2016/10/18 のログ
■東瀬 夏希 > 「これでも戦意を失わんか。当然だな、魔女への鉄槌に耐えたのだ」
息を整えつつ言いながら、夏希も力を溜める。
相手が立ち止まって迎撃の構えを取ったのなら、採るべき選択肢は三つある。
一つ。射撃攻撃能力を持つ『シャステル』か『サンティアゴ』で遠距離攻撃を行う。
二つ。遠距離に斬撃を飛ばす固有性能を持つ『ジークフリード』で遠距離攻撃を行う。
三つ。一気に踏み込み、『ヘルシング』で迎撃ごと貫く。
一つ目は却下だ。足止め性能のある『シャステル』でも、この女を足止めできるとは限らない。寧ろ、射撃のための『前準備』が隙になる可能性がある。『サンティアゴ』に関しては、対多数用の兵装だ。個人に対しては効果が薄い。
二つ目も却下。夏希は『ジークフリード』がそもそも嫌いで、使いたくない。ジークフリードのとある固有性能が、夏希に拒絶を産む。
ならば、三つ目……『ヘルシング』で、迎撃諸共貫くのみ。
だがそれだけでは確実ではない。故に、もうひと押し。
「だが、貴様を殺すことに変わりはない。
―――受け取るがいい、我が憎悪、我が怨嗟、我が憤怒を!」
ぼう、と夏希の周りに炎が発生する。
魔術『浄化の炎』。異端審問教会の異端狩りが好んで用いる、異端に対し特攻効果のある炎を産む魔術だ。
それをヘルシングに纏わせ、威力を増強する。
そして。
「異端に十字の誉れなく、異端に昇天の救いなし……!
燃えて果てろ、穢れた異端め!」
突進。真正面から突き破らんと疾駆。
ヘルシングを突き出し、炎を纏った渾身の突きを放つ。
ヘルシングの固有性能は二つ。だが、それは実は、両方とも常時発動型だ。
片方は先程用いた『悪魔の子を串刺しにせよ(ツェペシュ・ドラキュリア)』。
そして、もう一つは『異端には死の裁きを(エグゼクターレ・ノスフェラトゥ)』。
これは、ヘルシングによって傷ついた不死者に追加でダメージを与え、更にその不死性を無視するという『不死殺し』の能力だ。
この二つの能力に合わせ、浄化の炎で相手を焼く。
防御は『悪魔の子を串刺しにせよ』で貫き、不死は『異端には死の裁きを』で無効にし。
そして、それでも死に切らないしぶとい異端は、浄化の炎で焼き殺す。
これを受けた異端は、体を内部から串刺しにされ、そして体中を浄化の炎で焼かれることになる。
故に、夏希はこの技をこう呼んでいる。
「『異端逆十字火刑(ツァゴーシュ・ノスフェラトゥ)』―――!!!」
■龍宮 鋼 >
(なにやらのたまっているが、そんな言葉は聞こえていないように、まっすぐに彼女を見据える。
戦闘に必要な情報だけを選び、それらを高速で処理し、取るべき行動を選択する。
それだけに集中する。)
ッハ、言ってる事理解してんのか。
(それでも、笑わずにはいられなかった。
どうしたって音は聞こえるし、その言葉の意味も理解できる。
だからこそ、突撃してくる彼女の事がおかしくて仕方なかったから。
突き出される剣に、あえて左腕を差し出す。
ぞぶり、と剣が手のひらに突き刺さる感触をゆっくり、はっきりと知覚。
その剣が爆発するように、無数の杭が左腕を中から串刺しにしても顔色は変えなかった。
炎は化勁で地面へ流した。
左腕から脚までの筋肉が焼かれるが、それも耐える。
痛みであれば、耐えられる。
その辛うじて手の形を保っているような左腕で杭ごと刀を鷲掴みにし、思い切り引く。
同時に右足を踏み込み、螺旋の魔力を纏った右拳を、)
――テメェも立派に異端だぞ。
(顔面へ叩き込むべく走らせる。
物理的な防御は透勁の要領ですり抜ける。
魔術的な防御は螺旋の魔力で奪い取る。
その拳に極大の重量を乗せた、龍宮鋼の渾身の一撃。)
ご案内:「浜辺」に東瀬 夏希さんが現れました。
■東瀬 夏希 > 「今度こそ……!」
『異端逆十字火刑』は、先程の『魔女への鉄槌』と違い、直接的なダメージだ。
故に、気合でどうこうできる問題ではない。当たれば必殺。
この技を受けて生きていた異端もまた、かつて存在しなかった。
が。
「(馬鹿な……!)」
『異端迫害聖域』で継続ダメージが襲い掛かっているはずなのだ。
その中で、冷静に左腕を捨てることで致命傷を避け、炎を地面に流された。
必殺が……必殺でなくなった。
物理的なダメージでさえ、持ちこたえられ……
「…………!」
放たれた言葉に、愕然とする。
目を見開き、絶望を目にしたような表情を作りながら……
「ごふ、ああああああああああ!!!!!!」
螺旋の一撃を、その身に受けた。
先程吹き飛ばされる時も手放さなかったヘルシングを握り続けることもできず、鋼の体に残したまま吹き飛ばされる。
「あ、が、……わた、し、は……いた、ん、を……!」
余りのダメージに血を吐き、痙攣しながらもまだ立ち上がろうとする。
……が。そのダメージは人間が平気でいられるようなものではなく。
いくら叱咤したところで、体は立ち上がってはくれなかった。
■龍宮 鋼 >
(左手に突き刺さった剣を、右手で引き抜く。
杭の戻し方などわからないので、そのまま無理矢理に引っこ抜いた結果、左手からブチブチと嫌な音がした。
辛うじて手の形は保っているが、穴だらけになって骨も数箇所から丸見えになっている。
また炎に焼かれた痕もあり、服で見えないが左足の先まで続いている。
左半身が丸ごと消し飛んだような、そんな激痛。
それでも尚、何事もないように立っている。
右手の剣を、離れた地面に突き刺さった剣へと投げつけて、それを引っこ抜いた。
まだ結界が継続しているなら、それで解けるだろうか。)
――剣から炎吐いて、俺の左手こんなぐっちゃぐちゃにして。
異端にそこまで執着する姿なんざ、どっからどう見ても異端だろうが。
(地面に倒れる彼女へ、冷めた視線と共にそんな言葉を投げつける。
あまりにも異常だ。
その異常な姿が被って見えた。
スマホを取り出し、電話をかける。)
――あァ、救急車。
海岸、砂浜。
急患だ、さっさと来い。
(電話の向こうで何事かわめいていたが、全て無視して電話を切る。
そのまま力のない足取りでどこかへと歩いていく。
トドメは刺さずに、ふらふらと。)
ご案内:「浜辺」から龍宮 鋼さんが去りました。
■東瀬 夏希 > 「いた、んは……ゆる、さな……」
近づいてくる鋼に対抗せねばと、立とうと必死になる。
なのに、体は立ち上がれない。言う事を聞いてくれない。
「わたしは、いたんなんかじゃ、ない……いた、ん、を、ころさ、なきゃ……!」
手を動かす。何とかインノケンティウスを探すが、ヘルシングで突き飛ばされ、遠くに転がっている。『異端迫害聖域』も解除されており、手は虚しく空を探るだけに留まる。
そうやって足掻いている間に、鋼が救急車を呼ぶ。
それはすなわち……異端に見逃され、助けられるということ。
「きさ、ま……ころ、せ……ころ……」
涙を流しながら怨嗟の言葉を絞り出す。
が、それは殆ど声にならず……。
「(パパ……ママ……真冬……)」
失った家族の事を最後に思い浮かべ、意識を手放した。
―――しばらくして、一人の気絶した少女が病院に担ぎ込まれた。
その少女は、涙を流しながらうなされていたという。
ご案内:「浜辺」から東瀬 夏希さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 夕方からのバイトも終わり、そのまま男子寮に戻る…事も無く。私服姿でフラフラと散策。
相も変わらず死んだ魚の如く覇気が皆無に等しい双眸。
浜辺へと降り立てば、ゆっくりと砂の感触を確かめるように歩きつつ…。
「……何か、この辺り所々砂が荒れてる気がするな」
誰か派手に喧嘩でもやらかしたのだろうか?砂の地面が抉れたり、高温で溶けてガラス質になってたり。
何となくしゃがみこんでそれを観察するが、何が起こったのか、なんて解る筈も無い。
「……まぁ、この島じゃ何処で何が起こっても不思議じゃあない感じはあるけど」
自分の異能みたいなトラブルしか生み出さない厄介な力もある事だし。覇気の無い瞳は、やがてその惨状の後に興味を無くしたか。
ゆっくりと海岸線の方へと視線を移した。本土の都会で暮らしていた頃は海なんて殆ど直に見る事は無かったが…。
「…特に何か感慨が沸く訳でもないんだよな」
自分は案外冷めてるのかもしれない、と思うが…どうだろう。間違ってはいないのかもしれない。
■飛鷹与一 > 「…そういえば、明日は放課後から研究所か……これで検査受けるの何度目になるんだっけ」
自らの異能についてあれこれ検証するのだろう。ただ、機械であれこれ調べたりしても然程意味は無い気がした。
自分の力が及ぶのは自我がある者…つまり同じ人や異邦人、その他諸々。
機械で調べてもそれらしい力が検出される事はおそらく無いだろう。
薬品や暗示を使っても同じ事だ。むしろ既にそれらも試されたが成果は出ていない。
(何より、俺自身が異能の影響を全く受けないのがなぁ…周りに迷惑しか掛けないし)
この異能を制御したい、消したい。密かに思っているがそれが叶う目処は立っていない。
『家族を潰した』力はこうやって今も少年に宿って苛んでいる。彼自身でなく周りを。
「疫病神とか死神と同類なんて、ゾッとしないね…平凡でいられれば俺はそれで満足なんだけど」
■飛鷹与一 > 「…と、いうより波風立てずに日々適当に生きたい……のに、見事にブチ壊しっていうのは」
ハァ~…と、ただでさえ覇気が無く気だるそうなのに、それが更に増した感じで溜息を深く零して。
その場に座り込んでグッタリ気味。平凡を望み、平凡なスペックを持ち、けれど異能だけはトラブルメイカー。
(そもそも、俺に何でこんな傍迷惑な異能なんて寄越したんだろうなぁ。神様か誰か知らんけども)
さっきからどうにも愚痴っぽくなっているが、こういう時にでも吐き出しておかないと辛い。
別に精神が鉄壁の如く頑丈という訳ではないのだ。こうして発散しないとやってられない。
むしろ、異能のせいでこんな死んだ目や覇気が無い感じや枯れた空気になってるのではないだろうか?
「……いや、目付きとか元からこうだったよね俺」
現実はそんなもんである。子供の頃のあだ名はゾンビだったのが懐かしい。腐ってはいないが目が死んでた。今もだが。
ご案内:「浜辺」に化野千尋さんが現れました。