2016/09/04 のログ
ご案内:「浜辺」に加賀智 成臣さんが現れました。
■加賀智 成臣 > 「……………。」
初秋の夜の海。吹き抜ける海風も肌に冷たく、夏の遠ざかる足音が聞こえそうな場所。
十五夜にはまだ早いが、今宵の月も綺麗だ。黒い空に黄金の弓が浮かぶ。
信心こそ無い加賀智も、多少なりとも心が神聖な物で満たされる。
しかしそれと同時に、残暑を足跡代わりに残しながら、遠く離れていく夏に一抹の寂しさも覚えるのだ。
また、無為に夏を過ごしてしまったと。
また、今年も死ねなかったと。
■加賀智 成臣 > 毎年、この時期になると虚無感に包まれる。死ぬことすら一時的に忘れるほどに。
いや、ある意味では死んでいるのと同じ状態なのかもしれない。
そして、ふと思考が過去に巻き戻る。
例えば、幼少期。例えば、中学の頃。例えば、その後…常世学園へと辿り着いた時。
いずれも、嫌な思い出しかない。いい思い出など、思い出すのも難しいほどだ。
「………はぁ。」
足元の石ころを拾い、海に放り投げる。
ちゃぽん、という小さな音が聞こえ、すぐに波の音にかき消された。
ついでに嫌な思い出も波で消せないかと考えたが、無駄だったようだ。
ご案内:「浜辺」にルギウスさんが現れました。
■ルギウス > 白い司祭服にサングラスをかけ、頭にはなぜか麦藁帽子。
胡散臭さマシマシでお送りしている闇司祭。
なお、手には釣具を用意している。
「おやおや、悩める子羊というか生贄の山羊というか。
どうしました?世の不幸を一身に背負ってサヨナラ現世をしそこねたような顔をしてますよ?」
この司祭におそらくは距離感といったものはあんまりない。
■加賀智 成臣 > 「……あ、どうも。
不幸なんてそんな……僕より不幸な人なんていくらでも居ますし……」
非常に異常な胡散臭さを醸しだす謎の司祭の登場にも動じず、軽く礼を返す。
いつも以上に虚無感に包まれているせいか、暗さも大体5割増程度でお送りしている。
「……この世からサヨナラしそこねたのは事実ですけどね。」
■ルギウス > 「私見から言わせていただきますと、睡眠薬のODが一番楽でした。
文字通り眠るように死ねましたからねぇ。
ギロチンも割りと早めに意識が途絶えますが、少しだけ苦しいですね。
いかに頭をつぶして意識を絶つか、が楽になるポイントでしたね」
ただし、この死因はほぼ他殺である。
すべて自分が体験したことではあるけれど。
「まぁ、セイグッバイしたい理由に興味はありませんが……
“何かが邪魔をして”死ねないのなら原因を取り除く努力をするべきかと思いますよ」
■加賀智 成臣 > 「………何でそんな、自分が体験したみたいに。
……もしかして、『貴方も』?」
ふと、俯いていた顔を上げる。
この人間も……いや、人間かどうかなど分かったものではない。特に、「常世学園」では。
「……それは……分からない、です。
…僕、不死身みたいで。何で死ねないのか、とか……そういうのは、分からなくて。
……それに…今更、これが誰かのせいだったなんて言われても……」
■ルギウス > 「……厳密には『不死者』や『再生者』ではありませんがねぇ。
ジャンルに分けるとするなら、私はさしずめ『無限転生者』といったあたりでしょうか」
あ、石投げないでくださいね といいながら釣竿を大きく振りかぶって釣りの姿勢。
「不死身であるなら、再生する理屈というものがあるんですよ。
それ
“理屈”を取り除いてやれば……誰であっても、何であっても『死ねる』し『殺せる』んです」
顔には笑みが浮かんでいる。
沈んでいる少年と対比するかのように。
笑みの種類はとても軽薄なソレであったが。
「誰かのせいとかでなく。
何が作用して不死身なのか。ギリシャ神話のヒュドラも不死身と言われましたが傷を焼けば治らずに死にました。
程度の差はありますが、そういうことです」
■加賀智 成臣 > 「………。死なないとか、死んでも生き返るとかじゃない、ってことでしょうか。
別の自分として生まれ変わる、というか。」
釣り糸の飛んでいった方向を眺める。
ぽちょん、と小さな音がした。
「………。その理屈が分かってれば、こんな所で燻ってないで真っ先に死にに行くんですけどね。
いっそ、理由がないほうが良いじゃないですか。誰かに呪われたから、とか、そういうのじゃなくて……
………。すみません、言いたいことが纏まらなくて。」
はぁ、と溜息を一つ。
「……もし、もし……僕のことを誰かが呪ってて、その人を殺さないと呪いが解けない、なんて言われたら……
僕はどうすればいいんでしょうね。」
■ルギウス > 「私を殺した相手、ないし偶々近くにいた誰かを乗っ取るんですよ。
なんなら私を殺してみますか?
私が変わりに舞台に立ちますから貴方の人生はそこで終われますよ?
意識はずっと残りますけど」
さらりと自分の秘密を告げる。
まぁ、実際は秘密にしているわけではないのだが。
だた聞いてくる人がいないだけで。
バレてもデメリットにならないし。
「では、その理屈を調べる事はなさいましたか?
ただ漫然と死を試すだけを努力とは言いませんからねぇ」
魚が喰いつくまで、ちょっとしたお喋りを楽しむとしよう。
「貴方の望むままに、生きればいいんじゃないですか?
誰かが祝福を与えて不死身にしたのなら、その誰かには思惑があるんでしょうし。
掌で踊るもよし、死を願って誰かを殺すもよし……別の解呪を探すもよし」
まだ、かからない。
「貴方が、何を良しとし何を悪しとするか。でしょう?
ただ……」
続けたものか、と言葉を止めた。
■加賀智 成臣 > 「……………。じゃあ、結局貴方も僕を殺すことは出来ないんですね。」
ふぅ、とまたひとつため息。
「………。
してない、です。」
ぼそりと、宿題を忘れたことを咎められた子供のように、小さく俯いたまま答える。
言われてみれば、今まではひたすらに死を繰り返すだけで、何故死なないのか…という理由を調べることはしなかった。
自分の今までの人生は、すべてが無駄だったということだろうか。
努力にならない努力をひたすらに連ねた、砂の城だったのだろうか。
「……………。僕の望みは、死ぬことです。
……死ぬこと、です。だから……」
声が震える。
自分が『死んだ』ら、彼らはどう思うだろうか。
「……ただ…何ですか……?」
■ルギウス > 「正気をなくしてしまえば、気になりませんよ?
幸い、私はその手の手管には長けていますしねぇ?」
お、引いたかな? なんて感じで首を傾げる。
動作の一つ一つがオーバーリアクションで、舞台上の役者染みている。
「もっとも、妖怪などは特定の条件を満たせば復活できない真の死が訪れるモノもいるのでまったくの無駄だとは言いませんがね。
不明の理屈を解明するのはいつだってトライ&エラーをこなす方だけですし」
かかりましたねぇ、と笑みが広がる。
「解明した後にも、その望みが残っているかどうか と思ったものでして。
死を理解すると心が常人のソレとは離れていきますからねぇ……?
その結果、死んでも貴方の知っている誰かと逢える保障もありませんし……今の知り合いと反目することもあるでしょう。
死にたいという欲求は、他者には理解されにくいものですからねぇ」
■加賀智 成臣 >
「…………………。
……やめときます。結局生き続けるのは嫌ですし。」
嘘だ。
自分が自分でなくなる感覚を理解したくない、それが恐ろしいだけだ。
「………ですよね。
流石に……そこを否定されると、なんというか。やる気がなくなるので。」
嘘だ。
自らが歩んできた道筋、それを否定されるのが恐ろしいだけだ。
自らが歩んできた道筋、それが無意味なものであったと考えるのが悍ましいだけだ。
「………本当に死ねる段階になったら、尻込みするかも、ってことですか?
…無いとは言い切れませんけど、僕はそれを目標に来たので。
……だから、僕は……」
語気が荒くなる。
何もかも嘘だ。だが、それを加賀智という人間が認めない。
本当は、
「…………………。」
■ルギウス > 「僕は、なんですか?」
先ほどの会話を焼きなおしたかのように、聞き返す。
■加賀智 成臣 > 「……………。
……いえ、別に。方法を探して、必ず死のう、と。
……それだけです。」
虚ろな目をルギウスへ向け、そう答えた。
■ルギウス > 「まぁ、普通の方ならもって数百年で発狂します。
『貴方が貴方であるうち』に、死ねることを私の神に祈っておきましょう」
釣り竿をもどせば、逃げられたようで魚はかかっていなかった。
「残念、どうも場所が悪いようです……私は河岸を変えましょう。
それではまたいつか、どこかで」
あっさりと、背を向けて歩き出し途中で止まって振り返る。
「ああ、これはただの思いつきなのですが……なぜ、誰かは貴方を死なせたくなかったんでしょうね?
忘れている、もしくは思い出したくない記憶があったりしませんか?」
思い付きですよ、ただの。
ともう一度口にして、司祭はそのまま歩き去った。
ご案内:「浜辺」からルギウスさんが去りました。
■加賀智 成臣 > 「……………。」
去っていくルギウスの背中に目を向けることもせず、俯いたまま座り込んでいた。
ただ、耳に残ったたった一つの言葉が、頭のなかに渦巻く。
『なぜ、誰かは貴方を死なせたくなかったんでしょうね?』
「………そんなこと…」
僕が知るか。そう呟き、顔をうずめるように体を縮めた。
ご案内:「浜辺」から加賀智 成臣さんが去りました。