
こことばされてから、シュシュクル、ずっと山、川、海、いる」
きょとん、とした顔のシュシュクル。
どうやら異世界からこちらへと来てから、学園側に保護されることなく
ずっと野山を駆け回っていたようであった。
「あんまりにんげんと話すこと、ない。ヨナガと話したの、めずらしい」
■世永明晴 > 再び頭を抱える。
わかった、これはしちめんどくさい話だ。
面倒見がある性格ではない。それは自覚がある。
しかしながら、目の前のソレを見ないふりもできないというのも難しい。
というか、それで不自由なく暮らしてるあたり、元々の生活水準が近かったのかもしれない。
「……えぇ、と。そうスね。困ってない、スか?」
結局のところ、少女次第でもある。きょとんしたその表情からは、どうにも。
ここに来てから苦労という言葉からは感じ取れないのだが。
■シュシュクル > 「ぼうしくれる。こまってるか聞く。ヨナガ、いいやつ。シュシュクル、わかった」
相変わらず笑顔を振りまく少女であった。
麦わら帽子と共にあることで、より輝いているようであった。
「シュシュクル、しぜんといっしょ、まいにち楽しい。でも、こまってることひとつある。
ここに来るまえ、いっしょにいたともだち、いなくなった。うきうきと、がうがう。
えと、さると、いぬ。はぐれた……シュシュクルのこれとおなじくびわ、つけてる。
みつけたら、おしえてほしい」
またしゅん、とするシュシュクル。
自分のつけている髪飾りを指さすと、世永の方を見て両拳をぎゅっと握って、
自分の胸の前に掲げた。
■世永明晴 > 「そう……スか」
いい奴ではなく……まぁ。否定することもないか。
そう内心、苦笑をこぼす。しかし、言葉を聞く限り。
元に戻りたい、帰りたい。そういうことより重要なようだ。
むしろ、自分の現状に気付いていないようだ、と推測する。
……参ったな。こういう場合どうすれば、等と考えても自分の貧困な頭では大した解は出てこない。
握られた両手を、あーと唸りながら視線を落とす。
「……えー、ぇと」
保護させることも考えたが……。
……。……見る限り。それを傍受するような少女ではないだろう。
「はい。わかりました。見つけたら教えまスね」
……生活委員かな。報告位はさせてもらおう。
今はよくても、どこかでなにか。
……というか。どうやって会うつもりだろう。
連絡手段を持ち合わせてるようには到底思えないが……。
それこそ偶然の産物だろうか。
ふぅ、ともう一つ息をついた。難しく考えすぎか。
■シュシュクル > 「そうか、シュシュクルうれしい。なら、これヨナガにわたす。
それ、ふく。シュシュクル、いく」
シュシュクルがごそごそと胸元から取り出したのは、小さな石でできた笛だ。
笛には何やら紋様が刻まれている。
「それじゃ。シュシュクルまた魚とってくるぞ。きょうのごはん、いる。
ヨナガ、ぼうしありがとう!」
悩む世永とは裏腹に、澄んだ青空のような心と笑顔で、シュシュクルは駆けていくのであった。
■世永明晴 > 「……笛?」
……なるほど。犬笛。
と目の前の少女を眺めながら、一人納得する。
まぁ……そういう文化なのだろう。
それを共有はせずとも理解はすることはできる。
「えぇ。気を付けて。……あぁ、こちらこそありがとうございまス」
泳げないのも考え物だな、と一人頷き……いやこの事象はめったにないだろうが。それでも、か。
「あ、帽子……」
見送りながらふと気づき、小声でぼやく。
……あのまま潜るんだろうか。……まぁ、いいか。
渇き始め、塩水がついた体を気持ち悪く思いながら、ゆっくりと立ち上がり。大きく欠伸をした。
ご案内:「浜辺」からシュシュクルさんが去りました。
ご案内:「浜辺」から世永明晴さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > その日、港は薄暗く。
黄昏の光を雲が遮り、荒れ狂う波と激しい雷雨がせめぎ合う。
水平線の向こうから中型船がやってきて、ここに停泊した。
船の中から黒いコートの男が出てきて、待機していた数名と入れ違いになる。
待機していた者達は船の中から、人間大ほどの黒い袋をいくつか運び出す。
コートの男は、運び出されていく袋を黙って見つめていた。
■久藤 嵯督 > ―――
■職員A > 「聞いてた話より、一つ少ないようだが」
職員そう、コートの男に尋ねる。
コートの男は船の中へ入って少しして戻り、布に包まれた小さな箱を抱えてきた。
「これで全員だ」
存外丁寧にそれを職員に渡すと、コートの男は常世島の陸地に向かって歩いていく。
そうしてそのまま傘もささず、雨の中に消えていった。
ご案内:「浜辺」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に久藤 嵯督さんが現れました。
ご案内:「浜辺」から久藤 嵯督さんが去りました。